中期経営計画の進捗レビューをClaudeで回す — 四半期のKPI差異を整理する手順
中計の計画書と四半期実績をClaudeのProjectsに置き、KPIごとの達成度、差異の原因、次四半期の打ち手に分ける手順。毎期の結論をナレッジに戻す運用と、数字を人が確かめる線引きまで扱います。
中期経営計画(中計)の進捗レビューは、計画に置いたKPIと四半期の実績を突き合わせ、ずれた理由と次の手を決める会議です。ClaudeのProjectsに計画書と実績表を置けば、KPIごとの達成度の表、差異の原因の仮説、次四半期の打ち手の案までを下書きにできます。ただし原因の裏付けと、打ち手の採否は人が決めます。
計画そのものの作り方は中期経営計画の作り方で扱っています。ここでは計画ができたあとの、四半期ごとの追跡だけに絞ります。月次の科目別の予実は月次予実対比レポートの差異分析の領分で、中計のレビューは財務の数字に加えて、顧客数や解約率といった非財務のKPIを同じ表に並べる点が違います。
四半期レビューでClaudeに任せる範囲
任せるのは、読み込みと整理です。判断は任せません。
Claudeと人の分担
Claudeに任せる
KPIごとの達成度の計算、差異の原因の候補の洗い出し、打ち手の案の整理、議事録のたたき台。
人が決める
実績の数字の正しさ、原因の裏付け、計画の修正、打ち手の採否と担当者。
中計のレビューが難しいのは、3年分の計画と四半期ごとの実績が別々の資料に散らばることです。前の四半期で何を決めたかが次の会議で曖昧になると、同じ議論を繰り返します。Projectsは、この「前提と前回の結論」を固定して使い回すための置き場として向いています。
始める前に押さえるProjectsの仕様
Projectsは、独自のチャット履歴とナレッジの知識ベースを持つ作業スペースです。無料アカウントを含む全ユーザーが使えますが、無料アカウントで作れるプロジェクトは最大5つです。
レビュー運用に関わる仕様は次の3点です。
- プロジェクトを作るときに入れる名前と説明は、Claudeには渡りません。前提はプロジェクト指示かナレッジに入れます
- プロジェクト内のチャット同士では、文脈が共有されません。ナレッジに追加した情報だけが全チャットで使われます
- 有料プランでは、ナレッジが上限に近づくとRAGモードが有効になり、容量が最大10倍まで広がります
2点目が、この記事の運用の核です。第1四半期のレビューで出した結論は、そのチャットを閉じた時点でほかのチャットからは見えません。結論をナレッジに戻す手順を、毎回の流れに組み込みます。RAGの検索の癖はClaude ProjectsのRAG検索の仕組みにまとめています。
未公表の業績や公表前の計画を置く前に、社内の情報管理ルールで外部サービスに入力してよい範囲を決めておくのが前提です。判断の材料はClaudeに機密情報を入力しても安全かで扱っています。
ナレッジに置く資料はKPI台帳を中心にする
資料は、変わらないものと毎期増えるものに分けて置きます。
| 区分 | 資料 | 更新 |
|---|---|---|
| 固定 | 資料中計の本文、KPIの定義書、年度ごとの目標 | 更新計画を改定したとき |
| 毎期追加 | 資料四半期の実績表、レビューの議事録、打ち手の一覧 | 更新四半期ごと |
| 参考 | 資料取締役会資料、事業部の報告 | 更新必要なとき |
中心になるのは、KPI台帳です。1行が1つのKPIで、計画と実績を同じ表に並べたCSVにします。
KPI,区分,良い方向,単位,2026Q2計画,2026Q2実績,出所
売上高,財務,高いほど良い,億円,25.0,26.5,月次決算
営業利益率,財務,高いほど良い,%,8.0,7.2,月次決算
新規顧客数,顧客,高いほど良い,社,120,96,CRM集計
解約率,顧客,低いほど良い,%,2.0,2.5,CRM集計「良い方向」の列が肝心です。解約率や不良率のように低いほど良いKPIは、実績÷計画で達成率を出すと、悪化しているのに100%を超えて見えます。方向を台帳に書いておけば、Claudeに計算の向きを間違えさせません。
「出所」の列は、数字の裏取りに使います。実績表は、画像になった表ではなく、数値がテキストで持てる形(CSVやExcel)で置きます。ファイルサイズなどの上限はClaudeファイル上限の一覧で確認できます。
