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Claude for Excelで病床稼働率と平均在院日数を月次分析する手順

Claude for Excelで病床稼働率と平均在院日数を月次分析する手順

日別の在院患者数と入退院数から、病棟ごとの病床利用率と平均在院日数を月次で出し、前月からの動きを入院数と在院日数に分けて読むまでを、Claude for Excelで進める手順です。

病棟別の病床稼働率と平均在院日数は、日別の在院患者数と入退院数があれば、Excelの月次シートで出せます。Claude for Excelなら、集計用の式を書かせ、前月からの動きを読み解くところまで同じブックの中で進められます。ただし、式の定義がずれると数字は簡単に食い違います。この記事は、厚生労働省の病院報告が使う定義に合わせて月次シートを組み、Claudeに任せる範囲と人が確かめる範囲を分けます。

患者個人を特定できる情報はブックに入れません。日別の人数だけを集計した表で足りる設計にしています。

稼働率は病院報告では「病床利用率」と呼ぶ

院内で「稼働率」と呼ぶ指標は、病院報告の用語では病床利用率にあたります。病院報告は、全国の病院と療養病床を持つ診療所を対象に毎月実施される一般統計調査で、在院患者数、新入院患者数、退院患者数、外来患者数などを調べます。用語の解説に載る式を、1か月分に当てはめて示すと次のとおりです。

指標式(病院報告の定義を1か月に当てはめたもの)
病床利用率式(病院報告の定義を1か月に当てはめたもの)月間の在院患者延数 ÷(月間日数 × 月末病床数)× 100
平均在院日数式(病院報告の定義を1か月に当てはめたもの)月間の在院患者延数 ÷ [1/2 ×(月間の新入院患者数 + 月間退院患者数)]
月末病床利用率式(病院報告の定義を1か月に当てはめたもの)月末在院患者数 ÷ 月末病床数 × 100

病床利用率の式は、用語の解説では年間の延べ数を、月ごとの「月間日数 × 月末病床数」の1月から12月までの合計で割る形で載っています。上の表の月次版は、その分子と分母を1か月分に絞ったものです。

押さえておく点は4つあります。

  • 在院患者は24時時点の人数です。毎日24時現在に在院している患者が数えられ、その合計が在院患者延数になります。
  • 新入院と退院には、入院した日のうちに退院した患者も含まれます。日帰りに近い入院が多い病棟では、平均在院日数の分母に効きます。
  • 月末病床利用率は別の指標です。月末の1日分だけで計算するため、月全体の稼働を表す病床利用率とは値が違ってきます。
  • 療養病床は、平均在院日数の分母が違います。同じ医療機関内の他の種別の病床から移された患者と、他の種別の病床へ移された患者が、分母の入退院に加わります。療養病床を含む病棟を扱う場合は、転棟の人数を別列で持ちます。

院内の管理指標は、入院日や退院日の数え方を病院ごとに決めていることがあります。外部の統計と比べる数字は病院報告の式で、運営会議向けの数字は院内の定義で出します。どちらの定義で計算したかは月次シートの見出しに書いておくと、後で食い違いを追えます。客室の稼働率を同じ要領で出す例は宿泊施設のRevPAR・ADR・稼働率の月次分析にあります。入所系の介護施設はClaude for Excelで介護施設の月次稼働率と収支を分析する手順で扱っています。

渡すデータは、病棟 × 日の集計表だけにする

Claude for Excelに読ませるシートは、次の6列の日次シートです。シート名は「日次」とします。

列中身
A中身日付
B中身病棟名
C中身24時時点の在院患者数
D中身その日の新入院患者数(当日退院を含む)
E中身その日の退院患者数(当日退院を含む)
F中身その日の稼働病床数

患者ID、氏名、診断名、日別の個別の入退院記録は載せません。電子カルテや入退院システムから出力した人数を病棟・日付ごとに数えた表を、この形に貼ります。

Claude for Excelの限界として、一般に次のような使い方は推奨されていません。

  • 人の確認を経ない最終成果物
  • 検証を伴わない監査上重要な計算
  • 管理が十分でない機微情報・規制対象データの扱い

病院の運営数値は経営会議の資料にもなるため、式は必ず人が検算します。患者情報の取り扱いは所属組織の規程が先にあり、医療機関向けの契約や指針の整理はClaudeの医療機関向けBAAと3省2ガイドラインの要件を突き合わせるにまとめています。

月次シートの式を組む

「月次」シートに、病棟 × 月の行を作ります。A列に病棟名、B列に月初日を入れ、C列以降に式を置きます。

列項目
A項目病棟
B項目月初日(例: 2026/9/1)
C項目月間の在院患者延数
D項目月間の新入院患者数
E項目月間退院患者数
F項目月末病床数
G項目月間日数
H項目病床利用率
I項目平均在院日数

