キャッシュレスの入金と売上を突合する手順 — Claude for Excelで手数料差を出す
決済事業者の取引CSVと日次売上を同じブックに並べ、手数料の再計算・端数の差・締め日のずれに分けて入金額の差を説明する手順です。Squareの規定を例に、Claude for Excelへの依頼文までまとめます。
キャッシュレス決済の入金額が売上から手数料を引いた額と合わないときは、差を「手数料率」「端数処理」「締め日のずれ」の3つに分けると説明がつきます。Claude for Excelなら、決済事業者の取引CSVとレジの日次売上を同じブックに置き、再計算の式を組ませて、差額の内訳を行ごとに出せます。店舗や小規模事業の経理担当が、月次の入金チェックを目視から切り離すための手順です。
ここでは、Squareの手数料と振込スケジュールの規定を例に、シートの組み方、再計算式、7日分のサンプルで見る差の分解、Claudeへの依頼文、使えない場面を順に示します。
キャッシュレスの入金突合でClaude for Excelに任せる範囲
Claude for Excelは、開いているExcelのブックについて質問し、セルの根拠つきで答えるアドインです。数式の関係を保ったまま値を変えたり、エラーの原因をたどったり、テンプレートに数式を入れたりできます。Pro・Max・Team・Enterpriseの各プランで使えます。
入金の突合に当てはめると、役割は次のとおりです。
| 作業 | Claudeに任せる | 人が持つ |
|---|---|---|
| 取引CSVを集計しやすい形に整える | Claudeに任せる列の整理と下書き | 人が持つCSVが欠けていないかの確認 |
| 手数料の再計算式を組む | Claudeに任せる式の作成と説明 | 人が持つ適用料率と端数処理の前提の決定 |
| 入金額との差を出す | Claudeに任せる全行・全日の計算 | 人が持つ差の原因の判断 |
| 差の仕分け | Claudeに任せる原因別の分類案 | 人が持つ決済事業者への問い合わせ |
式を組むのは得意でも、「どの料率が自分の店に適用されているか」は契約と申込状況で決まります。そこは人が決めて、シートの設定欄に書き込みます。会費の入金を会員ごとに確かめる使い方は会員名簿の年会費更新の管理にあります。
入金を銀行口座の明細と請求書に結びつける消込は、別の作業です。銀行入金と請求書の突合は入金消込をClaude Codeで自動化する手順で扱っています。Squareの接続手順はClaude Square連携の使い方にあります。この記事は、決済事業者が出した入金額が日次売上と合う理由を検算する手順です。
入金額がずれる3つの原因をSquareの規定で見る
差の仕分けは、原因の型を先に知っておくと速くなります。Squareのヘルプセンターに載っている規定から、突合に効く3点を拾います。
手数料率は条件で2.5%と3.25%に分かれる
Squareは、日本の対象事業者の対面カード決済手数料を3.25%から2.5%に引き下げています。VisaとMastercardは2024年11月1日から、JCB・American Express・Diners Club・Discoverは2025年1月16日からです。
ただし、引き下げ後の料率は自動では適用されません。次の条件を満たして申し込む必要があります。
- 日本政府が定める「中小企業」の定義に当てはまる
- 上場企業や企業グループと関連性がない
- キャッシュレス決済の年間総取引額が3,000万円未満
申込の有無で、同じ売上でも手数料が変わります。カード情報の手入力は料率が別で、ヘルプの端数処理の例では3.75%が使われています。対面の読み取りと手入力が混ざると、1日の実効料率は一定になりません。
端数は決済ごとに四捨五入される
カード決済手数料は、小数点以下が四捨五入されます。ヘルプの例では、1,000円の決済に3.25%を掛けて32.5円となり、手数料は33円、振込額は967円です。
この例は1回の決済で示されていて、手数料は各取引の総額から差し引かれます。そこで、このサンプルでは決済ごとに四捨五入する前提で計算します。日の売上合計に料率を掛けて一度だけ丸めた値とは、数円ずれることがあります。
