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初回相談のヒアリング内容を受任前チェックに整理する手順 — Claudeで面談メモを構造化

初回相談のヒアリング内容を受任前チェックに整理する手順 — Claudeで面談メモを構造化

初回相談の面談メモを、事案の要点・不足資料・利益相反の確認観点に分けてClaudeで整理する型と、依頼者情報を渡す前の匿名化、Projectsの使い分けをまとめます。

初回相談の面談メモは、書いた本人にしか読めない形で残りがちです。Claudeに任せられるのは、そのメモを「事案の要点」「時系列」「不足資料」「利益相反の確認観点」の欄に並べ替える作業です。受任するかどうか、利益相反に当たるかどうかの結論は任せられません。

この記事は弁護士の初回相談を想定し、メモの構造化と、依頼者の情報を渡す前の匿名化、Claudeのどの画面で扱うかをまとめます。法的助言ではなく、公開資料と画面の仕様の整理です。

面談メモの構造化は何を任せて何を任せないか

初回相談の整理で時間を食うのは、話が前後した面談メモを読み直して、事案の骨格を取り出す作業です。ここはClaudeが得意な、文章の並べ替えと抜け漏れの洗い出しに当たります。

任せる範囲と任せない範囲を、先に線引きしておきます。

くらべる

Claudeに出させるものと、人が決めるもの

整理

Claudeに出させる

面談メモの時系列化、当事者と関係者の一覧、主張と事実の仕分け、手元にない資料のリスト、利益相反の照合に使う名前の一覧。

判断

人が決める

受任の可否、利益相反に当たるかの結論、時効や期限の計算、見通しの説明、依頼者に伝える内容。

右側を左側に混ぜないことが、この型の前提です。出力は「確認の材料」であり、事務所内メモの下書きにとどめます。

渡す前に落とす情報 — 匿名化の粒度を決める

東京弁護士会の会報LIBRAの特集は、ウェブサービス側のマスキング機能を使うと、マスキング前の情報がすでにサーバーへ送られてしまうと指摘しています。そのため、Wordなどの置換機能(WindowsならCtrlキーとHキー)で氏名を仮名にしてから入力するほうが安全、というのが同特集の見方です。

初回相談のメモに当てはめると、次のように置き換えられます。

元の情報置換の例残す情報
依頼者の氏名置換の例依頼者A残す情報属性(個人・法人、おおよその年代)
相手方の氏名・社名置換の例相手方B社残す情報業種、関係(元雇用主、取引先など)
住所・電話番号・口座置換の例削除残す情報地域は都道府県まで
日付置換の例そのまま、または「X年前」残す情報出来事の前後関係
金額置換の例そのまま、または桁を丸める残す情報争点になる額の規模

整理に必要なのは、誰が誰に何をしたかという関係と、出来事の順序です。氏名そのものは要りません。

注意したいのは、仮名にした後でも事案の特徴だけで当事者が特定できる場合があることです。LIBRAの特集は、匿名化や抽象化を行ってもなおリスクが残る場合には、その情報を入力しない選択も含めて検討するとしています。珍しい事件名や、地域で知られた出来事が含まれるメモは、置換だけでは足りないことがあります。

仮名の対応表(依頼者A=誰、という表)は、Claudeに渡さず手元に残します。出力を事務所のメモに戻すとき、この表で元の名前に戻します。この戻す作業を最後に人が行うこと自体が、出力の確認になります。

守秘義務の条文の読み方や、契約形態ごとの学習・保存の条件はClaudeに相談内容を入力しても弁護士の守秘義務は保てるかで扱っています。ここでは、その確認を済ませた上でどう整理するかに絞ります。

使う画面を決める — Projectsとシークレットチャット

Claudeには、依頼者の情報を扱うときに関わる画面が2つあります。どちらを選ぶかで、残り方が変わります。

シークレットチャットは、チャット履歴にもClaudeのメモリにも保存されない一時的な会話です。学習にも使われません。ただし、履歴に残らないだけで、30日(既定)は保持されます。Enterpriseプランでは組織の設定でそれより長くなることがあります。また、シークレットチャットはプロジェクトの外で新しいチャットを始めるときに使う機能で、プロジェクトの中では始められません。

Projectsは、資料と指示を案件単位で固定できる作業場です。プロジェクトに入れた資料は、そのプロジェクト内のどのチャットからも使われます。一方で、チャット同士の文脈は、知識として登録しない限り共有されません。

観点シークレットチャットProjects
履歴・メモリへの保存シークレットチャットされないProjects通常のチャットとして残る
学習への利用シークレットチャット使われないProjects個人向けプランでは設定とフィードバックに依存
資料と指示の固定シークレットチャットできないProjectsできる
向く場面シークレットチャット1件だけ試しに整理するProjects共通の型で繰り返し整理する