2行目の式は次のとおりです。見やすさのために改行していますが、実際は1行でも、セル内改行でも動きます。

C2: =SUMIFS(日次!$C:$C, 日次!$B:$B, $A2,
      日次!$A:$A, ">="&$B2, 日次!$A:$A, "<="&EOMONTH($B2,0))
D2: C2 の式の $C:$C を $D:$D に替える
E2: C2 の式の $C:$C を $E:$E に替える
F2: =SUMIFS(日次!$F:$F, 日次!$B:$B, $A2, 日次!$A:$A, EOMONTH($B2,0))
G2: =DAY(EOMONTH($B2,0))
H2: =IF(F2*G2=0, "", C2/(F2*G2))
I2: =IF(D2+E2=0, "", C2/(0.5*(D2+E2)))

H列は「0.0%」、I列は「0.0」の表示形式にします。F列は、病院報告の式に合わせて月末日の病床数を拾う形です。

Claude for Excelに任せる手順

式の下書きを任せ、結果を人が検算する流れです。

手順

月次シートを作らせて検算するまで

  1. 1

    日次シートの列の意味を伝える

    ブックを開いたまま、日次シートの列の構成と、各数字が「24時時点」「当日退院を含む」である点を文章で渡します。

  2. 2

    月次シートを新しく作らせる

    上の表の列と式を示し、既存のシートを書き換えず、新しいシート「月次」に作るよう指示します。

  3. 3

    式の根拠をセルで追わせる

    H列とI列について、どのセルを参照しているかを説明させます。回答にはセル単位の引用が付き、クリックすると該当セルへ移動できます。

  4. 4

    1病棟1か月を手計算と照合する

    次の節の計算例のように、1つの病棟・1つの月を電卓で計算し、シートの値と合うかを見ます。

指示の例を示します。

添付ブックの「日次」シートは、病棟・日付ごとの人数です。
C列は毎日24時時点の在院患者数、D列とE列は当日退院を含む
新入院と退院の人数、F列はその日の稼働病床数です。
既存のシートは変更せず、新しいシート「月次」を作ってください。
病棟ごと・月ごとに、月間の在院患者延数、月間新入院、月間退院、
月末病床数、月間日数を集計し、病床利用率と平均在院日数を
次の式で計算してください。
病床利用率 = 延数 ÷(月間日数 × 月末病床数)
平均在院日数 = 延数 ÷ [1/2 ×(新入院 + 退院)]
最後に、式を入れたセルの範囲と参照先を一覧で教えてください。

アドインの設定画面には、すべての会話に適用される指示欄(Instructions)があります。「割合は小数第1位まで表示する」「日数は小数第1位まで」など、表示の決まりごとはそこに書いておくと、毎回の指示を短くできます。

検算: 手計算を1つだけ作っておく

式が合っているかは、1病棟・1か月分を電卓で出して照合します。以下は、動作確認用に作った架空の数字です。

項目A病棟9月A病棟10月
月間日数A病棟9月30A病棟10月31
月末病床数A病棟9月40A病棟10月40
月間の在院患者延数A病棟9月1,080A病棟10月1,177
月間の新入院患者数A病棟9月90A病棟10月88
月間退院患者数A病棟9月92A病棟10月90
病床利用率A病棟9月90.0%A病棟10月94.9%
平均在院日数A病棟9月11.9A病棟10月13.2

9月の病床利用率は1,080 ÷(30 × 40)= 0.900、平均在院日数は1,080 ÷(0.5 ×(90 + 92))= 1,080 ÷ 91 ≒ 11.9です。10月は1,177 ÷(31 × 40)≒ 0.949、1,177 ÷ 89 ≒ 13.2になります。

シートの値が合わないときに疑う箇所を、頻度の高い順に挙げます。

  • 病棟名の表記ゆれ(全角と半角の空白、「3東」と「3階東」)でSUMIFSが拾えていない
  • 日付が文字列で、「>=」の比較が効いていない
  • 病床数が月末日の行に入っていない
  • C列に「その日の入院患者数」が入っていて、「24時時点」の在院人数になっていない
  • 病棟の合計が全体の数字と合わない(転棟の二重計上や欠損日)

全病棟の延数を足した値と、全体の延数が一致するかも毎月見ます。一致しないときは、日次シートに欠けている日か、重複している行があります。病床利用率が100%を超えたときも、入力と病床数の定義を先に確認します。

利用率の動きは、入退院数と在院日数に分けて読む

2つの指標は別々に動くわけではありません。病院報告の式を並べ替えると、次の関係が出ます。

月間の在院患者延数 = 平均在院日数 × 1/2 ×(月間新入院 + 月間退院)

利用率の分母は「月間日数 × 月末病床数」なので、日数の違う月どうしでは延数に比例しません。利用率の比は、次の形に分けられます。

利用率の比 = 入退院の平均の比 × 平均在院日数の比 ÷ 月間日数の比 ÷ 病床数の比

前月からの動きは「入退院の数が変わった」「1人あたりの在院日数が変わった」「月の日数が違う」(病床数が変わった月はそれも。病床が増えれば利用率は下がる向きに働きます)に分かれます。上の計算例(病床数は40のまま)でいうと、次のとおりです。

