Claudeで派遣先管理台帳を点検する手順 — 記載事項と3年保存の抜け
派遣先管理台帳の記載事項は法42条と施行規則36条で決まっています。台帳CSVの空欄と保存期限をClaudeにコードで数えさせる手順と、派遣元への毎月の通知の確認までをまとめます。
派遣労働者を受け入れる側の会社(派遣先)には、派遣先管理台帳を作って3年間保存する義務があります。根拠は労働者派遣法42条です。台帳がExcelやCSVで運用されているなら、記載事項の抜けと保存期限の管理は、Claudeに読ませて洗い出せる作業です。
この記事は派遣先の総務・人事の立場で、台帳CSVを法42条と施行規則の条文に突き合わせる手順を扱います。派遣元として許可を更新する側の点検は、労働者派遣事業の許可更新に必要な書類をClaudeで点検する方法にあります。
派遣先管理台帳は何を記載し、どれだけ保存するのか
台帳は、派遣労働者ごとに法42条1項の事項を記載して作ります。保存期間は同条2項で3年間です。
法42条1項が挙げる記載事項は11号あります。1〜10号が具体的な項目で、11号は省令に委ねる受け皿です。
| 号 | 記載事項 | 台帳CSVの列名の例 |
|---|---|---|
| 1 | 記載事項協定の対象となる派遣労働者かどうかの別 | 台帳CSVの列名の例協定対象 |
| 2 | 記載事項無期雇用か有期雇用かの別 | 台帳CSVの列名の例雇用区分 |
| 3 | 記載事項40条の2第1項2号の省令で定める者であるか否かの別 | 台帳CSVの列名の例困難者区分 |
| 4 | 記載事項派遣元事業主の氏名または名称 | 台帳CSVの列名の例派遣元名称 |
| 5 | 記載事項派遣就業をした日 | 台帳CSVの列名の例派遣就業日 |
| 6 | 記載事項日ごとの始業・終業の時刻と休憩した時間 | 台帳CSVの列名の例始業・終業・休憩分 |
| 7 | 記載事項従事した業務の種類 | 台帳CSVの列名の例業務の種類 |
| 8 | 記載事項派遣労働者から申出を受けた苦情の処理に関する事項 | 台帳CSVの列名の例苦情処理 |
| 9 | 記載事項紹介予定派遣に係る派遣労働者の、紹介予定派遣に関する事項 | 台帳CSVの列名の例紹介予定派遣 |
| 10 | 記載事項省令で定める教育訓練を行った日時と内容 | 台帳CSVの列名の例教育訓練の日時・内容 |
| 11 | 記載事項その他省令で定める事項 | 台帳CSVの列名の例下で扱う12項目 |
派遣元の側にも派遣元管理台帳(法37条)があり、記載事項は似ています。ただし派遣元の台帳は「派遣の期間」「始業及び終業の時刻」を契約の定めとして持つのに対し、派遣先の台帳は「実際に就業した日」と「日ごとの始業・終業・休憩」を記録します。契約書の写しではなく、実績の台帳です。
保存の起算日は、施行規則37条で「労働者派遣の終了の日」と決まっています。就業日ごとの3年ではなく、その派遣が終わった日から3年です。
法42条に違反した場合の罰則は、法61条3号に30万円以下の罰金があります。法人の従業者が業務に関して違反したときは、同法62条で行為者のほかに法人も罰せられます。
施行規則で足される12項目と、作らなくてよい場合
法42条1項11号の「省令で定める事項」は、施行規則36条が12項目を挙げています。
- 派遣労働者の氏名
- 派遣労働者が従事する業務に伴う責任の程度
- 派遣元事業主の事業所の名称
- 派遣元事業主の事業所の所在地
- 派遣就業をした事業所の名称・所在地その他の場所と組織単位
- 派遣先責任者と派遣元責任者に関する事項
- 政令4条1項各号の業務で派遣するときの号番号
- 法40条の2第1項3号イの業務で派遣するときの、同号イに当たる旨
- 同項3号ロの業務で派遣するときの事項
- 同項4号の派遣のときの事項
- 同項5号の派遣のときの事項
- 施行規則27条の2による通知の内容
