ClaudeとJupiterOneを連携する方法 — 資産グラフへの質問とルール操作
JupiterOneのコネクタをClaudeにつなぎ、IT資産の棚卸し・アラート確認・検知ルールの作成を会話で進める手順と、書き込み系ツールで注意する点をまとめます。
JupiterOneのコネクタを使うと、クラウド資源・ID・デバイス・脆弱性を結んだ資産グラフに、Claudeから自然言語で問い合わせられます。裏ではClaudeがJ1QL(JupiterOne独自のクエリ言語)を組み立てて実行し、結果を表やサマリにして返します。
このコネクタはJupiterOne自身が提供するもので、コネクタ一覧には「Anthropic verified」の表示があります。掲載は2026年6月です。サインインが必須で、接続先は米国(US)と欧州(EU)のリージョンから選びます。
JupiterOneコネクタとは何か
JupiterOneは、クラウド資源・ID・デバイス・脆弱性と、それらの関係をグラフとして持つリスク管理プラットフォームです。コネクタはこのグラフと、アラート・ルール・ダッシュボード・連携ジョブを操作する入口になります。
コネクタ一覧のページに書かれている用途は次の6つです。
- 資産インベントリに対するJ1QLの実行
- エンティティタイプの探索
- 稼働中アラートの確認
- 検知ルールの作成と評価
- 連携(インテグレーション)の取り込み状況の確認
- ダッシュボードの作成
すべての操作は、あなたのJupiterOneユーザーの既存の権限で実行されます。Claudeが権限を上乗せすることはなく、JupiterOne側のロールで見える範囲が、そのままClaudeに見える範囲です。
接続する手順
Claudeのコネクタ一覧からJupiterOneを追加するのが最短です。JupiterOneのドキュメントでは、ディレクトリ経由の接続は次の流れになっています。
ディレクトリから接続する流れ
- 1
コネクタを開いて接続を選ぶ
JupiterOneのコネクタページで接続を押し、リージョン(USまたはEU)を選びます。
- 2
JupiterOneにサインインする
通常のJupiterOneのログイン画面に移ります。
- 3
同意画面を確認する
許可される操作の一覧が表示されます。承認するまで何も付与されません。
- 4
接続を試す
Claudeに「JupiterOneの連携一覧を見せて」と頼み、結果が返れば成功です。
ローカルのインストールは要りません。ホスト型のリモートサーバーを使うため、更新も自動で追従します。
複数アカウントを持っているとき
ディレクトリのコネクタは、特定のアカウントに固定されていません。サインインで複数のアカウントに入れる場合は、Claudeに「JupiterOneのアカウント一覧を出して」と頼みます。list-accounts ツールが、使えるアカウントごとに accountId を返します。
どのツールも、1回の呼び出しで操作するアカウントは1つです。別のアカウントの資産を見るときは、アカウントを指定し直して聞く形になります。
Claude Codeや特定アカウント固定で使う
Claude Codeからつなぐ、あるいはアカウントを固定したいときは、アカウントIDを含むURLでリモートサーバーを登録します。ドキュメントのコマンドは次のとおりです。
claude mcp add --transport http jupiterone \
https://your-account-id-here.mcp.us.jupiterone.io/mcpEUのアカウントなら us を eu に替えます。登録後は、セッション内で /mcp を実行して接続状態を確かめます。
URLに入れるのはアカウントIDで、acme.app.us.jupiterone.io のような独自サブドメイン(vanity domain)ではありません。後者を入れると認証や「アカウントが見つからない」エラーになる、とドキュメントのトラブルシューティングにあります。アカウントIDは管理設定のアカウント管理画面に、独自URLとは別の項目で載っています。
無人で動かす場面向けに、OAuthのサインインではなくAPIトークンでリモートサーバーにつなぐ方法も別ページで案内されています。人が画面でログインできない定期実行では、そちらが対象です。
IT資産の棚卸しをClaudeに任せる
棚卸しの中心は execute-j1ql-query です。自然言語で聞くと、Claudeが対応するJ1QLを書いて実行します。JupiterOneのドキュメントには、プロンプトと生成されるJ1QLの対応例が載っています。
| 聞き方の例 | 生成されるJ1QL(ドキュメントの例) |
|---|---|
