Claudeでロジックモデルと評価計画を作る — NPOのプログラム設計ツールキット
Theory of Changeを共有するだけで、ロジックモデル・SWOT分析・評価計画を含む6シートのExcelツールキットをClaudeに作らせる手順を解説します。
ロジックモデルも評価計画も1冊のExcelで作る
新しいプログラムを立ち上げるとき、ロジックモデル・SWOT分析・評価計画・リソース計画を別々の文書で作ると、あとで数字や前提がずれます。ClaudeにTheory of Change(理論的変化モデル)を伝えて1つの成果物として頼むと、これらがシート間でつながった6シートのExcelブックとして出てきます。
所要時間の目安は15分で、使う画面はClaude.aiです。想定されている読者は、再就労を支えるプログラムの設計者、アプレンティスシップ(見習い訓練)の仕組みを作る人、キャリアチェンジ向けの技能訓練を企画する人です。
この記事は、依頼文に何を書くか、出てくるExcelの中身をどう読むか、数字の整合をどこで点検するかを順に扱います。
使う前に整える条件
出力はExcel(.xlsx)なので、チャットの「コード実行とファイル作成」機能を使います。Free・Pro・Max・Team・Enterpriseの全プランで、Web・デスクトップ・モバイルから使えます。
プランごとの初期設定は次のとおりです。
- Free・Pro・Max: 初期状態で有効。設定の場所は「Settings > Capabilities」のトグルです
- Team・Enterprise: 組織レベルの設定です。Teamは初期状態で有効で、Enterpriseは新規の組織で初期状態が有効です。組織オーナーは「Organization settings > Capabilities」で無効にできます
動かないときは、まず組織側のこのトグルを見ます。ファイルサイズの上限は、アップロードもダウンロードも1ファイルあたり30MBです。ファイル作成は通常のチャットより使用量の枠を多く使う点にも注意が要ります。
Excelの読み込みと作成の基本操作はClaude Excel読み込みと作成で扱っています。
拡張思考(Extended Thinking)について、公式の使用例は次のように説明しています。プログラムの構造を先に計画し、実装上の課題を検討し、論理のつながりを組み立て前に試すため、より洗練された枠組みになります。
6シートを一度に組み立てるタスクは、投入から長期的インパクトまでの連鎖、SWOTの4象限、指標ごとの測定方法を同時に整合させる必要があります。設定の入口は、Claudeのヘルプにある「モデル・エフォート・思考の設定を変更する」の説明にまとまっています。
Claude Sonnet 5.5、Claude Opus 5.5、Claude Fable 5.1、Claude Opus 5では、同ヘルプによると思考をオフにできません。有効にする操作は要りません。切り替えたいときは、モデル名を押して「Effort」にマウスを合わせると、「Thinking」(または「Extended」)のトグルが出ます。
非営利団体の料金と対象
非営利団体向けのプランはTeamとEnterpriseの2つで、価格はTeamが月8ドル/ユーザー、Enterpriseが月10ドル/ユーザーです。150席未満のチームは最低2席から契約できます。
対象は501(c)(3)の団体、K-12の学校、適格な医療組織で、認証はパートナーのGoodstackを通します。Teamプランの認証は2〜3分とされています。Enterpriseの価格は営業チームへの問い合わせとされています。
対象外は、政府機関・政治キャンペーン・高等教育機関・医療システムです。従業員5人未満の団体は、個人向けのProプラン(月20ドル)が選択肢になります。
割引は、非営利としての資格を保っている間は続きます。すでに通常料金で契約している場合は、管理設定の請求画面からプランを更新するか、サポートに連絡します。
依頼文に入れる4つの要素
最初のメッセージには、プログラムの基本情報・構造・目標値・成果物の仕様をまとめて書きます。
- 基本情報: 対象層、年間の参加者数
- プログラム構造: 具体的な活動と回数、時間数
- 目標値: 完了率、就労配置率、平均初任給などの数値
- 成果物の仕様: Excel形式、シート構成、配色の方向性
