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Claudeで科研費の研究計画調書を点検する手順 — 評定基準と公募要領で抜けを探す

Claudeで科研費の研究計画調書を点検する手順 — 評定基準と公募要領で抜けを探す

科研費の研究計画調書の下書きを、公募要領と審査の評定要素に照らしてClaudeに点検させる手順です。抜けと論理の飛びの出し方、渡してよい範囲の線引きまで。

点検の物差しは公募要領と評定基準の2文書

科研費の研究計画調書は、書き上げた本人には抜けが見えにくい文書です。Claudeに点検させるときの要点は、「良い調書か」と漠然と聞かず、審査側が実際に使う物差しを先に渡すことにあります。物差しになるのは、日本学術振興会(JSPS)が公表している次の2文書です。

  • 公募要領: 何を書き、どの形式で出すか。調書の構成、公募の対象外になる研究計画、体裁の不備を定めています
  • 審査における評定基準等: 審査委員が何を見て点を付けるか。種目ごとに別のPDFで公開されています

この記事で扱うのは、令和9(2027)年度の「基盤研究(A・B・C)、挑戦的研究(開拓・萌芽)、若手研究」公募要領と、基盤研究(B・C)の書面審査の評定基準です。ほかの種目は様式も評定要素も異なるため、同じ手順で資料だけを差し替えます。

Claudeに任せるのは、下書きと2文書の照合です。採否の予測や、研究の学術的な価値の判断は任せられません。理由は後半で触れます。

先に決める: 下書きのどこまでをClaudeに見せるか

公募要領には、生成AIについて次の一文があります。

なお、研究計画調書の作成に当たって、生成AIを利用することは、意図せず著作権の侵害、個人情報や機密情報の漏洩につながるリスクがありますので、このことに留意した上で研究者個人の責任において判断してください。

禁止ではなく、リスクを示したうえで本人の判断に委ねる書き方です。解釈の詳細は科研費の申請書に生成AIを使っても大丈夫かにまとめています。

一方、審査側には線が引かれています。審査委員の守秘義務の箇条に、調書の関係資料の内容の一部又は全てを生成AI等に入力しないこと、という1行があります。応募者は未発表の研究結果やアイデアを調書に書くため、審査委員には外部に漏らさないことが求められているわけです。応募者が下書き段階で何を外部サービスに渡すかは、この枠の外にあり、自分で線を引く領域になります。

点検を始める前に、次の3点を決めておくと迷いません。

  1. 所属研究機関に生成AIの利用規程や学内の案内があるか。あれば、それが公募要領より厳しい可能性があります
  2. 未発表のデータ、他者の個人情報、共同研究者の未公開の知見が下書きに入っていないか
  3. 入っているなら、伏せ字や一般化した記述に置き換えてから渡すか、その節は人が点検するか

「人が点検する節」を残してよい、というのが出発点です。調書の全欄をClaudeに通す必要はありません。

Projectsに置く資料と指示文

点検は、ClaudeのProjectsで行うと再現しやすくなります。Projectsは、チャット履歴と知識ベース(アップロードした文書)を持つ独立の作業場所で、無料アカウントでも使えます(無料は最大5プロジェクト)。有料プランでは、知識ベースが上限に近づくとRAG(検索拡張)モードに切り替わり、容量が最大で約10倍に広がると説明されています。

知識ベースに入れるのは、公開されている資料だけで足ります。

置く資料入手先役割
公募要領(PDF)入手先JSPSの公募要領ページ役割調書の構成、対象外の研究計画、体裁の規定
評定基準等(該当種目のPDF)入手先JSPSの審査ページ役割審査委員が見る評定要素
研究計画調書の様式入手先JSPSの科研費ページ役割欄ごとの頁数の指定

公募要領は分量が大きく、点検に使う節はその一部です。全文を読ませるより、「調書の作成に当たって留意すべきこと」の節と評定基準を指定して参照させるほうが、指摘の根拠を確かめやすくなります。

Projectsのカスタム指示には、次のように書いておきます。例として使える形です。

あなたは科研費の研究計画調書を点検する査読補助です。
- 根拠は知識ベースの公募要領と評定基準だけに置く
- 指摘ごとに、根拠の節名か評定要素名を添える
- 調書に書かれていないことを推測で補わない。抜けは「記載なし」と書く
- 学術的な価値や採択可能性は評価しない
- 修正文は書かず、問いと指摘箇所だけを返す

最後の2行が効きます。採択可能性を評価させない指示と、修正文を書かせない指示です。前者は、根拠のない見立てが混ざるのを防ぎます。後者は、調書が応募者本人の研究内容でなければならないという公募要領の前提を崩さないためです。

