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月次予実対比レポートの差異分析をClaude for Excelで進める手順

月次予実対比レポートの差異分析をClaude for Excelで進める手順

予算表と実績試算表を科目別に突合し、差異率の計算と差異理由コメントの下書きまでをClaude for Excelに任せる手順。しきい値の当て方と検算の入れ方まで、数値例つきで扱います。

月次の予実対比レポートは、予算表と実績試算表を科目ごとに突き合わせ、差異の大きい科目に理由を添える作業です。Claude for Excelは、この突合と差異率の計算、差異理由コメントの下書きまでをExcelの中で進められます。ただし理由の裏付けは人が取るものです。この記事では、下書きを任せる範囲と、人が確かめる範囲の線引きを手順にしました。

特定の会計SaaSやERPには依存しません。予算表と試算表がExcelブックに入っていれば、同じ流れで進められます。

Claude for Excelは予実対比の何を肩代わりするか

Claude for Excelは、ExcelにClaudeを持ち込むアドインです。ブックについて質問し、数式の関係を保ったまま前提を変え、エラーの原因を探し、モデルの作成や既存テンプレートへの入力ができます。回答にはセル単位の出典が付き、クリックすると該当セルへ移動できます。

予実対比の作業に当てはめると、次の4つが対象です。

  • 予算表と試算表の科目を突き合わせる
  • 差異額と差異率を数式で組む
  • しきい値を超えた科目に色を付けて抽出する
  • 差異理由コメントの下書きを書く

並べ替え、フィルター、ピボットテーブルの編集、条件付き書式、入力規則のドロップダウン作成といったExcel本来の操作も、そのまま依頼できます。

手順

月次の進め方

  1. 1

    ブックを3シートに整える

    予算・実績・予実対比。科目コードをキーにします。

  2. 2

    数式で差異を組ませる

    値の直書きではなく参照式にして、翌月は貼り替えだけにします。

  3. 3

    しきい値で絞る

    差異率と差異額の両方を超えた科目だけを「要説明」にします。

  4. 4

    根拠のない理由は要確認にする

    数字から言えることだけを下書きさせます。

  5. 5

    合計を検算する

    予算・実績の合計が元の表と一致するかを見ます。

前提条件 — 対応バージョンとプラン

使えるのはPro、Max、Team、Enterpriseの各プランです。対応するExcelは次の3種類です。

環境条件
Excel on the web条件条件なし
Windows版条件Microsoft 365契約でビルド16.0.13127.20296以降
Mac版条件バージョン16.46以降、ビルド21011600以降

Excel 2016・2019の永続ライセンスやボリュームライセンス版、iPad、Androidでは動きません。経理部門にサブスクリプション型ではないExcelが残っている場合は、先にここを確認します。

個人での導入は、Microsoft AppSourceの「Claude for Microsoft 365」から入れ、Excelでアドインを有効にしてClaudeアカウントでサインインします。組織で配る場合は、管理者がMicrosoft 365管理センターから展開します。Amazon Bedrock、Google Cloud Vertex AI、Azure AI Foundry、LLMゲートウェイを経由する構成でも管理者が展開でき、その場合は個人のClaudeアカウントが要りません。

ブックの形を先に決める

Claudeへの指示が短くて済むかどうかは、ブックの形で決まります。次の3シートに分けると扱いやすくなります。

シート中身
予算中身科目コード・科目名・月別予算額
実績中身試算表から貼り付けた科目コード・科目名・当月実績額
予実対比中身科目ごとの予算・実績・差異額・差異率・判定・コメント

科目名ではなく科目コードで突き合わせるのが要点です。予算の科目体系と試算表の科目体系が完全には一致しない会社は多く、表記ゆれは名寄せ漏れの原因になります。対応が取れない科目があれば、Claudeに一覧で出させて人が判断します。

