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全国学力・学習状況調査の結果分析をClaudeで — 校内課題を3つに絞る手順

全国学力・学習状況調査の結果分析をClaudeで — 校内課題を3つに絞る手順

学校単位の集計表と全国の問題別調査結果をClaudeで突き合わせ、無解答率と領域別の差から校内研修の重点を3つに絞る手順。個人票は渡しません。

全国学力・学習状況調査の結果を校内で読み解くとき、時間がかかるのは「自校の設問別の表」と「全国の報告書」を行き来する作業です。この突き合わせはClaudeに任せやすく、渡すデータを学校単位の集計に限れば個人票を扱わずに済みます。

この記事では、自校の「問題別調査結果」と全国側のPDFを並べ、正答率・無解答率・領域別の差から校内研修の重点を3つに絞るまでの手順を書きます。例には令和8年度の帳票を使います。

渡すのは学校単位の集計だけ — 個人票の線引き

学校に提供される資料は、集計表と児童生徒ごとの表が混在しています。Claudeに渡す前に、どれが集計でどれが個人に紐づくかを分けておきます。

令和8年度の小学校向け提供資料のうち、主なものは次のとおりです。

帳票中身Claudeに渡すか
01調査結果概況中身平均正答数・標準偏差・層分布などClaudeに渡すか渡せる(集計)
02問題別調査結果中身設問ごとの正答率・無解答率Claudeに渡すか渡せる(集計)
03問題別(解答類型)調査結果中身設問ごとの解答類型別の割合Claudeに渡すか渡せる(集計)
04・05回答結果集計中身質問ごとの選択肢別の割合Claudeに渡すか渡せる(集計)
06解答・回答状況中身児童ごとの正誤・回答番号Claudeに渡すか渡さない
09・10 S-P表中身児童を行に並べた解答状況Claudeに渡すか渡さない
11個人票中身各児童に係る調査結果Claudeに渡すか渡さない

06は児童ごとに1行ずつ並ぶ表で、個人に結び付く教育データです。実施要領には、調査結果の活用に当たって児童生徒を本人とする個人情報を扱うときは個人情報保護法などに基づき適切に取り扱うこと、とあります。S-P表も児童を行に並べる形式なので、06と同じ側に置いておくのが安全です。

学校の外部サービス利用に関するルールは自治体ごとに違います。設置者の情報セキュリティポリシーで、生成AIに学校の集計値を入力してよいかを先に確かめてください。この確認が取れないうちは、以降の手順は手元の表計算だけで進められます。

三者面談の資料づくりで個票を渡さない型を使った例は、三者面談の準備をClaudeで進める記事にあります。

突き合わせる2つの資料

比べる相手は、全国の「問題別調査結果」です。調査の実施機関が公開する報告書・調査結果資料のページに、令和8年度分が掲載されています。小学校・中学校それぞれの問題別調査結果がPDFで置かれていて、小学校の版は2ページです。

2ページのPDFに、国語と算数それぞれの次の情報が入っています。

  • 対象問題数と、領域・観点・問題形式ごとの平均正答率
  • 設問ごとの問題の概要と出題の趣旨
  • 設問ごとの正答率と無解答率

自校の「02問題別調査結果」も、学習指導要領の領域等、評価の観点、問題形式、正答率、無解答率を設問ごとに並べた表です。列の構成がほぼ同じなので、問題番号をキーに結合できます。

全国側の数字は、小学校の場合こうなっています。

数字

小学校 令和8年度 全国(国公私立)の平均正答率

  • 国語 全体

    61.1%

    13問

  • 国語 書くこと

    45.8%

    2問

  • 算数 全体

    56.6%

    16問

  • 算数 変化と関係

    41.4%

    3問

問題別調査結果の集計欄より

全国の値が国公私立を合わせたものである点は、比較の前提になります。自校が公立なら、都道府県・指定都市別のデータ(9月30日公表)も取り寄せて、比較軸を2本にする手があります。

手順 — 差分の表から課題3つまで

手順

差分の表から校内の重点を決めるまで

  1. 1

    自校の02と全国PDFを用意する

    自校の02はExcelのまま、全国側はPDFのまま使います。教科ごとに別の会話にすると、設問が混ざりません。

  2. 2

    問題番号で突き合わせた差分表を作らせる

    自校の値から全国の値を引いた差を、正答率と無解答率の両方で出させます。

  3. 3

    計算と行数を人の目で検算する

    設問数が対象問題数と合っているか、数行を電卓で引き直して一致するかを見ます。

  4. 4

    領域別に集約して差の大きい順に並べる

    設問ごとの差を領域でまとめ、全国との差が大きい領域を上から見ます。

  5. 5

    質問調査と合わせて重点を3つに絞る

    絞り込みの物差しを渡したうえで、根拠の設問番号つきで案を出させます。

最初の依頼文は、次のように書くと表が崩れにくくなります。

添付は2つです。
A: 自校の「02 問題別調査結果」(小学校・国語、学校単位の集計)
B: 全国の「問題別調査結果」PDF(小学校・国語)
問題番号をキーに突き合わせ、次の列の表を作ってください。
問題番号 / 領域 / 観点 / 形式 / 自校正答率 / 全国正答率 / 差 /
自校無解答率 / 全国無解答率 / 差
- 差は「自校 − 全国」で、単位はポイント
- 全行を出し、行数は対象問題数(13)と一致させる
- 一致しないときは作表を止め、足りない設問を挙げる
- 読み取れない値は空欄にして、推測で埋めない