締め日で入金のまとまりが変わる
振込のスケジュールは、登録した銀行によって分かれます。
| 登録口座 | 売上の締め | 入金 |
|---|---|---|
| 三井住友銀行・みずほ銀行 | 売上の締め0:00から23:59までの売上 | 入金翌営業日に振込 |
| それ以外の金融機関 | 売上の締め毎週水曜日に締め | 入金同じ週の金曜日に合算で振込 |
それ以外の金融機関では、毎週木曜日0:00から翌週水曜日23:59までの売上が、次の金曜日にまとめて振り込まれます。土日祝日は振込が行われず、予定日が休業日と重なると翌営業日です。
ここに、レジの営業日と決済事業者の暦日の食い違いが入ります。深夜営業の店で営業日を午前3時に切り替えている場合、水曜の営業日に入れた午前0時10分の売上は、決済事業者側では木曜に属します。その売上は翌週の振込に回ります。通知メールは振込を行った段階で届くもので、口座への入金を知らせるものではありません。
取引CSVと日次売上を同じブックに並べる
ブックのシートは3枚に分けます。決済事業者のCSVと、レジの日次売上と、設定です。
取引CSVの入手手順は、Squareでは次のとおりです。決済のCSVには、決済手数料や税金など、決済ごとの詳細が入っています。
Squareの取引CSVを出す
- 1
取引を開く
Squareデータで取引にアクセスします。
- 2
期間を選ぶ
画面左上の日付セレクターで、突合したい日付範囲を選びます。
- 3
CSVを生成する
「取引CSV」から「生成」「ダウンロード」の順に進みます。
シートの持ち方は次のとおりです。列名は実際のCSVに合わせて読み替えてください。
| シート | 列 | 中身 |
|---|---|---|
| 取引 | 列A〜F | 中身日時・営業日・金額・CSVの手数料・再計算手数料・差 |
| 日次売上 | 列A〜C | 中身営業日・レジの売上・入金対象かの判定 |
| 設定 | 列B1〜B3 | 中身適用料率・締め期間の開始・締め期間の終了 |
営業日の列は、日時から店の営業日の切替時刻を引いて作ります。たとえば午前3時切替なら、日時から3時間を引いた日付です。
手数料と入金額を再計算する式
決済ごとの手数料と、CSVの値との差
取引シートの再計算手数料は、金額に適用料率を掛けて四捨五入します。
E2: =ROUND(C2*設定!$B$1,0)
F2: =D2-E2ROUND は0.5を切り上げるので、正の金額なら四捨五入と同じ結果です。F列が0でない行が、CSVの手数料と自分の前提が合わない取引です。
期間内かどうかの判定
締め期間に入る取引かを、日時で判定します。
G2: =IF(AND(A2>=設定!$B$2, A2<設定!$B$3),"当週","翌週以降")設定のB2は木曜0:00、B3は翌週の木曜0:00にします。1分の違いで入金週が変わるので、日時は秒まで残します。
入金額の期待値と、実際の入金との差
入金の期待値は、範囲の違う3通りで置いておきます。取引シートには、営業日がこの週に入る決済をすべて載せている前提です。
簡易の期待値: =SUM(売上)-ROUND(SUM(売上)*設定!$B$1,0)
営業週ベースの期待値: =SUM(取引!C:C)-SUM(取引!E:E)
振込対象の期待値: =SUMIFS(取引!C:C,取引!G:G,"当週")-SUMIFS(取引!E:E,取引!G:G,"当週")簡易の期待値と営業週ベースの期待値の差が端数処理の差です。営業週ベースは、レジの売上と同じ範囲の決済を決済ごとの手数料で割り戻した値になります。そこから、G列が「当週」でない決済の分を除いたのが振込対象の期待値で、この2つの差が締め日のずれです。振込対象の期待値と実際の入金との差が残るときは、料率の前提や、次章の即時入金などを疑います。
7日分のサンプルで差を分解する
木曜から水曜までの7日間、カード決済のみの売上を使います。22件の決済で、適用料率は2.5%、手数料は決済ごとの四捨五入です。数値は説明用の例で、実在の店の売上ではありません。
