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要配慮個人情報をClaudeに入力してよいか — 病歴・信条を含む文書の扱い

要配慮個人情報をClaudeに入力してよいか — 病歴・信条を含む文書の扱い

病歴や信条を含む文書をClaudeに渡す前に、要配慮個人情報の11類型、同意が要る場面、委託の例外、漏えい時の報告義務を個人情報保護法ガイドラインの記述に沿って確認します。

病歴や信条を含む文書をClaudeに渡すこと自体は、法律上ただちに禁じられていません。ただし要配慮個人情報は、通常の個人情報より同意の要否とオプトアウトの可否、漏えい時の報告の3点で扱いが重くなります。渡す前に確認したいのは、その文書が要配慮個人情報のどの類型に当たるか、そして入力が「取得」「提供」「委託」のどれとして評価されるかです。

この記事は、個人情報保護委員会の通則編ガイドラインの記述をClaudeへの入力の場面に当てはめて確認します。法解釈の最終判断は、自社の法務や委員会への確認が前提です。

要配慮個人情報にあたるのは11類型

法第2条第3項は、本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実などを挙げ、政令で定める記述等を含む個人情報を要配慮個人情報と定めています。ガイドラインはこれを(1)から(11)までの11の記述等に分けています。

類型ガイドラインが挙げる範囲実務で見落としやすい点
人種ガイドラインが挙げる範囲世系、民族的・種族的出身実務で見落としやすい点国籍や「外国人」という情報だけでは該当しない
信条ガイドラインが挙げる範囲思想と信仰の双方実務で見落としやすい点宗教書籍の購買履歴は推知情報にすぎず含まない
社会的身分ガイドラインが挙げる範囲自力で容易に脱せない境遇実務で見落としやすい点職業的地位や学歴は含まない
病歴ガイドラインが挙げる範囲病気に罹患した経歴実務で見落としやすい点「がんに罹患している」のように病名を特定した部分が該当
犯罪の経歴ガイドラインが挙げる範囲有罪判決が確定した前科実務で見落としやすい点逮捕や捜査段階の事実は別の類型になる
犯罪被害の事実ガイドラインが挙げる範囲身体・精神・金銭の別を問わない被害実務で見落としやすい点刑事手続に着手されたものが対象
心身の機能の障害ガイドラインが挙げる範囲身体・知的・精神(発達障害を含む)など実務で見落としやすい点障害福祉サービスの利用歴も特定情報として該当
健診等の結果ガイドラインが挙げる範囲健康診断、ストレスチェック、遺伝子検査など実務で見落としやすい点受診した事実だけでは該当しない
保健指導・診療・調剤ガイドラインが挙げる範囲診療記録、調剤録、お薬手帳の記載など実務で見落としやすい点病院や薬局にかかった事実そのものも該当
刑事事件の手続ガイドラインが挙げる範囲被疑者・被告人として手続が行われたこと実務で見落としやすい点他人の事件で取調べを受けた事実は該当しない
少年の保護事件ガイドラインが挙げる範囲少年法上の調査・審判・保護処分など実務で見落としやすい点手続が行われた事実が対象

履歴書、面談記録、診断書、健診結果、相談票といった文書は、この11類型のどれかを含みがちです。文書を渡す前に、類型に照らして一度読み直す習慣が有効です。

該当しない境界を押さえる

ガイドラインは、対象外になる境界も具体的に書いています。過剰に警戒して業務が止まるのを避けるには、この境界が役立ちます。

  • 情報を推知させるにすぎないものは含まれません。宗教に関する書籍の購買や貸出しの情報が例です。
  • 肌の色は人種を推知させる情報にすぎず、人種には含まれません。
  • 身長、体重、血圧、脈拍、体温などは、健診や診療の事業と関係ない方法で知り得た場合は該当しません。
  • 健康診断等を受診したという事実は、健診結果の類型には含まれません。一方で保健指導を受けた事実や、病院・薬局にかかった事実は、それぞれ該当すると書かれています。
  • 他人を被疑者とする捜査で取調べを受けた事実や、証人として尋問を受けた事実は、刑事手続の類型に当たりません。

「受診した事実」の扱いが類型で分かれる点は、実務で混乱しやすい部分です。健診を受けたかどうかを人事が把握する場面と、通院歴を含む診療記録を読む場面では、扱いが違います。

Claudeへの入力で問われるのは取得・提供・委託の3つ

要配慮個人情報の規律は複数の条文に分かれています。Claudeに文書を入力する場面に当てはめると、取得・提供・委託の3つが問われます。

取得: 文書を手元に集める段階で同意が要る

法第20条第2項は、法令に基づく場合などの例外を除き、あらかじめ本人の同意を得ないで要配慮個人情報を取得してはならないと定めています。ガイドラインは、書面や口頭で本人から適正に直接取得する場合、本人が情報を提供したことをもって取得への同意があったと解されると説明しています。

