内示と確定の差異をClaude for Excelで集計し生産計画の見直し幅を決める
取引先ごとの内示数量と確定受注の乖離率をClaude for Excelで集計し、偏りとばらつきに分けて生産計画に持つ余裕を決める手順です。4か月分の例で、合計では見えない差を検算つきで示します。
内示と確定受注の差は、取引先ごとに内示数量と確定数量を並べ、差と乖離率を出せば見えてきます。Claude for Excelには、この集計式の組み立てと、取引先別の表づくりを任せられます。
注意したいのは、全取引先を合計した乖離率です。上振れと下振れが打ち消し合い、差がないように見えます。この記事では、3社・4か月の小さな例で、合計では0%に近い差が取引先ごとには大きく割れる様子を示します。そのうえで、計画に持つ余裕を決める流れを検算つきで追います。
内示と確定の差を測ると、生産計画の何が決まるか
内示は、取引先が確定前に示す見込みの数量です。生産計画はこの内示をもとに材料の手配や設備の割り当てを進めるので、確定との差がそのまま在庫の過不足や段取りの組み直しになります。
差を測る目的は、次の2点に絞れます。
- 内示どおりに作ってよい取引先と、補正が要る取引先を分ける
- 補正しきれないばらつきを、どれだけの余裕で受けるか決める
ここでいう「見直し幅」は、内示に掛ける補正の大きさと、その上下に持つ余裕の両方を指します。
Claude for Excelに向く作業は、次の3つです。
- 取引先ごとの内示計・確定計・乖離率を出す式を組む
- 乖離の符号が毎月そろっているかを一覧にする
- 結果を別シートの表にまとめ、条件付き書式で目立たせる
一方で、内示の位置づけは取引先や契約によって違います。上限に近い見込みなのか、下限として扱う数量なのかは、ブックのどこにも書かれていません。この判断は人が決め、Claudeには数字の整理を頼む分担にします。
使える環境と、ブックの構成
Claude for Excelは、Pro・Max・Team・Enterpriseの各プランで使えます。動作するのは、Excel on the web、Microsoft 365版のExcel on Windows(ビルド16.0.13127.20296以降)、Excel on Mac(バージョン16.46以降、ビルド21011600以降)です。Excel 2016と2019の永続・ボリュームライセンス版、iPad、Androidでは動きません。
ブックは2枚のシートで組みます。
| シート | 中身 |
|---|---|
| 明細 | 中身取引先、対象月、内示数量、確定数量、差、乖離率、絶対差 |
| 取引先別 | 中身取引先ごとの内示計、確定計、純乖離率、絶対乖離率、符号がそろった月数 |
内示は「確定の何か月前の値か」を固定する
内示は、月ごとに改定されて届くことが多いデータです。最新の内示だけを残すと、確定の直前に近づいた内示ばかりが並び、差は小さく出ます。計画の判断に使う時点が材料手配の3か月前なら、明細の内示は「確定の3か月前に受け取った値」に揃えます。
受け取った内示は、改定のたびに上書きせず、受領日つきで保存しておく運用が前提になります。この記事の例では、すべて3か月前の内示とします。
取引先から届いたファイルは、直接開かない
内示は、取引先が作った外部のファイルで届くことが多いデータです。Claude for Excelの案内では、信頼できるスプレッドシートだけで使うよう求められています。外部から受け取ったファイルには、隠れた指示文が仕込まれ、データの抜き出しや書き換えに誘導される場合があるためです。
そこで、取引先のファイルをアドインで開くのは避けます。数値だけを、自社で作った「明細」シートへ値として貼り付けます。さらに、広く編集させる前にブックのコピーを作り、作業用のコピーで始めます。
例のデータ — 3社・4か月
例に使う数字は次のとおりです。単位は個です。
| 取引先 | 対象月 | 内示(3か月前) | 確定 |
|---|---|---|---|
| X社 | 対象月1月 | 内示(3か月前)1,000 | 確定1,020 |
| X社 | 対象月2月 | 内示(3か月前)1,000 | 確定960 |
| X社 | 対象月3月 | 内示(3か月前)1,200 | 確定1,260 |
| X社 | 対象月4月 | 内示(3か月前)1,200 | 確定1,150 |