最後の項目は見落としやすい箇所です。27条の2は、派遣元が派遣先へ通知する事項のうち、健康保険・厚生年金保険・雇用保険の被保険者の資格取得届が提出されているかどうかを定めています。未提出のときは派遣元がその具体的な理由を添えて通知します。台帳には、この通知の内容を写す列が要ります。
8〜11番目の項目は、派遣の類型に応じて派遣契約の書面に書いた事項を台帳へ写すものです。たとえば3号ロ(1か月間に行われる日数が通常の労働者の所定労働日数より相当程度少なく、厚生労働大臣の定める日数以下の業務)なら、契約書面には、その業務が派遣先で1か月間に行われる日数と、派遣先の通常の労働者の1か月間の所定労働日数を記載する決まりです。台帳側にも、該当する派遣のときはこの内容を持たせます。該当しない派遣では空欄が正しいので、点検では「空欄が誤り」の列と「空欄が正常」の列を分けて扱います。
作成の単位と範囲も条文にあります。台帳は事業所等ごとに作ります(規則35条1項)。記載は、労働者派遣の役務の提供を受けるに際して行います(同条2項)。派遣労働者の数と、その事業所等で雇用する労働者の数を足して5人を超えないときは、作成と記載は不要です(同条3項)。
台帳CSVを条文に写す
点検の前に、台帳の列を条文の項目に対応づけます。この対応表が、Claudeに渡す点検の物差しになります。
Claudeには、次の手順で渡します。
台帳CSVを点検にかける流れ
- 1
氏名を仮IDに置き換える
派遣労働者の氏名は、台帳の中で最も個人を特定しやすい列です。点検に氏名は要らないので、派遣労働者IDに置き換えてからClaudeに渡します。対応表は社内に残します。
- 2
列名と条文の対応表を作らせる
台帳の1行目(列名)だけを貼り、上の2つの表(法42条1項の11号と施行規則36条の12項目)に対応する列があるかどうかを返させます。対応のない項目が「列ごと欠けている」状態です。
- 3
空欄と保存期限はコードで数える
行ごとの空欄や日付の計算は、文章で答えさせるより、コードを書いて実行させるほうが取りこぼしません。次の節のスクリプトがその例です。
- 4
結果を人が条文に当てて判断する
Claudeが返すのは行番号と空欄の事実までです。その空欄が違反にあたるかどうかは、派遣の類型を知っている担当者が判断します。
2つ目の手順に使う指示は、次のように書けます。
添付は派遣先管理台帳CSVの列名だけです。次の条文の項目ごとに、
対応する列名を表で答えてください。
- 労働者派遣法42条1項1号〜10号
- 労働者派遣法施行規則36条1号〜12号
対応する列が見つからない項目は「列なし」と書き、推測で近い列を
当てはめないでください。1つの列が複数の項目を兼ねている場合は、
その旨を備考に書いてください。「推測で当てはめない」と書くのは、Claudeが「就業場所」を「派遣元の事業所の所在地」の代わりに使ってしまうような取り違えを避けるためです。この2つは別の項目です(施行規則36条の4号と5号)。
空欄と保存期限はスクリプトで数える
日ごとの記録(就業日、始業、終業、休憩)に穴が開いていないか、派遣が終わった台帳をいつまで残すかは、行数が増えると目視では追えません。Claudeにコード実行をさせて、次のようなスクリプトを書かせます。
import csv, sys, datetime as dt
from collections import defaultdict
REQUIRED = ["派遣労働者ID","協定対象","雇用区分","派遣元名称","派遣就業日",
"始業","終業","休憩分","業務の種類","苦情処理","教育訓練日時内容",
"派遣先責任者","派遣元責任者","就業場所","労働者派遣終了日"]
DAILY = ["派遣就業日","始業","終業","休憩分","業務の種類"]
rows = list(csv.DictReader(open(sys.argv[1], encoding="utf-8-sig")))
today = dt.date.fromisoformat(sys.argv[2])