個人向けプラン(Free、Pro、Max)では、チャットが学習に使われる条件は3つです。モデル改善の設定を許可した場合、安全性の確認のために会話がフラグされた場合、試験プログラムなどに明示的に参加した場合です。依頼者の情報を扱う事務所では、設定画面でモデル改善を切っておく運用が候補になります。Team、Enterprise、APIの商用契約は別の条件で扱われるため、契約形態ごとの違いは前掲の守秘義務の記事で確かめられます。

もう一点、見落としやすいのが評価ボタンです。サムズアップ・ダウンでフィードバックを送ると、関連する会話全体が最長5年間保存されます。依頼者の情報を含む会話では、評価ボタンを押さない運用にしておきます。

つまり、型を使い回すならProjects、1件だけ試すならシークレットチャットという分担です。型を固めた後に、実案件はProjectsで回す流れが現実的です。

プロジェクト指示に書く — 面談メモ整理の共通ルール

Projectsには、プロジェクト内のすべてのチャットに効く「プロジェクト指示」を書けます。案件ごとの資料ではなく、整理の型と禁止事項を置く場所として使います。なお、プロジェクトの名前と説明はClaudeには渡りません。依頼者名をプロジェクト名にしても指示としては効かないので、名前は事務所内の管理用と割り切ります。

指示文の例を示します。これは書き方の一例で、自事務所の運用に合わせて調整する前提です。

あなたは法律事務所の初回相談メモを整理するアシスタントです。
入力される面談メモは、氏名を仮名に置き換え済みです。
 
出力は次の5欄に分けてください。
1. 事案の要点(3〜5行)
2. 時系列(日付が不明な箇所は「不明」と書く)
3. 事実と主張の区別(相談者が見聞きしたことか、推測か)
4. 手元にない資料の一覧(メモ中で言及されたが未入手のもの)
5. 利益相反の照合に使う名称の一覧(当事者・関係者・法人)
 
守ること:
- メモに書かれていない事実を補わない。不明なら「記載なし」と書く。
- 受任の可否、勝敗の見通し、時効や期限の計算結果は書かない。
- 法令名や条文番号を新たに挙げない。
- 不明点は、次回面談で聞く質問の形で最後にまとめる。

効かせたいのは4つ目の禁止の並びです。条文番号を勝手に挙げさせない指示は、架空の根拠が混ざるのを避けるためのものです。

面談メモを5欄に構造化する

指示を置いたら、仮名化したメモを貼って整理させます。1回のやり取りで足りますが、後から欄ごとに作り直せるよう、欄の番号を指示と同じにしておきます。

手順

1件の整理の流れ

  1. 1

    メモを仮名化する

    氏名・住所・口座を置換し、対応表は手元に残します。

  2. 2

    Projects内で新しいチャットを始める

    指示が自動で効くので、メモを貼って「5欄に整理して」と頼むだけです。

  3. 3

    欄ごとにメモの原文と突き合わせる

    日付と金額、固有の数字は原文と一字ずつ照合します。

  4. 4

    対応表で仮名を戻し、事務所メモに転記する

    転記先の書式は事務所のものに合わせます。

出力は、次のような形になります。以下は架空の事案を仮名で整理した例で、実在の相談ではありません。

1. 事案の要点
依頼者A(40代・会社員)は、相手方B社に勤務していたが、
X年前に退職を求められ、未払の残業代があると考えている。
 
2. 時系列
- 入社:記載なし
- X年前:上司から口頭で退職を求められる
- 退職日:不明
- 現在:残業代の請求を検討
 
4. 手元にない資料
- 雇用契約書 - メモに言及あり、手元になし
- 勤怠記録 - 依頼者が保管していると発言

この例で見てほしいのは、日付が不明な箇所を「不明」「記載なし」と書かせている点です。指示で禁じていないと、Claudeが自然な文章にするために日付を補うことがあります。日付を補わせないことが、時系列欄の信頼性を決めます。

利益相反の欄は「照合の材料」までを出させる

5つ目の欄が、この記事の肝です。Claudeは事務所の過去の相談・受任記録を見られません。プロジェクトに知識として入れた資料の範囲でしか動かないので、「この相手方は過去に関与していないか」を判断させることは、そもそもできません。

そこで、Claudeには照合に使う名称の抜き出しだけを頼みます。当事者、関係者、法人、代表者、場合によっては相談者の勤務先や親族まで、メモに出てくる固有名詞を洗い出すところまでです。その一覧を、事務所の既存の相談・受任記録と人が照合します。