| クラウドのインスタンスをプロバイダ別に数えて | 生成されるJ1QL(ドキュメントの例)Find Host with _integrationType != undefined as h return h._integrationType as Provider, count(h) as Total |
| 暗号化されていないデータストアを列挙して | 生成されるJ1QL(ドキュメントの例)Find DataStore with encrypted != true |
| データ分類タグのない資源を出して | 生成されるJ1QL(ドキュメントの例)Find (Host|DataStore) with classification = undefined |
| 30日間スキャンされていないホストを探して | 生成されるJ1QL(ドキュメントの例)Find Host that !has Assessment with _createdOn > date.now-30days |
3行目が、棚卸しで効く型です。「属性が未設定(undefined)のものを探す」という書き方で、タグ付けの抜けを洗い出せます。
所有者不明の資産を探すときの進め方
棚卸しで話題になりやすい「所有者不明の資産」は、ドキュメントに専用のサンプルがありません。上の classification = undefined と同じ型で、所有者を表すプロパティが未設定の資産を探す形になります。ただし、所有者がどのプロパティやタグに入っているかは、連携しているサービスと運用ルールで変わります。
そこで、先に list-entity-types で自分のアカウントにあるエンティティのクラスとタイプを出させ、続けて所有者情報のあるプロパティ名を確かめてから、未設定の一覧を作らせる順にします。いきなり「所有者不明を出して」と頼むと、Claudeが推測したプロパティ名で空の結果を返し、「該当なし」に見えるおそれがあります。
長いクエリは「IN_PROGRESS」で返ってくる
大きなグラフをたどるクエリは、1回のツール呼び出しより長くかかることがあります。そのとき応答は status: "IN_PROGRESS" と resultsUrl を返します。エラーではありません。
ドキュメントの目安は次のとおりです。
- 成功するクエリは、ほぼ4分以内に終わる
- 約13分を過ぎると完了しない。
WITHの絞り込みやLIMITを足して狭める - 結果のハンドルは開始から約1時間で失効する
Claudeが同じクエリを何度も投げ直すと、そのたびに最初から実行されます。結果の受け取りには get-query-results を resultsUrl 付きで呼ぶよう、プロンプトで指定してください。ただし、この get-query-results はコネクタ一覧のツール名リストには載っていません(後述)。
アラートとルールを会話で扱う
アラート系は読み取りが中心です。get-active-alerts は稼働中のアラートを返し、件数は1〜1000で指定できます。
ルールには参照・作成・更新・評価の一式があります。
| やりたいこと | ツール |
|---|---|
| ルールの一覧と詳細 | ツールlist-rules / get-rule-details |
| 質問型ルールの作成・更新 | ツールcreate-inline-question-rule / update-inline-question-rule |
| その場で評価を走らせる | ツールevaluate-rule |
| 過去の評価と結果の確認 | ツールlist-rule-evaluations / get-rule-evaluation-details / get-rule-evaluation-query-results / get-raw-data-download-url |
「新しい重大な脆弱性が見つかったら発火するルールを作って」と頼むと、FindingのクエリでルールをClaudeが組み立てます。ドキュメントでは、この依頼に create-inline-question-rule が使われる例が示されています。
ダッシュボードも同様で、create-dashboard と create-dashboard-widget で作り、update-dashboard でレイアウトを直せます。連携の状態は get-integration-instances や get-integration-jobs で見られ、「失敗した連携はどれか」と聞けば、ジョブの状態で絞って返します。
書き込みを伴う操作で気をつける点
コネクタには読み取りだけでなく、ルールやダッシュボードを作る・変えるツールが含まれます。
ルールの削除はアラートを消さない
