Claudeで予算シナリオを並べて比較する
助成金を失うかもしれない、といった予算の分岐点は、表を作り直すよりClaudeに3つのシナリオを並べて描かせるほうが理事会で伝わります。依頼文のコツと会議での使い方をまとめます。
助成金が打ち切られるかもしれない、来年度の予算が読めない。そういう分岐点では、スプレッドシートのタブを複製して数字をいじるより、Claudeに3つの未来を並べて描かせるほうが早く伝わります。予算の内訳と変わりそうな条件を一文で伝えるだけで、金額表示と比率表示を切り替えられる棒グラフが3本並び、クリックすると何が起きるかの一言解説まで付いてきます。
このTipsで具体的に何ができるか
予算シナリオ比較とは、現在の予算配分と起こりうる変化を1つのメッセージで伝え、Claudeに複数の未来を並べて描かせる使い方です。Claude AcademyではClaude.ai向けの使用例として載っていて、所要は15分、分類は財務です。
「助成金を失う」「横ばい」「少し伸びる」のような3つの条件を渡すと、Claudeは積み上げ棒グラフを3本横に並べ、上部のトグルで金額表示と比率表示を切り替えられるようにします。縮む科目には印が付きます。金額表示ではどの科目が実際に小さくなるかが分かり、比率表示では組織全体のバランスが変わるのか、全体が縮んだだけなのかが見えます。シナリオをクリックすると、「これは実質どういう意味か」を一文で説明するメモがグラフの下に開きます。
なぜ表よりグラフのほうが会議で機能するのか
シナリオ比較で手間がかかるのは、条件を変えるたびに再集計する作業です。比較そのものは難しくありません。理事会の1時間前にほしいのは、複数の未来を並べてどれが一番痛いかを一目で見ることです。
数字の表は正確でも、3つの条件を並べて質感の違いを掴むには向いていません。積み上げ棒グラフを横に並べて縮む科目に印を付ければ、会議室での「じゃあこのケースだと?」にその場で答えやすくなります。
たとえば予算が210万ドルで助成金40万ドルを失うなら、残る予算は170万ドルです。内訳60%・25%・15%を保ったまま縮めると、各科目の金額は次のようになります。
助成金40万ドルを失う場合(比率を保った一律カット)
プログラム
126 → 102
24万ドル減
運営
52.5 → 42.5
10万ドル減
資金調達
31.5 → 25.5
6万ドル減
40万ドルは予算の約19%にあたるので、一律カットでは3科目とも約19%ずつ縮みます。比率表示にしても60%・25%・15%は動きません。このとき比率表示は「形は同じで規模だけが小さくなる」ことの確認になります。
数字は3行で済みますが、プログラムが全体の削減の6割を負うという偏りは、表では読み取りにくいところです。棒の高さがその場で縮む様子を見せれば、痛みの大きさが直感的に伝わります。
依頼文の作り方 — 実際のプロンプト例
「並べて」「トグルで切り替え」のように見せ方まで書くことが、コツです。Academyの解説では、「side by side」と「dollars and percentagesの間のトグル」と頼むことで、3枚の別々のグラフではなく比較ビューが出るとされています。
依頼文に入れるのは、次の3点です。
依頼文に書くこと
- 1
総額と科目ごとの割合
「約210万ドル、プログラム60%・運営25%・資金調達15%」のように、主要な科目の割合を書きます。Academyの解説では、総額と割合だけで足りるとされています。
- 2
変わりそうなことと比べたい未来
「40万ドルの助成金を失うかもしれない」と、並べたい3つの場合を書きます。
- 3
動かさない科目と、使う場面
「運営費のほとんどは家賃」と「会議が1時間後」を添えます。
来年度、40万ドルの連邦助成金を失うかもしれません。
現在の予算は約210万ドルで、内訳はプログラム60%、
運営25%、資金調達15%です。
運営費のほとんどは家賃なので動かせません。
会議が1時間後に迫っていて、細かい精度より
