Claudeで研究費の助成金候補を比較検討する方法
助成金候補を一覧表にしても、金額・採択率・締切の3軸は1つのソート順では同時に見えません。Claudeのチャットに直接聞き、散布図で全体を見ながら絞り込む手順を解説します。
Claudeで研究資金の候補を比較するとは
助成金候補をスプレッドシートで一覧にしても、決め切れないことがあります。金額と採択率と締切という複数の軸は、どの列でソートしても他の軸が隠れるからです。当たれば大きい助成金と、確実に取れる小口の助成金を同時に視界へ入れたいとき、Claudeにチャットで直接聞くと、その場で散布図が返ってきて対話しながら絞り込めます。
応募先が1つに決まっていれば申請書の作成に進めますが、候補が多い段階でその作業に入るのは非効率です。応募先が決まっていて提案書の文章を量産したい場合はClaudeでNPOの助成金提案書を量産する仕組みを作るが向いています。ここで扱うのは、その前段階の「まずどこに出すか」を決める判断です。応募先が決まった後のデータマネジメントプランはClaudeでDMPを下書きする手順にあります。科研費の調書を書き上げた後の点検はClaudeで科研費の研究計画調書を点検する手順です。
散布図を作るのは「Custom visuals」というベータ機能
この図はCustom visualsというベータ機能が作っています。Claude.aiのWebアプリとデスクトップアプリで、通常のチャットでもCoworkでも使えます。静的な画像ではなくHTMLで組み立てられるため、ボタン、スライダー、全画面表示といった操作に反応します。
事前の設定は要りません。Claudeが質問の内容から図が向くと判断したときに自動で生成しますが、「これをチャートにして」のように直接頼むこともできます。期待したのにテキストだけが返ってきたら、「図にして」と言い直します。
助成金の比較は、Custom visualsの使い道のうち「複数の変数を同時に見せる」ものにあたります。ほかにも、手順を聞けばフローチャート、CSVを渡して「このデータは何を示していますか」と聞けばインタラクティブなチャート、二択で迷っていると伝えれば並べた比較、概念の説明を頼めば図解が返ります。
見たい対比を言葉にして伝える
「助成金を整理して」と頼むより、何と何のどちらを取りたいのか対比を名指しするほうが良い図になります。
来年度の助成金申請を計画しています。候補が多くて選びきれません。当たれば大きいが狭き門の助成金と、確実だが小口の助成金のトレードオフを見える形で示してください。締切が近いものにはフラグを立ててください。
「大きいが狭き門」対「確実だが小口」のように緊張関係を名指しすると、トレードオフが空間に現れる図になります。この頼み方は助成金選びに限りません。どの案件に人を割くか、どの機能をロードマップの先頭に置くか、1つの列で素直にソートできない判断なら同じ型が使えます。
手元のデータを渡すか、Claudeの知識に任せるか
金額・採択率・締切をまとめたスプレッドシートがあれば添付します。ないときは、候補の制度名を伝えるだけでも、Claudeが知っている主要な制度の情報から図を作ります。
シートはCSVかXLSXで渡せます。XLSXを扱うには、Artifactと同じくクラウドでのコード実行とファイル作成を有効にしておく必要があります。公募要項のPDFも一緒に添付できます。上限は1ファイル500MB、1チャット20ファイル、PDFは1000ページまでです。100ページ以下のPDFなら図表も読まれ、101〜1000ページでは文章だけが処理されます。
シートを添付した場合、Claudeは金額・採択率・締切・労力の4列を、点の位置・大きさ・色に割り当てます。当たれば大きい候補は左上に、手堅い候補は右下に集まり、両者の距離が申請戦略の広がりです。図の上部に出る期待値のカードは、現実味を織り込んだ1つの数字です。単純な合計との差が、リストに混ざっている「宝くじ的な候補」の多さを示します。
シートがなく推定に頼った候補ほど、書き始める前の裏取りが要ります。採択率や過去の採択実績を公式ページで確かめ、同じ分野の研究者の採択事例があれば照らし合わせます。
この裏取りにはResearch機能が使えます。チャット画面左下の「+」から「Research」を選ぶと、確かめやすい引用つきで調べた結果が返ります。Pro・Max・Team・Enterpriseの有料プランで、Web・デスクトップ・モバイルから使えます。ウェブ検索をオンにしておくことが前提です。
使い分けの目安は、調べる量です。締切1件の確認のように1〜2回のツール呼び出しで答えられる質問はWeb検索で足ります。複数制度の要件比較のように、5回以上のツール呼び出しと1〜3分を要する調べものがResearchの向く場面です。Researchの利用は上限を早く消費することがあります。調べ直した採択率は、図に戻して描き直させます。
絞り込んで、次の作業に変える
図のフィルターは、散布図と下の一覧表を同時に絞り込みます。気になる点をクリックすると、その候補の詳細がグラフの下に展開され、図は残ったままです。
たとえば「NSF CAREER」の点を開くと、締切日・ページ数の上限・採択されやすい応募内容の傾向が出ます。散布図は全体の見取り図なので、個別の出願要件は気になった点を開いてから確認すれば足ります。点が近接して読み取りにくいときは、「重なっている候補の違いを言葉で説明してください」と頼むと、図に出ない差をテキストで補えます。
シーズンを通した使い方は、次の3つの頼み方でつながります。
図を作業台にする3つの頼み方
- 1
図から日程表を作る