| 営業日 | 件数 | 売上 | 手数料(決済ごと) | 売上×料率 |
|---|---|---|---|---|
| 木 | 件数3 | 売上4,710円 | 手数料(決済ごと)118円 | 売上×料率118円 |
| 金 | 件数4 | 売上7,780円 | 手数料(決済ごと)195円 | 売上×料率195円 |
| 土 | 件数4 | 売上10,860円 | 手数料(決済ごと)273円 | 売上×料率272円 |
| 日 | 件数3 | 売上9,130円 | 手数料(決済ごと)229円 | 売上×料率228円 |
| 月 | 件数3 | 売上4,640円 | 手数料(決済ごと)116円 | 売上×料率116円 |
| 火 | 件数2 | 売上4,270円 | 手数料(決済ごと)107円 | 売上×料率107円 |
| 水 | 件数3 | 売上5,770円 | 手数料(決済ごと)145円 | 売上×料率144円 |
| 合計 | 件数22 | 売上47,160円 | 手数料(決済ごと)1,183円 | 売上×料率1,180円 |
週全体の売上47,160円に2.5%を掛けると1,179円です。日ごとに丸めた1,180円とも、決済ごとの1,183円とも合いません。端数の拾い方で、手数料が4円違います。
実際の入金は44,593円だったとします。差を分けると次のようになります。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 簡易の期待値(47,160円−1,179円) | 金額45,981円 |
| 端数処理の差 | 金額−4円 |
| 営業週ベースの期待値(47,160円−1,183円) | 金額45,977円 |
| 締め日のずれ(水曜営業日の1,420円の決済) | 金額−1,384円 |
| 振込対象の期待値(G列が「当週」の決済のみ) | 金額44,593円 |
| 実際の入金 | 金額44,593円 |
締め日のずれの1,384円は、午前0時10分に決済された1,420円から、手数料36円を引いた額です。レジでは水曜の売上に入っていますが、決済事業者の暦では木曜0:00以降なので、この週の振込には入りません。翌週の振込に出てきたかを、次の週の取引で確かめます。
差の合計1,388円は、4円と1,384円に分かれます。前者は丸めの流儀の違いで、後者は入金が遅れているだけです。どちらも金額が消えたわけではありません。
Claude for Excelへの依頼文を3段階に分ける
一度に全部を頼まず、式を組む、検算する、仕分けるの3段階にします。
- 式を組ませる。「取引シートのE列に、金額に設定シートのB1を掛けて四捨五入した手数料を入れてください。G列には、日時が設定シートのB2以上B3未満なら『当週』、そうでなければ『翌週以降』と入れてください。式の前提を日本語で説明してください」
- 検算する。「F列が0でない行と、日時が0時台の行を抜き出し、それぞれの根拠のセルを示してください」
- 仕分ける。「実際の入金額と営業週ベースの期待値の差を、端数処理、期間外の取引、料率の違いに分けてください。判断がつかない部分は『要確認』にしてください」
Claude for Excelの回答には、クリックで該当セルに移れるセル単位の根拠が付きます。2番目の依頼で、どの取引を期間外と判定したかをたどれます。
アドインの設定画面にはInstructionsの欄があり、Excelでの会話すべてに効く指示を置けます。「金額は円の整数で表示する」「差は実際の入金から期待値を引いた値にする」のように固定ルールを書くと、依頼のたびに繰り返さずに済みます。この指示はExcelだけに効き、PowerPointやWordの指示とは別です。
落とし穴
料率を3.25%のままにすると、全行が手数料不足に見える
2.5%の申込を済ませた店で3.25%を前提にすると、全取引に一定の偏りが出ます。逆に、申込をしていない店が2.5%で再計算すると、全行でCSVの手数料のほうが大きくなります。F列に一律の偏りが見えたら、個別の取引より先に、設定シートの料率と申込状況を疑います。
即時入金を使った日は振込額がさらに減る