形をすぐ見たいです。
助成金を失う場合・横ばいの場合・少し伸びる場合の
3つのシナリオを並べて見せてください。
金額表示と比率表示をトグルで切り替えられるようにして、
シナリオをクリックしたら実質何を意味するかを
一言で教えてください。ファイルのアップロードは要りません。数字は依頼文に直接書き、ざっくりした割合で足ります。「会議が1時間後に迫っている」と書くのは、精度の高いモデルではなく形をすぐ見る用途だと伝えるためです。固定費に近い科目を書いておくと、Claudeがその科目をシナリオ間で動かさずに保つとされています。
固定する科目で、痛む場所はこう変わる
一律カットは出発点にすぎません。資金調達費を現在の金額のまま固定すると、削減の40万ドルはプログラムと運営だけで受け止める計算になります。次は、元の数字から求めた試算です。
40万ドル減の受け止め方(単位は万ドル)
一律カット
プログラム102、運営42.5、資金調達25.5。比率は60%・25%・15%のままで、組織の形は変わらず小さくなるだけです。
資金調達を固定
プログラム約97.8、運営約40.7、資金調達31.5。比率は約57.5%・24.0%・18.5%に動き、プログラムの減り幅は28万ドル強に広がります。
一律カットでは3科目とも約19%の減少でした。資金調達を固定すると、プログラムと運営が約22%ずつ縮み、資金調達は動きません。同じ40万ドルでも、誰が負担するかで受け止め方は変わります。
金額表示だけを見ると「プログラムがさらに縮んだ」としか読めません。比率表示に切り替えて初めて、資金調達の割合が15%から約18.5%へ上がっていることが分かります。金額と比率の両方を見る意味は、この違いにあります。
2年に伸ばすとさらに読みが変わります。助成金を1年目に半分、2年目に残りを失う場合の計算は次のとおりです。
助成金が2年で消える場合(比率を保った一律カット)
- 現在総額210万ドル
プログラム126、運営52.5、資金調達31.5。
- 1年目総額190万ドル(20万ドル減)
プログラム114、運営47.5、資金調達28.5。
- 2年目総額170万ドル(さらに20万ドル減)
プログラム102、運営42.5、資金調達25.5。
1年目は全科目が約9.5%の減少で、一度に失う場合の半分です。2年目に約19%の減少まで進みます。
「少し伸びる」を数字で置く
横ばいや増加のシナリオは、言葉だけだと増減の幅が曖昧なままです。「少し伸びる」を「5%増」のように書いておくと、3本の棒が同じ前提で比べられます。
たとえば5%増なら総額は約220.5万ドルで、プログラムは約132.3万ドル、運営は約55.1万ドル、資金調達は約33.1万ドルです。助成金を失う場合との差は、プログラムだけで約30万ドルあります。この差が、理事会で「失うリスクと伸びる余地のどちらが大きいか」を話す材料になります。
前提を変えて見たいときは、同じ会話で数字だけ書き換えて頼み直せます。部門別の予算要求を前年実績と並べる点検は来期予算の要求集約で扱っています。
フォローアップで条件を変えて聞き直す
最初の3本で終わりにせず、同じ会話で聞き直せます。Academyの使用例には、次の3つが載っています。
- ある科目を固定する: 「シナリオAで資金調達費は現在の金額のまま固定して、削減分がどこに行くか見せてください」。一律カットでは見えなかった、実際に圧力がかかる場所が出ます
- 複数年に伸ばす: 「助成金が1年目に半分、2年目に残りの半分減る場合を描き直してください」。一括の削減と段階的な削減で、乗り切れるかどうかの読みが変わるかを比べます
- 理事会用の一文にする: 「3つのシナリオそれぞれについて、理事会に伝える一文を書いてください。数字ではなく実質的なトレードオフを」。グラフの下のメモが、発表用の言葉になります
静的な予算表とシナリオ比較チャートの使い分け
| 観点 | 静的な予算表 | シナリオ比較チャート |
|---|---|---|