PDFのページ数は大きな制約になりません。Claude側の仕様では、PDFはページごとに画像とテキストの両方が渡されます。claude.aiの画面からのアップロードでは、100ページ以下のPDFで図表も解析され、101〜1000ページはテキストのみの処理です。一方、結果(概要)のPDFは84ページあります。概要を丸ごと渡す使い方でも、図表つきで読ませられる範囲に収まっています。

APIで処理する場合は、1リクエストのPDFが最大600ページ(コンテキストウィンドウが1M未満なら100ページ)、全体で32MBまでです。校内でスクリプト化する場合の目安になります。

差分表は表計算でも検算する

LLMに引き算を任せっぱなしにすると、桁の取り違えが起こり得ます。出てきた表をCSVにして、集約と並べ替えは手元で行うほうが確実です。

import pandas as pd
 
df = pd.read_csv("diff.csv")
df["正答差"] = (df["自校正答率"] - df["全国正答率"]).round(1)
df["無答差"] = (df["自校無解答率"] - df["全国無解答率"]).round(1)
by = df.groupby("領域")[["正答差", "無答差"]].mean().round(1)
print(by.sort_values("正答差"))

Claudeが出した「差」の列と、このコードで引き直した値が一致するかを見ます。ずれる行があれば、その行を読み取り直させます。

全国のPDFには、一つの設問が複数の区分に該当する場合があるという注記があります(算数の領域)。そのため groupby の前に、複数の領域にまたがる設問を領域ごとの行に分けておく必要があります。分けないと、領域の合計問題数と全体の問題数が合わなくなります。

無解答率は正答率とは別の列として読む

正答率が全国並みでも、無解答率が高い設問は別の問題を抱えています。解けなかったのではなく、書き始めなかった児童がいるということです。

全国の値を見ると、無解答率は設問の形式でかなり差があります。令和8年度の小学校国語から、いくつか取り出します。

設問内容全国の正答率全国の無解答率
1一内容構成メモの工夫を選ぶ(選択)全国の正答率74.0%全国の無解答率0.7%
2三イ内容漢字を使って書き直す(短答)全国の正答率45.4%全国の無解答率6.6%
2四内容集めた情報を引用して考えを書く(記述)全国の正答率33.6%全国の無解答率5.1%
3三(2)内容読んで考えたことを経験と結び付けてまとめる(記述)全国の正答率76.5%全国の無解答率15.4%

3三(2)は正答率が76.5%と高い一方、無解答率は15.4%あります。選択式の0.7%台と比べると、記述式は書き出せない児童の割合が桁違いに大きい設問です。

自校の表で見るときは、全国との差を2通りに分けます。

  • 正答率が低く、無解答率は全国並み: 取り組んだが誤答だった。誤答の型を見る(03の解答類型)
  • 正答率が低く、無解答率も高い: 手が止まった。記述の書き出しや足場かけが課題になりやすい

03の解答類型には、無解答だった児童の割合も設問ごとに載っています。02で目星をつけた設問だけを03で開き、誤答の類型をClaudeに要約させると、どの誤答が多いかを短時間で拾えます。ただし、誤答の「理由」は表からは分かりません。類型名と割合までを読ませ、理由の仮説は研修の場で教員が出すほうが安全です。

領域別の差を校内課題3つに絞る物差し

差分表ができても、差のある領域は4つ5つ並ぶのが普通です。3つに絞るために、判断の軸を先に決めて依頼文に入れます。

絞り込み

重点を選ぶ4つの軸

  • 差の大きさ

    領域の平均で、全国との差が大きい順に見る。設問1つの差ではなく、複数設問に共通する差を拾う。

  • 設問数

    その領域の設問が1問だけなら、偶然の揺れの可能性が高い。2問以上で同じ向きの差かを確かめる。

  • 無解答率の高さ

    無解答率が全国より高い設問が含まれる領域は、授業での書く機会や足場かけが論点になる。

  • 授業で動かせるか

    学年全体の生活条件より、単元や発問の設計で変えられる論点を優先する。

依頼文は、軸を書いて根拠の設問番号を必須にします。

上の差分表から、校内研修の重点候補を3つ挙げてください。
選ぶ軸は「領域の差の大きさ」「該当設問が2問以上」
「無解答率が全国より高い設問を含む」「授業で扱える論点」です。
各候補に、根拠になる設問番号と差(ポイント)を必ず付けてください。
差が小さい領域を無理に候補へ入れず、3つに満たなければそう書いてください。

