Claude Media
中期経営計画の作り方 — Claudeで骨子と3シナリオを組み立てる手順

中期経営計画の作り方 — Claudeで骨子と3シナリオを組み立てる手順

前期の中計総括・事業別実績・外部環境メモをClaudeのProjectsに置き、骨子、重点施策、数値目標の3シナリオ案へ進める手順を紹介します。数値は人が前提を確認する線引きつきです。

中期経営計画をProjectsで組み立てるとは

中期経営計画(中計)をClaudeのProjectsで組み立てるとは、前期の総括、事業別の実績、外部環境のメモを同じ作業スペースに置き、骨子、重点施策、数値目標の順に下書きを積み上げることです。中計づくりは数か月にわたり、資料も会議も増えます。途中で「前提は何だったか」が曖昧になると、数字の根拠が追えなくなります。

Projectsは、独自のチャット履歴とナレッジ(知識ベース)を持つ作業スペースです。資料をアップロードして文脈を与え、その上でClaudeと会話できます。数か月続く検討に、前提資料を固定して使い回せる点が向いています。

この記事で作るのは、次の3つの成果物です。

  • 前期中計の総括メモ(達成と未達の要因を、事業別に整理したもの)
  • 骨子案と重点施策の一覧(施策ごとに、狙う指標と前提を付けたもの)
  • 数値目標の3シナリオ案(前提表と、前提を動かしたときの差分つき)

ただし、Claudeが出すのは下書きです。どのシナリオを採るか、数値目標をいくつに置くかは、経営陣と取締役会の判断になります。数字については、人が前提を確認する線引きを後半で具体的に示します。

始める前に押さえるプランとファイルの条件

Projectsは無料アカウントを含む全ユーザーが使えます。無料アカウントで作れるプロジェクトは最大5つです。ナレッジが増えたときに容量を広げるRAG(検索拡張生成)は、有料プラン(Pro、Max、Team、Enterprise)で使えます。ナレッジがコンテキストウィンドウの上限に近づくと、Claudeが自動でRAGモードに切り替わり、容量が最大10倍まで広がります。

プロジェクトに置くファイルの条件は次のとおりです。

項目内容
1ファイルのサイズ内容30MBまで
ファイル数内容制限なし(総量はコンテキストウィンドウに収まる範囲)
読み取り内容テキスト抽出のみ(マルチモーダルPDFを除く)

中計の素材は、図表の多い取締役会資料や、スキャンした会議メモが混ざりがちです。テキスト抽出のみという条件から、画像になった表は読めない場合があります。Excelの実績表は、数値をテキストで持てる形(CSVやExcel)で置くほうが安全です。容量の比較はClaudeのファイル上限で整理しています。

もう1点、見落としやすい仕様があります。プロジェクトを作るときに入れる名前と説明は、Claudeには渡りません。「当社は3か年で売上を伸ばす計画」といった前提を説明欄に書いても効かないため、プロジェクト指示かナレッジに入れます。

ナレッジに置く資料と、置かない資料

置く資料は「過去を語るもの」「外を語るもの」「社内の約束事」に分けると整理しやすくなります。

区分置く資料の例使いどころ
過去置く資料の例前期中計の本文、年度ごとの計画対実績、取締役会の議事要旨使いどころ総括と、達成・未達の要因分析
外部置く資料の例業界動向のメモ、競合の公表資料、顧客・取引先ヒアリングの要約使いどころ外部環境と機会・脅威の整理
社内置く資料の例経営理念、事業部ごとの方針、投資や人員の制約使いどころ骨子と施策の取捨選択
数値置く資料の例事業別の売上・利益の実績表(CSV)、費用の内訳使いどころシナリオの土台と検算

