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Claudeで医薬品の供給不足に備える代替薬候補表の作り方 — 疑義照会につなぐ

Claudeで医薬品の供給不足に備える代替薬候補表の作り方 — 疑義照会につなぐ

厚生労働省の供給状況の一覧と薬局の採用薬を照合し、欠品する薬の代替候補と確認事項を表にするExcelの手順です。Claude for Excelに任せる範囲と、疑義照会の前に薬剤師が決める範囲を分けて示します。

薬の供給不足が起きたとき、薬局が最初にやるのは「うちで動いている薬のどれが影響を受けるか」を洗い出すことです。厚生労働省が公開する供給状況の一覧と自局の採用薬リストを照合すれば、欠品の影響を受ける薬と、置き換え先の候補を同じ表に並べられます。この照合表づくりは、Claude for Excelに任せやすい作業です。

ただし、候補を表に出すことと、実際に別の薬へ変えて調剤することは別の話です。処方された薬を変えるには、処方した医師の同意が要ります。この記事では、欠品リストと採用薬を突き合わせて候補と確認事項の表を作り、疑義照会の文面に渡すところまでを順に示します。

供給状況の一覧は、何を区別しているか

厚生労働省が公開する医療用の医薬品の供給状況ページは、医薬品の製造販売業者から届出を受けた供給不足の情報を、エクセルファイルの一覧表として公開しています。届出の対象は、出荷の制限(限定出荷)と出荷の停止(供給停止)です。ページの説明では、令和8年3月31日から「医薬品安定供給・流通確認システム」も稼働し、従来のファイルに加えてシステムからも確認できるとされています。

一覧には「出荷対応」の状況が5区分で付いています。

出荷対応の区分ページでの説明
通常出荷ページでの説明全ての受注に対応でき、十分な在庫量も確保できている状況
限定出荷(自社の事情)ページでの説明自社の事情により、全ての受注に対応できない状況
限定出荷(他社品の影響)ページでの説明他社品の影響等により、全ての受注に対応できない状況
限定出荷(その他)ページでの説明その他の理由により、全ての受注に対応できない状況
供給停止ページでの説明供給を停止している状況

もう1つ、「出荷量」の状況もあります。比較対象期間の出荷量または市場予測による予定出荷量に対して、増加(概ね110%以上)、通常(概ね90%以上110%未満)、減少(概ね90%未満)、出荷停止、薬価削除予定の5つです。

読み方のポイントは、「限定出荷」が「手に入らない」と同義ではないことです。全ての受注には応えられないが、一部は出荷されている状況を指します。自局が卸から割り当てを受けられるかは、一覧からは分かりません。そのため候補表の判定列には、一覧の区分をそのまま写す列と、自局の在庫・入荷状況を見て薬剤師が決める列を、別々に置きます。

最新のファイルで更新のあった品目には、右端の「今回掲載時の更新有無」の欄に「New」と記載されます。毎回ファイル全体を見直さなくても、この列で絞れば今回動いた品目だけを追えます。

Claude for Excelに任せる範囲と、人が決める範囲

Claude for Excelは、ExcelにClaudeを組み込むアドインです。Pro、Max、Team、Enterpriseの各プランで使え、ブックについて質問したり、数式の関係を保ったまま値を直したり、新しい表を作ったりできます。並べ替えやフィルター、条件付き書式、データの入力規則によるドロップダウンの作成も、直接頼めます。回答にはセル単位の出典が付き、クリックすると該当のセルへ移動できます。

この作業を分けると、次のようになります。

くらべる

候補表づくりの役割分担

表の作成と照合

Claude for Excelに任せる

欠品リストと採用薬の突き合わせ、成分名と規格が一致する行の抽出、確認事項の列の下書き、色分けと入力規則の設定です。

調剤と照会の判断

薬剤師が決める

候補の採否、自局の在庫と入荷見込みの評価、疑義照会をするかどうか、照会の文面の確定です。

Claudeに「欠品の代わりになる薬を教えて」と聞いて、記憶にある同効薬を挙げさせる使い方はしません。候補にするのは、自局の採用薬リストに載っていて、成分名や規格が一致するものだけです。リストに無い薬は「採用薬に該当なし」と返させます。これは、一覧と採用薬という手元の根拠から外れた提案を表に混ぜないためです。

前提 — 使える環境とブックの用意

使える環境は、Excel on the web、Microsoft 365のWindows版(ビルド16.0.13127.20296以降)、Mac版(バージョン16.46以降)です。Excel 2016・2019の永続ライセンス版、iPad、Androidでは動きません。

ブックは3枚のシートで組みます。

シート中身出どころ
供給状況中身品目名、出荷対応、出荷量、更新有無出どころ厚生労働省の一覧をそのまま取り込む
採用薬中身品名、規格、成分名、剤形、メーカー、在庫数、月間の使用量出どころ自局の薬剤マスタから書き出す
候補表中身欠品の影響を受ける採用薬と、置き換え候補、確認事項出どころ上の2枚から作る