出力に「差が大きい」とだけ書かれ、設問番号が付いていない候補は採用しない、という運用にしておくと、根拠のない文章を弾けます。

数値を入れた例を示します。自校の値は説明用の架空値で、全国の値は先ほどの問題別調査結果のものです。

設問自校の正答率全国の正答率差自校の無解答率全国の無解答率差
2三イ自校の正答率38.0%全国の正答率45.4%差-7.4自校の無解答率9.0%全国の無解答率6.6%差+2.4
2四自校の正答率24.0%全国の正答率33.6%差-9.6自校の無解答率12.0%全国の無解答率5.1%差+6.9
3三(2)自校の正答率70.0%全国の正答率76.5%差-6.5自校の無解答率20.0%全国の無解答率15.4%差+4.6

このような表が出れば、「書く」「まとめる」記述の設問群で、正答率の低さと無解答の多さが重なっていることが読み取れます。候補の1本目は「記述式の書き出しを支える手立て」のように、授業の動かし方で言える形になります。

質問調査で理由の仮説を立てる

教科の結果は「何が起きたか」までで、「なぜ」は質問調査に近い位置にあります。04・05の回答結果集計には、質問ごとに選択肢別の割合が自校・都道府県・全国で並んでいます。

研修資料の動画に、分かりやすい見方が出ています。児童質問「算数の授業の内容はよく分かりますか」で、否定的に答えた児童の割合が全国や県より大きい学校の例です。その見方では、授業の理解度を尋ねる質問が各教科の正答率とつながる傾向を示したうえで、否定的な回答が多い点を支援の出発点にしています。

学校単位の集計では、次のように使えます。

  1. 差分表で課題候補になった教科の「授業の理解度」「授業での説明活動」「学習の進め方」に関する質問を、04から抜き出す
  2. 自校と全国で、否定的な回答の割合を並べさせる
  3. 教科の課題候補と、質問調査で全国より大きく出た項目が同じ方向かを見る

児童ごとの回答を行単位で見る作業は、学校内の表計算で行う分野です。実施機関の研修資料は、06をExcelのフィルターで絞り、該当児童の別の質問への回答を並べて見取る手順を示しています。この作業はClaudeには渡さず、担任・学年で行います。

質問調査を読むときの注意が一つあります。令和8年度の概要には、小学校の児童質問にランダム方式を導入したと記載されています。質問によっては回答した児童の数が全体と異なる可能性があるため、割合だけでなく回答人数も確認してください。

少人数の学校と年度の違いで読み違えない

落とし穴

1人が数ポイントを動かす学校では、差を断定しない

児童数が20人の学校では、1人の正誤で正答率が5ポイント動きます。設問1つの差で「課題」と呼ぶのは危険です。領域内の複数設問で同じ向きの差が出ているかを必ず確かめ、Claudeには、差のポイント数と対象児童数を併記させます。

比べる単位にも注意が要ります。全国の値は国公私立を合わせたもので、小学校の私立は集計対象の割合が国公立より低い構成です(概要の集計対象校数の表)。公立校の比較なら、都道府県(公立)基準の値も併記して、2本の比較で同じ方向かを見ます。

もう一つは、年度をまたぐ読み方です。調査は年度ごとに問題が違います。実施機関の資料にも、関連する過去の問題を並べて、設問の条件が変わったことに触れる箇所があります。立方体の体積では、令和6年度に一辺の長さが示されていなかったのに対し、令和8年度は示された上で式を問う問題だった、という説明です。年度間で正答率の数字だけを並べると、問題の難しさの違いを学力の変化と読み違えます。

校内研修の1枚に落とす

重点を3つに絞ったら、最後に校内研修で使える形に整えます。Claudeには、次の枠を埋める形で出力させます。

重点1: (領域名)
根拠: 設問○○ 正答率 差−○ポイント / 無解答率 差+○ポイント
質問調査: (関連する項目と全国との差)
授業で試すこと: (発問・足場かけ・活動の案を2つ)
確かめ方: (次の単元テストや授業観察で見る指標)

「授業で試すこと」は、Claudeの案をそのまま採らず、報告書にある授業アイディア例と照らします。令和8年度の報告書は、小学校国語なら設問のまとまりごとの分析結果と、授業アイディア例のPDFが組になっています。Claudeの案が、設問の趣旨と合っているかを確かめる材料になります。

「確かめ方」の欄は、見落とされやすい項目です。全国学力・学習状況調査は4月の1回の調査で、年度内に結果の変化を見る場ではありません。校内の単元テストや授業観察など、手元の指標を決めておくと、研修が検証サイクルとしてつながります。

単元計画や評価規準に研修の結果をつなぐ方法は、学習指導要領から評価規準と単元計画を組み立てる記事で扱っています。塾の側で模試を設問別に見る手順は、塾の模試を成績分析して面談資料にする記事と比べると、学校では「全国との比較」と「無解答率」が主役になる点が違います。

まとめ

学校単位の集計(01〜05)だけをClaudeに渡し、06・09・10・11の児童ごとの表は手元で扱う。この線引きで、設問別の突き合わせは任せられます。

見るべき数字は、正答率の差だけではありません。記述式で無解答率が全国より高い設問が、研修テーマの種になることがあります。領域の差、設問数、質問調査の方向を合わせて3つに絞り、根拠の設問番号を必ず付けさせると、研修の場で説明に使える1枚になります。

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