公式の依頼文は、シート構成と配色の指定を最初に含めています。含めるシート(プログラムの説明、ロジックモデル、SWOT、評価フレームワーク、リソース計画、ダッシュボード)を列挙し、「デフォルトのExcelの色を避ける」と指定しています。
文脈として渡すのは、Theory of Changeや、投入・産出・短期成果・最終目標が書かれた資料です。形式は「If we do X → then Y happens → leading to Z」という因果の文でも、資料のPDFでも構いません。
公式の依頼文の日本語訳
米ミシガン州デトロイトの恵まれない地域に暮らす18〜26歳向けに、
IT分野の職業準備プログラムを設計しています。
年間120人を受け入れ、エントリーレベルのIT職への準備を支えます。
プログラム構成:
- 6時間のオンライン講座(IT職種の進路、履歴書作成、面接対策、人脈づくり)
- 求職と応募を支える1対1のキャリアコーチング4回
目標値: 講座修了率80%、90日以内の就職60%、平均初任給4万ドル。
次の内容を含むプログラム設計ツールキットをExcelで作成してください。
プログラムの説明(使命と目標)、ロジックモデル(投入→活動→産出→成果)、
提言付きのSWOT分析、指標とデータ収集方法を含む評価フレームワーク、
リソース計画(人員・予算)、エグゼクティブダッシュボード。
コンサルティング品質の書式と高度なExcel機能を使い、
デフォルトのExcelの色は避けたプロ向けの配色にしてください。同じ公式ページでも、依頼文では「6時間のオンライン講座とコーチング4回」と書かれ、補足の助言欄では「20週間のオンライン指導と有給の企業インターンシップ、業界認定資格」を例に挙げています。助言欄の例は、依頼文を自分のモデルに具体的に書き換える見本として読むのが自然です。
どちらの書き方でも、助言は共通しています。「職業訓練プログラム」のような曖昧な記述ではなく、期間・組み合わせる施策・資格の種類・雇用主との連携・目標値まで書くほど、実装を前提にした枠組みが出ます。
出てくる6シートの中身
指示を送ると、Claudeは6シートの統合ブックを作ります。各シートは単独のツールとして使えて、全体は互いにつながる構成です。
6シートの役割
1 エグゼクティブダッシュボード
主要指標・タイムライン・参加者の成果を1画面にまとめます。
2 プログラム設計テンプレート
使命・対象層・理論的枠組み・各フェーズの説明です。助成金提案書に転用しやすい形で書かれます。
3 ロジックモデル
投入→活動→産出→短期成果→長期的インパクトを、カテゴリごとに色分けして並べます。
4 SWOT分析
4象限のそれぞれに、強みの活用・弱みの対処・機会の追求・脅威の緩和という提言が付きます。
5 評価フレームワーク
指標ごとの目標・データ源・収集方法・頻度・担当者・現状を表にします。
6 リソース計画
人員体制と運営予算の内訳です。
条件付き書式の色スケール、データ検証のドロップダウン、固定した見出し行、整った書体など、チャットのプレビューには出ない部品がファイルには入っています。確認はダウンロードした実ファイルで行います。
公式サンプルの数字を読む
公式ページが示すサンプル出力には、具体的な数字が出ています。ロジックモデルの産出欄は、次の人数の連鎖です。
サンプル出力の産出(年間)
登録
120人
年間の受け入れ枠
修了
97人
ダッシュボードの修了率は81%
資格取得
87人
資格取得率は90%と表示
就職
73人
就職率は75%と表示
人数と率を並べて割り算すると、母数が揃っていないことが分かります。97人は120人の約80.8%で、表示の81%と合います。87人は97人の約89.7%で、90%と合います。
就職の73人は、97人の約75.3%と、120人の約60.8%のどちらにも当てはまります。
就職73人の率は、母数で見え方が変わる
修了者97人が母数
ダッシュボードの「就職率75%」はこの数え方です。講座を終えた人のうち、どれだけが就職したかを示します。
登録者120人が母数
依頼文の目標「就職60%」と比べるときの数え方です。途中で抜けた人も分母に残ります。
これらの率は、シートの数字を割り算して得た値です。公式ページに母数の説明があるわけではなく、評価フレームワークのシートに「分母は修了者か登録者か」を書く欄を持たせておくと、報告の場で数字の食い違いが起きにくくなります。