供給状況のシートの列構成は、ページに記載がありません。取り込んだファイルを開き、品目を特定できる列(品名、規格、医薬品コードなど)と、出荷対応・出荷量の列がどこにあるかを先に確かめてください。採用薬のシートにも、同じ種類の列を用意しておくと照合しやすくなります。

外部から取得したファイルには、見えない指示文が仕込まれている可能性があります。厚生労働省の公開ファイルでも、ダウンロードしたコピーは別名で保存し、数式やセルの内容を一度見てから使うほうが安全です。Claudeが危険な操作を提案したときは確認を求められるので、その表示は読み飛ばさないでください。

手順1: 常設の指示で表の書式を固定する

サイドバーの設定にある「Instructions」の欄に書いた内容は、Excelでの会話すべてに適用されます。表の書式や判定のルールを毎回書かずに済みます。例を示します。

薬局の薬剤情報の整理を手伝う。
- 候補は「採用薬」シートにある行だけから選ぶ。
  シートに無い薬は提案せず「採用薬に該当なし」と書く。
- 同じ成分で規格が違うものは「規格違い」と書き、
  規格の数字は原文のまま写す。
- 判断が必要な欄は空欄にせず「薬剤師確認」と書く。
- 既存のセルを上書きする前に必ず確認する。

最後の2行が肝です。判断を要する欄を「薬剤師確認」で埋めさせておくと、空欄と「問題なし」を見分けられます。Claude for Excelは既存のデータを上書きする前に警告を出しますが、元の供給状況のシートは別名のコピーで作業するのが前提です。

手順2: 欠品の影響を受ける採用薬を拾う

供給状況のシートで、出荷対応が「通常出荷」以外の品目に印を付けます。そのうえで、採用薬のシートと照合して、自局が扱っている薬だけを候補表に移します。Claudeへの依頼は、範囲と判定の基準をはっきり書きます。

「供給状況」シートで、出荷対応が通常出荷ではない行を
「採用薬」シートの品名・規格と照合してください。
一致した行を「候補表」シートに、次の列で並べてください。
採用薬の品名 / 規格 / 出荷対応 / 出荷量 / 更新有無 / 在庫数
一致が曖昧な行は、品名の表記ゆれの可能性を備考に書き、
自分で決めずに「薬剤師確認」としてください。

品名の表記は、一覧と薬局のマスタで揺れます。全角と半角、「錠」と「T」、メーカー名の有無などです。ここで曖昧な行を勝手に一致扱いにされると、欠品の見落としにつながります。そのため、曖昧な行は止めて人に返させます。

「出荷量」の列も判定に使えます。出荷対応が限定出荷でも、出荷量が通常の範囲にあれば、手に入る可能性は高まります。逆に出荷停止や薬価削除予定なら、入荷を待つ前提は成り立ちません。この読みは自局の判断材料にとどまり、一覧が入荷を保証するわけではありません。

手順3: 置き換え候補を採用薬のなかから探す

次に、欠品の影響を受ける行ごとに、置き換え候補を採用薬のシートから探します。候補の種類は、変更の大きさで分けておくと、あとの確認事項が整理しやすくなります。

分類

候補の種類と確認の重さ

  • 同じ成分・同じ規格の別メーカー

    成分と規格が一致する採用薬です。変更の幅が最も小さく、確認事項は主に先発・後発の別と、添加物や剤形の細かな違いです。

  • 同じ成分・規格違い

    成分は同じで規格が違う採用薬です。1回量や錠数の計算が変わるため、数量と用法が処方と合うかを必ず確かめます。

  • 同じ成分・剤形違い

    成分は同じで剤形が違う採用薬です。飲みやすさや服用方法が変わるため、患者に合うかの確認が別に要ります。

  • 採用薬に該当なし

    自局の採用薬に候補が無い行です。ここは表の上では空欄にせず、薬剤師が他の入手経路や処方医への相談を考えます。

候補の探し方は、成分名の列で一致を見るのが基本です。依頼は次のように書きます。

「候補表」の各行について、「採用薬」シートで成分名が同じ薬を探し、
次の列を埋めてください。
候補の品名 / 候補の規格 / 種類(同規格別メーカー・規格違い・剤形違い)
一致する採用薬が無い行は「採用薬に該当なし」と書いてください。
採用薬に載っていない薬を候補に加えないでください。

返ってきた表は、候補の列に採用薬以外の品名が混ざっていないかを検算します。採用薬のシートで品名を検索すれば、全候補が実在するかを機械的に確かめられます。Claude for Excelは回答にセル単位の出典を付けるので、候補の根拠になった行へすぐ戻れます。

手順4: 確認事項の列を足し、疑義照会につなぐ

候補が出たら、疑義照会に必要な確認事項の列を足します。根拠は薬剤師法です。第23条第2項は、処方箋に記載された医薬品を変更して調剤するには、その処方箋を交付した医師、歯科医師または獣医師の同意を得た場合を除いて、変更してはならないと定めています。第24条は、処方箋に疑わしい点があるときは、交付した医師等に問い合わせて確かめた後でなければ調剤してはならないとしています。

