三者面談の準備をClaudeで進める — 成績CSVの個票を渡さない匿名化の型
三者面談の準備資料をClaudeで作るとき、個票は渡さず、ダミーCSVと学級の集計だけを見せる手順。面談シートを手元で作るスクリプトと、話す順序の組み方を示します。
面談準備でClaudeに渡すのは、個票ではなく列の設計と学級の集計
三者面談の準備では、成績や出欠のCSVから「この子の面談シート」を一人分ずつ作る作業が重くなります。この作業をClaudeに手伝わせるなら、渡す物を3つに絞ります。架空の値を入れたダミーCSV、手元で動かすスクリプト、学級全体の集計です。児童生徒ごとの行(個票)は、Claudeの画面に出しません。
氏名を出席番号に置き換えた表なら渡してよい、とは考えない方が安全です。学級の中では、出席番号は氏名と同じ働きをするからです。理由は次の節で述べます。
面談準備を個票なしで進める4段階
- 1
ダミーCSVを作る
実データと同じ列名で、値は架空の数行だけにします。
- 2
手元で動くスクリプトを書かせる
Claudeにはダミーを見せて、面談シートを作る処理を書かせます。
- 3
実データは自分の端末で処理する
個票の読み込みと面談シートの出力は、手元で行います。
- 4
学級の集計だけを見せて話す順序を作る
平均や分布のような学級単位の数字で、面談の進め方を相談します。
出席番号に置き換えても、成績の表は個人情報のまま扱う
文部科学省の生成AI利活用ガイドライン(Ver.2.0、令和6年12月26日)は、校務での利活用の留意点に、次の2点を挙げています。
- 個別契約等に基づき適切なセキュリティ対策が講じられた環境で運用している場合を除き、重要性の高い情報である成績情報等をプロンプトに入力してはならない
- 個人情報を含むプロンプトを入力する場合は、提供者が機械学習に利用するか否か等を十分に確認する
個人情報の定義には、他の情報と容易に照合して特定の個人を識別できるものも含まれます。面談用の成績表なら、手元の出席簿と突き合わせるだけで誰の行か分かります。氏名の列を出席番号に変えても、この条件は変わりません。仮名や記号に置き換えただけの入力が残す余地は、通知表の所見文をClaudeで下書きするでも扱っています。加工が法律上どの区分に当たるかは、仮名加工情報と匿名加工情報をClaudeに渡す前の加工に基準の表があります。
ガイドラインの同じ節には、校務での利用例として「保護者面談の日程調整に活用する」も載っています。面談そのものの支援を禁じているわけではありません。問われるのは、何を入力するかです。
そこで本記事は「匿名化した個票を渡す」のではなく、「個票をそもそも渡さない」設計にします。
| Claudeに見せる | 手元に留める |
|---|---|
| 列名と型(教科名、学期、欠席日数など) | 手元に留める児童生徒ごとの得点・欠席の行 |
| 架空の値を入れたダミー行 | 手元に留める出席番号と氏名の対応 |
| 学級全体の平均や階級ごとの人数 | 手元に留める面談シートに書く個別の所見 |
| 面談の進め方・話す順序への相談 | 手元に留める家庭状況・配慮事項・志望校 |
なお、ガイドラインの例外にある「個別契約等で適切な対策を講じた環境」に学校が当たるかどうかは、教育委員会の方針で決まります。ガイドラインは、教育情報セキュリティ管理者(校長を充てることが想定されています)の許可と教育委員会の方針に従うよう求めています。自分の学校の扱いは、校長か教育委員会に先に聞くのが近道です。
手順1: 実データと同じ列名のダミーCSVを作る
最初に、実データのCSVから列名だけを写し、値を架空の数字に差し替えたファイルを作ります。行数は5〜6行で足ります。ここでは、3教科の2学期分と欠席・遅刻を持つ表を例にします。
id,kokugo_t1,kokugo_t2,sugaku_t1,sugaku_t2,eigo_t1,eigo_t2,absent_t2,late_t2
S01,72,78,65,70,80,82,0,1
S02,55,52,48,44,60,58,3,2
S03,90,88,85,91,78,80,0,0
S04,63,70,70,69,66,74,1,0
S05,48,50,52,61,45,47,5,4
S06,81,79,77,80,88,90,0,0id には、実データの出席番号ではなく S01 のような連番を使います。ダミーの値は実在の誰かに近づけないよう、実データを少しずらすのではなく、適当に作った数字にします。ずらした数字は、元の児童生徒の特徴が残りやすいからです。
Claudeにファイルを渡す方法は、チャット欄の「+」から「Add files or photos」を選ぶか、ファイルをドラッグ&ドロップします。サポート記事に載っている形式のうちCSVはそのまま読めます。XLSXを渡すときは、アカウントでコード実行とファイル作成(code execution and file creation)をオンにしておく必要があります。チャットへのアップロードは1ファイル500MBまで、1チャットで20ファイルまでです。
