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Claudeでセオリー・オブ・チェンジを可視化する

Claudeでセオリー・オブ・チェンジを可視化する

活動が成果につながる理屈は説明できても、その間の矢印が何を前提にしているかは言葉にしていないことが多いものです。Claudeに矢印までクリックできる形で描かせる手順をまとめます。

セオリー・オブ・チェンジ(theory of change)とは、活動がなぜ成果につながるのかを示す因果関係の連鎖のことです。多くの団体はこれを暗黙のうちに共有しているか、助成金申請のために一度作ってそれきりにしています。箱を埋めるのは簡単でも、箱と箱をつなぐ矢印が何を前提にしているかは、言葉にされないまま残りがちです。Claudeにプログラムを一文で説明すると、この連鎖を丸ごと描き、矢印をクリックするたびに前提を言語化してくれます。

このTipsで具体的に何ができるか

プログラムの内容を1〜2文で伝えるだけで、Claudeが投入からインパクトまでの因果連鎖を描きます。すべての矢印がクリック可能で、クリックすると「この矢印が成り立つには何が真である必要があるか」という前提が短いメモとして開きます。プログラムを説明しながら「弱い環はどこですか」と付け加えるのが、このTipsの核心です。

一文の因果文では、矢印が見えない

Claudeの非営利団体向けページに載っている助成金提案書のサンプルでは、セオリー・オブ・チェンジは次の1文で書かれています。若者向けのイノベーションラボ事業の例です。

もし若者にデザイン思考のスキル、技術的な道具、メンターシップ、本物の意思決定権を提供すれば、主体性・技術力・地域とのつながりが育ち、それが学業での成功と就職準備につながる。

審査員に渡す文書としては読みやすい書き方です。ただ、この1文には矢印が少なくとも2本隠れています。どちらも、団体の外から見える形では前提が書かれていません。

手順

1文の因果文を矢印に分解する

  1. 1

    提供する中身から育つ力へ

    スキル・道具・助言・決定権を渡せば、主体性や技術力が育つ。この矢印は、若者が最後まで参加し続けることを前提にしています。

  2. 2

    育つ力から学業・就職準備へ

    育った力が、学校や職場という別の場面でも発揮される。この矢印は、プログラム内の成長が外の世界に移ることを前提にしています。

同じサンプルの成果指標は、すべて目標値付きです。修了率90%、問題解決への自信が高まったと答える参加者85%、デザイン思考の習熟80%が並びます。続いて、プログラム修了者のうち12か月以内にSTEM・社会的イノベーション・市民活動などに進む割合70%、実装に進む若者発のソリューション10件以上が置かれています。1本目の矢印と最終段は数字で追えますが、2本目の「育った力が学業に移る」部分を直接見る指標は並んでいません。このサンプルでは評価計画の節に因果文が置かれ、その直後に5つの成果指標が続きます。この記事の分解は筆者の読みであって、サンプルが示した前提ではありません。矢印の前提を、こうして1本ずつ疑える形にするのがClaudeの使い方です。助成金申請書に1文で書いた因果文を、そのまま貼り付けて、矢印ごとの前提に分解させる使い方もできます。

依頼文の作り方 — 実際のプロンプト例

プログラムの対象者・やること・目指す成果を一文で伝え、「弱い環はどこですか」と加えるのがポイントです。

若者向けのメンタリングプログラムを運営しています。
高校生と大人のメンターをペアにし、1年間週1回の面談を
続けてもらい、卒業率の向上を目指しています。
私たちのセオリー・オブ・チェンジを見せてください。
箱と箱の間の矢印をクリックしたら、
その矢印が何を前提にしているか分かるようにしてください。
弱い環はどこにありますか。

すでに正式なロジックモデルや助成金申請書の一節があるなら、それを貼り付けると自団体の言葉づかいに沿った連鎖が描かれます。ファイルは不要で、あいまいなまま説明を始めたほうが、自分でも気づいていなかった前提が浮かび上がることもあります。既存の書類を貼るかどうかは、枠組みを揃えたいのか、思い込みをあぶり出したいのかで選び分けられます。