見る量9月 → 10月の比
入退院の平均(91 → 89)9月 → 10月の比約0.978(減少)
平均在院日数(11.87 → 13.22)9月 → 10月の比約1.114(増加)
延数(1,080 → 1,177)9月 → 10月の比約1.090(増加)
月間日数(30 → 31)9月 → 10月の比約1.033(増加)
利用率(90.0% → 94.9%)9月 → 10月の比約1.054(増加)

0.978 × 1.114 ≒ 1.090で延数の増加と一致し、これを日数の比1.033で割ると1.054になって、利用率の上昇と合います。上昇の主因は、入院が増えたことではなく在院日数が延びたことです。ただし、31日ある10月は分母も大きくなるので、延数の増加ほどには利用率が上がっていません。日数の違う月を比べるときは、延数を月間日数で割った、1日あたりの平均在院患者数で見ると、日数の影響を外せます。同じ「利用率が上がった」でも、現場で聞くことは変わります。

利用率入退院数平均在院日数まず病棟に聞くこと
上昇入退院数増加平均在院日数ほぼ横ばいまず病棟に聞くこと入院の増えた診療科、紹介元、予定入院の偏り
上昇入退院数減少平均在院日数延伸まず病棟に聞くこと退院調整の遅れ、長期化した症例の有無
低下入退院数減少平均在院日数短縮まず病棟に聞くこと入院受け入れの減少、早期退院の取り組み
低下入退院数増加平均在院日数短縮まず病棟に聞くこと回転は上がったが埋まっていない病床の有無
ほぼ横ばい入退院数増減あり平均在院日数逆方向に変化まず病棟に聞くこと相殺された2つの動きの中身

この表は読み筋であり、原因を示すものではありません。数字から言えるのは「どちらが動いたか」までで、理由はカルテの内容や運用の変更を知る人に聞かなければ分かりません。

変動の理由メモは、数字の分解と質問に絞って任せる

Claude for Excelには、月次シートの数字から、次の作業を任せられます。

  • 病棟ごとに前月比と前年同月比を計算し、動きが大きい行に印を付ける
  • 利用率の変化を、上の分解で入退院数と在院日数に振り分ける
  • 振り分けた結果に応じた、病棟の責任者への確認質問の下書きを作る

指示の例は次のとおりです。

「月次」シートの病棟 × 月の表に、前月比(利用率はポイント差、
平均在院日数は日数差)の列を追加してください。
利用率が前月から3ポイント以上動いた行について、
延数の増減を「入退院の平均の変化」と「平均在院日数の変化」の
比で分け、どちらが主因かを一文で書いてください。
理由は推測せず、病棟責任者に確認する質問を2つ添えてください。

「3ポイント」は例のしきい値です。病棟の規模や診療科で適切な幅が違うため、病棟の特性に合わせて決めます。小さな病棟は、患者が数人動くだけで利用率が大きく振れます。しきい値は固定せず、病床数で分けておくと拾いすぎを避けられます。

Claudeが出す「理由」は、データから言える範囲を超えないようにします。理由メモの欄は、数字の分解(Claudeが書く)と、現場の説明(人が埋める)を別の列に分けておくと、後で追記した内容の出どころが分かります。

使う前に確認すること

  • 対応環境: Claude for Excelは、Pro、Max、Team、Enterpriseの各プランで一般提供されています。Excel on the web、Windows版(Microsoft 365、ビルド16.0.13127.20296以降)、Mac版(16.46以降)で動作し、Excel 2016・2019の永続・ボリュームライセンス版、iPad、Androidでは動きません。
  • 非対応の機能: マクロ(VBA)とデータテーブルは扱えません。病棟の集計を既にマクロで回している場合は、貼り付けまでを従来の方法にして、月次シートの検算と分解をClaudeに頼みます。
  • 既存データの上書き: 既存のデータを上書きする前には警告が出ます。それでも、元の集計表のコピーで作業を始めます。
  • 外部ファイルの扱い: 外部から受け取ったファイルには、Claudeを誤作動させる隠し指示が含まれることがあります。他院や委託先から受け取ったブックは、Claudeに読ませるのは、信頼できると確認できてからにします。
  • データの保持: 入力と出力は、受領または生成から30日以内にバックエンドで削除されます。会話の履歴はブラウザのIndexedDBに保存されます。

月次の動きを読み続けるための型

病床稼働の分析は、1回きりの集計より、毎月同じ形で比べ続けるときに価値が出ます。日次シートの列を固定し、月次シートに病棟 × 月の行を追記していけば、前月比と前年同月比の列は式のコピーで増やせます。変動の読み方そのものは、勘定科目で前月比と前年同月比を並べるClaude for Excelの月次変動分析や、予算との差を追う月次予実対比レポートの差異分析と同じ型で、病院では物差しが「利用率」と「平均在院日数」に替わるだけです。

式の定義、手計算の照合、分解の読み筋の3点を最初に固めておけば、Claudeに任せる部分は式の下書きと質問の整理に絞れます。数字が動いた理由を決めるのは、病棟の現場を知る人です。

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