ダミーを渡すときの依頼文は、次のように「実データは渡さない」前提を明示します。
添付は架空の値を入れたダミーCSVです。実データは渡しません。
このCSVと同じ列構成のファイルから、児童生徒ごとの面談シートを
作るPythonスクリプトを書いてください。
- 標準ライブラリだけで動くこと
- 各シートは「伸びた点 / 気になる点 / 生活 / 本人の希望 / 家庭に聞くこと」
の順に並べる
- 本人の希望と家庭に聞くことは、空欄で出力する
- 他の児童生徒との比較に当たる表現は出力に入れないここで添付するファイルは、プロジェクトの「Files」ではなくチャットに付けます。プロジェクトに置いたファイルは、サポート記事のとおり複数の会話をまたいで参照され続けます。ダミーであっても、実データの置き場所と混ざる運用は避けた方が確実です。
手順2: 面談シートは手元で作り、動作をダミーで確かめる
Claudeが書くスクリプトは、教員の端末で動かします。ここで使った最小の例を示します(Python 3.12の標準ライブラリのみ。教科名の対応は subj で定義しています)。
import csv, statistics, sys
rows = list(csv.DictReader(open(sys.argv[1], encoding="utf-8")))
subj = {"kokugo": "国語", "sugaku": "数学", "eigo": "英語"}
mean2 = {k: statistics.mean(int(r[f"{k}_t2"]) for r in rows)
for k in subj}
print("# 学級の集計(この表だけをClaudeに見せる)")
for k, n in subj.items():
print(f"- {n}: 学期2の平均 {mean2[k]:.1f}")
print()
for r in rows:
d = {n: int(r[f"{k}_t2"]) - int(r[f"{k}_t1"])
for k, n in subj.items()}
up, down = max(d, key=d.get), min(d, key=d.get)
print(f"## {r['id']} の面談シート")
if d[up] > 0:
print(f"1. 伸びた点: {up}({d[up]:+d}点)")
else:
print("1. 伸びた点: 点数の上昇なし(取り組みは面談で聞く)")
if d[down] < 0:
print(f"2. 気になる点: {down}({d[down]:+d}点)")
else:
print("2. 気になる点: 前学期より下がった教科なし")
print(f"3. 生活: 欠席{r['absent_t2']}日・遅刻{r['late_t2']}回")
print("4. 本人の希望(面談で聞く): ______")
print("5. ご家庭に聞くこと: ______")
print()python3 make_sheet.py dummy.csvダミーCSVで動かすと、先頭に学級の集計、続いて一人分ずつのシートが出ます。
# 学級の集計(この表だけをClaudeに見せる)
- 国語: 学期2の平均 69.5
- 数学: 学期2の平均 69.2
- 英語: 学期2の平均 71.8
## S02 の面談シート
1. 伸びた点: 点数の上昇なし(取り組みは面談で聞く)
2. 気になる点: 数学(-4点)
3. 生活: 欠席3日・遅刻2回
4. 本人の希望(面談で聞く): ______
5. ご家庭に聞くこと: ______この出力で見てほしいのは、S02の「伸びた点」です。S02は3教科とも前学期より点が下がっています。最初に書いたスクリプトでは、ここに「英語(-2点)」と出ていました。「いちばん下がり幅が小さい教科」を伸びた点として表示していたためです。保護者に見せる資料に「伸びた点: 英語(-2点)」と載れば、誤解のもとになります。上の例では、上昇が0より大きいときだけ表示する条件(d[up] > 0)を足して直しています。
ダミーで動かしておけば、このような境界の挙動を、個票を見ずに確かめられます。確認する値の組み合わせを、次のようにダミーへ意図的に混ぜておくと効率的です。
- 全教科が下がっている行
- 全教科が上がっている行
- 欠席・遅刻が多い行
- 値が空欄の行(未受験や欠席での空欄が実データにあるなら)
動かすスクリプトが固まったら、実データのCSVは同じ列名のまま手元の端末に置き、同じコマンドで処理します。Claudeを経由しないので、個票は教員の端末から出ません。出力された面談シートは、印刷するか手元の文書として保管します。
手順3: 学級の集計だけを見せて、話す順序を作る
次に、面談の進め方をClaudeに相談します。ここで見せるのは、スクリプトの先頭に出た「学級の集計」だけです。
