Claudeで歯科技工指示書の記載と保存を点検する — 2年と3年の違い
歯科技工士法18条・19条と施行規則12条・15条から点検項目を作り、技工指示書のスキャンと納品台帳をClaudeに突き合わせさせる手順です。2年と3年の保存の違いと、10月1日から変わった記載事項も扱います。
歯科技工指示書の点検は、法令が求める7つの記載項目と2種類の保存期間を台帳の列に落とし、置き換えたスキャンと突き合わせる作業にするとClaudeに任せやすくなります。根拠は歯科技工士法18条と19条、そして施行規則12条と15条です。保存は「指示書そのもの2年」と「技工ごとの記録3年」で、数える主体も起点も違います。
この記事では、この4つの条文を点検表に変換し、指示書のスキャンと納品台帳をClaudeに渡して、欠けと保存期限を洗い出させるところまでを順に示します。出すのは見直しの候補までで、記載の可否を決めるのは歯科医師と歯科技工所の管理者です。
指示書に書くべき7項目は施行規則12条が決めている
歯科技工士法18条は、歯科医師または歯科技工士が業として歯科技工を行うには、厚生労働省令で定める事項を記載した歯科医師の指示書によると定めています。何を書くかは省令に委ねられ、施行規則12条が7項目を挙げます。
| 番号 | 記載事項 | 点検で見る点 |
|---|---|---|
| 1 | 記載事項患者の氏名 | 点検で見る点欄が埋まっているか |
| 2 | 記載事項設計 | 点検で見る点設計の記載があるか |
| 3 | 記載事項作成の方法 | 点検で見る点作成方法の記載があるか |
| 4 | 記載事項使用材料 | 点検で見る点材料名が書かれているか |
| 5 | 記載事項発行の年月日 | 点検で見る点日付があるか |
| 6 | 記載事項発行した歯科医師の氏名と、その勤務先の病院・診療所の所在地 | 点検で見る点氏名と所在地の両方があるか |
| 7 | 記載事項歯科技工所で行う場合は、その名称、所在地、歯科技工所番号 | 点検で見る点技工所で作る指示書に限り、3点が揃っているか |
6番は2つで1項目です。氏名だけ、所在地だけが書かれた指示書は、台帳の上では「一部のみ」として分けておくと点検の精度が上がります。
7番の条件も見落としやすい点です。指示書による歯科技工を行う場所が歯科技工所でなければ、7番は求められません。診療所内で行う技工の指示書に、技工所番号の欄が空いていても、それだけでは欠けと言えません。
病院・診療所の中で行う技工は指示書が要らない場合がある
18条にはただし書きがあります。病院または診療所内の場所で、かつ患者の治療を担当する歯科医師の直接の指示に基づいて行う場合は、指示書によらなくてもよいとされています。点検で「指示書が無い」と出た技工が、この例外に当たるかどうかは、技工をした場所と指示した人の記録で決まります。台帳に「実施場所」の列を持たせておくと、Claudeの指摘を例外かどうかで振り分けられます。
令和8年10月1日以後に発行する指示書は歯科技工所番号が必要になった
施行規則の改正で、12条7号に歯科技工所番号が加わりました。改正後の規定は、令和8年10月1日以後に発行される指示書に適用されます。施行日前に発行された指示書は従前の例によるため、番号の欄が空でも欠けにはなりません。
実務では、台帳の「発行日」の列で判定を分けます。
同じ「番号の欄が空」でも判定が分かれる
令和8年9月30日以前の発行
番号の欄が空でも、改正後の規定は適用されません。ほかの項目で点検します。
令和8年10月1日以後の発行
技工所で行う指示書で番号が空なら、7号の記載漏れの候補です。
あわせて、改正規則の附則は、歯科技工所の所在地の都道府県知事等が、すでに届出を済ませた開設者に歯科技工所番号を通知するとしています。自分の技工所の番号が分からない場合は、所在地の自治体が通知する番号を確かめます。
保存は「2年」と「3年」の2本立てになっている
指示書の保存は、1つの数字では片づきません。条文が2か所にあり、保存する対象と数える起点が違います。
| 比べる点 | 法19条 | 施行規則15条 |
|---|---|---|
| 保存するもの | 法19条18条の指示書 | 施行規則15条指示書による歯科技工ごとの記録 |
| 期間 | 法19条2年 | 施行規則15条3年 |
| 保存する人 | 法19条病院・診療所・歯科技工所の管理者 | 施行規則15条歯科技工所の開設者 |
| 数え始め | 法19条歯科技工が終了した日から起算 | 施行規則15条条文に起算点の記載なし |
