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Claudeでモデルカードを作成する — 評価ログから根拠のある項目だけ埋める手順

Claudeでモデルカードを作成する — 評価ログから根拠のある項目だけ埋める手順

自作モデルのモデルカードを、評価ログと弱点メモをProjectsに置いて下書きさせる手順です。用途・範囲外の用途・指標・サブグループ別の結果を項目ごとに埋め、数値はログと照合します。

モデルカードは、モデルに添える説明書です。何ができて、何に使ってはいけず、どのデータでどう測ったかを書きます。書く内容の大半は、手元の実験ログと評価結果にすでにあります。足りないのは、それを項目ごとの文章に起こす時間です。

この転記と文案づくりは、Claudeに任せられます。ただし、Claudeは評価ログを見ていない項目まで、もっともらしい文で埋めてしまうことがあります。そこでこの記事では、ログと弱点メモをProjectsに置き、根拠のある文だけを書かせ、数値は最後にスクリプトで照合する流れを組みます。

先に決める:Claudeが書く部分と、人が確定する部分

最初に分担を決めておくと、出力を見るときに迷いません。

工程Claudeに任せる書き手が持つ
材料の整理Claudeに任せるログと弱点メモを項目ごとに仕分ける書き手が持つ材料に無い事実を足さない確認
用途の記述Claudeに任せる想定用途・範囲外の用途の文案書き手が持つ範囲外とする線引きの確定
評価結果Claudeに任せるログの数字を表と文に写す書き手が持つ数値の最終照合、解釈の確定
制約・リスクClaudeに任せる弱点メモの言い換えと並べ替え書き手が持つ影響の大きさの判断
空欄の扱いClaudeに任せる根拠が無い項目に印を付ける書き手が持つ追加の評価を回すかの判断

線引きは単純です。ログに書いてあることの転記と構成はClaudeの仕事で、ログに無いことの断定は誰の仕事にもしません。

モデルカードの項目と、埋める材料の対応

項目の並びは、自社の様式があればそれに従います。無ければ、Hugging Faceのテンプレートを骨格にできます。Hugging Faceのドキュメントは、モデルカードに書くべき内容として次の5点を挙げています。

  • モデル自体の説明
  • 想定する用途と、起こりうる制約(バイアスや倫理的配慮を含む)
  • 学習時のパラメータと実験情報
  • 学習に使ったデータセット
  • 評価結果

同社のテンプレートでは、これが次のような見出しに分かれます。見出しごとに、どの材料から埋めるかを決めておきます。

項目(テンプレートの見出し)埋める材料材料が無いとき
Direct Use / Downstream Use埋める材料設計メモ、想定ユーザーの記録材料が無いとき空欄のまま残す
Out-of-Scope Use埋める材料弱点メモ、失敗例のログ材料が無いとき空欄のまま残す
Bias, Risks, and Limitations埋める材料弱点メモ、サブグループ別の結果材料が無いとき空欄のまま残す
Training Data埋める材料データの説明書、収集手順のメモ材料が無いとき空欄のまま残す
Testing Data / Factors / Metrics埋める材料評価の設計メモ、評価ログ材料が無いとき空欄のまま残す
Results埋める材料評価ログの集計表材料が無いとき空欄のまま残す

テンプレートの注記によると、Factorsは評価を何で分けて見たか(サブグループやドメイン)を書く欄です。Metricsは使った指標を、できれば理由とあわせて書く欄です。この2つがログに無いと、サブグループ別の性能は書けません。

テンプレートの各欄には、未記入の既定値として [More Information Needed] が入っています。この既定値をそのまま使うと、空欄が空欄だと読み手にも分かります。次の指示文で、この運用をClaudeに守らせます。

Projectsに置く4つの資料

Projectsは、独自のチャット履歴と知識ベースを持つ作業場です。アップロードした文書は、そのプロジェクトの全チャットで文脈になります。毎回同じ材料を参照するモデルカードの作成に向いています。無料アカウントでも使えますが、作れるプロジェクトは最大5つまでです。

知識に入れる資料は4つです。

  1. 評価ログ(CSV。1行が1回の評価の結果)
  2. 評価の設計メモ(テストデータの出所、指標を選んだ理由、分け方)
  3. 弱点メモ(失敗した例、気づいた偏り、試して諦めたこと)
  4. モデルカードの様式(自社様式、または上のテンプレート)

