Claudeで歯科診療所の院内掲示とウェブサイト掲載を点検する
歯科診療所の院内掲示の写真とホームページの該当ページを、療担規則の掲示義務と令和8年6月施行の通知に照らして突き合わせる手順です。点検表の作り方とClaudeへの渡し方を示します。
歯科診療所の掲示点検は、待合室の掲示を撮った写真とホームページの該当ページを同じ点検表に当て、「院内にあってサイトにない」「サイトにあって院内にない」を洗い出す作業にすると、Claudeに任せやすくなります。根拠は療担規則(保険医療機関の療養担当を定めた省令)の2条の6です。保険医療機関は院内の見やすい場所に厚生労働大臣が定める事項を掲示し、原則としてそれをウェブサイトにも掲載します。
この記事では、掲示すべき事項を点検表に落とし、写真とページを渡して差分の候補を出させるところまでを順に示します。掲示が足りているかの判断は院長と事務長の仕事で、Claudeが出すのは「見直す候補」までです。
掲示とウェブサイト掲載は何が義務なのか
療担規則2条の6は2つの項だけでできています。1項は、院内の見やすい場所に、厚生労働大臣が定める事項を掲示することです。2項は、その事項を原則としてウェブサイトに掲載することです。
「原則として」の例外は、厚生労働省の通知に書かれています。自ら管理するホームページ等を持たない保険医療機関は、掲載の義務から外れます。自院のサイトがあるかないかで、点検の範囲が変わります。
どの事項を掲示するかは、告示(掲示事項等告示)とその実施上の留意事項を示した通知が決めます。令和8年3月27日の保医発0327第6号は、令和8年6月1日から適用されると明記しています。この通知は、従来の院内掲示事項と合わせて次の5つを「院内掲示事項及びウェブサイト掲載事項」として挙げます。
通知が挙げる掲示とウェブサイト掲載の5事項
1 入院基本料
看護要員の対患者割合や構成の概要です。入院基本料を届け出ていない診療所には関係しません。
2 病院の指定に関する事項
DPC関連の係数に掲げられた病院であることの掲示です。歯科診療所の点検では対象外になることがほとんどです。
3 地方厚生(支)局長への届出事項
届け出た施設基準のうち、患者が受けられるサービスなどを分かりやすく掲示します。
4 明細書の発行状況
療担規則5条の2第2項などに定める明細書について、発行状況を掲示します。
5 保険外負担
法令の根拠なく患者から支払を受けている「サービス」や「物」を、項目と実費で掲示します。
通知の5つは、入院を持たない歯科診療所では3、4、5が中心になります。2は通知の文面が病院を指しているため、診療所が自院で該当を確認する場面は限られます。
保険外併用療養にかかわる事項(自費の材料や選定療養など)は、療担規則5条の4第2項が別に院内掲示を定めています。通知は、これも見やすい場所に掲示し、原則としてウェブサイトにも載せることの徹底を求めています。
医療DXの加算を届け出ているときの追加点
医療DXの加算を届け出ている医院には、掲示の要件がもう1つあります。厚生労働省の「令和7年10月以降」の見直し資料は、施設基準の(7)に次の趣旨を挙げています。医療DX推進の体制に関する事項と、質の高い診療を実施するための十分な情報を取得し活用して診療を行うことを、見やすい場所とウェブサイト等に掲示していることです。
この資料の施設基準は医科・歯科・調剤をまとめた一覧で、(7)は区別なく書かれています。届出済みの加算の区分と現行の要件は、地方厚生(支)局の最新の案内で照合してください。点検表には、加算の届出があるかを最初の行に置くと、この追加点を見落としません。
通知の5事項と加算の要件は、根拠が別々です。点検表の根拠欄は、次のように分けて持つと、Claudeの指摘がどの根拠から来たのか分かります。
| 点検の区分 | 根拠 | 院内 | ウェブサイト |