19条の2年は、指示書が作られた日ではなく、その歯科技工が終了した日から数えます。納品日と技工の終了日が同じ日かどうかは、条文からは決まりません。台帳に「終了日」の列を別に持たせると、数え始めの根拠が残ります。
15条の3年は、記録の様式も記載事項も条文に示されていません。納品台帳がこの記録を兼ねるかどうかは、条文からは読み取れないため、技工所ごとに運用を決めて点検表に書いておきます。
保存を怠ったときの扱いも押さえておきます。19条に違反した者は、法32条により30万円以下の罰金に処されます。18条に違反して指示書によらずに業として歯科技工を行った者も同じ罰金の対象です。都道府県知事は27条により、技工所に立ち入って指示書その他の帳簿書類を検査できます。点検の目的は、検査の日に慌てないための保存の棚卸しです。
Claudeに渡す前に、スキャンと台帳を整える
Claudeへのアップロードには形式と上限があります。指示書は画像かPDFに、台帳はExcelかCSVにしておくと扱いやすくなります。
アップロードの条件
使える形式
文書はPDF、DOCX、CSV、TXT、HTML、ODT、RTF、EPUB、JSON、XLSXです。画像はJPEG、PNG、GIF、WebPです。
XLSXの前提
XLSXを上げるには、アカウントでコード実行とファイル作成を有効にする必要があります。
チャットの上限
1ファイル500MB、1チャット20ファイル、画像は8000×8000ピクセルまで、PDFは1000ページまでです。
PDFの読まれ方
100ページ以下のPDFは文字と図版の両方が読まれます。101〜1000ページは文字だけです。
指示書は手書きの欄が多いため、スキャンの解像度で読み取りの質が変わります。画像は1000×1000ピクセル以上が推奨で、小さい画像や低解像度の画像は避けるよう案内されています。
PDF以外の文書ファイルでは、Claudeが読むのは文字だけで、埋め込まれた画像は読まれません。指示書のスキャン画像をWordに貼って渡すと、中身は読まれない点に注意します。画像はそのままか、PDFにして渡します。
患者の氏名と歯科医師の情報を置き換える
指示書の1番は患者の氏名です。点検したいのは「欄が埋まっているか」で、誰の技工かは要りません。スキャンを渡す前に、患者の氏名を記号に置き換えるか黒塗りにします。歯科医師の氏名は6番の点検で使いますが、勤務先の所在地は市区町村より下を伏せても「記載あり」は判定できます。
氏名を置き換えても、院内では元の指示書と突き合わせられるため、個人情報として扱う前提は変わりません。入力の可否の整理は要配慮個人情報をClaudeに入力してよいかに、第三者提供との関係は個人情報を含むプロンプト入力は第三者提供にあたるかにあります。
納品台帳の列は、条文と1対1で作る
台帳の側は、点検に使う列をあらかじめ決めます。以下は例示で、技工所の運用に合わせて足し引きします。
| 台帳の列 | 対応する条文 | 使いどころ |
|---|---|---|
| 指示書番号 | 対応する条文技工所の管理用 | 使いどころスキャンとの突き合わせ |
| 発行日 | 対応する条文12条5号 | 使いどころ10月1日前後の判定 |
| 実施場所 | 対応する条文18条ただし書き、12条7号 | 使いどころ技工所か診療所内か |
| 記載事項の確認(1〜7) | 対応する条文12条 | 使いどころ項目ごとの「あり・なし」 |
| 終了日 | 対応する条文19条の起算点 | 使いどころ2年の数え始め |
| 指示書の保存期限 | 対応する条文19条 | 使いどころ終了日から2年 |
| 記録の保存期限 | 対応する条文施行規則15条 | 使いどころ運用で決めた起算点から3年 |
| 納品日 | 対応する条文台帳の管理用 | 使いどころ終了日と区別 |
保存期限の列は、Claudeに暗算させません。Excelの関数で出した日付を台帳に持たせ、Claudeにはその日付と今日の日付を比べさせます。
=EDATE(終了日セル,24) ← 指示書の保存期限(終了日の2年後の応当日)
=EDATE(終了日セル,36) ← 記録の保存期限(運用で終了日を起点にした場合の3年)期間満了の日の数え方は法令の期間計算によります。廃棄の日付は、この日付の翌日以降に置く運用にしておくと、満了前に処分する事故を避けられます。
指示文は「欄の有無」と「根拠の条文」だけを返させる
指示文は、Claudeに補完を許さない作りにします。書かれていない材料名や設計を「それらしく」埋めると、点検が逆に誤った安心を生むためです。以下は例示で、技工所の様式に合わせて書き換えて使います。
あなたは歯科技工所の指示書を点検する補助です。