直近90日以内の助成金を提出スケジュールに変換してください。各締切から逆算して、いつ着手すべきか教えてください。
週単位のスケジュールが、各提出日から逆算した着手日つきで返ります。
- 2
状況の変化を伝えて描き直す
R03は昨日提出しました。それを「進行中」として描き直し、残りの優先順位を並べ直してください。
提出済みの候補は進行中に移り、残りが再ランク付けされます。
- 3
Artifactに保存して戻ってくる
この図をArtifactとして保存してください。以降は提出するたびにここへ戻って更新します。
保存の選択肢は「図を残す方法と、Artifactとの違い」の節のとおりです。
公募要項や過去の申請書は、Projectsに置いておく手もあります。Projectは独自のチャット履歴とナレッジベースを持つ作業スペースで、置いた資料をProject内のチャットで前提にできます。チャット同士は文脈を共有しません。決めた優先順位はナレッジに書き足します。Projectファイルは1つ30MBまでなので、長い要項PDFはこの上限を見てから置きます。
スプレッドシートと散布図の使い分け
どちらで判断するか
散布図(Custom visuals)
金額・採択率・締切を同じ画面に置くので、並べ替えの手間が要りません。フィルターで表とグラフが連動して動くため、「表を絞ってからグラフを作り直す」往復もありません。
スプレッドシート
締切順に並べれば金額の大小が読み取りにくくなり、金額順なら締切が散らばります。その代わり、数件に絞った詳細比較や、申請書と一緒に出す管理表には向きます。
図を残す方法と、Artifactとの違い
Custom visualsは、会話が進んでも別に保存されないのが既定です。ファイルというより、ホワイトボードの落書きに近い扱いです。残す方法は、画像やファイルとして取り出すか、Artifactとして保存するか、の2通りです。
取り出すか、育てるか
画像・ファイルとして取り出す
画像としてコピーすれば、メモやスライドにそのまま貼れます。.svg か .html でダウンロードすれば、他のツールでも使い回せます。
Artifactとして保存する
Artifactは最初から永続的で、共有もできます。サイドバーのArtifactsタブに残り、あとから編集して育てられます。Artifactの公開・共有の仕組みはClaude Projects完全ガイドで扱っています。
Artifactの作成には、設定の「Capabilities」でクラウドでのコード実行とファイル作成を有効にしておく必要があります(Free・Pro・Maxは「Settings > Capabilities」、Team・Enterpriseは「Organization settings > Capabilities」)。保存の選択肢が出ないときは、まずここを見ます。
Artifactはセッションをまたいでデータを保存できるので、提出状況のトラッカーとして作らせることもできます。保存は1つのArtifactにつき20MBまでで、テキストのみです。データ保存はPro・Max・Team・Enterpriseで使えます。過去のメッセージを編集すると、独自のArtifactを持つ別バージョンのチャットが作られ、元の図を失わずに別のシナリオを試せます。
保存とは別に、見た目の好みも会話をまたいで覚えさせられます。「自分のチャートは全部この配色にして」と伝えておけば、以降の可視化に反映されます。
使えない場面と精度の限界
Custom visualsはWebとデスクトップのアプリ限定で、iOS・Androidアプリでは描画されません。共有したチャットの図も、受け取った人がWebかデスクトップでログインしていなければ見えません。ベータ機能のため、図の複雑さや品質は一定ではなく、期待どおりに図が出ないこともあります。
複雑な比較を作らせるときは、モデル選びが効きます。可視化タスクではOpusの精度が最も高いと案内されているので、込み入った助成金一覧にはOpusを選ぶ手があります。
Coworkでも同じ図を使えますが、通常のチャットと違う点が2つあります。
- 共有: Coworkのセッションはローカルで動くため、図を共有リンクで他の人に見せられません
- クリックによる質問: 通常のチャットでは図の中のクリックで続きの質問が飛びますが、Coworkにはまだこの機能がなく、質問は自分で打ち込みます
なお、メッセージ欄に「Chat」と「Cowork」の選択肢が出ない場合は、両者が1つのClaudeに統合された新しい体験を使っています。Coworkの項目は、その画面では読み替えが必要になることがあります。
助成金まわりの記事の使い分け
助成金まわりでClaudeを使う場面は、段階が分かれています。どこで何をするかが決まると、重複作業を避けられます。
| やりたいこと | 向く記事・機能 | 対象読者 |
|---|---|---|
| 応募先の優先順位を決める | 向く記事・機能本記事(Custom visuals) | 対象読者個人研究者 |
| 決まった応募先の提案書を量産する | 向く記事・機能ClaudeでNPOの助成金提案書を量産する仕組みを作る | 対象読者NPO職員 |
| 助成金以外も含めた団体運営全体 | 向く記事・機能非営利団体のClaude活用ガイド | 対象読者団体全体 |
研究資金の相談は学生・研究者向けの使い方とも重なります。基本操作から見直したい場合はClaude勉強法も参考になります。
まとめ
推定の採択率が多い候補ほど、図は優先順位の叩き台に留まります。Researchで出典付きの数値に置き換えてから描き直し、そのうえで出願先を絞ります。