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株主総会の想定問答をClaudeのProjectsで作る — 招集通知の点検から

株主総会の想定問答をClaudeのProjectsで作る — 招集通知の点検から

過去の招集通知・事業報告・議事録をClaudeのProjectsに置き、招集通知の点検と議長・担当役員向けの想定問答を作る手順を、会社法の条文とあわせて紹介します。

株主総会の準備をProjectsに載せるとは

株主総会の準備をClaudeのProjectsに載せるとは、前年の招集通知・事業報告・議事録をプロジェクトナレッジに置き、今年の招集通知の点検と想定問答づくりを同じ場所で続けることです。総会準備は毎年ほぼ同じ形で巡ってきます。ところが担当者は替わり、前年の判断理由は資料の山に埋もれます。

Projectsは、独自のチャット履歴とナレッジを持つ作業スペースです。資料をアップロードして文脈を与え、その上でClaudeと会話できます。総会のように「過去の資料が答えの大半を握っている」仕事と相性がよい使い方です。

この記事で作るのは次の2つの成果物です。

  • 招集通知案を、前年版と会社法の記載事項に照らして点検した指摘リスト
  • 議長用と担当役員用に分けた、根拠資料つきの想定問答集

Claudeの出力は下書きです。法的な判断や、実際に何を答えるかの決定は、法務部門や顧問弁護士、取締役会の側にあります。

始める前に押さえるプランとファイルの条件

Projectsは無料アカウントを含む全ユーザーが使えますが、無料アカウントで作れるプロジェクトは最大5つです。ナレッジが多いほど有利になるRAG(検索拡張生成)は、有料プラン(Pro、Max、Team、Enterprise)で使えます。ナレッジがコンテキストウィンドウの上限に近づくと、Claudeが自動でRAGモードに切り替え、容量が最大10倍まで広がります。

プロジェクトファイルの条件は次のとおりです。

項目内容
1ファイルのサイズ内容30MBまで
ファイル数内容制限なし(総量はコンテキストウィンドウに収まる範囲)
読み取り内容テキスト抽出のみ(マルチモーダルPDFを除く)

スキャンした議事録のように文字が画像になっているものは、読めない可能性があります。テキストを持つPDFかWordで置くほうが安全です。写真の多い資料は、図表の中身をテキストでも書き添えます。容量の詳しい比較はClaudeのファイル上限にまとめています。

もう1点、見落としやすい仕様があります。プロジェクト作成時に入れる名前と説明は、Claudeには渡りません。「この会社は上場会社で、3月決算」といった前提を説明欄に書いても効かないため、後で書くプロジェクト指示かナレッジに入れます。

ナレッジに置く資料を選ぶ

置く資料は、点検の基準になるものと、回答の根拠になるものに分けて考えると整理しやすくなります。

区分置く資料の例使いどころ
点検の基準置く資料の例前年の招集通知、定款、取締役会規程使いどころ記載漏れ・前年との差分の確認
回答の根拠置く資料の例事業報告、計算書類、決算説明資料使いどころ業績・財務の質問への回答案
過去の実績置く資料の例前年の議事録、当日の質疑メモ使いどころ実際に出た質問の傾向の把握
今年の材料置く資料の例招集通知案、議案の説明資料使いどころ点検と想定問答の対象

議事録は会社法318条で作成が義務づけられており、総会の日から10年間、本店に備え置く決まりです。つまり過去の質疑の記録は、社内に必ずあるはずの資料です。質問の傾向を知る一次情報として、最も活用しやすい素材といえます。

未公表の決算数値や、公表前の人事・M&Aの情報は置く前に立ち止まります。社内の情報管理ルールで、外部サービスへ入力してよい範囲を先に決めておくのが前提です。入力情報の扱いはClaudeに機密情報を入力しても安全かで整理しています。公開済みの資料から始めれば、この論点を避けて試せます。

プロジェクト指示で役割と禁止事項を固定する

「プロジェクト指示を設定」から、全チャットに効く指示を保存します。ここで役割・出力形式・やってはいけないことを決めておくと、チャットごとに説明し直す手間が消えます。

プロジェクト指示の例
あなたは上場会社の株主総会事務局を補助するアシスタントです。
ナレッジの資料だけを根拠にしてください。
- 回答案には必ず根拠の資料名とページ(または章)を付ける
- ナレッジに根拠が無い数字や事実は書かず「根拠資料なし」と明記する
- 法令の解釈は断定せず、法務部門への確認事項として分けて出す
- 未公表情報を示唆する表現は避け、公表済みの内容に限って答える

「根拠資料なし」と書かせる指示は特に効きます。想定問答で最も困るのは、もっともらしい数字が混じることです。出所を必須にしておけば、確認すべき箇所が一目で絞れます。

招集通知案を点検する

招集通知の点検は、前年版との差分と、会社法の記載事項の2方向で行います。条文はナレッジに入れず、チャットに貼って照合させます。

会社法の主な論点は次のとおりです。

  • 招集の決定事項(298条): 総会の日時・場所、目的事項、書面や電磁的方法で議決権を行使できる旨など。取締役会を置く会社では、取締役会の決議で決めます
  • 通知の期限(299条): 公開会社は総会の日の2週間前までに発します。公開会社でない会社は1週間前までです。ただし書面や電磁的方法による議決権行使を定めた場合は、2週間前になります
  • 通知の方式(299条): 取締役会を置く会社では書面で通知します。株主の承諾があれば、電磁的方法に代えられます
  • 参考書類(301条): 書面による議決権行使を定めたときは、参考書類と議決権行使書面を交付します
  • 電子提供措置(325条の3): 定款に定めがある会社は、総会の日の3週間前の日か、通知を発した日の早いほうから、総会の日後3か月を過ぎる日まで、情報を継続して提供します

