Claudeでデータマネジメントプラン(DMP)を下書きする手順 — 公募要領と突き合わせる
AMEDのDMP様式を題材に、研究メモを欄ごとの文案へ振り分け、公開範囲と保存先を書き分け、公募要領と突き合わせるまでの手順を示します。
ClaudeにDMPの下書きを頼むとき、任せる範囲
データマネジメントプラン(DMP)は、研究で生まれるデータを「何が、どこに、誰の管理で、どこまで公開されるか」で書き分ける計画書です。Claudeに向くのは、手元の研究メモを欄ごとの文案に振り分ける作業と、公募要領の要件との抜け漏れ探しです。
公開範囲の決定、同意文書との整合、所属機関のデータポリシーとの整合は人が負います。ここを下書きに任せると、提出後に直せない約束を書いてしまいます。
この記事は、様式と記載要領が公開されているAMEDのDMPを題材にします。他の資金配分機関は様式が違います。持ち出せるのは、素材表を作り、欄ごとに下書きし、公募要領と突き合わせる骨組みです。項目名は応募先の様式に置き換えてください。
助成金の候補をどう絞るかはClaudeで研究費の助成金候補を比較検討する方法で扱っています。応募先が決まった後の作業がこの記事です。
DMPは誰にいつ出すのか — 応募時とは限らない
AMEDは、すべての研究開発課題について、研究開発契約の締結または補助金の交付にあたってDMPの提出を義務づけています。年度ごとの契約時や変更の必要が生じたときは、記載内容を変えて出し直します。AMEDは必要に応じて助言したうえで変更を承諾します。
令和8年4月以降に締結する課題には、基本方針、ガイドライン2.2版、DMP様式202512が適用されます。旧版の様式で書いた下書きは使えないので、Claudeに渡す様式も最新の記載要領から取ります。
提出時期は資金配分機関と公募回で変わります。内閣府の「基本的な考え方」は、資金配分機関に対し、公募型研究資金の新規公募分でDMPと連動したメタデータ付与の仕組みを導入するよう求めています。応募書類の段階で書かせる機関もあれば、AMEDのように契約時に出させる機関もあります。公募要領の「提出書類」の節でまず時期を確かめます。
下書きの精度の基準になる点が1つあります。AMEDのガイドラインでは、DMPに記載のないデータ利用や、記載内容から逸脱する利用は、事前にAMEDの個別の承諾が要ります。DMPは、書いた範囲で自由にデータを使うための届出でもあります。ぼかした文案が返ってきたら、データの種類と提供先を具体的に書き直させます。
欄ごとに、どんな素材を手元に揃えるか
AMEDの記載要領が求める欄を、Claudeに渡す素材と対応づけると次のようになります。素材が揃っていない欄は、下書きの段階で空欄のまま残すほうが安全です。
| 欄 | 記載要領の指示 | 手元で揃える素材 |
|---|---|---|
| データの名称 | 記載要領の指示内容を可能な限りわかりやすく | 手元で揃える素材取得する測定や調査の種類と対象 |
| データの種別①② | 記載要領の指示ヒト個人、ヒト以外の生物由来、その他から選ぶ | 手元で揃える素材試料やデータの由来 |
| データの説明 | 記載要領の指示目的と、どんな試験で得られたか | 手元で揃える素材研究計画書の該当節 |
| データの件数、概略データ量 | 記載要領の指示人数や症例数。1ファイルあたりと全体の容量 | 手元で揃える素材症例数、ファイルサイズの見込み |
| 利活用・提供方針 | 記載要領の指示無償か有償か、ライセンス、制約 | 手元で揃える素材機関のルール、企業との契約条件 |
| データシェアリング方法 | 記載要領の指示6区分から選ぶ | 手元で揃える素材同意内容、知財、論文投稿の予定 |
| リポジトリ情報 | 記載要領の指示自組織のサーバー等、外部リポジトリ、未定から選ぶ | 手元で揃える素材保存先の候補、公開予定のDB |
| データ関連人材 | 記載要領の指示参加者リストに載る者のみ | 手元で揃える素材参加者リスト |
素材表から欄ごとの下書きまで、5つの手順
DMPを下書きから提出前確認まで進める流れ
- 1
データごとの素材表を作る
データセットごとに1行にします。列は上の表の「手元で揃える素材」です。複数のデータが生まれる課題では、記載要領もデータごとに分けて書くよう求めています。
- 2
欄ごとに下書きさせる
素材表と、記載要領の該当欄の文を渡し、欄ごとの文案を出させます。下に指示文の例を置きます。
- 3
根拠と要確認を列にさせる