渡す指示書は、患者氏名を記号に置き換えてあります。
点検項目(歯科技工士法施行規則12条):
1. 患者の氏名(記号で可)
2. 設計
3. 作成の方法
4. 使用材料
5. 発行の年月日
6. 発行した歯科医師の氏名と、勤務先の病院・診療所の所在地
7. 歯科技工所で行う場合は、その名称・所在地・歯科技工所番号
(令和8年10月1日以後に発行した指示書のみ番号を求める)
ルール:
- 指示書に書かれている内容だけを根拠にする。書かれていない内容を補わない。
- 各項目を「記載あり」「記載なし」「判断できない」のいずれかで答える。
- 「記載なし」「判断できない」は、指示書のどの位置を見たかを書く。
- 手書きの文字が読み取れない場合は、推測せず「判断できない」にする。
- 設計や材料が医学的に妥当かどうかは評価しない。台帳の側は別の指示で、次の形で聞きます。
添付の台帳(CSV)について、次の行を一覧にしてください。
- 終了日の列が空の行
- 指示書の保存期限が今日より前の行
- 発行日が令和8年10月1日以後で、実施場所が歯科技工所なのに
歯科技工所番号の確認欄が「なし」の行
今日の日付は(日付を入力)です。日付を自分で計算しないでください。返させる形を固定すると、複数件を並べて見比べられます。
| 項目 | 判定 | 根拠の位置 |
|---|---|---|
| 1 患者の氏名 | 記載あり | 左上の氏名欄に「患者B」 |
| 4 使用材料 | 判断できない | 手書きで一部が読み取れない |
| 6 発行した歯科医師 | 記載あり(所在地なし) | 氏名欄のみ、所在地の欄が空 |
| 7 技工所番号 | 記載なし | 右下の技工所欄に名称のみ |上の表は出力の形を示す例で、Claudeが実際にこの内容を返す保証はありません。判定は渡した指示書で変わります。「判断できない」を選択肢に入れておくと、読み取りに迷う箇所が人の見直しに回ります。
Projectsには点検表と指示文だけを置く
毎回の指示文をProjectsにまとめると手間が減ります。ファイルを置く場合は、プロジェクトの1ファイルが30MBまで、枚数に制限はないがコンテキストに収まる範囲、という条件があり、抽出されるのはテキストだけです(マルチモーダル対応のPDFを除く)。
置くのは、点検項目、指示文、台帳の列の定義までにします。患者に関わるスキャンの実物は置きません。実物を置くと、置き換えの手順が形だけになるためです。運用は2段階です。1段階目はClaudeによる欠けの候補出し、2段階目は管理者による原本確認です。
よくあるつまずき
落とし穴
終了日が空の行を「保存期間中」と読んでしまう
終了日の列が空の指示書は、2年の起点が決まっていないため、保存期限が計算できません。台帳の関数が空欄をエラーにすると、点検から外れて見落とします。期限の列には「終了日なし」と出させ、一覧の先頭に並べると、完了の記録漏れが先に見つかります。
- 診療所内で行った技工を「指示書なし」と判定する: 18条のただし書きに当たる場合は、指示書そのものが不要です。実施場所の列を先に見ます。
- 納品日をそのまま保存の起点にする: 19条は技工の終了日を起点にしています。納品日と終了日が違う案件では、保存期限がずれます。
- 2年の期限で記録も廃棄する: 施行規則15条の記録は3年です。指示書を2年で廃棄しても、記録を別に持つ運用なら、記録は残します。
- Claudeの「記載なし」を修正指示として受け取る: 指示書の追記や訂正は、発行した歯科医師が行います。Claudeの出力は見直しの候補で、記載を埋める文面は求めません。
責任は歯科医師と管理者に残る
指示書は歯科医師の指示を書いたもので、保存の義務は管理者に課されます。点検をAIに任せても、記載の責任は発行した歯科医師に、保存の責任は管理者に残ります。診療録の点検はClaudeで歯科の診療録の記載を点検するに、帳簿を台帳の列で点検する同じ型の例は賃金台帳・労働者名簿・出勤簿の点検と派遣先管理台帳の点検にあります。
まとめ
歯科技工指示書の点検は、4つの条文を台帳の列に分けると回しやすくなります。法18条と施行規則12条は7つの記載事項、法19条は指示書を技工の終了日から2年、施行規則15条は技工ごとの記録を3年です。令和8年10月1日以後に発行する指示書は、技工所で行う場合に歯科技工所番号が加わっています。
Claudeには、患者の氏名を置き換えたスキャンを渡し、「記載あり・記載なし・判断できない」と位置だけを返させます。期限の計算はExcelに任せ、判定は候補にとどめて、原本確認と追記は歯科医師と管理者が行います。