貼り付けるのは、必ず信頼できるコピーです。公式は、大きな編集を頼む前に信頼できるブックのコピーで始めるよう案内しています。原本の予算表を直接触らせない運用にしておくと、上書き事故も防げます。

手順1: 科目を突き合わせて差異を計算させる

まず突合と差異計算を依頼します。指示は次のように、対象シート・キー・計算式・符号の扱いまで書きます。

「予算」シートと「実績」シートを科目コードで突き合わせ、
「予実対比」シートに次の列を作ってください。
A: 科目コード / B: 科目名 / C: 予算額 / D: 実績額
E: 差異額 = 実績額 - 予算額
F: 差異率 = 差異額 / 予算額(予算が0のときは空欄)
どちらか片方にしかない科目コードは、
予実対比シートの下に別表で一覧にしてください。
値の直書きではなく、SUMIFSなどの数式で参照してください。

ここで効くのが、Claude for Excelが数式の関係を保つ点です。数式で組ませておけば、翌月に実績シートを貼り替えるだけで対比表が更新されます。値だけを書き込ませると、翌月にもう一度全部を依頼し直すことになります。

科目コードごとの集計は、例えば次のような式になります(公式サンプルではなく、この手順のための例です)。

C2: =SUMIFS(予算!$D:$D, 予算!$A:$A, $A2)
D2: =SUMIFS(実績!$D:$D, 実績!$A:$A, $A2)
E2: =D2-C2
F2: =IF(C2=0, "", E2/C2)

予算が0の科目は差異率が計算できません。空欄にするか別枠で扱うかは、依頼の時点で決めておきます。指定がなければ、#DIV/0! が並ぶ可能性があります。並んだときは、公式が挙げるデバッグの依頼例に倣い、原因のセルを尋ねます。

手順2: 差異のしきい値を決めて色を付ける

すべての科目にコメントを付けても、読み手には負担なだけです。差異率と差異額の両方にしきい値を置き、超えた科目だけを対象にします。

G列に判定を作ってください。
差異率の絶対値が10%以上、かつ差異額の絶対値が100万円以上の科目に
「要説明」と表示し、該当行に条件付き書式で色を付けてください。
しきい値は別セルに置き、後から変えられるようにしてください。

しきい値の10%と100万円は例です。会社の規模や管理会計のルールに合わせて変えます。片方だけで判定すると、少額科目の大きな率ばかりが並ぶか、巨額科目の小さな率を見逃します。両方を掛け合わせる形が扱いやすく、しきい値をセルに出しておけば後から調整も利きます。

有利差異と不利差異の向きは、依頼で明示します。同じ符号のまま「プラスは悪い」と一括で判定すると、収益科目を読み違えます。

くらべる

差異額の符号と有利・不利

売上など

収益科目

実績が予算を上回れば有利、下回れば不利です。差異額がプラスなら有利になります。

外注費など

費用科目

実績が予算を下回れば有利、上回れば不利です。差異額がプラスなら不利になります。

科目区分の列(ここではI列に「収益」か「費用」)を足し、向きの列も数式で組ませます。しきい値のセルをK1(差異率)とK2(差異額)に置いた場合の例です。

G2: =IF(F2="","予算0",IF(AND(ABS(F2)>=$K$1,ABS(E2)>=$K$2),"要説明",""))
H2: =IF(E2=0,"",IF(($I2="収益")=(E2>0),"有利","不利"))

H列の式は、収益で差異がプラス、または費用で差異がマイナスのときに「有利」を返します。

しきい値を当てた数値例

次の表は説明用の架空の数値です(単位は千円、しきい値は差異率10%以上かつ差異額1,000千円以上)。

科目予算実績差異額(差異率)判定
売上高予算50,000実績56,000差異額(差異率)+6,000(+12.0%)判定要説明(有利)
人件費予算20,000実績21,500差異額(差異率)+1,500(+7.5%)判定率が10%未満で対象外
広告宣伝費予算3,000実績3,600差異額(差異率)+600(+20.0%)判定額が1,000未満で対象外
外注費予算8,000実績9,200差異額(差異率)+1,200(+15.0%)判定要説明(不利)
通信費予算5,000実績4,350差異額(差異率)-650(-13.0%)判定額が1,000未満で対象外