つまり、応募者が自ら履歴書に書いた病歴や、相談者が自ら話した信条は、取得の面では通常問題になりません。問題になりやすいのは、本人以外の経路から要配慮個人情報を集める場面です。取得の規律が働くのはここで、Claudeに渡す行為の評価はこの後の提供と委託の側で決まります。

提供: 原則は同意、オプトアウトは使えない

法第27条第1項は、例外を除き、あらかじめ本人の同意を得ないで個人データを第三者に提供してはならないと定めています。要配慮個人情報が含まれる個人データについては、本人の求めがあれば提供を停止する前提で届出のうえ同意なしに提供できるオプトアウトの仕組みが、条文のただし書で認められていません。

Claudeへの入力を第三者提供と捉えるなら、要配慮個人情報では同意が必須で、オプトアウトという逃げ道もありません。

委託: 範囲内なら第三者に該当しない

提供の規律を外す仕組みが、法第27条第5項第1号の委託です。利用目的の達成に必要な範囲内で個人データの取扱いを委託し、それに伴って提供する場合、提供先は第三者に該当しません。この場合、事前の同意もオプトアウトも要りません。ただし提供先は委託された業務の範囲内でしかデータを扱えず、提供元には法第25条による委託先の監督責任が残ります。

政令第9条第2号も、この委託などに伴って要配慮個人情報である個人データの提供を受ける場合を、取得の同意が不要な場合として挙げています。要配慮個人情報だから委託の枠が使えなくなる、という構造にはなっていません。

Claudeへの入力がこの委託として評価されるかは、契約の内容や、入力データがモデル学習など委託された業務以外の目的に使われるかによって変わり得ます。提供に当たるのか、委託として扱えるのかの類型判定は個人情報を含むプロンプト入力は第三者提供にあたるかで扱っています。契約面では、Commercial TermsがAnthropicによるServicesの顧客コンテンツでのモデル学習を禁じています。組織として使う場合の契約上の確認先は、ここになります。

漏えいが起きたときは要配慮だけ重く扱われる

冒頭の3点のうち最後の漏えい報告は、事故が起きたときに表れます。ガイドラインが定める漏えい等の報告対象事態のうち、規則第7条第1号は「要配慮個人情報が含まれる個人データの漏えい等が発生し、又は発生したおそれがある事態」を挙げています。高度な暗号化その他の措置を講じたものは除かれます。

第4号の「本人の数が千人を超える」という人数の条件は、この第1号には付いていません。ガイドラインの報告を要する事例には、診療情報を記録したUSBメモリーの紛失や、従業員の健康診断結果を含む個人データの漏えいが挙がっています。

Claudeの利用に引き寄せると、要配慮個人情報を含むファイルを誤って共有設定の甘いチャットやProjectに置いた場合が典型です。報告書の下書きを含む手順は個人情報の漏えい報告(速報・確報)をClaudeで下書きする際の注意点にまとめています。

文書別に、渡し方を設計する

要配慮個人情報を含む文書をすべて禁止する必要はありません。実務で有効なのは、Claudeに渡す前に要配慮の部分を落とすか置き換える設計です。

文書含みやすい類型渡し方の検討
健康診断結果の集計依頼含みやすい類型健診等の結果渡し方の検討氏名と個人を特定する項目を外し、件数や分布に加工してから渡す
診療記録・お薬手帳含みやすい類型保健指導・診療・調剤渡し方の検討患者の識別情報を伏せた症例形式にする
履歴書・職務経歴書含みやすい類型信条、前科、障害など渡し方の検討選考に不要な記載を除いた抜粋だけを渡す
相談票・面談記録含みやすい類型病歴、犯罪被害、社会的身分渡し方の検討仮名に置き換え、日付や地名も粗くする
障害者手帳・福祉サービスの書類含みやすい類型心身の機能の障害渡し方の検討手続の書式説明にとどめ、本人記載欄は渡さない

個人情報は、氏名などにより特定の個人を識別できるもの(他の情報と容易に照合でき、それで識別できるものを含む)と定義されています。仮名にしても、元の名簿と容易に照合できる状態なら個人情報のままです。伏せ字にしたら安全とは限らない点は押さえておきたいところです。

置き換えを指示するプロンプトの例

例えば、元の文書をClaudeに直接貼らず、手元で置き換えたうえで貼る形が確実です。置き換えを手伝わせる場合は、次のような指示になります。ただし、置き換えの前の原文自体もClaudeに入力することになるため、この手順は原文を渡してよい環境(契約と設定を確認済みのもの)でだけ使います。

以下の面談記録から、次の情報を[氏名A][地名B][日付C]のような
記号に置き換えてください。病名・診断名・障害の種類は、
分類コード(例: 疾患区分1)に置き換え、元の語は出力しないでください。
置き換え表は別に出力せず、私が手元で管理します。