|---|---|---|---|
| 届出事項の掲示 | 根拠療担規則2条の6と通知 | 院内見やすい場所 | ウェブサイト原則掲載 |
| 明細書の発行状況 | 根拠療担規則5条の2と通知 | 院内掲示 | ウェブサイト原則掲載 |
| 保険外負担 | 根拠通知 | 院内項目と実費を掲示 | ウェブサイト原則掲載 |
| 保険外併用療養 | 根拠療担規則5条の4第2項 | 院内掲示 | ウェブサイト通知が掲載の徹底を求める |
| 医療DXの体制 | 根拠加算の施設基準 | 院内見やすい場所 | ウェブサイトウェブサイト等 |
点検表を作り、Projectsに置く
Claudeに渡す前に、点検表を医院の側で作ります。法令の項目をそのまま並べ、医院の掲示物の名前と掲示場所の列を加えます。
次の形で十分です。列は5つに収まります。
区分,掲示すべき内容,院内の掲示物,サイトの該当ページ,備考
届出事項,届け出た施設基準のうち患者が受けられるサービス,,,
明細書,明細書の発行状況,,,
保険外負担,項目と実費/曖昧な名目で費用を取らない旨,,,
保険外併用療養,内容と費用,,,
医療DX,体制に関する事項,,,加算の届出がある場合のみ空欄は、院内で埋めておく部分です。Claudeに空欄を推測で埋めさせると、実在しない掲示物が点検表に載ります。空欄はそのままにして、写真から見つかったものだけを書き込ませます。
この点検表はCSVかテキストでProjectsに保存すると、毎回貼り直さずに済みます。Projectsのファイルは1ファイル30MBまでで、中身はテキストの抽出だけが使われます。点検表は表計算ソフトの書式を捨てても困らないので、相性は悪くありません。
院内掲示の写真を撮って渡す
待合室や受付の掲示は、スマートフォンで撮った写真をそのまま渡せます。Claudeの画像の対応形式はJPEG、PNG、GIF、WebPです。この一覧にHEICはありません。iPhoneの設定が高効率のままなら、JPEGに変換してから渡します。
撮り方で、点検の精度が決まります。
写真の撮り方と渡し方
- 1
掲示物を1枚ずつ撮る
壁一面を1枚で撮ると、文字が小さく潰れます。1つの掲示物を画面いっぱいに撮ります。
- 2
解像度を確保する
Claudeは1000×1000ピクセル以上の画像を推奨しています。小さい画像や低解像度の画像は避けます。
- 3
掲示場所をファイル名に書く
「受付左壁_施設基準.jpg」のように、場所と内容を入れます。点検表の備考欄に転記しやすくなります。
- 4
患者が写り込んでいないか確認する
待合室で撮るときは、診療時間外に撮ります。患者の顔や、予約表の氏名が入った写真は渡しません。
1回のチャットにアップロードできるファイルは20個までです。画像は8000×8000ピクセルまでです。掲示物が20を超える医院は、場所ごとにチャットを分けます。入口と受付、待合室、診療室前、といった区切りが分けやすい単位です。
ホームページの該当ページを渡す
サイトのほうは、ページの本文テキストを貼るか、ページをPDFで保存して渡します。HTMLファイルも対応形式に入っています。PDFは100ページ以下なら、テキストに加えて図表などの視覚要素も読まれます。101ページから1000ページまでのPDFはテキストだけの処理になります。
PDFで渡すときは、ページ番号の数え方に注意します。ページを指して質問するときは、文書に印刷された番号ではなく、PDFビューアーが示すページ番号を使うよう、サポート記事が案内しています。サイトのPDFは1ページ目から数え直して、指摘の位置を確かめます。
非PDFの文書から、Claudeは本文のテキストだけを取り出します。ページにバナー画像として掲示物を載せている医院では、その中の文字は読まれません。画像の中の文字を点検したいなら、画像を写真と同じようにアップロードします。