| 条件を変えたとき | 静的な予算表表を作り直す | シナリオ比較チャート聞き直して再描画する |
| 会議での質問 | 静的な予算表持ち帰って計算する | シナリオ比較チャートクリックで一言解説が出る |
| 複数年の変化 | 静的な予算表別シートを用意する | シナリオ比較チャート「2年に伸ばして」で描き直す |
| 事前準備 | 静的な予算表表を作る手間は小さい | シナリオ比較チャート依頼文に見せ方の指定が要る |
一度きりの数字を見せるだけなら表で足ります。条件を変えながら議論したい場面で、チャートが効きます。
最初の按分をそのまま採用しない
Claudeが最初に描く按分は一律の比例カットで、推奨案ではありません。どの科目に余力があり、どの科目がほぼ固定費かは、組織の中の人のほうが分かっています。
シナリオAの一言解説が実感と合わないなら、感じている痛みどころを伝えます。Academyの解説では、そうすれば次のバージョンが実際に出したいものへ近づくとされています。
会議で使うときのひと工夫
グラフにカーソルを合わせると、ボードの資料用に画像としてコピーする選択肢と、Artifactとして保存する選択肢が出てきます。ライブで見せるなら、Artifactで保存しておくと、会議中にシナリオをクリックしながら説明できます。
画像コピーとの違いは、会議の途中で「その条件だとどうなる」と聞かれたときに、操作できる状態のグラフが手元にあることです。
会議の前に、3つのシナリオそれぞれを一文で言うとどうなるかを頼んでおくと、話す順番が先に決まります。資金調達を固定した版のように、質問が出そうな条件で描き直したものも、並べて保存しておくと答えやすくなります。
同じ「複数の未来を並べて描く」考え方は、人員配置の3案やプログラム拡大のペース別シナリオにも使えます。Academyの解説も、この依頼文の型は複数のシナリオを比べる質問全般に使えるとしています。
向く場面と向かない場面
チャートが得意なのは、圧力がどこにかかるかを素早く掴む場面です。経理に渡す財務モデルの代わりにはなりません。Academyの解説も、数字は予算そのものではなく形の比較だと位置づけています。
ざっくりした割合で全体の形を掴み、正式な数字は別途スプレッドシートで固めるという役割分担になります。
よくあるつまずき
- シナリオを増やしすぎる: Academyの使用例は3つの未来を並べています。シナリオが多いと棒が増えて比べにくくなるので、まず3つで描き、検討したい2案だけを別の会話で並べ直す手があります
- 固定費を伝え忘れる: 最初に出るのは一律カットなので、家賃のように動かせない科目は、金額まで添えて依頼文に書いておきます
- 会議の直前に初めて試す: トグルの切り替えや按分の調整を本番で覚えようとすると、議論に集中しにくくなります。自分の予算で一度試しておくと、会議中の操作に迷いません
- 金額表示だけで判断する: 比率表示にすると、配分のバランスが変わったのか、規模が縮んだだけなのかが分かります。両方の表示を見てから判断します
- 用途を書かずに頼む: 「シナリオを見せて」だけだと、何に使うかが伝わりません。「理事会に説明するため」「来月の意思決定のため」と添えると、用途に合った粒度に寄ります
NPO業務全体のどこに位置づくか
予算シナリオの比較は、NPOでのClaude活用のうち財務判断に関わる一部分です。組織運営や助成金申請を含めた全体像は非営利団体のClaude活用ガイドにまとめています。
どのチャネルに予算を振り向けるかを先に検討したい場合は、資金調達をチャネル別に分析する方法が参考になります。プログラムの因果関係のどこが弱いのかを見たい場合は、セオリー・オブ・チェンジをClaudeで可視化するも合わせて読むと、財務と事業ロジックの両面から検討できます。
まとめ
迷ったときは、条件を動かしながら話す会議ではチャート、承認を取る数字を出す場面では表、という線引きで足ります。チャートの按分は出発点なので、最終の数字だけはスプレッドシートに戻して固めます。