ファイル名には、時点が分かる語を入れます。「2026Q2_KPI台帳_確定」と「2026Q2_KPI台帳_速報」を分けておくと、速報値と確定値の取り違えを防げます。
プロジェクト指示で数字と原因の扱いを決める
「プロジェクト指示を設定」から、全チャットに効く指示を保存します。レビューでは、数字の根拠と、原因の断定の仕方を先に決めておきます。
あなたは経営企画部の中計レビューを補助するアシスタントです。
ナレッジの資料だけを根拠にしてください。
- 数値には、必ず資料名とKPI名を付ける
- KPI台帳の「良い方向」に従って達成度を計算し、計算式を併記する
- 差異の原因は「事実」と「仮説」に分け、資料に根拠がない原因は仮説と明記する
- 原因を決めつけず、確かめる方法(誰に何を聞くか)を添える
- ナレッジにない数値は作らず「資料なし。要確認」と書くこの指示は一例です。事実と仮説を分けさせる点が、レビューの質を左右します。資料に根拠のない原因をもっともらしく書かれると、会議がその説明を前提に進んでしまうためです。
四半期のレビューを4ステップで回す
四半期レビューの流れ
- 1
実績を台帳に入れる
確定した実績の列を足し、ナレッジの台帳を差し替えます。
- 2
達成度の表を作らせる
KPIごとに計画、実績、差、達成度を出させます。
- 3
差異の原因を仮説で分ける
大きくずれたKPIだけ、原因の候補と確かめ方を並べさせます。
- 4
結論をナレッジに戻す
合意した原因と打ち手を議事録にして、ナレッジに追加します。
達成度の表を作らせる
新しいチャットを開き、次のように依頼します。
KPI台帳の2026Q2について、KPIごとに計画・実績・差・達成度の表を作ってください。
良い方向が「低いほど良い」のKPIは、計画を上回った分を悪化として示してください。
達成度が90%未満、または悪化したKPIには印を付けてください。例えば、先ほどの台帳なら、返ってくる表は次のような形になります(数字は説明用の例です)。
| KPI | 計画 | 実績 | 差 | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 計画25.0億円 | 実績26.5億円 | 差+1.5億円(106.0%) | 判定計画超過 |
| 営業利益率 | 計画8.0% | 実績7.2% | 差-0.8pt(90.0%) | 判定要確認 |
| 新規顧客数 | 計画120社 | 実績96社 | 差-24社(80.0%) | 判定要確認 |
| 解約率 | 計画2.0% | 実績2.5% | 差+0.5pt(悪化) | 判定要確認 |
売上は超過していても、営業利益率、新規顧客数、解約率の3つが計画を割っています。売上だけを見ると見落とす構図で、KPIを並べて見る意味はここにあります。
表が出たら、検算を入れます。達成度は、電卓か表計算で2〜3個を計算し直します。Claudeに「計算式を併記して」と頼んでおけば、どの数字をどう割ったかを目で追えます。
差異の原因を仮説と確かめ方で分ける
次に、大きくずれたKPIだけを対象にします。全KPIの原因を一度に聞くと、浅い説明が並ぶだけになります。
新規顧客数と解約率について、差異の原因の候補を出してください。
ナレッジの資料から言えること(事実)と、言えないこと(仮説)を分けてください。
仮説には、確かめるために誰に何を聞けばよいかを添えてください。原因の候補は、次の4つの型に当てはめると整理しやすくなります。
| 型 | 内容 | 確かめる先の例 |
|---|---|---|
| 外部環境 | 内容市況、競合、規制の変化 | 確かめる先の例営業部門、業界資料 |
| 計画の前提 | 内容計画に置いた仮定が実態と違った | 確かめる先の例計画書の前提欄 |
| 実行 | 内容施策の遅れ、人員の不足 | 確かめる先の例事業部の責任者 |
| 計測 | 内容KPIの定義や集計の違い | 確かめる先の例KPI定義書、集計担当 |
「計測」の型は見落とされがちです。新規顧客数が下がった原因が、実は集計の基準日の違いだったという場合、打ち手を考える前に直すべきは台帳です。
結論をナレッジに戻す
