Claudeで新入社員研修のプログラムを設計する — Projectsで座学とOJTの配分を決める
研修の目的・対象人数・期間をProjectsに固定し、座学とOJTの配分、日別タイムテーブル、到達目標の測定方法を順に設計させる手順とプロンプト例をまとめます。
新入社員研修の設計は、毎年ほぼ同じ悩みに戻ってきます。座学を厚くすると現場配属後に手が動かず、OJTに寄せると配属先ごとに教える内容がばらつきます。Claudeは、研修の目的・対象人数・実施期間を材料に、座学とOJTの配分、各日のタイムテーブル、到達目標の測定方法までを順に設計する相手として使えます。要になるのは、条件を毎回貼り直さず、ClaudeのProjectsに固定しておくことです。
研修設計の条件をProjectsに置く理由
設計は1回の依頼で終わりません。配分を決め、日程に落とし、測定方法を足し、講師の都合で組み替えます。チャットを分けるたびに前提を貼り直すと、途中で条件が食い違います。
Projectsは、独自のチャット履歴と知識ベースを持つ作業スペースです。知識ベースにはドキュメントやテキストをアップロードでき、そのプロジェクト内のすべてのチャットで文脈として使われます。プロジェクト指示(project instructions)を設定すれば、応答の口調や、特定の役割の視点で答えさせる指定も固定できます。
一点だけ注意があります。プロジェクト内でも、チャット同士で文脈は共有されません。情報が知識ベースに入っていない限り、別チャットには引き継がれません。決まった配分や日程は、チャットの中に置いたままにせず、確定するたびに知識ベースへ書き戻します。
なお、プロジェクトの名前と説明はClaudeから参照されません。「新入社員研修」という名前を付けても、そこに条件を書いた気になってはいけません。条件は知識ベースか指示に書きます。
利用条件も先に押さえます。Projectsは無料アカウントを含む全ユーザーが使えますが、無料ユーザーが作れるプロジェクトは最大5つです。Team・Enterpriseプランでは、組織内での共有もできます(後の節で扱います)。
手順1: 研修の要件をプロジェクトに登録する
Claudeのプロジェクト画面(claude.ai/projects)で「+ New Project」から新規作成し、知識ベースに要件を入れます。次の項目が最低限の材料です。
| 項目 | 例 | 設計への効き方 |
|---|---|---|
| 研修の目的 | 例配属後3か月で一次対応を独力で行える | 設計への効き方配分と到達目標の根拠になる |
| 対象人数と職種 | 例30名、営業12・開発10・管理8 | 設計への効き方共通研修と職種別研修の切り分け |
| 実施期間 | 例4月1日〜4月26日、実働20日 | 設計への効き方日別タイムテーブルの総量 |
| 講師と会場 | 例社内講師5名、会議室2室 | 設計への効き方同時並行できるコマ数の上限 |
| 既存資料 | 例前年度の日程表、受講者アンケート | 設計への効き方継続する内容と直す内容の判断 |
前年度の日程表とアンケート結果は、テキストにして知識ベースへ入れます。設計の質は、目的の具体性と前年度の反省の有無でほぼ決まります。
続いて「Set project instructions」から指示を保存します。ここに研修担当者としての役割と出力の作法を書いておくと、以降のチャットすべてに効きます。例えば次のような形にします。
あなたは新入社員研修を設計する人材開発担当のアシスタントです。
- 知識ベースの「研修要件」を前提に、矛盾する提案をしない
- 提案には必ず、根拠となる要件の項目名を添える
- 時間は分単位、対象は「全員」「職種別」を明記する
- 不明な条件は推測で埋めず、質問として先に挙げる最後の1行が重要です。研修の条件は会社ごとに違うので、Claudeが空欄を一般論で埋めると、実態に合わない設計が出てきます。質問を先に出させておけば、要件の抜けをこの段階で見つけられます。
手順2: 座学とOJTの配分を決める
要件を入れたら、最初の依頼は配分です。日程に入る前に、全体の比率と理由を出させます。
研修要件に基づき、座学・演習・OJTの時間配分を3案出してください。
各案について、狙い、向いている職種、リスクを1〜2行で書いてください。