評価フレームワークの粒度
サンプルの評価フレームワークは、プロセス指標・成果指標・インパクト指標・満足度指標にまたがる12個の指標で組まれています。
現状の欄は、「順調」「要注意」「進行中」を選べるドロップダウンで、状況に応じて色が変わります。目標値を掲げて終わらず、測定の段取りまで書き込める粒度です。
数字と前提の整合を点検する
統合ブックの利点は、数字がシート間でつながることです。ただし、つながっているのはClaudeが組んだ構造であって、人間が確認する工程を飛ばせるわけではありません。
点検に使える切り口は次の3つです。
- 参加者数・修了率・就職率を変えたとき、ロジックモデルの産出、評価フレームワークの母数、リソース計画の人員が一緒に動くか
- 目標値の分母が、依頼文・ダッシュボード・評価フレームワークで同じか
- 予算の項目が、活動の項目に1対1で対応しているか
たとえば参加者を120人から160人に増やす変更を頼むと、産出欄の人数だけでなく、コーチング回数の合計や人件費にも影響が及びます。変更を頼むときは「関連するシートも更新して、変更箇所を一覧にして」と添えると、直した場所を後から見直せます。
反復して仕上げる
初稿を最終版にせず、実ファイルを開いてから具体的に直します。公式ページが挙げる修正の例は、次のようなものです。
- 「ロジックモデルをアイコンでもっと視覚的にして」
- 「リソース計画の予算カテゴリを引き締めて」
- 「シート2にTheory of Changeの説明文を足して」
- 「評価フレームワークにドロップダウンの絞り込みを付けて」
1回で完成を求めず、確認と修正を2〜3周する前提で進めます。同じ会話の中で、次のような発展依頼もできます。
ツールキットを運用に乗せる3つの追加依頼
- 1
実施タイムラインを足す
初年度を、計画・提携先の開拓、スタッフの採用と研修、参加者の募集、開始、継続運営に分け、主要な節目・依存関係・判断点をガント形式で並べた新しいシートを頼みます。
- 2
外部向け資料を作る
参加者に向けた1ページの概要資料と、参加者・雇用主・資金提供者向けのFAQ文書を頼みます。対象、資格、特典、申し込み方法、費用、成果を扱います。
- 3
追跡シートを作る
評価フレームワークにつながる参加者追跡シートを頼みます。受け入れ時のデータ、研修の進み具合、資格の修了、就職の詳細、定着の節目を欄にし、状況のドロップダウンと目標までの進捗を自動計算する欄を含めます。
走り出したあとの報告作業には、Claudeでプログラムデータを可視化する方法の手順がそのままつながります。
うまくいかないときの原因
- 記述が抽象的: 「若年層向け職業訓練」だけでは、活動の中身をClaudeが推測で埋めます。期間・施策・数値目標まで書きます
- Theory of Changeがない: Theory of Changeか、それに代わる資料の共有が必須の文脈とされています
- プレビューだけで判断した: 条件付き書式や書体の仕上がりは、ダウンロードしないと見えません
- ファイルが作られない: TeamやEnterpriseでは組織設定のトグルが無効になっている場合があります
- 変更が他のシートに反映されない: 統合ブックなら1つを直しても関連セクションが連動する設計です。実際に連動したかは、変更箇所の一覧で点検します
助成金提案書に転用する
ロジックモデルと評価計画は、助成金の申請書の素材にもなります。財団が問うのは、投入した資金が何にどうつながるかです。ロジックモデルの連鎖はそのまま説明に使えます。
評価フレームワークに測定方法とデータ収集方法まで入っていれば、成果をどう測るのかという質問にも答えが用意できます。申請書そのものの組み立てはClaudeでNPOの助成金提案書を量産する仕組みを作るで扱っています。
先にツールキットを作り、そこから提案書へ進めば、提案書の数字をツールキットの数字に合わせられます。
まとめ
ロジックモデルと評価計画を別々に作ると食い違うので、Theory of Changeを添えて統合ブックとして頼み、母数と目標値の整合だけは人間が点検します。ファイル作成機能の可否はプランと組織設定で決まるため、Claudeでインパクトレポートを作成する方法でも同じ条件を確認できます。非営利団体でのClaude活用の全体像は非営利団体のClaude活用ガイドにあります。