| Y社 | 対象月1月 | 内示(3か月前)500 | 確定380 |
| Y社 | 対象月2月 | 内示(3か月前)600 | 確定430 |
| Y社 | 対象月3月 | 内示(3か月前)600 | 確定480 |
| Y社 | 対象月4月 | 内示(3か月前)700 | 確定520 |
| Z社 | 対象月1月 | 内示(3か月前)300 | 確定420 |
| Z社 | 対象月2月 | 内示(3か月前)300 | 確定390 |
| Z社 | 対象月3月 | 内示(3か月前)400 | 確定610 |
| Z社 | 対象月4月 | 内示(3か月前)400 | 確定560 |
ステップ1: 明細に差と乖離率を足す
明細のA列が取引先、B列が対象月、C列が内示、D列が確定とします。E列以降をClaudeに作らせます。
「明細」シートのA列が取引先、C列が内示数量、D列が確定数量です。
E列に差(確定-内示)、F列に乖離率(差÷内示)、G列に差の絶対値を入れてください。
内示が0の行は、乖離率を空欄にして、行番号を別に一覧してください。
0で割るエラーを0や100%で埋めないでください。返ってくる式は、例えば次のような形になります(組み方の一例です)。
E2: =D2-C2
F2: =IF(C2=0,"",E2/C2)
G2: =ABS(E2)内示が0なのに確定がある行は、乖離率が定義できません。0で埋めると、内示になかった受注が集計から静かに消えます。空欄にして一覧に出させ、人が扱いを決めます。
ステップ2: 取引先別に偏りとばらつきを出す
次に、取引先別シートで、明細を取引先ごとに合計します。SUMIFSは、合計する範囲、条件を見る範囲、条件の順に引数を並べる関数です。条件のペアは最大127組まで足せます。
内示計: =SUMIFS(明細!$C:$C, 明細!$A:$A, $A2)
確定計: =SUMIFS(明細!$D:$D, 明細!$A:$A, $A2)
純乖離率: =(C2-B2)/B2
絶対乖離率: =SUMIFS(明細!$G:$G, 明細!$A:$A, $A2)/B2依頼文には、2つの指標の意味を書いておきます。
- 純乖離率は、確定計と内示計の差を内示計で割った値です。符号が残るので、内示が系統的に高いか低いか(偏り)を示します
- 絶対乖離率は、月ごとの差の絶対値を合計して内示計で割った値です。上振れと下振れが相殺されないので、ずれの大きさ全体(偏りとばらつきの合算)を示します
例の結果は次のとおりです。
| 取引先 | 内示計 | 確定計 | 純乖離率 | 絶対乖離率 | 乖離の符号 |
|---|---|---|---|---|---|
| X社 | 内示計4,400 | 確定計4,390 | 純乖離率-0.2% | 絶対乖離率3.9% | 乖離の符号上下混在 |
| Y社 | 内示計2,400 | 確定計1,810 | 純乖離率-24.6% | 絶対乖離率24.6% | 乖離の符号4か月連続で下振れ |
| Z社 | 内示計1,400 | 確定計1,980 | 純乖離率+41.4% | 絶対乖離率41.4% | 乖離の符号4か月連続で上振れ |
| 合計 | 内示計8,200 | 確定計8,180 | 純乖離率-0.2% | 絶対乖離率16.3% | 乖離の符号— |
合計の純乖離率は-0.2%です。全体を見ると、内示はほぼ当たっているように読めます。しかしY社は内示より約25%少なく、Z社は約41%多い状態が続いています。合計の0%近くは、この2社の差が打ち消し合った結果です。
月別の乖離率も確かめておきます。Y社は-24.0%、-28.3%、-20.0%、-25.7%で、毎月2割以上の下振れです。Z社は+40.0%、+30.0%、+52.5%、+40.0%で、毎月3割以上の上振れです。X社は+2.0%、-4.0%、+5.0%、-4.2%と、符号が入れ替わります。
ステップ3: 偏り型とばらつき型で、見直し幅の決め方を分ける
3社の結果は、2つの型に分かれます。
偏りとばらつきで、対処が分かれる
偏り型(Y社・Z社)
純乖離率と絶対乖離率がほぼ同じ値になります。内示そのものに補正を掛けて、計画の起点を動かす対象です。
ばらつき型(X社)
純乖離率は0に近く、絶対乖離率だけが残ります。起点は内示のまま、ずれの大きさ分の余裕を持って受けます。