依頼文に「弱い環はどこですか」を足すかどうか

Claudeの公式の説明では、「弱い環はどこですか」という一言が、箱だけでなく矢印に注目させる合図になるとされています。

くらべる

依頼文の違い

箱が中心

描いてとだけ頼む

箱が並んだ連鎖が描かれる。矢印の前提を検証するところまでは進みにくい。

矢印が中心

弱い環を添える

矢印がクリックでき、前提のメモが付く。どの矢印が負荷を背負っているかを見に行ける。

この言い回しは、筋道は通っているはずなのに検証したことがない因果関係なら、政策提言でも事業戦略でも使えます。

Claudeが描く連鎖と、矢印のメモの中身

連鎖は、投入から最終的なインパクトまでの5つの箱が左から右に並び、その間の矢印がすべてクリックできる形で描かれます。箱は、ロジックモデルで一般的な区分です。名称は出力ごとに変わりえます。

連鎖

ロジックモデルで一般的な5区分(左から右)

  1. 1

    投入

    プログラムに投じるリソースです。

  2. 2

    活動

    実際に行うことです。

  3. 3

    産出

    活動から直接生まれる結果です。

  4. 4

    成果

    産出がもたらす変化です。

  5. 5

    インパクト

    最終的に目指す変化です。

見慣れた区分そのものより、矢印をクリックしたときに開くメモに価値があります。メモには、矢印が頼っている前提が書かれ、これまで文章にしてこなかった部分が表に出ます。矢印は、前提・崩れやすいもの・早い兆しの3つの観点で掘り下げられます。

前提

矢印1本を掘り下げたときの3つの観点

  • 前提

    その矢印が成り立つために、何が真である必要があるか。

  • 崩れやすいもの

    前提を典型的に壊す要因は何か。

  • 早い兆し

    前提が保たれているかを、早い段階で知らせるシグナルは何か。

フォローアッププロンプトで深掘りする

最初の連鎖を描かせて終わりにせず、同じ会話で矢印を1本ずつ掘り下げられます。

  • 矢印を1本選んで深掘りする: 「面談時間と学校への帰属意識が強まる、の間の矢印に絞ってください。何が真であればこの矢印は成り立ちますか。成り立たなくなる予兆は何ですか」と頼みます
  • 要素を1つ加えて描き直す: 「メンタリングに加えて家庭への関わりの要素を足して描き直してください。新しい前提は何ですか。既存の矢印は変わりますか」と頼むと、新しい要素が持ち込む前提が既存のものと並んで示されます
  • 弱い環を測定計画に変える: 「弱いと指摘した矢印それぞれについて、今年計測できる1つの指標を教えてください」と頼むと、評価会議に持ち込めるデータ計画になります

弱い環を、今年測れる指標に落とす

矢印の前提が言葉になったら、次は「手元の記録で追えるか」を矢印ごとに見ます。ここで役に立つのが、先ほどのサンプルの成果指標の並びです。指標は、箱(産出や成果)に対して置かれていて、箱と箱の間の矢印に対して置かれてはいません。そこで、弱いと指摘された矢印ごとに、その前提が崩れたときに最初に動く数字を1つ選びます。

メンタリングの例では、出席が落ちた月は、帰属意識の変化を測る前に矢印そのものが途切れている可能性があります。もう1本は、帰属意識の変化と卒業の間が長いので、途中の数字で近い兆しを見ます。以下は筆者が置いた記入例で、Claudeの出力そのものではありません。

矢印崩れたときの最初の兆し今年測れる指標の例
面談を重ねる → 帰属意識が上がる崩れたときの最初の兆し面談が飛ぶ・短くなる今年測れる指標の例月ごとの面談実施率
帰属意識が上がる → 卒業率が上がる崩れたときの最初の兆し欠席が減らない今年測れる指標の例学期ごとの欠席日数

測定計画の依頼文にある「今年計測できる」という条件は、卒業率のように結果が出るまで時間のかかる数字を避ける働きをします。1年で結果が出ない最終指標だけを置くと、途中で前提が崩れても気づけません。

よくあるつまずき

  • 既存のロジックモデル図を全部貼り付ける: 申請書の図をまるごと貼ると、その資料の言葉づかいが出発点になります。前提を洗い出したいときは、まず自分の言葉で一文にしてから、必要な箇所だけ資料を補う方法があります
  • 見えてきた前提をそのまま申請書に転記する: 前提はClaudeによる読み取りの結果であり、団体としての検証を経たものではありません。関係者に見せて違和感がないか確かめてから使う方法があります
  • プログラム全体を一度に描かせる: 複数の事業を1つの連鎖に詰め込むと、矢印の数が増えて、どれが弱い環か追いにくくなります。まず1つのプログラムに絞る方法があります
  • 対象読者を決めずに文章版を頼む: 助成金申請書用なのか、内部の振り返り用なのかを添えると、読み手に合わせた言葉づかいを頼みやすくなります

