Claudeで共同研究費の執行表を費目別に作る手順 — 請求書から残額と使途超過を点検
共同研究・受託・寄附の請求書を、契約書の費目区分に割り付けて費目別の執行表にする手順です。Claude for Excelに集計と残額、使途制限の超過判定を作らせ、人が確かめる点も数値例で示します。
共同研究費の執行管理で毎回つまずくのは、請求書の並びと契約書の費目区分が一致しないことです。請求書は取引先ごと、日付順に届きます。契約書の予算は「人件費」「物件費」「旅費」のような費目で区切られています。この2つを割り付けて、費目ごとの残額を出す表が執行表です。
この記事では、請求書の明細を費目に割り付ける明細シートと、費目別の執行表をExcelで組み、Claude for Excelに式と判定を作らせる流れを扱います。科研費のような補助金ではなく、企業との共同研究、受託研究、寄附金が対象です。契約条項そのものの点検は共同研究契約書とMTAの点検手順にまとめています。ここでは、契約が決めた枠に対して実際の支出がどう収まっているかを見ます。
執行表に置く列と、契約の枠の持ち方
執行表は2枚のシートで足ります。1枚は請求書の明細を1行ずつ置く「明細」、もう1枚は費目ごとに集計する「執行表」です。
明細シートの列は次のとおりです。
| 列 | 中身 | 出どころ |
|---|---|---|
| 支払日 | 中身支払った日、または請求書の日付 | 出どころ請求書、支払伝票 |
| 取引先 | 中身請求元 | 出どころ請求書 |
| 摘要 | 中身何の支払か | 出どころ請求書の品名 |
| 費目 | 中身契約書の費目区分のどれか | 出どころ人が割り付ける |
| 税抜額 | 中身契約の経費が税抜か税込かに合わせた額 | 出どころ請求書 |
| 請求書番号 | 中身後から原本に戻るための番号 | 出どころ請求書 |
費目列は、契約書の費目名と一字一句そろえます。「消耗品費」と「消耗品」が混ざると、集計の式が別の費目として扱い、残額が合わなくなります。
執行表側には、契約の枠を数字で持ちます。
- 費目ごとの予算額
- 契約期間の開始日と終了日
- 費目間の流用を認める上限(契約で定めがある場合)
- 間接経費の額、または率
間接経費は、直接経費に率を掛けて決める契約もあれば、定額の契約もあります。大学側の整理では、共同研究の料金の決め方に3通りがあります。直接経費に一定比率の間接経費を足す方法、関与時間への対価を加える方法、総額を先に合意して直接経費を引いた残りを間接経費相当とする方法です。500万円の直接コストに30%の間接コストを足すと、研究費は650万円になります。総額を1,000万円で合意し、直接経費を500万円とすれば、残りの500万円が予算・会計上の間接経費相当です。どの方式の契約かで、執行表に置く間接経費の列の意味が変わります。
率で決まる契約なら式に、定額なら数値にします。契約書の該当条項を確かめてから、予算の列に入れます。
数値例で執行表の形を決める
次の契約を例にします。共同研究の総額は1,000万円で、費目別の予算は次のとおりです。数字は説明用の仮のものです。
| 費目 | 予算額(円) | 執行額(円) | 残額(円) | 執行率 |
|---|---|---|---|---|
| 人件費 | 予算額(円)3,000,000 | 執行額(円)1,200,000 | 残額(円)1,800,000 | 執行率40% |
| 物件費 | 予算額(円)2,500,000 | 執行額(円)2,700,000 | 残額(円)-200,000 | 執行率108% |
| 旅費 | 予算額(円)1,000,000 | 執行額(円)480,000 | 残額(円)520,000 | 執行率48% |
| 外注費 | 予算額(円)1,500,000 | 執行額(円)1,500,000 | 残額(円)0 | 執行率100% |
| 直接経費の計 | 予算額(円)8,000,000 | 執行額(円)5,880,000 | 残額(円)2,120,000 | 執行率73.5% |
| 間接経費(定額と仮定) | 予算額(円)2,000,000 | 執行額(円)未執行 | 残額(円)2,000,000 | 執行率— |
直接経費の予算は800万円、間接経費は200万円で、合計が契約総額の1,000万円です。執行額は明細シートの費目別合計から出します。
この表で最初に目が行くのは物件費です。予算を20万円超えています。外注費は予算と同額で、これ以上の支出ができません。
明細シートから執行額を引く式
執行表の執行額は、明細の費目列で集計します。4行目が人件費だとすると、次の式です。
C4: =SUMIFS(明細!$E:$E,明細!$D:$D,$A4)
D4: =B4-C4
