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Claudeで法務相談を受付・仕分けし、回答ログを残す手順

Claudeで法務相談を受付・仕分けし、回答ログを残す手順

事業部からの法務相談をClaude Projectsで受け付け、論点・緊急度・要弁護士かに仕分けて回答案を作る手順です。回答ログをナレッジへ戻す運用と、共有範囲の落とし穴も扱います。

事業部から届く法務相談は、チャットやメールにばらばらに入ってきます。「この条件で進めて問題ないか」「取引先からこんな要求が来た」といった一文の相談を、法務担当が毎回読み解き、緊急度を判断し、弁護士に回すかを決めています。この受付と仕分けの部分をClaude Projectsに任せ、回答の履歴を次の相談に使える形で残すのが、この記事の手順です。

Projectsは、プロジェクト指示とナレッジ(過去の回答や社内規程)を持つ作業場です。相談票の書式、仕分けの基準、回答案の型をプロジェクト指示に書き、確定した回答をナレッジに積み上げます。結論を先に言うと、仕組みの肝は回答ログをナレッジに書き戻す工程を人が回すことで、ここを設計しないと何度相談しても履歴が育ちません。

契約書のレビュー基準を標準化したい場合は、Claude Projectsで法務レビューのプレイブックを標準化する方法が対応します。ここで扱うのは、契約書に限らない相談全般の入口です。

相談の受付と仕分けをProjectsで回す全体像

流れは4つの工程です。Claudeが担うのは1〜3の下書きで、4の確定と記録は法務担当が持ちます。

全体像

相談1件が回答ログになるまで

  1. 1

    受付: 相談票の形にそろえる

    事業部の自由文を、事実関係・期限・相手方などの項目に分解します。足りない項目はClaudeが聞き返します。

  2. 2

    仕分け: 論点・緊急度・要弁護士かを判定する

    あらかじめ決めた基準に当てはめ、判定の根拠を添えて返させます。

  3. 3

    回答案: ナレッジの過去回答と規程を引いて下書きする

    引いた過去回答の名前を明示させ、法務担当が確かめやすくします。

  4. 4

    確定と記録: 担当者が直し、回答ログに1行足す

    確定した内容だけを回答ログに追記し、ナレッジを更新します。

Projectsは、Free・Pro・Max・Team・Enterpriseのどのプランでも使えます。Freeは5件までのプロジェクト数の制限があります。社内で複数人が同じ基準を使うなら、プロジェクトの共有ができるTeamかEnterpriseが前提になります。

始める前に決めておく3つのこと

Claudeに指示を書く前に、人間側で決めておく項目があります。ここが曖昧だと、仕分けの判定がぶれます。

前提

指示文を書く前に固めるもの

  • 論点の分類表

    契約・労務・個人情報・知的財産・広告表示など、自社の相談で実際に多い論点を5〜8個に絞ります。「その他」を1つ置くと、分類に迷った相談の逃げ場になります。

  • 緊急度の段階と期限の目安

    「今日中」「今週中」「通常」の3段階程度にし、各段階の条件(契約締結の期限が迫っている、行政や取引先への回答期限があるなど)を文章で書きます。

  • 弁護士に回す条件

    紛争や請求がすでに起きている、金額が一定額を超える、前例がない、といった条件を列挙します。この条件がない状態でClaudeに判断させると、毎回基準が揺れます。

要弁護士かどうかの線引きは、社内の事情で決まる部分が大きく、Claudeの側に決めさせるものではありません。AIの出力を弁護士の判断の代わりとして流通させる使い方を避ける観点は、弁護士法72条とAIの契約書レビューで詳しく読めます。同記事は、自社の担当者が自社の文書をClaudeで点検する使い方は72条の問題が生じにくいとの読みを、私見として示しています。

プロジェクトを作り、指示文とナレッジを入れる

プロジェクトの作成とナレッジの登録

claude.ai/projectsで「+ New Project」を選び、名前と説明を入れます。この名前と説明にClaudeはアクセスしないので、基準の本文はナレッジかプロジェクト指示に書きます。Team・Enterpriseでは、作成時に公開範囲も選びます。ここは次の節の共有設計で決めます。

ナレッジには、プロジェクトの画面右側の「+」から文書を追加します。入れる候補は次のとおりです。

  • 社内規程と、その運用ルール(稟議規程、取引先審査の基準、個人情報の取扱規程など)
  • 契約書の雛形と、よく使う条項の方針
  • 過去の相談と回答を記録した回答ログ(次の節で形式を決めます)
  • 論点ごとの判断メモ

ファイルは1つあたり30MBまでです。ナレッジが多くなって文脈の上限に近づくと、有料プラン(Pro・Max・Team・Enterprise)では自動でRAGモードに切り替わり、容量が最大10倍に広がります。切り替えに設定は要りません。RAGが有効なとき、Claudeはプロジェクトナレッジの検索ツールで必要な箇所だけを引くので、ファイル名は内容が分かるものにします。たとえば「回答ログ_個人情報」「規程_取引先審査」のような名前です。質問のとき、文書名を指定すると検索の的も絞れます。