missing_cols = [c for c in REQUIRED if c not in rows[0]]
print("欠けている列:", missing_cols or "なし")
for i, r in enumerate(rows, start=2):
for c in DAILY:
if c in r and not r[c].strip():
print(f"行{i} {r['派遣労働者ID']}: {c}が空欄")
if r.get("雇用区分") not in ("無期", "有期"):
print(f"行{i} {r['派遣労働者ID']}: 雇用区分が無期/有期のどちらでもない({r.get('雇用区分')!r})")
if r.get("協定対象") not in ("該当", "非該当"):
print(f"行{i} {r['派遣労働者ID']}: 協定対象の別が未記入")
end = defaultdict(lambda: dt.date.min)
for r in rows:
d = r["労働者派遣終了日"].strip()
if d:
end[r["派遣労働者ID"]] = max(end[r["派遣労働者ID"]], dt.date.fromisoformat(d))
for wid, d in sorted(end.items()):
limit = d.replace(year=d.year + 3)
state = "保存期間内" if limit >= today else "保存期間満了(破棄の判断可)"
print(f"{wid}: 派遣終了{d} -> 保存期限{limit} {state}")
open_ids = {r["派遣労働者ID"] for r in rows} - set(end)
for wid in sorted(open_ids):
print(f"{wid}: 派遣終了日が空欄(派遣継続中か、記入漏れか)")スクリプトは、日ごとに必ず埋まる列の空欄、雇用区分と協定対象の別の未記入、派遣終了日の有無を検査します。苦情処理や教育訓練のように、該当がなければ空欄で正しい列は対象外です。
4行のサンプルCSV(派遣労働者3人分。終業時刻・雇用区分・業務の種類・派遣終了日を意図的に空けたもの)に、実行日2026-10-20として流した出力は次のとおりでした。
python3 check_daicho.py sample.csv 2026-10-20欠けている列: なし
行3 W001: 終業が空欄
行4 W002: 雇用区分が無期/有期のどちらでもない('')
行5 W003: 業務の種類が空欄
W001: 派遣終了2026-12-31 -> 保存期限2029-12-31 保存期間内
W002: 派遣終了2023-09-30 -> 保存期限2026-09-30 保存期間満了(破棄の判断可)
W003: 派遣終了日が空欄(派遣継続中か、記入漏れか)出力の読み方を、3点だけ補います。
- 行3の「終業が空欄」は、法42条1項6号の穴です。始業はあるのに終業がない日があると、派遣元へ毎月通知する就業時間(後述)が組み立てられません。
- W002は、派遣終了日から3年が過ぎているため、保存期間が満了した台帳として出ます。破棄してよいかは、労働者派遣の終了の日を契約ごとに確かめてからです。
- W003は、終了日が空欄です。派遣が続いているだけなのか、記入が漏れているのかは、スクリプトでは区別できません。ここは人が契約書で確かめます。
スクリプトは「1人の派遣労働者に派遣契約が1つ」の前提です。同じ人が複数の契約で受け入れられている場合は、契約番号の列を足し、IDと契約番号の組で終了日を集計します。保存期間の起算日は労働者派遣の終了の日なので、契約ごとの終了日で見るほうが条文に近くなります。
派遣元への毎月の通知も、同じCSVで確かめる
台帳は作って終わりではありません。法42条3項は、台帳の記載事項(4号を除く)を派遣元事業主に通知するよう派遣先に求めています。通知の方法は、施行規則38条が決めています。
