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通知表の所見文をClaudeで下書きする — 個人情報を入れない入力の組み方

通知表の所見文をClaudeで下書きする — 個人情報を入れない入力の組み方

通知表の所見文をClaudeで下書きするとき、児童生徒を特定しない観点メモだけを渡す手順。文科省ガイドラインとプロジェクト機能の設定から、入れてよい情報と手元で足す情報を分けます。

所見文の下書きにClaudeへ渡してよいのは観点メモだけ

通知表の所見文は、児童生徒一人ひとりの様子を教員が言葉にする文書です。Claudeで下書きするなら、渡すのは「その子の情報」ではなく「所見に書く観点と文の型」に絞ります。氏名・出席番号・その子だけの出来事は、Claudeの画面に一切入れません。

型だけをClaudeに作らせ、児童生徒の名前や個別の場面は教員が手元で差し込む。この分業なら、個人情報を入力するかどうかの判断そのものが不要になります。手順は次の5段階です。

  1. 学期の指導内容から、所見に書く観点を決める(Claudeの外で)
  2. 観点ごとの「よく見られる姿」を、個人が特定できない粒度のメモにする
  3. Claudeに観点メモと文体の指定だけを渡し、所見の型を複数作らせる
  4. 教員が型を選び、手元のファイルで児童生徒名と個別の場面を足す
  5. 事実と食い違う箇所がないか、教員が読み直して確定する

以下、この5段階の根拠になる文科省ガイドラインの記述と、Claude側の設定を順に確認します。

文科省ガイドラインは校務での入力に何を求めているか

文部科学省が学校向けに示した生成AI利活用のガイドライン(Ver.2.0)は、令和6年12月26日に公表されました。所見文づくりに関わるのは、教職員が校務で利活用する場面(3-1)の「利活用の際のポイント」です。

まず押さえたいのは、ガイドライン本文に「通知表」「所見」という語が出てこない点です。所見文専用のルールがあるわけではなく、校務全般の入力ルールを所見に当てはめて読むことになります。当てはめに使う記述は次の4つです。

論点ガイドラインの記述所見文での意味
アカウントと端末ガイドラインの記述私用アカウントや、教育情報セキュリティ管理者の許可を得ていない私用端末を用いてはならない所見文での意味自宅の私物端末や個人契約のアカウントで試す前に、学校と教育委員会の方針を確認する
成績情報ガイドラインの記述個別契約等で適切な対策を講じた環境を除き、重要性の高い情報である成績情報等をプロンプトに入力してはならない所見文での意味評定や観点別評価の記録は、Claudeの入力欄に貼らない
個人情報ガイドラインの記述個人情報を含むプロンプトを入力する場合は、提供者が当該個人情報を機械学習に利用するか等を十分に確認する所見文での意味学習利用の有無を確認できない入力は避ける
最終判断ガイドラインの記述出力された内容を採用するかどうかは教職員が判断する所見文での意味下書きをそのまま所見として出さない

「重要性の高い情報」は、教育情報セキュリティポリシーに関するガイドラインが求める情報資産の分類(被害の大きさで仕分ける考え方)を指します。所見がどの分類に入るかは教育委員会ごとの運用次第で、ガイドラインは所見を名指ししていません。校長や情報セキュリティ管理者への確認が要る点はここです。

チェック項目の附録(p.24)には、個人情報について例外の書き方も添えられています。教職員が入力した個人情報を、提供者が応答結果の出力以外の目的で取り扱わないと確認できている場合は、この項目の対象から外れます。確認できないうちは入れない、が基本線です。

なお、ガイドラインの児童生徒の学習場面の節には、教師が正確な知識に基づきコメント・評価すべき場面で、教師の代わりに生成AIの出力のみに頼ることを「不適切と考えられる例」に挙げた項目があります。所見文は教員が評価を言葉にする仕事なので、下書き支援にとどめて判断を渡さない、という線引きとも符合します。校務での利活用の全体像は文科省の生成AIガイドラインver2.0を学校のClaude導入にどう活かすかで扱っています。