欠品で別の薬に変えるなら、同意を得る手続きが要ります。候補表は、その同意を取りに行く前の下ごしらえです。

追加する列入れる中身誰が埋めるか
処方箋上の変更可否入れる中身処方箋に変更を制限する記載があるか誰が埋めるか薬剤師
自局の入荷見込み入れる中身卸への確認結果誰が埋めるか薬剤師
照会が必要か入れる中身変更に医師の同意が要るか誰が埋めるか薬剤師
照会で伝える内容入れる中身欠品の薬、候補、変更の内容誰が埋めるかClaudeが下書き、薬剤師が確定

「照会が必要か」の列には、入力規則でドロップダウンを設けると、記入のぶれが減ります。選択肢は「要照会」「照会不要(薬剤師判断)」「薬剤師確認」の3つ程度にします。ドロップダウンの作成は、Claude for Excelに直接頼める操作です。

「照会で伝える内容」の列は、候補表の行から文面の骨子を組ませます。文面の例を示します。公式の出力例ではなく、上の依頼を使ったときに期待できる形を示す架空の例です。

処方薬A 規格X は現在、供給状況の一覧で限定出荷となっており、
当薬局では確保できておりません。
同一成分の薬B 規格X(別メーカー)での調剤は可能でしょうか。
変更の場合は、数量・用法に変更はありません。

この下書きでも、処方医に尋ねる点は「変更してよいか」の1点に絞るのが読みやすさの面で有効です。実際に照会をかけたあとの記録、つまり何を尋ね、何と返され、調剤をどう変えたかを残す型は、疑義照会の記録の整え方にあります。候補表の「照会で伝える内容」の列は、その記録の「照会内容」欄へそのまま移せます。

検算の手順

候補表を使う前に、次の4点を確かめます。

  1. 出荷対応が通常出荷以外の行を数え、候補表の行数と合うか。取りこぼしがないかを見ます。
  2. 候補の品名がすべて「採用薬」シートに実在するか。検索で1件ずつ引けない候補は削ります。
  3. 規格違いの行で、規格の数字が原文どおりか。「10mg」と「100mg」の取り違えは、文章で整える過程で起きやすい誤りです。
  4. 「薬剤師確認」の行が残っていないか。残っているなら、その行は候補表としては未完成です。

数式を保ったまま値を直す作業はClaude for Excelの得意分野ですが、監査に関わる計算は検証せずに使わないよう、ページ自体が注意を促しています。候補表は調剤判断の補助にとどまり、最終の確認は人が行います。

月次で回すときの更新点

供給状況の一覧は更新されます。毎月、新しいファイルを別シートに取り込み、「今回掲載時の更新有無」が「New」の行だけを先に見ると、変化のあった品目を短時間で拾えます。

作業やること
新しい一覧の取り込みやること古い一覧は消さず、日付付きのシート名で残す
更新分の抽出やること「New」の行に絞り、採用薬との照合をやり直す
解消した品目やること通常出荷に戻った行を候補表から外す
採用薬の更新やること採用の入れ替えを反映してから照合する

長い会話は、コンテキストが尽きないよう自動で新しい会話に圧縮されます。判定の根拠は会話ではなくブックの中に残しておくと、担当が変わっても引き継げます。

よくあるつまずき

症状原因対処
照合で一致する行が少なすぎる原因品名の表記ゆれ対処品名を正規化した列を足してから照合する
候補に採用薬にない薬が出る原因指示が曖昧対処「採用薬シートにある行だけ」と明記して再依頼する
限定出荷なのに入荷できている原因一覧は全体の状況で、自局の割り当てではない対処在庫と卸の回答を別の列で記録する
マクロで自動化したい原因マクロとVBAの操作は未対応対処数式と、Claudeへの依頼の定型文で代える
数式の結果がずれる原因規格の列が文字列のまま対処数値の列に直してから計算する

マクロとVBAは、Claude for Excelが対応していない操作に挙げられています。繰り返し使う処理は、数式とInstructionsの定型文で組みます。

候補表のあとに残る判断

候補表は、判断の材料を一か所に集める道具です。どの候補を採るか、照会をいつかけるか、患者にどう説明するかは、表からは決まりません。供給が回復したら戻すのか、そのまま採用薬を入れ替えるのかも、薬局の方針です。

滞留した在庫の整理にも同じ作りの表が使えます。欠品に備えて抱えた在庫がのちに動かなくなる場合は、薬局の不動在庫を返品候補に洗い出す手順の判定列が応用できます。

Claude for Excelが出すのは、一覧と採用薬を突き合わせた候補と確認事項の表までです。そこから先の疑義照会は、条文が求める「同意を得る」手続きとして、薬剤師が処方医に確かめます。

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