示された前提は判定ではなく、1つの読み取り

Claudeが示す前提は、あなたのプログラムをどう読んだかの見立てです。すでにしっかりしたデータを持っている矢印を弱いと指摘されたなら、手元のデータが裏付けになっていると確かめられます。逆に、内心では不安に思っていた矢印を強いと判定された場合は、見えている実態をClaudeに伝えると、その矢印のメモを手元の証拠に合わせて書き直してもらえます。

静的な図とクリックできる連鎖、どちらを使うか

セオリー・オブ・チェンジを描く方法は、Claudeでの対話型の連鎖だけではありません。パワーポイントやMiroで作る静的なロジックモデル図にも向く場面があります。使い分けの目安は次のとおりです。

場面向いている方法
助成金申請書に貼る完成図が欲しい向いている方法静的な図(体裁を固定でき、そのまま提出できる)
矢印ごとの前提を洗い出したい向いている方法Claudeでのクリック可能な連鎖(前提が見えるまで潜れる)
理事会など短時間の会議で全体像だけ見せる向いている方法静的な図(一目で全体が見渡せる)
評価会議で1本ずつ矢印の妥当性を検証したい向いている方法Claudeでのクリック可能な連鎖(その場で描き直せる)
複数の助成金申請で使い回す確定版が必要向いている方法静的な図(バージョンが固定される)

順番としては、先にClaudeで矢印ごとの前提を洗い出して弱い環を見つけ、そのあとで確定した内容を静的な図に描き起こす流れが考えられます。先に静的な図を確定させると、弱い環が見つかるたびに図を描き直すことになります。

評価会議で矢印の前提を使う

評価会議で議論が噛み合わないとき、何を確かめれば成果が出ていると言えるのかが揃っていないことがあります。矢印ごとの前提が言葉になっていれば、議題は「この前提は今も成り立っているか」という具体的な問いにできます。成果が出なかった年の振り返りも、「前提のどれが崩れたか」を順に見る形に置き換えられます。次の年の計画は、前提のどこを直すかという形で組み立てられます。会議の前に、矢印ごとに「前提」「指標」「直近の数字」を1行ずつ並べた紙を用意しておくと、議題を絞りやすくなります。描く作業そのものより、矢印1本ごとに前提を名指しできる状態を作ることに意味があります。

会議で使うときのひと工夫

連鎖にカーソルを合わせると、スライド用の画像としてコピーする選択肢と、後で再び矢印をクリックして辿れるようにArtifactとして保存する選択肢が出てきます。評価会議の前に保存しておけば、当日その連鎖を開いて矢印を1本ずつ見ながら議論できます。もう1つの使い方として、「箱と矢印を文章版にしてください」と頼めば、箱と矢印を段落にした下書きが得られ、次の助成金申請書のロジックモデル欄の出発点になります。

NPO業務全体のどこに位置づくか

セオリー・オブ・チェンジの可視化は、NPOでのClaude活用のうち事業設計と評価に関わる一部分です。組織運営や資金調達を含めた全体像は非営利団体のClaude活用ガイドにまとめています。

弱い環を洗い出したあと、それを助成金申請書の文章に落とし込みたい場合は助成金提案書をClaudeで量産する仕組みが参考になります。財務面の分岐点も同じように並べて検討したいなら、Claudeで予算シナリオを並べて比較するが事業と財務の両面の判断材料になります。矢印の前提ではなく日々の業務のボトルネックを洗い出したい場合は、記入式のテンプレートで課題を構造化するClaudeで業務改善プランナーを作り課題をAI活用計画に変えるが近い考え方です。

まとめ

連鎖の中で検証が足りていないのは、箱ではなく矢印です。新しいプログラムでも既存のものでも、まず1つの事業を一文で説明して「弱い環はどこですか」と添え、出てきた前提のうち手元のデータで裏付けられないものを、次の評価会議の議題にする使い方があります。

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