資料は「いつ時点か」が分かる名前で置きます。たとえば「2025年度_事業別実績_確定.csv」と「2026年度_事業別実績_見込み.csv」を分けておくと、確定値と見込みを取り違えにくくなります。RAGが有効なプロジェクトでは、Claudeがプロジェクトナレッジの検索ツールで該当箇所を取り出します。ファイル名をわかりやすくし、質問でも資料名を指定すると、検索が狙いどおりに働きます。仕組みはClaude ProjectsのRAG検索の仕組みにまとめています。

未公表の業績見通しや、M&Aなど公表前の情報は、置く前に立ち止まります。社内の情報管理ルールで、外部サービスへ入力してよい範囲を先に決めておくのが前提です。判断の材料はClaudeに機密情報を入力しても安全かで扱っています。公表済みの資料と、数字を丸めた版から試す進め方なら、この論点を避けて始められます。

プロジェクト指示で「数字の扱い」を先に固定する

「プロジェクト指示を設定」から、全チャットに効く指示を保存します。中計では、役割や口調よりも先に「数字をどう扱うか」を決めておくのが要点です。

プロジェクト指示の例
あなたは経営企画部の中期経営計画づくりを補助するアシスタントです。
ナレッジの資料だけを根拠にしてください。
- 数値を出すときは、必ず元の資料名と項目名を付ける
- ナレッジにない数値は作らず「資料なし。要確認」と書く
- 将来の数値は「前提」と「計算結果」を分けて書き、前提に番号(A1, A2...)を振る
- 前提の置き方に迷う箇所は、結論を出さず選択肢と影響を並べる
- 合計や比率は、計算の式を併記する

この指示は、後の数値シナリオで効いてきます。前提に番号を振らせておくと、あとで「A3の前提を変えたら結果はどう動くか」を会話の中で追えるようになります。

プロジェクトに入れた指示とナレッジは、そのプロジェクト内の全チャットで使われます。一方で、あるチャットの内容は、ナレッジに入れない限り別のチャットに引き継がれません。段階ごとに作った成果物は、確定した版をファイルにして、ナレッジへ足していきます。

手順1: 前期中計の総括をつくる

最初の成果物は、骨子ではなく総括です。前期を言語化しないまま次の計画に進むと、同じ課題を別の言い方で繰り返す結果になりやすくなります。

総括の依頼プロンプト例
ナレッジの「前期中計の本文」と「年度別の計画対実績」をもとに、
事業別に次の表を作ってください。
列: 事業 / 計画値 / 実績値 / 差 / 要因(資料にある説明) / 要因の裏づけ資料
資料に要因の説明がない行は、推測せず「説明なし」と書き、
最後に「説明が足りない事業」を一覧にしてください。

ここでの工夫は、「要因」を資料にある説明に限らせ、説明がない行を別に出させる点です。Claudeは資料にない因果をそれらしく補う場合があります。補わせず、空欄を炙り出させるほうが、事業部へのヒアリング項目として役に立ちます。

出てきた「説明が足りない事業」は、事業部の担当者に聞き取り、回答をメモとしてナレッジへ追加します。総括の表そのものも、確認が済んだ版をファイルにして置きます。以降の手順は、この総括を前提に進みます。

手順2: 外部環境を整理して骨子案を出す

次に、外部環境のメモをもとに、機会と脅威、自社の強みと弱みを整理させます。ここで気をつけたいのは、外部環境の情報の出どころです。Claudeにあなたの業界の最新動向を語らせても、ナレッジの外の話は根拠を持ちません。ナレッジに置いた業界資料、ヒアリングの要約、公表資料を材料にします。

骨子案の依頼プロンプト例
次の順で、中期経営計画(3か年)の骨子案を2パターン出してください。
1. 前期の総括から引き継ぐ課題(3つまで)
2. 外部環境の変化(ナレッジの外部資料にあるものだけ)
3. 3年後に目指す姿(1パターンは「規模重視」、もう1パターンは「収益性重視」)
4. 重点テーマ(各パターン3〜4つ)
各項目に、根拠にした資料名を付けてください。

