Claude Media
Claudeでクリニック受付の電話対応スクリプトを整える — 症状は診断せず受診案内へ

Claudeでクリニック受付の電話対応スクリプトを整える — 症状は診断せず受診案内へ

クリニック受付の電話対応と予約変更の応答集を、Claude Projectsで下書きして更新する手順です。症状の訴えを診断せず受診案内につなぐ線引きと、患者情報を入れない設計を扱います。

クリニックの受付に届く電話は、予約の変更、持ち物の確認、診療時間の問い合わせなど、答えが決まっているものが大半です。そこに「昨日から熱があって」「この薬を飲んでも大丈夫か」といった症状や服薬の相談が混ざります。後者に受付が答えてしまうと、診察の代わりをしてしまいます。

この記事では、前者の定型応答をClaude Projectsで下書きして更新し、後者は診断せず受診案内へつなぐ線引きを、プロジェクト指示とナレッジに落とす手順を扱います。結論を先に言うと、Claudeに任せるのは応答文の下書きと見直しまでです。電話口で患者の症状を判定させる使い方にはしません。

患者側が症状をClaudeに聞く場合の注意は、Claudeで症状を検索するときの注意点にあります。ここで扱うのは、医院の受付スタッフが応答集を整える側の話です。

受付が答えてよい範囲を先に決める

線引きの根拠になるのは医師法です。第17条は「医師でなければ、医業をなしてはならない」と定めています。症状を聞いて病名を言う、薬を飲んでよいかを判断する、といった行為は、受付スタッフには許されません。これはClaudeが下書きした文面を読み上げる場合でも同じです。

応答集では、受付が答える内容と、診察につなぐ内容をはっきり分けます。

くらべる

受付で答える内容と、つなぐ内容

定型

受付が答える

診療時間、休診日、予約の取り方と変更・キャンセルの手順、初診で持参するもの、保険証の確認方法、駐車場や道順です。院内の決まりごとに答えがあるものに限ります。

線の向こう

診察につなぐ

症状の原因や病名の推測、受診が必要かどうかの判断、薬の飲み合わせや量、検査結果の意味です。「医師が診察でお答えします」と伝えて受診を案内します。

急を要する訴えの扱いも、院長や看護師長と相談して決めておきます。たとえば「呼吸が苦しい」「意識がおかしい」といった訴えは、受付が様子を聞き出すのではなく、救急の案内に切り替えると決めておく方法があります。この判断基準はClaudeに作らせず、医師が決めた文面を応答集に入れます。

応答集をProjectsで回す全体像

Projectsは、プロジェクト指示とナレッジを持つ作業場です。Freeを含むすべてのプランで使え、Freeは5件までのプロジェクト数の制限があります。応答集の更新は、次の流れになります。

流れ

応答集が更新されるまで

  1. 1

    診察側が線引きを決める

    答えてよい範囲、つなぐ文言、救急案内の条件を、院長や看護師長が文章にします。

  2. 2

    Claudeが応答文を下書きする

    決まった線引きに沿って、電話の想定ごとに受付の言い回しを作らせます。

  3. 3

    受付スタッフが読み上げて直す

    実際に声に出し、言い回しが不自然な箇所や、院内の運用と合わない箇所を直します。

  4. 4

    確定した文面だけをナレッジに戻す

    直したあとの文面を応答集に登録し、次の更新で参照させます。

プロジェクトを作り、ナレッジと指示を入れる

claude.ai/projectsで「+ New Project」を選び、名前と説明を入れます。この名前と説明にClaudeはアクセスできないため、基準の本文はナレッジかプロジェクト指示に書きます。

ナレッジには、プロジェクト画面右側の「+」から次のような文書を入れます。

  • 診療時間・休診日・担当医の曜日表(院内で公開している情報)
  • 予約変更・キャンセルの院内ルール(何時までの連絡で変更できるか、など)
  • 初診の持ち物と流れを書いた案内文
  • 診察側が確認した「つなぐ文言」の一覧と、救急案内の文言

患者名や診療内容を含む文書は入れません。理由は後の節で説明します。ナレッジが文脈の上限に近づくと、有料プランでは自動でRAGモードに切り替わり、容量が最大で10倍に広がります。ただし、院内の応答集は数十ページに収まることが多く、通常は意識しなくて済みます。

プロジェクト指示は「Set project instructions」から登録します。登録した指示は、プロジェクト内のすべてのチャットに効きます。

プロジェクト指示の例

次は、線引きを指示に書き込んだ一例です。院名や運用は自院のものに置き換えます。

プロジェクト指示の例(クリニック受付の応答集)
あなたは当院の受付業務を支援するアシスタントです。
受付スタッフが電話で使う応答文の下書きを作ります。
 
守ること
- 病名の推測、受診の要否の判断、薬の飲み方の助言は書かない。
  該当する問い合わせの応答は「医師が診察でお答えします」と
  案内し、予約の取り方につなぐ文にする。
- 「呼吸が苦しい」「意識がおかしい」など、ナレッジの
  「救急案内の条件」に当たる訴えは、ナレッジの定型文をそのまま使う。
- 診療時間、予約変更の期限など院内のルールは、ナレッジに
  書かれている内容だけを使う。書かれていなければ「要確認」と
  明記し、推測で埋めない。
- 出力は、受付スタッフが電話で読み上げやすい短い文にする。
  一文は60字以内にし、専門用語を使わない。
 
出力の形式
1. 想定される電話の場面
2. 受付の応答文(挨拶から締めまで)
3. 案内先(予約・診察・救急のどれか)
4. ナレッジのどの文書に基づくか

「要確認と明記し、推測で埋めない」の一文は効きます。診療時間や変更期限は、院ごとに違います。Claudeが一般的な医院の運用で空白を埋めてしまうと、電話で誤った案内をするもとになります。