実働20日のうち、配属先OJTは最大8日までとします。3案を並べさせるのは、比較の材料を得るためです。1案だけ出させると、その案の妥当性を評価する軸がありません。配分は次のような形の表にまとめさせると、講師や配属先の責任者と話しやすくなります(数値は説明用の例です)。
| 案 | 座学 | 演習 | OJT | 向く状況 |
|---|---|---|---|---|
| A基礎重視 | 座学8日 | 演習6日 | OJT6日 | 向く状況配属先の教育体制が弱い |
| B実践寄り | 座学5日 | 演習6日 | OJT9日 | 向く状況現場の受け入れ余力が大きい |
| C職種分岐 | 座学5日 | 演習5日 | OJT職種別 | 向く状況職種ごとに必要技能が大きく違う |
ここで人間が判断する点は2つあります。まず、OJTの日数は配属先の受け入れ余力に依存します。Claudeは現場の繁忙を知らないため、制約として明示した上限(先の例では8日)を必ず渡します。次に、案Cのように職種で分岐させる場合、共通研修の総時間が職種間で不公平にならないかを確認します。
案を選んだら、選んだ案と理由を知識ベースに追記します。以降の設計はこの決定を前提にします。
手順3: 日別のタイムテーブルに落とし込む
配分が決まったら、日程へ展開します。1日単位ではなく、週単位で骨格を作ってから日別に細分化すると、修正が楽です。
決定した配分(案C)に基づき、第1週の日別タイムテーブルを作ってください。
- 1コマ90分、午前2コマ・午後2コマ
- 初日は入社式と事務手続きで午前を使用
- 講師は同時に2名まで、会議室は2室
- 各コマに「対象」「講師の要否」「事前課題の有無」を付ける
出力は表形式でお願いします。初日の午前が事務手続きで埋まる、講師が2名までしか同時に出られない、といった制約は、依頼文に書かなければ反映されません。制約を書き出す作業自体が、要件の棚卸しになります。
出てきた表は、そのまま鵜呑みにしません。次の3点を確認します。
- 同じ講師が同一時間帯に重複していないか
- 会議室の数を超える並行コマがないか
- 初週に詰め込み過ぎて、復習の時間が消えていないか
確認できたら、表をコピーしてスプレッドシートに移します。Claudeとのやり取りは設計の下書きで、配布する日程表は別に管理する運用が安全です。修正が入るたびに、Projectsの知識ベースにも最新版を反映しておきます。第2週以降は「第1週の表を踏まえて」と指定すれば、同じ書式で続けられます。
手順4: 到達目標と測定方法を決める
日程ができても、研修が効いたかを測る仕組みがなければ、来年の設計は今年の勘の繰り返しになります。測定方法は、研修の目的に紐付けて作ります。
研修の目的「配属後3か月で一次対応を独力で行える」を、
測定できる到達目標に分解してください。
- 各目標に、研修中に測れる指標と、配属後に測れる指標を分けて付ける
- 指標ごとに、誰が・いつ・どの方法で測るかを書く
- 測定の負担が大きい指標は、簡易な代替案も添える目的を抽象のまま残すと、指標も「理解度」のような曖昧な語になります。「一次対応」のように現場の動作へ分解させると、チェックリストや実技確認の形で測れます。測定の負担を条件に入れておくのは、講師や配属先の上司が実際に運用できる粒度に収めるためです。
分解結果は、研修中の測定(小テスト、演習の課題提出、講師の観察)と、配属後の測定(上司による確認、面談)に分けて整理させます。研修終了時点で測れる項目と、配属後にしか見えない項目は性質が違います。後者を研修中の評価に混ぜると、受講者にとって不透明な評価になります。
この段階でも、決まった目標と指標は知識ベースに追記します。翌年度の見直しでは、この記録が出発点になります。
人事チームでプロジェクトを共有する
研修設計は人事担当者1人で完結しないことが多く、講師や配属先の責任者からの意見を集約する場面が出てきます。Team・Enterpriseプランでは、プロジェクトを組織内のメンバーと共有できます。
権限は2段階です。
- Can view: プロジェクトの内容・知識・指示を見て、プロジェクト内でチャットできる。編集はできない
- Can edit: 指示と知識を変更でき、メンバー設定の更新もできる