偏り型には補正係数を使います。補正係数は「1+純乖離率」で、Y社は0.754、Z社は1.414になります。次月の内示がY社600、Z社400なら、確定の見込みは次のとおりです。
Y社: 600 × 0.754 ≒ 452
Z社: 400 × 1.414 ≒ 566ばらつき型のX社は、補正係数を1.00のままにします。余裕は絶対乖離率の3.9%を目安に、材料と段取りの側で持ちます。X社の内示1,200なら、幅は約47個です。
ここで、4か月分のデータで係数を決めている点には注意が必要です。標本が少ないので、補正係数をそのまま確定の予測値と読むのは危うい使い方です。例では、偏りが4か月続いているので補正の対象に挙げました。1〜2か月だけ同じ方向に振れた取引先は、補正の前に、その月の事情(特需、納期変更、在庫調整)を人が確かめます。
補正のあとの生産計画は、手元の負荷山積みに戻して能力と照らします。山積みの作り方は、生産計画の負荷山積みをClaude for Excelで作る手順にあります。Z社の+41%を内示のまま計画すると、能力の見立てが数割ずれるおそれがあるためです。
ステップ4: 検算する
Claudeが出した集計は、次の3点で確かめます。
- 1セルを手計算で突き合わせる。Y社の2月は、(430-600)÷600で-28.3%になるはずです
- 取引先別の内示計(4,400+2,400+1,400)が、明細全体の内示合計(8,200)と一致するか。確定計も同様に、4,390+1,810+1,980で8,180になります
- 取引先名の表記ゆれがないか。「株式会社Y」と「Y(株)」が別の行になると、条件に一致せず、取引先別の合計が全体より小さく出ます
3番目は、2番目の照合で見つかります。取引先別の合計と全体の合計が合わないときは、表記ゆれか、内示0の行の除外を疑います。
Claude for Excelは、ブックの質問にセル単位の根拠をつけて答えます。「Y社の確定計は、どのセルを足していますか」と聞けば、参照している範囲をたどれます。式の範囲が明細の末尾の行まで届いているかも、この質問で確かめられます。
注意点 — 使えない機能と、人が決める部分
Claude for Excelは、データテーブルとマクロ・VBA操作に対応していません。乖離率の感度分析をデータテーブルで組んでいる職場では、その部分は手作業のままです。取引先別の集計をピボットテーブルで作るのは、Claudeに直接頼める操作に含まれます。
制限事項では、検証のない最終成果物、監査上重要な計算の検証なしの利用、機密性や規制の厳しいデータを統制なしで扱うことが、推奨されない用途に挙がっています。取引先名と数量が入るブックは、社内のデータ取り扱いルールと照らしてから使います。
Claudeは、内示が未達の理由を知りません。納期の前倒し、取引先の在庫調整、価格改定は、ブックに書かれない事情です。補正係数を採用するかどうかは、営業や購買の情報と合わせて人が決めます。
会話の履歴はブラウザ内に保存され、Anthropicのサーバーには保存されません。入出力はバックエンドで、受領または生成から30日以内に削除されます。
毎回同じ条件で頼むためのInstructions
アドインのSettingsにあるInstructionsに前提を書くと、Excelでのすべての会話に反映されます。PowerPointやWordの設定とは別です。
- 乖離率は「(確定-内示)÷内示」で、符号を残す
- 内示が0の行は乖離率を空欄にし、別に一覧する
- 取引先別の合計は、明細全体の合計と一致するか毎回示す
- 明細シートは書き換えず、集計は別シートに作る
- 式を追加したら、参照しているセルの意味を一覧で示すまとめ
内示と確定の差は、合計では打ち消し合います。取引先別に、純乖離率で偏りを、絶対乖離率でずれの大きさを見て、補正が要る取引先と余裕で受ける取引先を分けると、計画の見直し幅が数字で決まります。
今回の例では、合計が-0.2%でも、Y社は-24.6%、Z社は+41.4%でした。Claudeには式と表を作らせ、1セルの手計算と合計の突き合わせを通してから、現場の事情と合わせて補正を採用します。
出荷実績から手法ごとの予測精度を比べる流れは、Claudeで需要予測を作りMAPEで手法を比べる手順にまとめています。補正後の需要から在庫側の前提を決める作業は、安全在庫と発注点をClaudeにExcelで計算させ検算する手順に続きます。