ここまでの差は売上と手数料の計算の話でした。もう一つ、振込額そのものが減る原因があります。通常の振込スケジュールより早く資金が必要なときに使う即時入金サービスです。入金金額の1.5%の手数料がかかり、この手数料も不課税です。
即時入金を使った日は、その入金だけが一定率で少なく見えます。1.5%は決済手数料とは別の手数料なので、決済ごとの再計算では説明がつきません。たとえば10,000円を即時入金にすると、150円が差し引かれます。振込対象の期待値と実際の入金に一定率の差が残ったら、即時入金の利用履歴を確かめます。
差を原因別に仕分けて問い合わせる
差の原因は、前提の違い、タイミング、事業者側の処理に分けると見分けやすくなります。
| 原因の型 | 見え方 | 次の動き |
|---|---|---|
| 料率の前提違い | 見え方全取引に一定の偏り | 次の動き申込状況と適用料率を確認し、設定を直す |
| 端数処理 | 見え方数円の差が複数日に散る | 次の動き決済ごとの丸めに式を揃える |
| 締め日のずれ | 見え方0時台・水曜夜の取引の差 | 次の動き次週の振込に出ているか確かめる |
| 即時入金の手数料 | 見え方特定日の入金だけ一定率で少ない | 次の動き即時入金の利用履歴を確認 |
| 祝日・休業日 | 見え方振込予定日が後ろにずれる | 次の動き銀行の休業日と振込日を照らす |
| 返金・取消 | 見え方差がマイナスの行 | 次の動き取引CSVの手数料列で返金時の扱いを確かめる |
決済事業者に問い合わせるときは、「どの週の、どの取引が、期待値といくら違うか」を行番号つきで伝えます。取引のIDか日時を添えると、先方も該当の取引を探せます。
他社の決済サービスを使う店でも、同じブックが使えます。手数料率、締めの曜日、端数の丸め方の3点だけは、各社の資料で確かめて設定シートに入れます。
運賃や海運の請求を、表と照らして突合する考え方も同じです。運賃請求書を運賃表と突合する手順では、基準の表を持って差額を行ごとに出す形を扱っています。
使えない場面と注意点
- 外部のファイルをそのまま開かない: ダウンロードしたCSVや取引先のファイルには、隠された指示が入っている可能性があります。外部由来のファイルでは、Claude for Excelが情報の持ち出しやデータの改変に誘導される恐れがあります。CSVは信頼できる自分のブックへ値だけ貼り付けて使います
- VBAとマクロは扱えない: データテーブルとマクロ・VBAの操作は未対応です。CSVの取り込みをマクロで自動化している場合、その部分は人が行います
- 監査に使う計算は検証が前提: 監査で根拠になる計算は、検証なしでの利用が推奨されない用途に挙げられています。Claudeが組んだ式は、サンプル行を電卓で再計算して合わせます
- 動作環境: Excelは、ウェブ版、Microsoft 365のWindows版(ビルド16.0.13127.20296以降)、Mac版(16.46以降)で動きます。Excel 2016・2019の買い切り版、iPad、Androidでは動きません
- 編集前にコピーを取る: 広い範囲を編集させる前に、元ブックのコピーを取ります。上書きの前には警告が出ます
- 個人情報の扱い: 取引CSVに顧客を特定できる項目が含まれる場合は、突合に要る列だけを別のブックに写して渡します。社内の取り扱い規程に沿って、Claudeに渡す範囲を決めます
Squareの決済手数料は課税の対象外で、手数料に対する領収書は発行されません。会計の仕訳に進むときは、この扱いを顧問税理士などに確かめます。
まとめ
キャッシュレスの入金と売上の突合は、取引CSV・日次売上・設定の3シートに分け、決済ごとの手数料を再計算して差を出す形に落とせます。Claudeには式の作成、セル根拠つきの検算、差の仕分け案を任せ、適用料率と端数処理の前提は人が決めます。差が出たら金額の大きさでなく、料率の前提、端数、締め日という原因で分けます。サンプルのように、数円の差は丸め方の違い、まとまった額の差は入金が翌週に回っただけ、という切り分けができます。問い合わせの前に、次の振込で差が消えるかを確かめます。