広告宣伝費は差異率が20%と最大でも、金額が小さいので説明対象になりません。反対に売上高は有利差異ですが、予算より12%多く出ているため対象に残ります。有利差異を対象に含めるかどうかは、会社の管理ルールで決めます。

手順3: 差異理由コメントの下書きを書かせる

コメント欄は、Claudeの出力をそのまま使わず「下書き」として扱います。試算表と予算表だけからは、差異が生じた理由までは分かりません。数字の動きから言えるのは、どの科目がどの方向にいくら動いたかまでです。

そこで、指示に次の条件を入れます。

「要説明」の科目について、J列に差異理由の下書きを書いてください。
- 数字から言えること(前月比、累計での動き、関連科目との連動)だけを書く
- 原因を示す根拠がブックにない場合は、推測で書かず
  「担当部署に要確認」と入れる
- 1科目あたり80字以内、です・ます調で書く

根拠がない場合は「要確認」と書かせるルールが、この手順の中心です。指示がなければ、もっともらしい理由が並び、確認済みかどうかの区別が付かなくなるおそれがあります。「広告宣伝費の増加は、新製品のキャンペーン実施によるもの」といった文は、説得力があっても、ブックに根拠がなければ事実かどうか分からない文です。

「要確認」になった科目は、部門責任者に問い合わせます。返答を受けたらセルに追記し、最終的なコメントは人が書き直します。下書きが埋めるのは、数字の読み方を文章にする手間です。原因の特定までは肩代わりしません。

手順4: 結果を検証する

公式は、監査上重要な計算や、規制対象データを含むモデルを、確認なしに任せる使い方を推奨していません。予実対比のレポートは経営会議に出る資料ですから、次の突合を入れます。

  1. 実績シートの合計と、試算表の合計が一致しているか
  2. 対比表の予算合計と、予算表の合計が一致しているか
  3. 予算・実績のどちらか片方にしかない科目コードの一覧を人が確認したか
  4. しきい値を超えた科目に、判定漏れがないか
  5. 差異額の合計が、営業利益などの主要な数字の予実差と整合するか

検算用の式を先に用意しておくと、毎月の確認が短く済みます。

「予実対比」シートの最下行に、次の検算行を追加してください。
- 予算合計と、予算シートの合計の差
- 実績合計と、実績シートの合計の差
どちらも0になるべきで、0でなければ赤字で表示してください。

Claudeは既存データを上書きする前に警告を出します。確認画面は流さず、何が書き換わるかを目で確かめてから承認します。外部から受け取ったファイルが絡むときは、承認の前により丁寧に見ます。

翌月以降に使い回す — 固定の指示とSkills

毎月同じ前提を書くのは手間です。アドインのSettingsにあるInstructions欄に、恒常的な指示を置けます。次のような内容が向いています。

- 金額は千円単位、千円区切りで表示する
- 差異率は小数第1位までの百分率で表示する
- 費用科目は実績が予算を下回れば有利差異と判定する
- 根拠のないコメントは書かず、「担当部署に要確認」と入れる

このInstructionsはExcelにだけ適用され、PowerPointやWordの設定とは別です。

先月の会話は端末に残る範囲だけ

チャット履歴は、利用者ごと・組織ごと・Officeアプリごとに直近50件までが端末に残り、古い会話は自動で消えます。ブラウザープロファイルの保存容量が尽きたときも、古い会話から削除されます。Claudeアカウントに紐づいて端末間で引き継がれるわけではなく、PCの入れ替えや初期化をすると履歴は失われます。

月次の運用に使う指示や検算の依頼文は、会話に残る前提にせず、InstructionsやSkills、あるいはブック内のメモシートに置いておくと、担当者や端末が替わっても同じ手順を再現できます。