仮名にした状態では、この一覧も「相手方B社」のように仮名です。照合のたびに対応表で戻す手間は増えますが、利益相反の判断に使う名前を戻す場面は人の確認が入る場面でもあります。

ここで注意したい別の問題があります。事務所の過去の相談者リストをプロジェクトの知識にアップロードして、Claudeに照合させたくなるかもしれません。しかし、それは「他の依頼者の情報をまとめて渡す」ことになり、匿名化の前提が崩れます。LIBRAの特集も、事務所で共通の生成AIを使う場合に、ある事件の情報が別の弁護士の別の事件の出力に現れうる点を、新しい利益相反の論点として挙げています。照合は、事務所が従来使っている記録の側で行う運用が無理がありません。

不足資料と次回質問のリストを作る

構造化の副産物として、実務で役に立つのが不足資料の一覧と次回面談の質問リストです。メモの時系列に穴があるところ、メモで言及されたのに資料がないところは、そのまま質問になります。

指示文の最後の項目に書いたとおり、不明点は質問の形でまとめさせます。たとえば次のように出てきます。

次回面談で確認する点
- 退職を求められた日付はいつか(口頭か書面か)
- 残業の時間を示す記録は、勤怠システム以外にあるか
- 雇用契約書の写しは手元にあるか

質問を出させるのは、メモの穴を埋めさせないためです。穴を答えで埋める役割を、Claudeに持たせません。

事務所内で共有するときの設定

Team・Enterpriseプランでは、プロジェクトを組織内で共有できます。初期の公開範囲は、組織の全員が使える「公開」か、招待した人だけの「非公開」のどちらかです。非公開にしておけば、プロジェクト内のチャット、知識、アーティファクトは、明示的に招待された人以外は見られません。

共有した相手の権限は、閲覧のみの「Can view」と、指示や知識を編集できる「Can edit」に分かれます。どちらも、プロジェクトの内容と知識は共有されますが、各自のチャットは共有しない限り非公開のままです。

初回相談の整理に使う場合は、次の分け方が考えられます。

  • 整理の型(指示文と空の書式)だけを入れた共通プロジェクトを、事務所全体に公開する
  • 実際の相談メモは、担当の弁護士だけが入る案件別の非公開プロジェクトで扱う
  • 管理者側で共有機能そのものを止めている場合は、どちらの運用も組めないので先に確認する

この分け方にしておくと、型は共有され、案件の情報は共有されません。事務所内の利益相反や情報遮断の考え方との関係は、弁護士がClaudeで生成AIを使う際の注意点とガイドラインの読み方で取り上げています。プロジェクトでレビューの型を共通化する発想は、Claude Projectsで法務レビューのプレイブックを標準化する方法が参考になります。

つまずきやすい点

資料を大量に入れると整理の精度が気になる。面談メモは通常短いものですが、過去の書式例や資料を知識に積むと容量の話になります。有料プランでは、プロジェクトの知識が上限に近づくと、Claudeが自動でRAGモードに切り替わり、容量が最大10倍に広がります。ただしRAGモードでは必要な部分を検索して取り出す動きになるので、資料全体を俯瞰する整理には向きません。メモは知識に入れず、チャットに直接貼るほうが確実です。

手書きのメモや録音をそのまま渡したい。画像やスキャンに依頼者の氏名が写っている場合、文書の置換機能では消せません。文字に起こしてから仮名化する順にします。

出力の文章が整いすぎて、確認を省きたくなる。構造化された出力は読みやすく、確認済みのように見えます。見かけの整い方と正確さは別です。日付、金額、固有名詞は、必ず原文のメモと並べて見ます。

受任前チェックリストを自動で埋めさせたい。チェックリストの項目を埋めるのは、メモに書いてあることの転記までです。項目の中に「利益相反なし」「時効未完成」のような結論の欄があるなら、そこは人が埋める欄として空けておきます。

まとめ

初回相談の整理では、Claudeは並べ替えと穴の洗い出しを担当し、受任の判断は担当者が持ちます。この分担を、プロジェクト指示の禁止事項に書いておくことが、型の中核です。

実務に落とすなら、まず仮名化の手順(置換と対応表)を事務所で決め、次に1件をシークレットチャットで試して、出力の欄が事務所のメモ書式に合うかを見ます。合うなら、指示文をProjectsに置いて案件別に回す流れになります。利益相反の照合だけは、事務所の既存の記録で行う線を崩さないでおくのが無理のない運用です。契約書の文面を見る場面での線引きは、弁護士法72条とAIの契約書レビューにまとまっています。

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