E4: =IF(B4=0,"",C4/B4)
F4: =IF(D4<0,"超過",IF(E4>=0.9,"残りわずか","余裕"))A列に費目名、B列に予算額を置きます。明細の費目列(D列)と税抜額(E列)を条件に、費目ごとの合計を引きます。判定の90%という閾値は、機関の運用に合わせて変えてよい数字です。
もう1つ、契約期間の外の支出を拾う列を明細に足します。
G4: =IF(OR(A4<執行表!$B$1,A4>執行表!$B$2),"期間外","")A4は支払日、執行表のB1が開始日、B2が終了日です。期間外と出た行は、契約期間の前に発生した支出か、終了後に締めた支出です。どちらが認められるかは契約と機関の規程によります。式は目印を付けるだけで、可否は判断しません。
Claude for Excelに作らせる
Claude for Excelは、Excelのアドインとして開いているブックの質問に答え、数式の追加や並べ替え、フィルタ、条件付き書式の設定を請け負います。回答にはセルへの引用が付き、クリックすると該当セルへ移動できます。Pro、Max、Team、Enterpriseの各プランで使えます。
最初の依頼は、2枚のシートと式の中身を言葉で指定します。
シート「明細」のA〜F列に請求書の明細があります。
D列の費目は、執行表のA列の費目名と同じ文字列です。
シート「執行表」の4〜7行目に費目を置き、
C列に費目別の執行額(SUMIFS)、D列に残額(予算−執行額)、
E列に執行率、F列に判定を入れてください。
判定は、残額がマイナスなら「超過」、執行率が90%以上なら「残りわずか」、
それ以外は「余裕」です。8行目に直接経費の合計行を作ってください。実行したら、挿入された式を1行ずつ目で追います。参照先の列がずれていないかは、引用セルをクリックしてその場で確かめられます。広い範囲を一度に変更させる前に、信頼できるコピーで試すことがドキュメントで勧められています。既存のデータを上書きする前に警告も出ます。執行表なら、まず4行目だけに式を入れさせ、明細の手計算と一致するのを確かめてから、5〜7行目に広げます。
請求書のPDFを明細に起こすとき
請求書がPDFで届く場合、Claude for Excelのサイドバーへ文書を入れると、開いているファイルと並べて読ませることができます。請求書の品名と金額を、明細シートの行に起こさせる使い方です。
添付の請求書PDFから、支払日、取引先、品名、税抜金額、請求書番号を読み取り、
シート「明細」の末尾に1行ずつ追加してください。
D列(費目)は空欄のままにしてください。
読み取れなかった項目は、推測で埋めずにセルを空欄にして、末尾に一覧で挙げてください。費目の列を空欄にさせるのは、割り付けを人が決めるためです。品名が「ノートPC」なら備品か消耗品か、少額の判断は機関の基準で決まります。Claudeに割り付けを任せると、説明のつく割り付けが出ても、契約と機関の基準に合っているかは別問題です。
読み取りの正しさは、請求書の合計額と照合します。請求書の金額を別の表と突き合わせる手順は、運賃請求書を運賃表と突合する手順も参考になります。明細に起こした金額の合計が、請求書に印字された合計と合わなければ、どこかの行が抜けています。
毎回の指示をInstructionsに置く
サイドバーのSettingsにあるInstructionsは、Excelでの全会話に効く指示です。執行表で守る約束事をここに書いておくと、依頼文が短くなります。
金額は円単位の整数で、税抜で持つ。
明細シートの費目列は、執行表のA列にある文字列だけを使う。
元のデータは書き換えず、結果は別シートかコピーに出す。
式を入れたら、どのセルにどの式を入れたかを一覧で返す。Instructionsは、PowerPointやWordの設定とは別に保存されます。
割り付けを点検させる
費目の割り付けは、執行表の信頼性を左右します。Claudeには、割り付けそのものでなく、割り付けの点検を頼むほうが結果を確かめやすくなります。
シート「明細」について、次の3点を点検して、該当行を一覧にしてください。
1. D列の費目が、執行表のA列にない文字列の行
2. 同じ取引先、同じ金額、同じ日付の行が複数ある行
3. 支払日が執行表のB1〜B2の範囲外の行
一覧には行番号を付けてください。表そのものは書き換えないでください。1は費目名の表記ゆれ、2は二重計上、3は期間外の支出を拾う条件です。支払の累計を契約の内訳と突き合わせる考え方は、出来高請求書の検算手順と同じ型です。どれも式やフィルタで確かめられる条件なので、一覧が正しいかは人がすぐ検証できます。
使途制限の超過を判定する
「使途制限の超過」には、2つの型があります。
| 型 | 見え方 | 確かめる先 |
|---|---|---|