文案ごとに、素材表のどの行から書いたかを併記させます。素材にない事項は推測で埋めず「要確認」と書かせます。
- 4
公募要領と突き合わせる
公募要領の該当箇所とDMPの文案を2列で対応づけさせます。次の節で詳しく扱います。
- 5
倫理審査と機関の窓口に回す
同意文書、データポリシー、リポジトリの運用は、所属機関の担当者でないと答えられません。要確認の列がそのまま質問リストになります。
指示文の例です。素材表は貼り付けの形で渡します。
以下の素材表から、AMED DMP様式202512の各欄の文案を作ってください。
- 記載要領の該当欄の指示に従い、欄ごとに表で出力する
- 各文案に、根拠にした素材表の行番号を付ける
- 素材表にない事項は「要確認」と書き、推測で補わない
- データの名称は、第三者が読んで中身を判断できる名前にする
- 共有先が不明なら、不明と書く。具体名を作らない
素材表:
(ここに貼り付け)
記載要領の該当欄:
(ここに貼り付け)この指示で固定しているのは、根拠の列と「要確認」の2点です。Claudeの文案はなめらかなので、根拠がないと素材にない記述が混じっても気づけません。
公開範囲を書き分ける — 最も人の判断が要る欄
データシェアリング方法(アクセス権)は、非制限公開、制限公開、制限共有(外部関係者と共有)、制限共有(内部関係者と共有)、非公開、その他(未定など)から選びます。記載要領は、適するデータの例を区分ごとに挙げています。
| 区分 | 記載要領が挙げる適例 |
|---|---|
| 非制限公開 | 記載要領が挙げる適例利用者の範囲を制限せず、個人の特定につながらないデータ等 |
| 制限公開 | 記載要領が挙げる適例データベースに登録し、限定された者だけに公開するもの |
| 制限共有 | 記載要領が挙げる適例個人の特定性が高い臨床情報、企業導出、知財取得、論文投稿前のデータ |
| 非公開 | 記載要領が挙げる適例法令上、人道上、安全保障上、公開に問題があるデータ |
内部関係者は研究開発参加者リストに載る参加者、外部関係者はそれ以外の未参画者です。薬事承認申請で企業にデータを渡す場合、その企業は外部関係者に当たります。
内閣府の「基本的な考え方」は、公開を「任意の者が利活用できる状態で供すること」、共有を「アクセス権を付与された限定者が利活用できる状態で供すること」と区別します。論文のエビデンスとなる研究データは原則公開としつつ、個人情報、企業の秘密情報、研究の新規性などの観点から留意が要るデータは非公開とします。時限付きの非公開(エンバーゴ)を置く想定も示されています。
Claudeには、データごとに「候補を2つ挙げ、選ぶ場合に必要な理由欄の文案を付ける」ように頼むと使いやすくなります。理由欄が書けるかどうかが、その区分を選べるかどうかの試金石になるからです。非公開、制限共有、その他を選んだときは、非制限公開か制限公開にしない理由と、移行までの期間を書く決まりです。
落とし穴
同意文書より広い公開範囲を書いてしまう
記載要領では、個人情報を含むデータの利活用の同意が「あり」になるのは、学術研究以外の目的(民間企業の製品開発や商用利用を含む)にも使われる可能性への同意を取っている場合です。同意説明文書の記述が学術利用に限られているなら、企業提供を前提にした公開範囲とは食い違います。説明文書の雛形部分だけをClaudeに渡し、DMPの文案との矛盾を探させます。被験者の個人情報は渡しません。
保存先と保存期間の欄は、書ける範囲が決まっている
記載要領の「リポジトリ情報」は、自組織のサーバー等、公開されている外部のリポジトリやデータベース等、未定から選びます。外部を選んだときは名称、URL、DOIがあればそのリンクを書きます。臨床研究でEDC(Electronic Data Capture)を導入している場合は、EDCからダウンロードしたデータの保存場所を書きます。紙のワークシートは「その他」です。
保存期間という名前の欄は、記載要領の項目一覧には載っていません。期間に関わる記載は、公開日・公開予定日と、研究期間終了後の扱いです。
- 研究期間の終了後は、公開に適さない場合を除き、制限公開か非制限公開にするのが原則です
- 終了にあたってDMPを出して承諾を受ければ、「終了後2年」と「成果の公表時(論文採択、特許出願公開等)」の早いほうまで、期間中のシェアリング方法を続けられます
- 公開日が未定なら空白、日付が不明なら該当月の末日を入れます