講師にはCan view、設計の共同担当者にはCan editを割り当てる、という分け方が自然です。共有は、メンバー個別の指定のほか、メールアドレスの一括貼り付けや、組織全体への公開もできます。共有の操作は、プロジェクトを開いて「Share project」から行います。
管理者の設定には注意が要ります。OwnerがProjectsの共有を無効にしている組織では、共有できません。共有をオフにすると、公開プロジェクトの設定もあわせてオフになります。共有ができないときは、権限の問題ではなく組織設定を疑います。組織側の設定はClaude組織のプロジェクト公開を無効化する方法にあります。
プロジェクトの作成時に公開範囲を選ぶ画面も出ます。研修の評価基準や個別の受講者情報を含む場合は、非公開で作り、必要なメンバーだけを招待する構成にします。
研修資料が増えたときの扱い
前年度の資料、各講師のスライド、社内規程と、知識ベースに入れる量は増えがちです。有料プラン(Pro・Max・Team・Enterprise)では、知識ベースがコンテキストの上限に近づくと、ClaudeがRAGモードを自動で有効にして容量を広げます。拡張の幅は最大で10倍とされています。無料プランでは、この拡張は使えません。
RAGモードでは、全文をそのまま読むのではなく、関連する部分を検索して使います。研修設計で困るのは、日程表のように全体を見て整合を取る作業と、規程集のように必要な箇所だけ引く作業が混ざる点です。仕組みの違いはClaude ProjectsのRAG検索の仕組みと全文投入との違いで詳しく整理しています。実務上は、確定した日程表や配分の決定のような「毎回全体を見たい資料」は短く保ち、規程集のような大部の資料は別ファイルで入れる、という分け方が扱いやすくなります。
よくあるつまずき
一般論の研修計画が出てくる
要件が足りないと、Claudeは一般的な新入社員研修の型を返します。目的と制約が具体的かを見直し、指示の「不明な条件は質問として先に挙げる」が効いているかを確認します。
前回決めた内容と食い違う
別チャットで決めた配分や日程は、知識ベースに書き戻していなければ共有されません。確定のたびに知識ベースへ追記する運用にします。
日程表の整合が崩れる
講師の重複や会議室の超過は、制約を依頼文に書き切れていないときに起きます。制約は毎回の依頼に含めるか、指示に固定します。最終的な整合確認は人が行います。
講師と配属先の意見が反映されない
Can viewのメンバーはプロジェクトを編集できません。意見を反映させる担当者にはCan editを与えるか、意見を集約して担当者が知識ベースへ反映します。
完成後に資料が残り続ける
研修が終わったプロジェクトは、アーカイブで整理できます。アーカイブしても、共有権限やメンバーは外れません。アクセスを止めたいときは、共有設定でメンバーを外します。アーカイブ済みのプロジェクトは削除できないため、削除するなら先にアーカイブを解除します。
研修設計の隣にある作業との使い分け
新入社員の初週ガイドの作成は、研修プログラム全体の設計とは別の作業です。個人ごとの初週の案内を作る手順は新人オンボーディングガイドをClaudeで自動生成する手順にまとまっています。研修設計は「全員に何をどの順で教えるか」、オンボーディングガイドは「この人が初週に何をするか」を扱うので、前者のプロジェクトを踏まえて後者を作る流れが自然です。
講座の章立てとレッスン尺の決め方は、ClaudeでUdemy講座のカリキュラムを設計するが近い作業です。研修の講義パートを教材化する場面では、そちらの考え方を参照できます。Projects自体の基本操作と容量はClaude Projects完全ガイドにあります。
まとめ
Claudeに新入社員研修を設計させるときの分かれ目は、条件の置き場所です。研修の目的・人数・期間・講師・前年度の反省をProjectsの知識ベースに固定し、配分、日程、測定の順に決定を積み上げます。決まったことは必ず知識ベースへ書き戻します。
Claudeが出すのは、比較の材料と下書きです。講師の重複や会議室の超過の確認、配属先の受け入れ余力の判断、評価の運用可否は、人が担います。共有が必要なチームでは、Team・Enterpriseプランの権限を分けて、意見を出す人と決める人を切り分けます。