Claudeに頼む文面
点検表と写真、ページを渡したら、次のように頼みます。点検表は一次の根拠なので、「根拠は点検表の範囲だけ」と明示します。
添付の点検表の各行について、次の3つを調べてください。
1 院内の写真に、その行の内容を満たす掲示があるか
2 ホームページのページに、同じ内容があるか
3 両者の文言が食い違っていないか
条件
- 写真やページに見当たらないときは「確認できず」と書く。推測で補わない
- 文字が小さくて読めないときは「判読不能」と書く
- 結果は表にして、列を「点検表の行」「院内の写真」「サイト」「食い違い」にする
- 判定は「候補」として出す。法令に適合しているかの結論は書かない結果の表は、次の3つに分けて読みます。
- 「院内にあり、サイトにない」: 掲載漏れの候補です。院内の掲示を文字起こししてサイトに載せます。
- 「サイトにあり、院内にない」: 掲示漏れの候補です。サイトの文面を印刷して掲示します。
- 「食い違い」: どちらかが古い候補です。届出の内容と照らして、正しいほうに合わせます。
保険外負担の掲示でつまずきやすい点
通知が保険外負担について掲げる条件は、2つです。
1つ目は、法令の規定に基づかずに患者から費用を取っている個々のサービスや物を、項目と実費で示すことです。通知の掲示例は「その使用量、利用回数に応じた実費の負担」という形で、紙おむつ代や理髪代を並べています。歯科の自費項目や材料費を並べるときも、項目ごとに実費を書く形が参考になります。
2つ目は、衛生材料費や介護料のような、治療行為と密接に関連したサービスや物について、費用を取ることは認められていない点です。「施設管理費」や「雑費」のような曖昧な名目での徴収も認められていません。通知の掲示例は、この趣旨を掲示の末尾に書いています。
Claudeへの指示は、「写真に写った料金表に、治療行為と密接に関連する物の名目や、曖昧な名目が含まれていないか、点検表の語と照らして候補を挙げてください」と頼みます。名目が実際に問題になるかは、診療の中身によって変わります。候補が出たら、管理者が算定の根拠と合わせて判断します。
自費診療の料金表は、項目の増減が起きやすい掲示物です。新しい材料を扱い始めたら、院内の料金表とサイトの料金ページを同時に更新する運用にします。点検の頻度は、料金改定や施設基準の届出の変更のたびに回すのが現実的です。
結果の扱い
Claudeの出力は、点検表の空欄を埋める下書きです。次のような扱いにすると、事故を避けられます。
- 「確認できず」の行は、院内で現物を見に行きます。写真に写っていないだけの掲示物もあります。
- 「判読不能」の行は、撮り直します。推測で文字を補った出力は採用しません。
- 食い違いの指摘は、必ず届出書や料金表の原本で確かめます。
通知は令和8年6月1日から適用されています。それ以前に作った掲示物は、通知の5事項に沿っているかを一度見直す対象です。
診療録の記載の点検手順は、Claudeで歯科の診療録の記載を点検するにあります。個人を特定する欄を置き換えて渡す考え方は、同じ記事で詳しく扱っています。
店舗の掲示文を作るときの個人情報保護法の整理は防犯カメラの掲示文と運用規程をClaudeで作るが参考になります。医院の待合室にカメラを置いているなら、この掲示も点検表に1行足します。医療機関どうしの連携の記録の点検はClaudeで協力医療機関の連携会議の記録と協定書を点検する手順で扱っています。
まとめ
掲示の点検は、通知の5事項と加算の要件を点検表にして、写真とページを同じ表に当てる作業です。医院側で用意するのは、点検表、1枚ずつ撮った写真、サイトの該当ページの3つです。
Claudeは写真とページを読み比べて差分の候補を挙げますが、掲示の要否は届出の内容で決まります。最後に確かめるのは、院長と事務長です。