応答集の例: 予約変更と症状の訴え

指示を登録したら、電話の場面を入力して下書きを作らせます。次は、予約変更と症状の相談の2場面を入力して得られる応答文の形の一例です。実際の出力はナレッジの内容によって変わるので、必ず読み上げて確かめます。

応答集の例(予約変更)
場面: 明日の予約を来週に変更したいという電話
応答:
 「お電話ありがとうございます。○○クリニックでございます。
  ご予約の変更ですね。お名前と生年月日をお願いします。
  明日のご予約を確認いたしました。
  変更は前日の午後5時までにお電話をいただければ承ります。
  来週は、火曜日と木曜日の午前に空きがございます。
  ご希望の日時はいかがでしょうか」
案内先: 予約
根拠: 予約変更ルール(ナレッジ)

この例の「前日の午後5時まで」は、ナレッジに書いたルールを使った想定の数値です。自院の運用に合わせて置き換えます。

応答集の例(症状の訴え)
場面: 「昨日から熱があるが、受診が必要か」という電話
応答:
 「おつらい状況ですね。受診が必要かどうかは、
  医師が診察でお答えします。
  本日の診察は午後5時までの受付です。
  ご来院のご予約をお取りしましょうか。
  息苦しさが強い、意識がもうろうとするなど、
  急を要する場合は、救急にご連絡ください」
案内先: 診察の予約 / 急を要する場合は救急
根拠: つなぐ文言(ナレッジ)

症状の例では、受付の応答に病名も受診の要否も入っていません。「受診が必要かどうか」を答える代わりに「医師が診察でお答えします」で受け、予約へつなぎます。救急案内の文は、診察側が確認した文面を使います。

患者情報を入れない設計にする

応答集づくりでは、患者の個人情報をClaudeに入れない設計にします。理由は2つあります。

1つ目は、法律上の扱いの重さです。個人情報保護法は、病歴を含む個人情報を「要配慮個人情報」と定め、第20条第2項で、本人の同意を得ないで取得してはならないとしています。受付が電話で聞いた症状や通院歴は、これに当たる可能性があります。

2つ目は、入力した情報の扱いです。個人向けプラン(Free・Pro・Max)について、Claudeのヘルプセンターは、健康記録や医療情報のような機微な個人情報の入力に慎重になるよう案内しています。モデル改善への利用を許可している場合は、チャットが学習の対象になりえます。自院で使うプランと設定は、事前に確かめておきます。

応答集づくりは、この問題を避けやすい仕事です。電話の場面は「予約を変更したい電話」のように一般化して入力し、患者名や症状の具体的な内容は伏せます。実際の通話記録を教材にしたいときは、名前・生年月日・症状を削除してから使います。

共有する範囲を決める

TeamまたはEnterpriseのプランなら、プロジェクトを院内で共有できます。共有時の権限は、Can viewとCan editの2段階です。Can viewのメンバーは、プロジェクトの内容・ナレッジ・指示を見られ、チャットもできますが、編集はできません。

受付スタッフ全員に応答集を配る一方で、書き換えは院長や受付責任者に限るなら、スタッフはCan viewにします。プロジェクトを作るときの公開範囲は「Keep it private」にし、必要な人だけを招待する方法があります。後から公開範囲を変えることもできます。

共有しても、各メンバーのチャット履歴は他のメンバーに見えません。ただ、ナレッジに入れた文書は、見られる全員が読めます。院内の連絡網や個人の電話番号のような情報は、ナレッジに入れない運用が無難です。

実際の電話で試して直す

下書きができたら、受付スタッフが次の3点を確かめます。

  1. 声に出して読んで、60字を超える長い文がないか
  2. 病名の推測や、受診の要否を断定する言い方が混ざっていないか
  3. ナレッジに書いていない運用(変更期限、診療科の対応範囲)を勝手に補っていないか

直す場所は、チャットではなくプロジェクト指示かナレッジです。Projectsでは、ナレッジに追加した情報だけが全チャットに効き、チャットの中で伝えたことは次のチャットに残りません。「もっと丁寧に」とチャットで頼んでも、次の作業では元に戻ります。丁寧さの基準は、指示に「敬語は『ございます』を基本にする」のように書きます。

診療時間や担当医が変わったら、ナレッジの該当文書を差し替えます。文書の更新日をファイル名に入れておくと、古い版を引いていないかを見分けやすくなります。

院外に出す文面は別に確認する

電話の応答集とは別に、院のウェブサイトや看板に載せる文面には、医療広告のルールがかかります。Claudeに下書きを頼むのは便利ですが、広告に当たる表現の点検は別の作業です。医療広告ガイドラインをClaudeで点検する方法が、誤判定しやすい点を扱っています。

患者への返信文のテンプレート化については、Claudeで問い合わせ返信を作るに個人情報の注意点があります。患者から開示請求を受けた場合の対応は、保有個人データの開示請求対応をClaudeで整える手順が、判断表をProjectsに置く形で扱っています。医師が紹介状を下書きする場面の境界は、医師がClaudeで紹介状を下書きする際の法的境界にあります。

まとめ

クリニック受付の電話対応は、答えが決まっている部分をClaudeで下書きし、症状に関わる部分は診察側が決めた文面で受診案内へつなぐ形にすると、役割がぶれません。医師法第17条の線引きは、Claudeではなく人が決め、プロジェクト指示とナレッジに書き込みます。患者の個人情報は入れず、場面を一般化して入力します。応答集の更新は、チャットではなくナレッジで行います。

この記事を共有:XはてブLinkedIn