次は2学期末の学級全体の集計です(個別のデータはありません)。
国語69.5・数学69.2・英語71.8(学期2の平均)。
15分の三者面談で、保護者に最初に伝える順序を提案してください。
- 最初の3分で本人の頑張りを伝える
- 点数の上下は、本人の前学期との比較だけで話す
- 他の児童生徒との比較は使わない
- 保護者に聞きたいことを2つ、最後に置く返ってきた案は、教員が手を入れて使います。例えば、次のような順序になります(公式の例ではなく、面談の組み立ての一例です)。
| 順序 | 時間の目安 | 内容 | 元になる欄 |
|---|---|---|---|
| 1 | 時間の目安3分 | 内容本人の伸びた点・取り組み | 元になる欄面談シートの1 |
| 2 | 時間の目安4分 | 内容気になる点と、本人がどう感じているか | 元になる欄面談シートの2・4 |
| 3 | 時間の目安3分 | 内容生活面(欠席・遅刻)と体調 | 元になる欄面談シートの3 |
| 4 | 時間の目安3分 | 内容家庭での様子を聞く | 元になる欄面談シートの5 |
| 5 | 時間の目安2分 | 内容次の学期にやることを一つ決める | 元になる欄本人と保護者の合意 |
学級の集計は、学級の人数が少ないほど個人に近づきます。人数が10人を下回るような学級や少人数の教科では、平均や最高点・最低点が特定の誰かの値とほぼ同じになる場合があります。そのようなときは「平均」の代わりに「70点台が半数」のような階級に丸めて見せます。
Claudeは、面談シートそのものを文書に仕上げることもできます。コード実行とファイル作成をオンにしていると、Word(.docx)・Excel(.xlsx)・PowerPoint(.pptx)・PDFを作れます。1ファイル30MBまでです。Free・Pro・Maxでは「Settings > Capabilities」で、Team・Enterpriseでは組織の管理者が、オンとオフを切り替えます。ただし、この機能で個票の入った表を渡すと、手順1〜3で避けた入力そのものになります。ファイル作成は「列名が決まった空の面談シートの様式」を作らせる用途にとどめます。
サポート記事は、外部のファイルやWebサイトに紛れた指示でClaudeが意図しない動きをする可能性にも触れ、作業の様子を見守るよう勧めています。他の先生や保護者から届いた資料を、そのまま添付して処理させる使い方は、この点でも勧めにくい使い方です。
進路面談で足りなくなるもの
進路面談では、成績に加えて志望校・併願・進路希望のような項目が増えます。これらは面談シートの「本人の希望」欄に、手元で書き込みます。Claudeに渡す表の列には加えません。志望校名や併願の組み合わせは、学級の中の誰かを特定する手掛かりになり、出席番号を伏せても残るからです。
Claudeが役に立つのは、特定の個人に結びつかない部分です。
- 進路面談で聞く質問の一覧(「入りたい学校像」「学校に求めること」など)の作成
- 内申や入試の仕組みについて、保護者向けの説明文の下書き
- 面談後に家庭へ渡す、次の学期の行動計画の書式づくり
内申や入試制度の説明は、自治体や学校ごとに運用が違います。Claudeの文面を使う前に、学校の進路指導の資料と照らし合わせて確定させます。ガイドラインも、データの分析や抽出に生成AIを使う場合は、ハルシネーションやバイアスを意識して、出力を採用するかどうかを教職員が判断するよう求めています。
つまずきやすい点
ダミーが実データに近すぎる。
実データの点数を少しずらしただけのダミーは、元の児童生徒の特徴を残します。値は作り直します。
対応表を同じフォルダに置く。
出席番号と氏名の対応表がCSVと同じ場所にあると、誤って一緒に添付しがちです。ダミーを置く作業用フォルダと、実データを置くフォルダを分けます。
履歴とメモリーに残る。
チャットに貼った内容は、履歴や、メモリー機能がオンの場合はメモリーにも残り得ます。個人向けプランでの学習への利用や、履歴を残さない設定の違いは、所見文の記事にまとめた内容がそのまま当てはまります。
CSVの数値を表計算ソフトで作り直さない。
学級の集計を手で書き写すと、桁や教科の取り違えが起きます。スクリプトの出力をそのままコピーします。数式や集計をClaudeに任せる場合の使い方は、ClaudeでのCSV分析を参照してください。
シートをそのまま保護者に渡す。
面談シートは、教員が話すための材料です。「伸びた点」「気になる点」の言葉は、教員が読み直して、本人と保護者に伝わる表現に直します。
まとめ
三者面談の準備では、Claudeを「個票を読ませる相手」にせず、「手元で動く道具を作らせる相手」にするのが、入力を減らせる設計です。ダミーCSVでスクリプトを固め、実データは自分の端末で処理し、学級の集計だけで話す順序を相談します。出席番号に置き換えても成績の行は個人を指すため、最初の判断は「その入力が要るか」に置きます。契約環境が整っている学校では扱いが変わり得るので、運用の可否は校長と教育委員会の方針で決まります。