評定要素ごとに、下書きへ問いを当てる

審査委員が見る観点は、評定基準に項目として書かれています。基盤研究(B・C)の「一般」では、「研究計画の内容に関する評定要素」が3つ、「研究課題の国際性に関する評定要素」が1つです。これを調書の欄に対応させて、Claudeに問いとして当てさせます。

評定要素評定基準の趣旨Claudeに探させるもの
研究課題の学術的重要性評定基準の趣旨核心の学術的「問い」が明確か。着想の経緯と国内外の動向での位置づけ、波及効果Claudeに探させるもの問いが一文で言える形で書かれているか。先行研究との差が書かれているか
研究方法の妥当性評定基準の趣旨方法が具体的か。研究経費が計画と整合しているか。準備状況は適切かClaudeに探させるもの目的ごとに対応する方法があるか。方法に出てこない経費項目がないか
研究遂行能力及び研究環境の適切性評定基準の趣旨これまでの活動から見て遂行能力があるか。施設・設備・資料が整っているかClaudeに探させるもの計画の主要な作業に、対応する実績か環境の記述があるか
研究課題の国際性評定基準の趣旨世界の研究をけん引する、協同を通じて貢献するなどClaudeに探させるもの国際性の記載が「研究目的、研究方法など」欄にあるか

公募要領には、令和7(2025)年度公募から基盤研究(A・B・C)に国際性の評定要素が加わり、調書の「研究目的、研究方法など」欄に、研究提案がどのような国際性を有するかの記載が求められるようになったとあります。この欄は、国際性の記載が加わる前の様式に慣れていると抜けやすい箇所です。

評定基準には、審査の見方を知るうえで見落としやすい記述もあります。

評定基準から読み取れる、点検の優先順位

  • 高い総合評点を付ける課題が、全ての個別要素で高評価である必要はないとされています。全項目を均等に磨くより、核となる「問い」を明確にする点検が先です
  • 評定要素のうち「やや不十分」か「不十分」を付けたときは、どの項目が理由かを審査委員が選びます。選ばれた項目は、不採択者のうち開示を希望した人に伝わります
  • 「研究費の応募・受入等の状況」欄と「人権の保護及び法令等の遵守への対応」欄は、総合評点には考慮されません

評点の扱いに関して、1段階目の審査では総合評点の分布の目安が4が10%、3が20%、2が40%、1が30%と示されています。相対評価で点が付くため、Claudeが「各要素が十分に書けています」と返しても、それが採択に近いことを意味しません。この限界は、最後の節で改めて扱います。

Claudeに渡す点検用の問い

下書きを貼ったうえで、評定要素ごとに次のように頼みます。

添付の下書きを、基盤研究(B・C)の評定基準の
「研究課題の学術的重要性」に照らして点検してください。
次の表の形で返してください。
| 評定基準の問い | 下書きの該当箇所(引用) | 判定(あり/弱い/記載なし) |
引用できない行は「記載なし」とし、補わないでください。

「該当箇所を引用させる」点が肝心です。引用できない問いは、書いていないか、書いているが場所が分かりにくいかのどちらかで、どちらも読む側には同じ「抜け」になります。

論理の飛びは、問い・方法・成果の対応表で見つける

評定要素の点検で「あり」と出ても、内容のつながりが切れていることがあります。研究目的で掲げた問いに、研究方法のどこが答えるのか。方法で得る成果が、波及効果の主張を支えるのか。この対応を表にさせると、飛びが見えます。

手順

論理の飛びを見つける4段階

  1. 1

    問いを抜き出させる

    下書きの「研究目的」から、研究課題の核になる問いを番号付きで列挙させます。問いが書かれていなければ、その時点で「記載なし」と返させます。

  2. 2

    方法を対応させる

    各問いに答える研究方法の記述を、引用付きで対応させます。対応する方法がない問いと、どの問いにも対応しない方法を、別々に挙げさせます。

  3. 3

    成果と波及効果を対応させる

    方法から得られる成果と、「波及効果」「国際性」で主張している内容を対応させます。成果から直接言えない主張には印を付けさせます。

  4. 4

    人が飛びを判断する

    印の付いた箇所は、本当に飛んでいるのか、前提が省略されているだけなのかを研究者本人が決めます。ここはClaudeに決めさせません。

第1段階と第2段階の「どの問いにも対応しない方法」は、経費の点検にもつながります。評定基準は、研究経費が研究計画と整合しているかを見ます。方法の記述に出てこない設備や旅費があれば、経費の欄との食い違いとして浮かびます。