電子提供措置を採用している会社では、期限の起算日が変わる点に注意が要ります。発送日の確認では、書面交付を請求した株主へ渡す書面(325条の5)の準備も落とせません。

招集通知の点検プロンプト例
添付の「今年の招集通知案」を、次の2点で点検してください。
1. 前年の招集通知との差分を、議案・役員の異動・日程ごとに表にする
2. 以下に貼る会社法298条・299条・301条・325条の3の条文に照らし、
   記載漏れや期限の不整合が疑われる箇所を挙げる
疑いのある箇所は「確認先: 法務部門」と付け、断定はしないでください。
 
(ここに条文を貼る)

返ってきた指摘は、そのまま信じず原文で裏取りします。Claudeが見るのは貼られた条文と資料の範囲だけで、会社の定款の細かな定めや最新の改正を取りこぼすことがあります。指摘の1つ1つに「定款第○条」「招集通知案p.○」といった所在を付けさせると、確認作業が速くなります。

想定問答を議長用と担当役員用に作る

株主から特定の事項について説明を求められたとき、取締役・監査役などは必要な説明をする義務を負います(314条)。例外は、総会の目的事項に関しない場合、株主の共同の利益を著しく害する場合、その他法務省令が定める正当な理由がある場合です。想定問答では、「答える質問」と「答えない理由がある質問」を最初から分けて準備します。

一方、議長は総会の秩序を維持し、議事を整理する立場にあります。秩序を乱す者の退場を命じる権限もあります(315条)。議長が持つのは進行の権限であり、個別の数字に答える役割とは別物です。ここで、役割ごとにチャットを分ける意味が生まれます。

進め方は、次の3段階が扱いやすくなります。

  1. 質問の洗い出し: 前年の議事録と今年の議案から、出そうな質問を分野別に挙げさせます
  2. 回答案の作成: 質問ごとに、回答案・根拠資料・回答者・答え方の注意を表にします
  3. 反対質問の検証: 作った回答案に対し、株主の立場で再質問を重ねさせます
質問の洗い出しプロンプト例
前年の議事録と、今年の事業報告・議案をもとに、株主から出そうな
質問を分野別(業績、株主還元、役員報酬、議案、事業リスク、ESG)に
挙げてください。前年に実際に出た質問は「前年実績」と付けてください。
回答案の出力形式の指定例
各質問を表にしてください。列は次のとおりです。
質問 / 回答案(200字以内) / 根拠資料 / 回答者(議長・社長・
担当役員・監査役) / 答え方の注意 / 法務確認の要否
根拠資料が無い項目は、回答案を空欄にして「根拠資料なし」と書く。

議長用は進行上の想定(動議、議事進行への異議、質問が続く場合の整理)を中心にします。担当役員用は、各分野の数字と経緯を中心にします。同じ回答案の表から、回答者の列で絞り込むだけで両方の素材が取り出せます。

最後の検証が、準備の質を大きく左右します。「この回答に対して、さらに厳しい再質問を3つ挙げてください」と頼むと、一度の回答案では見えなかった穴が出ます。再質問への回答案も同じ表に足していきます。

チャットをまたぐときの注意と共有

Projectsでは、あるチャットの内容は、ナレッジに入れない限り別のチャットに引き継がれません。議長用のチャットで固めた回答案を、担当役員用のチャットでも使いたいときは、完成した版をファイルにしてナレッジへ足します。版を更新したら、古いファイルを外します。新旧が混在すると、どちらを根拠にしたのか分からなくなります。

総会準備を複数人で進めるなら、TeamまたはEnterpriseプランでプロジェクトを共有できます。権限は2段階です。

  • 閲覧のみ: ナレッジと指示を見て、プロジェクト内でチャットできますが、編集はできません
  • 編集可: 指示とナレッジを変更し、メンバーを追加・削除できます

事務局の責任者に「編集可」、役員や部門担当に「閲覧のみ」を割り当てる運用が考えられます。想定問答集には未公表の情報が含まれやすいので、組織全体への公開は選ばず、特定のメンバーだけに共有します。管理者が公開プロジェクトを無効にしている場合もあります。設定の影響はClaude組織のプロジェクト公開を無効化する方法に詳しく書いています。

よくあるつまずき

  • ナレッジの検索が資料の一部しか拾わない: 大量の資料でRAGが働くと、関連箇所を検索して取り出す方式になります。「前年の議事録の役員報酬に関する質疑」のように、資料名と分野を指定して聞くと拾いやすくなります。仕組みはClaude ProjectsのRAG検索にまとめています
  • 数字がずれる: 決算説明資料と事業報告で表記の単位が違うことがあります。回答案の数字は、必ず原本の該当箇所と突き合わせます
  • 回答案が「誰でも言える一般論」になる: 資料にない質問に当たると、一般論に流れやすくなります。指示の「根拠資料なし」の規則で、空欄として表に出させます
  • 法令の細部が曖昧になる: 条文は毎回、貼って渡します。法務省令の定めのように条文に書かれていない部分は、法務部門に確認する項目として分けます

契約審査のように、基準を資料にして繰り返し使う運用の作り方は、Claude Projectsで法務レビューのプレイブックを標準化する方法でも同じ型で扱っています。

まとめ

株主総会の準備は、毎年同じ型で繰り返す仕事です。前年の招集通知・事業報告・議事録をProjectsに置いておけば、点検も想定問答も「根拠資料つき」で再現できます。成否を分けるのは、出所を必ず付けさせる指示と、回答者ごとの出力形式の2つです。

最初の一歩は、公表済みの資料だけで小さく試すことです。前年の招集通知と議事録を置き、差分表と想定質問の洗い出しを動かしてみると、自社の資料でどこまで使えるかが分かります。

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