評価ログは、列を固定します。サブグループ別の性能を書くには、サブグループの列が要ります。架空の例を挙げます。

run_id,subgroup,metric,value,n
r07,all,accuracy,0.912,2400
r07,formal,accuracy,0.934,1100
r07,casual,accuracy,0.893,1300
r07,short_text,accuracy,0.841,380

この例は架空の分類モデルの値です。実際のログでは、n(件数)の列を必ず残します。件数が少ない行の数値は、そのまま文にすると過大に読まれるためです。

置き方で気をつける4点

  • プロジェクトの名前と説明は、Claudeからは見えません。モデル名やバージョンは、設計メモの中に書きます
  • 同じプロジェクトの別チャット同士で、会話の中身は引き継がれません。確定した文は知識に戻します
  • プロジェクトの知識に入るファイルは、1ファイル30MBまでです。中身はテキスト抽出が基本なので、図を画像で埋め込んだ文書の図は読まれません
  • XLSXを使うには、アカウントでコード実行とファイル作成を有効にする必要があります。ログはCSVで置くほうが素直です

有料プランでは、知識がコンテキストの上限に近づくと、Claudeが自動でRAGのモードに切り替えます。この仕組みはProjectsのRAG検索の解説にまとめています。モデルカードの材料は小さいことが多く、RAGが働く前の全文投入で収まる場合がほとんどです。

指示文:根拠の無い項目は埋めない

Projectsには「プロジェクトの指示」を設定できます。保存した指示は、そのプロジェクトのすべてのチャットで使われます。モデルカードでは、次の内容を入れます(下は例です)。

あなたはモデルカードの下書きを作る補助です。
- 文は、プロジェクトの資料に書かれた事実だけから作る
- 各文の末尾に、根拠にした資料名と行(例: eval_log.csv の run_id r07)を付ける
- 根拠が見つからない項目は、文を作らず「[根拠なし]」と書く
- 数値は資料の値をそのまま写す。丸め・平均・単位の換算は行わない
- 件数(n)が100未満の行は「件数が少ない」と注記する
- 弱点メモに無い弱点を推測で足さない
- 範囲外の用途は、弱点メモと失敗例から導けるものだけを書く

指示は短い箇条書きにします。長い散文だと、どの規則が守られたかを後から確認しづらくなります。末尾に根拠を付けさせる規則が要です。根拠の無い文が出たとき、その場で見つけられます。

手順:項目ごとに埋めて、根拠の欄を見る

一度に全項目を頼まず、項目ごとに依頼します。文の量が少ないほど、根拠の付け忘れに気づけます。

1. 評価結果(Results)を先に埋める

数字が確定している項目から始めます。依頼は「eval_log.csvのr07を、サブグループ別の表にしてください。nも載せてください」のように、ログの範囲を指定します。Claudeが返す表は、ログの行と1対1で突き合わせます。

例えば次のような形になります(上の架空ログに沿った形です)。

サブグループaccuracyn
allaccuracy0.912n2400
formalaccuracy0.934n1100
casualaccuracy0.893n1300
short_textaccuracy0.841n380

この表の後に、短い要約文を置きます。要約文は「short_textの値が全体より低い」のように、表から言えることに限ります。原因の説明は、弱点メモに書いてあるときだけ添えます。

2. 制約とリスクを弱点メモから起こす

弱点メモの箇条書きを、Bias, Risks, and Limitationsの欄の文にします。ここでClaudeに期待するのは言い換えと並べ替えで、新しい弱点の発見ではありません。

指示文に書いた通り、メモに無い弱点は足させません。Claudeが「一般にこの種のモデルでは〜が起こりえる」と書いてきたら、根拠の資料名が付いていないはずです。その文は消します。

3. 用途と範囲外の用途は、失敗例から線を引く

想定用途は設計メモから書けます。範囲外の用途は書きづらい欄です。失敗例のログと弱点メモから導けるものだけを書かせ、導けないものは [根拠なし] で残します。

例えば「短い文では精度が下がる」という弱点メモがあれば、「短文のみを入力とする用途は想定外」という記述の根拠になります。メモが無いのに範囲外を並べると、読み手には評価済みの事実に見えてしまいます。

4. 空欄を一覧にして、追加の評価を決める

最後に「[根拠なし]の項目を一覧にしてください」と頼みます。空欄の一覧は、そのまま次の評価計画になります。サブグループ別の欄が空なら、サブグループを分けた評価をまだ回していないという意味です。