公募要領には、いずれかの年度で「設備備品費」「旅費」「人件費・謝金」のどれかが90%を超える研究計画では、その必要性を調書に書かなければならないとあります。評定基準の「研究経費の妥当性」にも、同じ90%の基準があります。経費の費目別の割合は、Claudeに合計と割合を計算させるより、表計算ソフトで確かめるのが確実です。

形式面の不備は、公募要領の確認項目で機械的に拾う

内容の点検と別に、体裁の不備は公募要領の確認項目と突き合わせて拾います。ここは判断が要らず、Claudeに向いた作業です。公募要領は、調書の作成で次の確認を求めています。

  • 公募の対象とならない研究計画でないこと(既製の研究機器の購入が目的、商品・役務の開発・販売が直接の目的、業として行う受託研究、いずれかの年度の研究経費が10万円未満、など)
  • 所定の様式と同じ規格であること(総頁数だけでなく、各欄で指定された頁数と同じか)
  • 文字化けがなく、内容が不鮮明になっていないこと
  • 応募情報に入力漏れや誤入力がないこと(予算額の桁数、研究課題名の誤字脱字やスペルの誤りなど)

頁数については、公募要領が基盤研究(B)の添付ファイル項目を例に挙げています。「研究目的、研究方法など」欄が5頁、「応募者の研究遂行能力及び研究環境」欄が2頁、「人権の保護及び法令等の遵守への対応」欄が1頁、最終年度の前年度に応募する場合の記述事項の欄が1頁で、総頁数は9頁です。総頁数が同じでも、各欄の頁数が指定と違えば同一規格とはみなされません。

色の扱いも種目で違います。基盤研究(A)は、色を付けた図や文字がそのまま審査に付されます。それ以外の種目は、調書がモノクロ(グレースケール)で印刷されるため、色分けに頼った図は不鮮明になります。

応募締切後に応募書類を修正することはできません。形式面のチェックは、研究機関への提出前に終えておく必要があります。

研究課題名も点検の対象に入れる

公募要領は、審査では研究課題名を含む調書全体が審査されること、採択されれば研究課題名がKAKEN(科研費のデータベース)に掲載され広く公開されることを挙げ、課題名は研究内容を適切に反映したものにするよう求めています。点検では、課題名と研究目的の最初の一文を並べて渡し、「課題名が言い切っている範囲を、目的が超えていないか」を聞くと、ずれが出ます。

点検で任せられないこと

最後に、この手順で解けないことを挙げます。

採否の見立ては出せません。 評定基準では、総合評点は相対評価で付き、評点の分布にも目安があります。1つの調書だけを見たClaudeには、同じ小区分で競合する課題の水準が分かりません。指示文で採択可能性を評価させないのは、この理由によります。

学術的な重要性の判断はできません。 評定基準の「学術的重要性」には、「研究課題の核心をなす学術的『問い』は明確であり、学術的独自性や創造性が認められるか」という項目があります。Claudeが確かめられるのは、問いが書かれているかどうかです。その問いが学術的に重要かは、同じ分野の研究者が判断します。

審査規程は改正されます。JSPSの審査ページには、審査規程が令和8年6月22日に改正されたと掲載されています。種目別の評定基準のPDFは、その規程から抜き出されたものです。PDFのファイル名や公開日は更新と同じとは限らないため、点検の前にJSPSのページから該当種目の最新版を取り直して、知識ベースを差し替えます。

記述内容の責任は応募者にあります。 公募要領は、調書の内容は応募する研究者独自のものでなければならず、他人の研究内容の剽窃や盗用は行ってはならないとしています。Claudeの指摘は、書き直しの起点にとどめ、書く文章は自分の言葉で組み立てます。

点検で関連する書類が出てくる場合は、それぞれ別の手順があります。研究データの扱いを書く欄はClaudeでDMPを下書きする手順、人を対象とする研究の倫理審査の申請書はClaudeで倫理審査の申請書を下書きするにあります。応募先そのものを選ぶ段階なら、Claudeで研究費の助成金候補を比較検討する方法が先です。

提出前に人が見る3点

Claudeの点検結果を受けて直したあと、提出前に人の目で見るのは次の3点です。

  1. 指摘への修正が、元の主張を変えていないか。字数を詰めた結果、条件や限定が落ちていないか
  2. 評定基準の問いに対する答えを、調書の読者である専門外の審査委員にも伝わる語で書いているか。審査委員は、自分の専門に近いかにかかわらず、応募者がどのような研究を行おうとしているかを理解して評価することとされています
  3. 所属研究機関の提出期限と、研究機関による承認処理の日程に間に合うか。調書は研究機関を通して提出され、JSPSへの提出期限後は修正できなくなります
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