会議で合意した内容は、チャットに残したままにせず、議事録にしてナレッジに追加します。依頼文は次のとおりです。
今回のレビューの結論を、次の形式の議事録にまとめてください。
・KPIごとの達成度(表)
・合意した差異の原因(事実と仮説を区別)
・次四半期の打ち手(担当部門、期限、確認する指標)出てきた議事録は人が読んで直し、「2026Q2_レビュー議事録」としてナレッジに追加します。第3四半期のレビューでは、Claudeがこの議事録を参照して「前回決めた打ち手は実行されたか」を実績と照らせます。
打ち手は次の四半期で追跡できる形にする
打ち手の下書きを頼むときは、あとで追跡できる項目を持たせます。
| 項目 | 書き方 |
|---|---|
| 打ち手 | 書き方何をするか(1文) |
| 対象のKPI | 書き方台帳のKPI名と一致させる |
| 担当部門 | 書き方人名ではなく部門 |
| 期限 | 書き方四半期末など、日付で |
| 効果の見方 | 書き方次四半期にどの数字がどう動けば効いたと言えるか |
「効果の見方」を入れておくと、次のレビューで打ち手が効いたかを判断できます。台帳のKPI名と一致させる点も効きます。表記がずれると、次の四半期にClaudeが打ち手とKPIを結び付けにくくなります。
数字を人が確かめる線引き
Claudeの出す表は、次の3点を人が確かめてから会議に出します。
- 実績の数字が出所の資料と一致しているか(台帳の転記ミスは、Claudeの計算では直りません)
- 達成度の計算式と向き(低いほど良いKPIを含む)
- 原因の「事実」に挙げられたものが、実際に資料にあるか
原因の説明は特に注意が要ります。資料に書かれていない市況の話や競合の動きをClaudeが補うことがあるため、事実の欄に出た外部の話は、出所を聞き返します。
チームで使うときの共有と終わらせ方
TeamまたはEnterpriseプランでは、プロジェクトを組織内の人と共有できます。権限は2段階です。
| 権限 | できること |
|---|---|
| Can view | できること内容、ナレッジ、指示の閲覧と、プロジェクト内でのチャット。編集は不可 |
| Can edit | できること指示とナレッジの変更、メンバー設定の更新など |
台帳の更新者は編集権限、経営会議の出席者は閲覧権限、と分けておくと、台帳を意図せず書き換えられる事態を防げます。共有をオフにしている組織もあり、その場合は管理者に確認します。公開範囲は、組織全体に見せる設定と、招待した人だけに見せる設定から選びます。
メモリーも押さえておきます。TeamとEnterpriseでは、管理者が有効にしている場合にClaudeのメモリーを使えます。プロジェクトごとのメモリーは、プロジェクト外のチャットとは別に保たれます。レビューとは無関係な雑談を、誤ってプロジェクトのチャットで始めたときは、そのチャットを「Remove from project」でプロジェクトの外に出せます。
中計の最終年度が終わったら、プロジェクトをアーカイブします。アーカイブしても、メンバーの権限とナレッジはそのまま残り、チャットも見られます。ただしアーカイブしたプロジェクトは、先に解除しないと削除できません。次の中計の策定で、前の中計の総括を参照する場面が来るため、削除より保管が向いています。
よくあるつまずき
- 実績を貼っただけで比較が荒い: 計画と実績を別ファイルに置くと、行の対応がずれます。同じ台帳の列にします
- 前回の結論が参照されない: チャット内で合意しただけで、ナレッジに追加していない場合です。プロジェクト内のチャット同士では文脈が共有されません
- 達成度が1つの数字に潰れる: 全KPIの平均を出すと、売上の超過が営業利益率の未達を隠します。KPIごとに見ます
- 説明欄に前提を書いた: 名前と説明はClaudeに渡りません。前提はプロジェクト指示に入れます
まとめ
四半期レビューでの価値は、Claudeの分析力よりも、前回の結論を次回に持ち越す仕組みにあります。KPI台帳を1枚に保ち、レビューのたびに議事録をナレッジへ戻せば、第1四半期の判断を第4四半期の会議でも使えます。最初の四半期は、KPIを4〜5個に絞った台帳で試し、数字の確認の手間を測ってから対象を広げる進め方が現実的です。