| 費目の予算超過 | 見え方残額がマイナス | 確かめる先契約書の費目別予算 |
| 認められない費目への支出 | 見え方契約に費目が無い、または対象外の支出 | 確かめる先契約書の経費の範囲 |
1つ目は、先の式で拾えます。数値例の物件費は20万円の超過です。契約が費目間の流用を認めているかで扱いが分かれます。流用の上限が直接経費の10%と契約に書かれていれば、80万円までが上限です。超過額の合計と上限を比べる式は次のようになります。
超過額の合計: =-SUMIF(D4:D7,"<0")
流用の上限額: =B8*0.1
判定: =IF(超過額の合計<=流用の上限額,"枠内","枠超え")数値例では超過額の合計が20万円、上限が80万円なので枠内です。ただし、流用に事前の承認や届出が要る契約もあります。枠内かどうかと、手続が済んでいるかは別の確認です。流用の割合は、数値例の10%を仮に置いただけで、実際の契約で決まった値に差し替えます。
2つ目の、認められない費目への支出は、式では拾えません。契約書の経費の範囲を読む必要があるからです。ここにClaudeを使うなら、契約書の該当条項を貼り、明細の摘要が条項に当てはまるかを、引用付きで並べさせる使い方が合います。
次の条項は、この契約で経費として認められる範囲です。
(条項を貼る)
シート「明細」の摘要を、条項のどの文言に当てはまるかで分類してください。
当てはまる文言が見つからない行は「該当なし」とし、理由を一文で書いてください。
結論は出さず、人が確認する行の一覧にしてください。「該当なし」の行は、認められない支出と決まったわけではありません。条項の書き方が広いのか、契約の相手方に確認するのか、人が決める行になります。
受託研究と寄附金で変わる点
企業との共同研究、受託研究、寄附金では、費目の縛りの強さが契約ごとに違います。費目の区分があるか、期間の縛りがあるか、残額の扱い(返還か繰越か)がどうなっているかは、契約書、機関の規程、寄附の申込書で決まります。
執行表の形は同じでも、費目の欄が「寄附金の使途」の1行だけになることもあります。その場合でも、明細と執行額、残額の列は意味を持ちます。費目の欄を契約ごとに差し替えられるよう、執行表は1契約1シートで持つのが無難です。
Claude for Excelに任せない範囲
Claude for Excelのドキュメントは、次の用途を推奨していません。
- 人のレビューを経ない最終的な顧客向け成果物
- 検証を伴わない、監査上重要な計算
- 規制対象や機密性の高いデータを、適切な管理なしに扱うこと
研究費の執行表は、監査や報告で提出する資料に使われます。式の挿入、集計、点検の一覧づくりを任せ、確定した執行額と残額は、請求書の原本と照らして人が承認する分担が合います。
マクロとVBA、データテーブルは使えません。iPad、Android、Excel 2016と2019の永続ライセンス版でも動きません。
外部のファイルにも気をつけます。取引先から届いたExcelの請求明細は、外部由来のファイルです。ドキュメントは、外部のファイルに隠れた指示が含まれ、データの抜き出しや書き換えに誘導される恐れを警告しています。危険な操作は確認が求められますが、信頼できるスプレッドシートで使う前提です。取引先のファイルをそのまま開いて作業せず、金額だけを自機関の明細シートへ転記すると、リスクを下げられます。
扱うデータの取り決めも確かめます。共同研究の相手方の名前や金額は、契約上の秘密に当たることがあります。クラウドのAIへ渡してよいかは、契約の秘密保持条項と機関の規程で決まります。
現場でつまずきやすい点
まず起きやすいのは費目名の表記ゆれです。明細のD列にプルダウンを付けておくと、執行表と同じ文字列しか入らなくなります。Claude for Excelはデータ検証のドロップダウンも作れるので、割り付けの前に「D列に執行表のA4〜A7を候補とするプルダウンを付けてください」と頼めます。
税の扱いも要注意です。請求書は税込額で届くのに、契約の経費が税抜だと、執行額が毎回ずれます。税込額の列と税抜額の列を分け、執行表は契約に合わせた側だけを引くと、この混在を防げます。
最後に、執行表の締め日です。請求書の日付と支払日のどちらで期間を判定するかは、機関の経理規程で決まります。明細に日付の列を2つ持つと、どちらでも判定できます。
まとめ
費目別の執行表は、明細シートで請求書を1行ずつ費目に割り付け、執行表でSUMIFSの集計と残額、判定を出す2枚構成で足ります。Claude for Excelには式の挿入と点検の一覧を任せ、費目の割り付けと、契約の範囲に当てはまるかの判断は人が持ちます。数値例の物件費のように、費目の超過は式で見つかります。流用の手続が済んでいるかは、契約書を見て人が確かめる点です。