形式ごとのアップロード上限はClaudeファイル上限の一覧にあります。

プロジェクト指示に受付と仕分けの型を書く

「Set project instructions」から指示を登録します。次は、社内向けの法務窓口を想定した書き方の一例です。分類や条件の中身は自社のものに置き換えます。

プロジェクト指示の例(法務相談の受付・仕分け)
あなたは当社法務部の相談窓口アシスタントです。
事業部の担当者から法務相談を受け、次の手順で処理します。
 
1. 受付
   相談文から次の項目を埋めてください。不足があれば推測せず、
   質問として列挙して返してください。
   - 相談者の部署 / 案件名 / 事実関係 / 相手方 / 回答期限 / 相談したいこと
 
2. 仕分け
   次の3つを判定し、判定ごとに1文の根拠を添えてください。
   - 論点: 契約 / 労務 / 個人情報 / 知的財産 / 広告表示 / その他
   - 緊急度: 今日中 / 今週中 / 通常
     (回答期限が3営業日以内なら今日中、2週間以内なら今週中)
   - 要弁護士: 要 / 要検討 / 不要
     (紛争・請求が起きている、または前例がない場合は要)
 
3. 回答案
   ナレッジの回答ログと規程から関連する記載を探し、
   引いた文書名を明記して回答案を作ってください。
   該当する記載がなければ「該当なし」と書き、一般論で埋めないでください。
 
4. 最後に、回答ログへ追記する1件分の記録を、指定の形式で出力してください。
 
回答案は法務担当者が確認する下書きです。断定的な法的結論は書かず、
判断が分かれる点は選択肢と論点の形で示してください。

「推測せず質問する」「該当なしと書く」の2行は効果が大きい指示です。相談文は情報が足りないまま届くことが多く、Claudeが空白を想像で埋めると、仕分けの根拠そのものが怪しくなります。

回答ログを設計する: ナレッジに戻さないと履歴は残らない

ここが運用の中心です。Projectsでは、プロジェクト内のチャットをまたいだ文脈は共有されず、ナレッジに追加した情報だけが全チャットに効きます。相談を100件さばいても、チャットの中に残った内容は次の相談から見えません。回答ログは、確定した内容をナレッジに戻す運用で作ります。

記録の形式を決める

Claudeの出力を貼り付けて蓄積しやすいよう、1件を固定の形式にします。例として、Markdownで1件ずつ書く形です。

回答ログの1件分(例)
## L-2026-0142
- 受付日: 2026-10-05
- 部署 / 案件: 営業部 / 新規取引先A社との取引条件
- 論点: 契約
- 緊急度: 今週中
- 要弁護士: 不要
- 相談内容: 支払サイトを60日にしたいという先方要望への可否
- 確定した回答: 規程の上限(45日)を超えるため、経理部の承認を得て
  例外扱いとする。承認申請書の様式は取引先審査規程の別紙2。
- 根拠: 取引先審査規程 第6条
- 公開範囲: 全社共有可

「公開範囲」の列を設けているのには理由があります。共有の仕組みが関わるため、次の節で説明します。個人名や相手方名は、記録の段階で伏せるか、案件番号に置き換える運用が考えられます。

ログの更新を週次の作業にする

確定した回答をその都度ナレッジへ入れ直すと手間がかかります。回答案の作成と同じチャットの最後に、Claudeに記録1件分を出力させ、法務担当がそれを回答ログのファイルに追記します。ログのファイルを週に1回まとめてナレッジに入れ替える形にすれば、作業は軽く済みます。

追記で気をつけたいのは、確定前の回答案をログに入れないことです。Claudeの下書きがそのままログに入ると、次の相談で誤った前例として引かれます。確定した内容だけを入れ、担当者が直した場合は直したあとの文面を記録します。

共有範囲を設計する: ナレッジは見える人に全部見える

Team・Enterpriseでは、プロジェクトを組織に共有できます。共有時の権限は「Can view」と「Can edit」の2段階です。Can viewのメンバーは、プロジェクトの内容・ナレッジ・指示を見られ、プロジェクト内でチャットもできますが、編集はできません。Can editは指示とナレッジの変更、メンバー設定の更新ができます。

法務相談では、この性質が設計に直結します。

くらべる

共有プロジェクトを分ける考え方

法務担当だけ

法務内部用プロジェクト

詳細な案件情報や、人事・紛争に近い相談の回答ログを置きます。参加者は法務部のメンバーに限り、公開範囲を「Only people invited」にします。

全社に開く

事業部向けの窓口プロジェクト

「全社共有可」と判定した回答ログと、公開してよい規程だけを置きます。事業部の担当者はCan viewで参加し、自分のチャットで相談を入力します。

共有を受けたメンバーのチャットは、既定では他のメンバーから見えません。共有されるのはナレッジと指示で、事業部の担当者が入力した相談の中身は、チャットを自分で共有しない限り他の部署には渡りません。一方で、ナレッジに入れた回答ログは、プロジェクトを見られる全員が読めます。だから、ログに「公開範囲」の列を持たせ、全社向けのプロジェクトには全社共有可の記録だけを入れる、という分け方が要ります。