Claude Codeで要配慮のファイルを読ませない設定

ローカルの書類をClaude Codeに扱わせる場合は、要配慮個人情報を置くディレクトリを、権限設定で読み取り禁止にできます。公式のドキュメントは、Readの拒否ルールでファイルやディレクトリを保護する方法としてRead(./secrets/**)のような書式を示しています。

{
  "permissions": {
    "deny": [
      "Read(./data/health/**)",
      "Read(./data/hr-cases/**)"
    ]
  }
}

これは.claude/settings.jsonに置く例示です。Readの拒否ルールは、組み込みのファイル読み取りツールのほか、Bashで認識されるcatやsedなどにも適用されると説明されています。ただし、あらゆる経路を封じる保証ではありません。ファイルシステムやネットワークの強制を確実にしたい場合、公式はサンドボックスの利用を案内しています。

個人向けプランでの入力と、匿名チャットの範囲

会社の業務で使う場合とは別に、個人向けのClaude.aiで自分自身や家族の健康の相談をする場面もあります。個人向けの利用では、Anthropicが管理者(controller)として情報を扱い、健康関連データの扱いはConsumer Health Data Privacy Policyに定められています。この方針は、健康状態や診断、治療、処方薬の利用などの情報を、利用者が直接提供した場合に収集する対象として挙げています。

Free、Pro、Maxの個人向けプランでは、学習への利用は商用契約のような一律の禁止ではありません。プライバシー設定でモデル改善への利用を許可した場合にチャットやコーディングセッションが使われ、設定をオフにすると新しいチャットは今後の学習に使われなくなります。ただし、安全性の分類器で検知された会話は、設定がオフでも安全性の研究や検知モデルの改善に使われ得ると説明されています。業務で個人プランを使う人は、この設定を確認してから要配慮個人情報を扱うかを考える必要があります。

履歴に残さない選択肢としては、匿名チャット(Incognito chats)があります。サポート記事によれば、匿名チャットはチャット履歴にもClaudeのメモリーにも保存されず、学習にも使われません。ただし履歴に出ないだけで、既定では30日間は保持されます。要配慮個人情報を扱う業務では、この「履歴に出ない」と「システム上に残らない」の違いを混同しないことが要点です。

なお個人情報保護法の義務を負うのは、個人情報データベース等を事業の用に供している事業者です。個人が私的に自分の健康相談をする場面と、事業者が従業員や顧客の書類を渡す場面では、法的な問いの重さが違います。組織で使う場合の全体的な確認項目は業務データ漏洩対策チェックリストが扱っています。

本人の同意を取るなら何を示すか

要配慮個人情報を、委託の枠に収まらない形でClaudeに渡す場合は、本人の同意が土台になります。ガイドラインは、本人の同意を「個人情報が、事業者によって示された取扱方法で取り扱われることを承諾する旨の意思表示」と説明しています。

同意を得る方法は、口頭、書面、メール、確認欄へのチェック、ホームページ上のボタンのクリックなどが例に挙がっています。示す内容は、事業の規模や取扱状況に応じて、本人が判断するために必要な範囲を明確にする必要があります。同意文言を設計するなら、少なくとも次の項目を含めると、判断材料として足りやすくなります。

  • 渡す情報の種類(病歴、健診結果など)
  • 渡す先のサービス名と、その事業者が所在する国
  • 何の目的で入力するか(要約、分類、集計など)
  • 入力した内容がモデルの学習に使われるかどうか
  • 同意しなかった場合に不利益がないこと

未成年者や成年被後見人など、同意の結果を判断する能力を有しない場合は、親権者や法定代理人から同意を得る必要があるとガイドラインは述べています。外国にある第三者への提供が絡む場合の同意の取り方は、Claudeへの個人データ入力は外国にある第三者への提供にあたるかが扱っています。

よくある質問

病名を書かずに「持病があります」とだけ入力するのは要配慮個人情報か

ガイドラインは、病歴の該当例として「特定の個人ががんに罹患している」のように、特定の病歴を示した部分を挙げています。病名が特定されない書き方が該当するかの線引きは、ガイドラインの記述だけでは判断が分かれます。判断に迷う場合は、氏名などの識別情報を外すことで、そもそも個人情報でなくなる設計を先に検討する方が確実です。

第三者提供の方法で受け取った書類はどう扱うのか

本人から直接取得した書類と違い、他社や他部署から受け取った書類では、取得への同意が自動的に得られたことにはなりません。ガイドラインは、第三者提供の方法で取得した場合には、提供元が取得と提供の同意を得ていることが前提になると述べています。

医療機関が診療情報をClaudeに入れる場合はどうなるか

診療記録は保健指導・診療・調剤の類型に当たります。医師が診療情報提供書を作る場面の法的境界は、医師がClaudeで紹介状・診療情報提供書を下書きする際の法的境界で個別に検討しています。

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