根拠付きの文は、どう見えるか

指示文の通りに動いたときの形を、架空の例で示します。次のような文が並ぶのが目安です(公式の挙動ではなく、指示文で狙う形の例です)。

全体のaccuracyは0.912(n=2400)。[eval_log.csv の r07 / all]
short_textは0.841で、全体より低い。件数は380。[eval_log.csv の r07 / short_text]
短い入力で誤りが増える傾向がある。[weakness_notes.md の3項目目]
学習データの言語分布: [根拠なし]

末尾の角括弧が、読み手の確認先です。角括弧の指す行がログに無ければ、その文は書き直します。最後の行のように、資料に無い項目が [根拠なし] のまま残るのが正しい状態です。カードを公開する前に、角括弧は削除します。

数値の照合:文章でなくスクリプトで確かめる

Claudeに「数値は合っていますか」と聞き直しても、確認にはなりません。同じ材料を同じ読み方で見ているからです。数値の照合は、評価ログとモデルカードを機械的に突き合わせます。

次のスクリプトは、モデルカードに出てくる数字のうち、評価ログのどの値・件数とも一致しないものを列挙します。

import csv, re
 
card = open("model_card.md", encoding="utf-8").read()
log = set()
with open("eval_log.csv", encoding="utf-8") as f:
    for row in csv.DictReader(f):
        log.update([row["value"], row["n"]])
 
for num in sorted(set(re.findall(r"\d+(?:\.\d+)?", card))):
    if num not in log:
        print("要確認:", num)

バージョン番号や日付も拾うため、出力には無関係な数字が混ざります。それでも、評価結果の欄にある数字がログに無いなら、丸め・写し間違い・Claudeの計算のどれかが起きています。ログの値を桁まで揃えて直し、もう一度実行して出力が空になるまで繰り返します。

評価を回し直したときの更新

モデルを更新して評価をやり直すたびに、カードの数字は古くなります。更新は、新しいログをプロジェクトの知識に足し、古いログとファイル名で区別するところから始めます。

指示文には「対象のrun_idは依頼で指定したものだけ」と書いておきます。指定が無いと、古い評価と新しい評価の値が同じ表に混ざることがあります。更新後のカードは、先ほどのスクリプトを新しいログで回し直し、出力が空になることで確かめます。

古いカードの文を残すかどうかは書き手が決めます。比較に価値があるなら、版ごとの結果を並べる表を作る手があります。その表も、行ごとにログの根拠を付けます。

つまずきやすい点

  • ログにサブグループの列が無い。評価を回し直すか、サブグループ別の欄を空欄で出します。Claudeに推定で埋めさせると、実測でない数字がカードに載ります
  • 学習データの説明が薄い。Training Dataの欄は、データの説明書が無いと書けません。出所と収集手順のメモを先に作ります
  • Claudeが事実を作る。材料に無い内容を述べてしまう現象への対処は、Claudeが存在しない内容を述べる原因の整理が参考になります
  • 材料が多くてアップロードできない。プロジェクトの知識は1ファイル30MBまでです。上限の全体像はClaudeのファイル上限にあります。巨大なログは、集計表だけを置きます
  • 同じプロジェクトを複数のモデルで使い回す。評価ログのファイル名にモデル名とバージョンを入れ、指示文で「対象はファイル名のモデルのみ」と書きます

まとめ

モデルカードの下書きでClaudeに任せるのは、ログと弱点メモの転記と構成です。根拠を付けさせ、根拠が無い項目は [根拠なし] で残させると、空欄がそのまま次の評価計画になります。数値の照合は、文章ではなくスクリプトで行います。

参照した一次ソース

この記事の記述は、次の一次ソースと照合しています。更新時に参照先が変わった場合は一覧も更新します。

  1. support.claude.com/en/articles/9517075-what-are-projects
  2. support.claude.com/en/articles/9519177-how-can-i-create-and-manage-projects
  3. support.claude.com/en/articles/8241126-uploading-files-to-claude
  4. support.claude.com/en/articles/11473015-retrieval-augmented-generation-rag-fo…
  5. huggingface.co/docs/hub/model-cards
  6. github.com/huggingface/huggingface_hub/blob/main/src/huggingface_hub/…
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