「規模重視」と「収益性重視」のように、方向性を意図的にずらした2案を出させると、経営会議の議論の叩き台になります。1案だけだと、その案を前提に議論が始まります。案を比べながら、どこを組み合わせるかを話し合うほうが、方針の合意は早く進みます。

骨子が固まったら、重点テーマごとに施策へ落とします。施策には「狙う指標」と「前提」を必ず付けさせます。

重点施策の依頼プロンプト例
採用した骨子案の重点テーマごとに、施策を表にしてください。
列: テーマ / 施策 / 狙う指標 / 担当部門(案) / 必要な前提(A番号) /
前期の総括との関係
前提は新しい番号で追加し、前提一覧の表も最後に出してください。

施策と前提が1対1で対応していると、あとの数値シナリオで「どの施策のどの前提が効いたか」を辿れます。

手順3: 数値目標の3シナリオ案をつくる

この段階がいちばん慎重を要する部分です。ここでは、Claudeに「数字を考えさせる」のではなく、人が決めた前提に基づく計算と整理を手伝わせます。

前提表を先に人が書く

3シナリオ(たとえば標準・上振れ・下振れ)の違いは、前提の置き方の違いです。まずは前提表を人が作ります。Claudeには、前提の抜けと、前提どうしの矛盾の洗い出しを頼みます。

前提ID内容標準上振れ下振れ根拠
A1内容主力事業の市場成長率(年)標準担当が入力上振れ担当が入力下振れ担当が入力根拠業界資料のページ
A2内容主要顧客の継続率標準担当が入力上振れ担当が入力下振れ担当が入力根拠過去3年の実績
A3内容新規施策の開始時期標準担当が入力上振れ担当が入力下振れ担当が入力根拠施策計画

表の「担当が入力」の欄は、経営企画や事業部の担当者が数字を入れます。根拠の欄が空のまま残る前提は、ここで可視化されます。

前提の点検プロンプト例
添付の前提表を点検してください。
1. 根拠の欄が空、または資料名だけで数値の出どころが不明な前提
2. 前提どうしの矛盾(例: 市場が縮小する下振れなのに、顧客数は増える)
3. 施策の一覧にあるが、前提表に入っていない前提
問題の箇所は直さず、一覧にして理由を添えてください。

「直さず、一覧にする」と指定するのがこだわりです。Claudeが良かれと思って前提の数字を書き換えると、人が置いた前提との区別がつかなくなります。

計算はスプレッドシートに分け、Claudeには検算をさせる

前提が確定したら、前提を入れた計算をExcelなどで組みます。シナリオ分析を含む財務モデルの作り方はClaudeで財務モデルを作成する手順に、市場規模の試算はClaudeで市場規模(TAM)を試算する方法にまとめています。Excelの関数をClaudeに書かせたいときは、ClaudeでExcelの関数を作る手順が参考になります。

計算結果が出たら、その表をプロジェクトに置いて、Claudeに次の確認をさせます。

検算プロンプト例
添付の3シナリオの結果表について、次を確認してください。
1. 事業別の合計が、全社の数字と一致しているか(式を示して)
2. 前提を標準から上振れに変えたとき、どの数字が動いているか(前提IDで)
3. 標準シナリオの初年度の数字が、前期の実績からかけ離れていないか
結果の数字は直さず、疑わしい箇所と理由を一覧にしてください。

3番目が特に効きます。計画の初年度が前期実績から大きく飛んでいる場合、前提の置き方か、集計の範囲のずれが疑われます。

数値のどこまでを人が確認するか

Claudeの出力は、もっともらしい数字を含みうる下書きです。中計の数値は、次の線引きで扱うと安全です。

項目Claudeに任せる範囲人が確認・決定する範囲
前期実績の転記・集計Claudeに任せる範囲資料からの抜き出しと集計の下書き人が確認・決定する範囲元の資料との突合(必須)
前提の置き方Claudeに任せる範囲抜け・矛盾の洗い出し人が確認・決定する範囲前提の数値そのもの
シナリオの計算Claudeに任せる範囲式の案、検算、感度の整理人が確認・決定する範囲計算ファイルの最終確定
数値目標の水準Claudeに任せる範囲選択肢と影響の整理人が確認・決定する範囲どの水準を掲げるか(経営判断)
外部公表用の数字Claudeに任せる範囲文案の整形人が確認・決定する範囲開示の可否、表現、数値の最終確認