そのほか、運用で押さえたい挙動があります。

  • 管理者(Owner)がプロジェクト共有をオフにすると、組織全体に公開していたプロジェクトは非公開に戻ります。個別に共有済みのものは残ります。全社窓口として配っている場合、管理者の設定変更で突然見えなくなることがあります
  • Enterpriseではグループ単位の共有ができます(ベータ)。グループ共有には、管理者側でグループの設定を有効にしておく必要があり、権限の変更が反映されるまで最大5分かかります
  • プロジェクトをアーカイブしても、メンバーと権限は残ります。アクセスを止めたいときは、共有設定からメンバーを外します

事業部の担当者がClaudeで相談を下書きする使い方を許すかどうかは、会社のAI利用の方針の問題でもあります。入力してよい情報の範囲は、Claude Commercial Termsのチェックポイントで扱うデータの取り扱いとあわせて、事前に社内で決めておきます。

実際の相談で試し、仕分けのずれを直す

指示を登録したら、過去に法務が処理した相談を5〜10件、実際の文面のまま入力して試します。確認するのは次の3点です。

  1. 論点と緊急度が、実際の担当者の判断と一致しているか
  2. 要弁護士かの判定が、社内の運用より緩く出ていないか
  3. 回答案が、ナレッジのどの文書を根拠にしているか。引いた文書名が実在するか
試験用プロンプトの例
次の相談を、プロジェクト指示の手順で処理してください。
最後の回答ログ用の記録も出力してください。
 
[相談文]
営業部です。取引先のB社から、納品データの二次利用を認める
覚書を来週中に結んでほしいと言われています。
うちの標準契約書には二次利用の規定がありません。
どう進めればよいでしょうか。

ずれがあれば、チャットで直させるのではなく、プロジェクト指示の該当箇所を書き換えます。「この相談はもっと緊急度を高く」とチャットで伝えても、次のチャットには残らないからです。判定がぶれる原因の多くは、基準の書き方があいまいなことにあります。「3営業日以内なら今日中」のように、数字や条件で書き直します。

回答案の根拠を確かめる習慣は、運用が回り始めてからも欠かせません。ナレッジに該当がなければ「該当なし」と返す指示を入れていても、規程の条文番号や過去の回答番号は、引用元を開いて合っているか目で確認します。

相談が増えたときの運用上の注意

プロジェクトごとに独立した記憶(メモリー)がある点も、法務では意識しておきます。Team・Enterpriseでメモリーを使っている場合、各プロジェクトのメモリーは、プロジェクト外のチャットと別に保たれます。関係のない相談をうっかりプロジェクト内で始めたら、「Remove from project」でプロジェクトのメモリーから外せます。1つのチャットだけメモリーを使わせたくないときは、最初のメッセージを送る前に「+」メニューで「Memory」をオフにします。そのチャットはプロジェクトのメモリーを使わず、書き込みもしません。

人事や紛争に近い相談の扱いは、別に考えます。たとえばハラスメントの相談は、記録の残し方や関係者の範囲に特有の注意点があります。Claudeでハラスメント相談の一次対応記録を整理する手順が、その扱いの一例です。そうした相談を、全社向けの窓口プロジェクトで受けない設計にしておくと安全です。

契約書そのものを精査する工程は、窓口とは別の仕事です。契約書の一次レビューを任せる範囲はClaude Cowork法務活用に、法律事務所向けの業務別の使い方はClaude法律事務所活用ガイドにあります。

よくある質問

事業部が直接Claudeに相談する形にしてよいか

運用上は可能ですが、事業部の担当者が入力した相談は、その人のチャットに残ります。法務側では見えないため、回答ログに入る相談と入らない相談が分かれます。回答ログに記録する前提なら、事業部が相談した内容を相談票に整えて法務へ送る手順を、窓口プロジェクトの指示に入れておく方法があります。

Projectsの新バージョン(ベータ)でもこの手順は使えるか

この手順は、チャットとCoworkで使われている現行バージョンのProjectsを前提にしています。Claude Code向けに段階的に展開されている新バージョンは、1つのプロジェクトが1つの会話になり、作業が並列スレッドに分かれてクラウドで進みます。既存のチャット・Coworkのプロジェクトは従来どおり動き、ProとMaxでは今後、新バージョンへ順次アップグレードされる予定です。

まとめ

法務相談の受付と仕分けは、判断基準を文章にできる範囲でClaudeに任せやすい工程です。一方、要弁護士かの条件や回答の確定は、社内で決めて人が持ち続ける部分になります。Projectsではチャットをまたいだ文脈が残らないため、回答ログを確定した内容だけでナレッジに戻す週次の作業が、運用の成否を分けます。共有では、ナレッジが閲覧権限のある全員に見える点を踏まえ、法務内部用と事業部向けの窓口を分ける設計から始めると、機微な記録の混入を防げます。

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