Claudeに頼めるのは、所属機関のデータポリシーの条文を貼ったうえで、DMPの文案との食い違いを洗い出す作業です。保存年限が機関で決まっている場合は、DMPの文案ではなく機関の規定が優先されます。条文を渡さずに「一般的な保存期間」を聞くと、根拠のない数字が返ってくるおそれがあります。
第三者が読んで使えるか — データの名称と説明を磨く
AMEDは、DMPでこの課題以外での利活用の可能性が「あり」とされたデータについて、記載内容をカタログ化し、検索できるデータベースAMED DataCatに載せます。記載要領では、緑色の欄が研究終了後にカタログへ掲載される部分で、公開可能な情報を書くよう求めています。データの名称は、長期にわたり利用の多寡を左右する看板だとも書かれています。
内閣府のメタデータ共通項目でも、データの名称は「学会資料、報告資料、測定結果などの中身の分からない名称は避ける」、データの説明は「端的かつ中身の分かる内容を記載」と指示されています。
ここはClaudeが得意とする領域です。下書きした名称と説明だけを渡し、次のように査読させます。
この名称と説明を、研究分野の異なる研究者が読んだとして、データの種類、対象、取得方法、利用条件が分かるか判定してください。分からない点は質問の形で挙げてください。
返ってきた質問に答える形で書き足すと、素材にない推測を入れずに説明が具体化します。
公募要領との突き合わせは、2列の対応表で行う
公募要領のPDFとDMPの文案を両方渡し、要件ごとに対応を出させます。
公募要領のDMP・データ公開に関する記述を、要件ごとに1行で抜き出し、
次の2列の表にしてください。
- 左列: 公募要領の要件(原文をそのまま引用し、ページを付ける)
- 右列: DMP文案の対応箇所。対応がなければ「記載なし」
原文にない要件は作らないでください。原文の引用とページを必須にしておくと、返ってきた要件を公募要領のPDFで引き直せます。引用が原文と合わないときは、その行を採用しません。PDFを添付するときの上限はClaudeで研究費の助成金候補を比較検討する方法にまとめてあります。
「記載なし」の行は、DMPの書き漏れか、そもそも別の書類で求められている要件かのどちらかです。判定は申請担当者に聞くか、公募要領の様式一覧で確かめます。
申請書そのものへの生成AIの利用が公募要領でどう扱われているかは、科研費の申請書に生成AIを使っても大丈夫かで、科研費の公募要領を例に見ています。応募先ごとに確認が要ります。
欄と要件の対応表を作る型は、規程との対応表を下書きさせるISMSの適用宣言書(SoA)をClaudeで下書きすると同じです。
Claudeに渡してはいけないもの
DMPの下書きに必要なのは、データの種類や件数などの設計情報です。被験者の氏名、診断名と結びついた記録、未公表の結果そのものは要りません。素材表の段階で、集計した件数や区分だけにしておきます。
個人のプランでClaudeを使うときは、会話がモデル改善に使われる条件も確認します。AnthropicのPrivacy Centerによると、Free、Pro、Maxのアカウントでは、利用者がモデル改善への利用を許可している場合、会話とコーディングセッションが使われます。安全性審査の対象としてフラグが付いた会話も対象です。Incognitoチャットは、設定でモデル改善を有効にしていても改善には使われません。コネクターの生の内容は対象に含まれませんが、会話に直接コピーした内容は含まれ得ると書かれています。
法人向け製品やAPIは別の扱いで、同じ記事の冒頭に、商用製品については別のページを見るよう案内があります。所属機関がClaudeの契約を結んでいる場合は、その契約の条件が適用されます。契約外の個人アカウントに研究データを入れてよいかは、機関のルールで決まります。
提出前に、人が見る3点
下書きが揃ったら、次の3点は人の目で確かめます。
- 公開範囲の区分と、同意説明文書、共同研究契約の記述が食い違っていないか
- リポジトリ情報とデータ管理機関名が、機関の担当部署の回答と合っているか
- 緑色の掲載欄に、公開して差し支えない内容だけが入っているか
「要確認」が残ったまま出さないことが、この手順の唯一の出口条件です。
提出後にデータの共有先を追加・変更する場合は、変更後のDMPとあわせて、データの第三者提供を目的とするDMP変更に係る変更申請書を出し、承諾を受ける必要があります。最初の下書きでどこまで具体的に書けるかが、後の手続きの量を左右します。