右の列は、いずれもClaudeに代行させない範囲です。外部へ出す数値目標は、開示のルールや社内の承認手続きに従います。

手順4: 取締役会向けの説明資料に仕上げる

数値が固まったら、骨子、施策、シナリオを1つの説明の流れにします。ここでもナレッジに置いた確定版の資料が土台になります。

説明資料の骨子プロンプト例
確定済みの総括、骨子、施策、3シナリオの結果表をもとに、
取締役会向けの説明の流れ(10枚以内)を作ってください。
各ページに、使う資料名と、その数字の前提ID(A番号)を添えてください。
シナリオを比べるページには、採用案を決める論点を3つまで挙げてください。

「採用案を決める論点」を挙げさせるのは、Claudeに結論を出させないためです。論点が見えると、取締役会の議論は進めやすくなります。

最後の仕上げは、想定される質問の準備です。「下振れシナリオでも配当を維持できるか」「前提A1が外れたら何が起きるか」といった質問に、資料の根拠つきで答える練習をさせます。株主向けの想定問答づくりは株主総会の想定問答をClaudeのProjectsで作るが近い手順です。

チーム検討でプロジェクトを共有するときの注意

TeamまたはEnterpriseプランでは、プロジェクトを組織内の他のメンバーと共有できます。権限は次の2つです。

  • 閲覧可: プロジェクトの内容、ナレッジ、指示を見て、プロジェクト内でチャットできる。編集はできない
  • 編集可: プロジェクトの指示とナレッジを変更し、メンバーを追加・削除できる

中計は検討メンバーが限られます。作成時に「自分と招待した人だけ」にしておき、経営陣と企画メンバーに絞って共有します。組織全体に公開した場合でも、各自のチャットは他のメンバーからは見えません。ただし、ナレッジは見えます。公表前の数字を置いたプロジェクトは、公開設定にしないのが無難です。

管理者がプロジェクトの共有をオフにしている組織では、共有ができません。公開プロジェクトも非公開に戻ります。権限と表示の仕組みはClaude組織のプロジェクト公開を無効化する方法でも扱っています。

運用でつまずきやすい点

ナレッジの新旧が混ざる。総括や前提表を更新したら、古いファイルを外します。ファイル名に版を入れ、プロジェクト指示にも「最新版のファイルだけを根拠にする」と書いておきます。

チャットが長くなって前提が薄れる。長いやり取りでは、冒頭の前提がぼやけやすくなります。段階ごとにチャットを分け、確定した結果だけをナレッジに移すと、前提が安定します。

前提番号がずれる。前提を追加するたびにClaudeが番号を振り直すと、前提表と食い違います。「既存の番号は変えず、末尾に追加する」と指示しておきます。

メモリの混線。プロジェクトごとに独自のメモリがあり、プロジェクト外のチャットとは分かれています。別件のチャットをプロジェクトに入れてしまった場合は、チャットのメニューからプロジェクトを外せます。

まとめ

中計づくりをProjectsに載せる効果は、文章を速く書かせることよりも、前提と根拠を一か所に固定できる点にあります。総括、骨子、施策、シナリオが同じナレッジの上でつながり、数字には前提IDが付いて辿れる状態になります。

数値目標は、前提表を人が書き、計算をスプレッドシートで確定させ、Claudeには洗い出しと検算を任せる分担が土台です。最終の水準と開示の判断は、経営の側に残ります。まずは前期の総括表から試すと、必要な資料の不足も早い段階で見えてきます。

この記事を共有:XはてブLinkedIn