MCPサーバーのドキュメントには、削除について2つの警告があります。
- 削除できるのはルール・ダッシュボード・ウィジェットだけ。連携やエンティティなど、ほかのリソースはMCP経由では削除できない
- ルールを削除しても、そのルールが出したアラートは稼働中のまま残る。削除したルールの設定は元に戻せない
ルールの発火だけ止めたいなら、削除ではなくポーリング間隔を DISABLED にする方法が案内されています。設定と評価履歴が残るためです。Claudeに頼むときも「削除」ではなく「無効化して」と書くほうが安全です。
書き込み・削除系のツールには、MCPクライアントが実行前に承認を求められるよう注釈が付いています。Claude側の承認画面で、ルール名と操作内容を読んでから許可する流れになります。
APIのレート制限を消費する
コネクタ経由のリクエストは、JupiterOneのAPIレート制限の枠を使います。資産の問い合わせ、アラート取得、ダッシュボード操作のいずれも同じです。広い範囲を何度も聞く使い方では、通常のAPI利用に影響しかねません。棚卸しを定期的に回すなら、枠の消費量を見ておく必要があります。
取得したデータの行き先
コネクタが取ってきた資産情報や脆弱性情報は、Claudeに渡されて解釈されます。JupiterOneのドキュメントは、利用するAIアシスタント側(LLM提供元)のデータ保持・プライバシー条件を確認し、機密性の高い環境では企業向けやセルフホストのモデルも検討するよう勧めています。JupiterOne側は、クエリの結果やパラメータ、アクションの内容を保存しないと説明しています。リモートサーバーが記録するのは、どのツールが動いたか、成功したかといった匿名化済みの利用状況に限られます。
コネクタのツール一覧とドキュメントの差
コネクタ一覧のページに載るツールは24個です。一方、MCPサーバーのドキュメントは「32個のツール」と説明し、次のものを追加で挙げています。
- 脅威インテリジェンス:
get-threat/get-threat-trending/check-threat-exposure - 削除:
delete-rule/delete-dashboard/delete-dashboard-widget - そのほか:
get-query-results/update-dashboard-widget
ドキュメントはMCPサーバー全体の説明で、ディレクトリのコネクタがどこまで同じかは、どちらのページにも書かれていません。確実なのは、接続後にClaudeの設定画面でそのコネクタのツール一覧を開き、実際に有効なツールを見ることです。
脅威インテリジェンス系の3つは、アカウントにVulnerability Managementの権限(エンタイトルメント)と脆弱性の読み取り権限が必要で、満たさないとアクセス拒否のメッセージが返る、とドキュメントにあります。また check-threat-exposure が返す件数が0なのは「どのスキャナーも報告していない」という意味で、「影響を受けない」とは別です。存在しないCVEと、検出のない実在のCVEが、どちらも0になります。
つまずいたときの切り分け
- サーバーが一覧に出ない: 設定ファイルで接続する場合(ローカルサーバーや他のクライアント)は、JSONの末尾カンマ1つで通知なしに失敗します。設定を直したらクライアントを再起動します。
- OAuthが通らない(リモート): ブラウザでJupiterOneからいったんサインアウトし、認可をやり直します。
- 「アカウントが見つからない」: URLに独自サブドメインを入れていないか確認します。アカウントIDを使います。
- ローカルサーバー版で構文エラーが出る: リモート接続ではなくローカルサーバーを自分で立てている場合、ローカルサーバーはJ1QLの文法を手元に同梱して検査しているため、古いインストールは新しい構文を弾くことがあります。まずパッケージを更新します。
ほかのコネクタと組み合わせる
資産の棚卸し結果を集計・可視化したいなら、BIツール側のコネクタとの併用が考えられます。たとえばClaudeとTableauを連携する方法やClaudeとDatabricksを連携する方法で、データ側の読み取り範囲を確認できます。コネクタが書き込み系の操作を持つときの権限の絞り方は、ClaudeのPayPal連携の記事が参考になります。コネクタ全般の仕組みはClaudeのインタラクティブコネクタの記事にあります。
JupiterOneのコネクタは、問い合わせ・ルール・ダッシュボードを1つの会話にまとめられる点が強みです。反面、削除や無効化を伴う操作は、ルールの設定が戻らないぶん、承認画面での確認が実質的な安全装置になります。