より手順そのものを再利用したい場合は、Skillsが選択肢になります。Claudeの設定で有効にしたSkillsは、全Claude for M365アドインで使え、サイドバーで / を入力すると選べます。予実対比の手順をSkillにまとめておけば、チームの誰が実行しても同じ流れで進められます。ただしSkillsは、Claudeアカウントで直接サインインしている場合の機能です。

くらべる

接続の仕方による違い

個人・一般の組織

Claudeアカウントでサインイン

Skills、コネクタ、アプリ間の作業、ファイル添付、音声入力が使えます。

管理者が展開

Bedrock・Vertex AI・Foundry・LLMゲートウェイ経由

セルや数式の読み書きとチャットは使えます。Skillsとコネクタは「近日対応」の扱いで、アプリ間の作業・ファイル添付・音声入力は使えません。

差異分析をレポートに仕上げる

Excelでの分析が済んだら、経営会議向けの文書はWordやPowerPointで作ります。Claudeアカウントでサインインしている場合、Claude for M365は開いているブック・文書・スライドを1つの会話でまたげます。数字の根拠はExcelに置いたまま、Wordで要点をまとめるという分担も可能です。使うには、各アドイン(Excel・PowerPoint・Word・Outlook)を一度ずつ有効にします。さらに各アドインのSettingsで「Let Claude work across files」をオンにします。Pro・Maxでは既定でオン、Team・Enterpriseでは既定でオフで、設定は端末ごとです。外部プラットフォーム経由の接続では、アプリをまたぐ作業は使えません。

Wordでの下書きも、Excelと同じ姿勢で扱います。数字は対比表から引き、原因の記述は「要確認」を解消したものだけを使います。

使えないこと・注意すること

  • データテーブル、マクロ、VBAの操作には対応していません。予実対比がVBAで組まれている会社は、その部分を関数で置き換えるか、人が実行します
  • 外部から受け取ったファイルには、Claudeを操作する隠れた指示が含まれる可能性があります。公式はこれをプロンプトインジェクションのリスクとして警告し、信頼できるスプレッドシートでだけ使うよう求めています。他社や取引先から受け取った予算ファイルは、信頼できる形に作り直してから貼り付けます
  • チャット履歴はブラウザのIndexedDBにローカル保存され、Anthropicのサーバーには保存されません。端末間で同期もされません
  • 入力と出力は、受領または生成から30日以内にバックエンドで削除されます。組織で独自のデータ保持設定をしている場合、Claude for Excelはそれを引き継ぎません。またEnterprise監査ログの対象にもなりません。Compliance APIが有効なEnterprise組織では、セッションがCompliance APIに含まれます(公開ベータ)

社外秘の予算情報を扱う経理部門は、情報システム部門と、これらの取り扱いを事前に確認しておくと安全です。

NetSuiteや他の記事との使い分け

NetSuite契約がある場合は、NetSuite Finance Analystで月次決算をClaudeに任せる方法のほうが、ERP側のレポートと連携して差異分析まで進められます。ここで扱ったのは、契約なしでExcel単体で進める汎用的な流れです。

週次の資金繰りを同じ要領でExcelに任せる例は資金繰り表を週次で更新し資金ショートの兆候を見つける手順にあります。ExcelでのClaudeの使い方全般はClaude Excel関数の書き方、ファイルのアップロードとの違いはClaude Excel読み込みと作成にあります。予算そのものをモデルとして組む場合はClaudeで財務モデルを作成する手順が近い内容です。決算資料の作成をどこまで任せるかは、Claudeに決算資料・税務書類の作成をどこまで任せてよいかで扱っています。

まとめ

予実対比では、突合から下書きまでをClaude for Excelに任せ、原因の特定と最終承認は人が持つ分担になります。数式で組めば翌月は貼り替えだけで済み、「根拠がなければ要確認」の一行が誤った理由付けを防ぎます。

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