通知する項目は、派遣労働者ごとの次の事項です。
- 派遣就業をした日
- 日ごとの始業・終業の時刻と休憩した時間
- 従事した業務の種類
- 派遣労働者の氏名
- 従事する業務に伴う責任の程度
- 派遣就業をした事業所の名称・所在地その他の場所と組織単位
頻度は、1か月ごとに1回以上、一定の期日を定めて、書面の交付等で行います。派遣元から請求があったときは、遅滞なく通知します。
この通知を台帳と突き合わせると、台帳側の穴が通知の穴として表に出ます。Claudeには、台帳の月次分と、実際に派遣元へ送った通知(勤務実績の連絡票など)を並べ、日付ごとの始業・終業・休憩が一致しているかを見比べさせます。食い違う行を拾うのは得意ですが、どちらが正しいかは勤怠の原本で決める作業です。
落とし穴
「通知済み」と「台帳記載済み」は別の記録
台帳の記載は役務の提供を受けるに際して行い(規則35条2項)、派遣元への通知は月1回以上の別の義務です。通知票を送っていても、台帳の側が埋まっているとは限りません。点検は、台帳を原本にして通知票をそこから照合する向きで組みます。逆向きだと、台帳の穴が見えません。
Claudeに任せる範囲と、担当者が確かめる範囲
台帳の記載事項は、法42条と施行規則36条に明記されていて、列の有無と空欄は機械的に数えられます。ここまでがClaudeの得意な範囲です。次の表のように、数える作業と判断する作業を分けます。
| 作業 | Claudeへの向き | 理由 |
|---|---|---|
| 列名と法42条・規則36条の項目の対応づけ | Claudeへの向き◎ | 理由条文と列名の突き合わせ |
| 日ごとの記録の空欄の洗い出し | Claudeへの向き◎(コード実行) | 理由行数が多くても数え漏れない |
| 保存期限の計算と、期限切れ候補の抽出 | Claudeへの向き◎(コード実行) | 理由起算日と3年の日付計算 |
| 通知票と台帳の食い違いの検出 | Claudeへの向き○ | 理由勤怠の原本で最終確認 |
| 派遣の類型(40条の2の例外など)に応じた記載の要否 | Claudeへの向き△ | 理由契約書面と派遣元の通知で判断 |
| 5人以下の事業所等で作成を省いてよいかの判断 | Claudeへの向き△ | 理由事業所等ごとの人数の数え方を社内で確定 |
| 台帳の破棄の最終判断 | Claudeへの向き× | 理由契約ごとの派遣終了日と社内規程で決める |
派遣の類型ごとの記載の要否は、契約書面と派遣元からの通知を見ないと決まりません。「該当しない類型だから空欄」と「記入漏れ」を、列の見た目で取り違えないことが点検のコツです。類型の当てはめに迷うときは、派遣元か労働局に確かめます。
派遣労働者の同一労働同一賃金の説明資料のように、派遣元と派遣先が情報をやり取りする文書の整理は、同一労働同一賃金の待遇差の説明をClaudeのProjectsで下書きするにあります。協定対象かどうかの別(法42条1項1号)は、そこで扱う待遇の話と地続きの項目です。
台帳の運用では、請負や業務委託の形を取りながら実態が派遣に当たっていないか、という入口の問題も別にあります。契約書と運用メモの突き合わせは、業務委託の偽装請負をClaudeで点検にまとめています。
個人情報は、入力前に伏せます。氏名を仮IDにする、生年月日や住所の列は渡さない、といった前処理の考え方は、年末調整の記入漏れをClaudeで点検の個人情報を伏せたチェック表の作り方が参考になります。台帳の点検に必要なのは、日付・時刻・区分・有無の列だけです。
まとめ
派遣先管理台帳の点検は、法42条1項の11号と施行規則36条の12項目に台帳の列を対応づけるところから始まります。空欄と保存期限はコードで数え、派遣元への月次通知は台帳を原本にして照合します。
起算日が派遣の終了の日である点と、類型によって空欄が正しい列がある点は、数える作業と判断する作業の境目です。Claudeには数える側を任せ、破棄と記載要否の判断は契約書面を持つ担当者が決めます。