仮名にすれば個人情報ではない、とは限らない

「A児」「Bさん」に置き換えれば安全、と考えたくなります。ガイドラインの注釈は、そこに釘を刺しています。個人情報とは、氏名や生年月日などの記述で特定の個人を識別できるものに加え、他の情報と容易に照合して特定できるものも含む、という定義です。

学級の担任が「先週の運動会で最後まで走り切ったA児」と書けば、同じ学級や学年の関係者なら誰のことか分かります。仮名でも、出来事の具体性で特定できてしまう入力は個人情報として扱う余地が残ります。

入力を組むときの判断は、氏名を消したかどうかでなく、次の問いで見ます。

  • この文だけを見て、学級の外の人がその子を思い浮かべられるか
  • 学級の内側の人なら、その子だと分かる出来事や数値が入っていないか
  • 他のメモや出席簿と突き合わせれば特定できる組み合わせになっていないか

2つ目や3つ目に当たるなら、Claudeに渡す前に粒度を落とします。「運動会のリレーで最後まで走り切った」は「行事で粘り強く取り組んだ」まで抽象化しても、所見の型を作る用途には足ります。具体的な場面は、手元で教員が戻せばよいからです。

個人情報を含むプロンプトの入力が法的にどう位置づけられるかは、個人情報を含むプロンプト入力は第三者提供にあたるかで詳しく扱っています。Claudeに入力する前に確認する一次資料の一覧はClaudeに個人情報を入力する前に確認する一次資料にあります。

入れる情報と入れない情報を分ける

所見文の材料を3つに分けます。Claudeに渡すのは一番左の列だけです。

渡してよい(観点・型)手元で足す(個別の場面)入れない(識別・成績)
「学習への取り組み」「友達との関わり」などの観点名手元で足す(個別の場面)その子の具体的なエピソード入れない(識別・成績)氏名・出席番号・あだな
観点ごとの一般的な姿(「調べたことを自分の言葉でまとめようとする」)手元で足す(個別の場面)学期内の変容や日付のある出来事入れない(識別・成績)評定・観点別評価の記録
文体・文字数・段落構成の指定手元で足す(個別の場面)保護者との面談で共有済みの内容入れない(識別・成績)家庭状況・健康・配慮事項
前向きな表現や避けたい言い回し手元で足す(個別の場面)教員が「この子らしい」と判断する一言入れない(識別・成績)診断名や支援計画に関わる情報

観点メモの例です。ここまでの抽象度なら、学級の外の人が読んでも誰のことか分かりません。あくまで書き方の例示です。

観点: 学習への取り組み(国語・説明文の単元)
よく見られる姿:
- 教科書の本文から根拠になる一文を探して、自分の考えを書こうとする
- 分からない語句を、辞書や友達への質問で確かめようとする
文体: ですます調。保護者が読む前提で、成長を認める書き方
分量: 120字前後
避ける表現: 他の児童との比較、断定的な性格評価

この観点メモをもとに、Claudeが作るのは「型」です。名前の入る位置は「〇〇さんは」のようなプレースホルダにしておき、教員が手元で差し替えます。

プロジェクトに所見の型と指示を固定する

型を毎回入力するのは手間です。Claudeのプロジェクト機能を使うと、指示を1回登録して同じ設定で何度も下書きさせられます。プロジェクトは無料アカウントでも使え、無料の場合は最大5つまで作れます。

プロジェクトの指示欄(Set project instructions)に書いた内容は、そのプロジェクト内のすべてのチャットに適用されます。所見文づくりなら、次のような指示が考えられます。例として示す形です。

あなたは小学校の通知表の所見文の型を作る補助役です。
- 入力は観点メモだけです。児童の氏名・出席番号・成績が含まれていたら、
  下書きを作らずに「個人情報が含まれています」と知らせてください。
- 氏名の位置は「〇〇さん」のプレースホルダにしてください。
- 事実として書かれていない出来事を付け足さないでください。
- 他の児童との比較、性格の断定、診断を思わせる表現は使わないでください。
- 同じ観点でも、書き出しと文末を変えた案を3つ出してください。

指示の1〜2行目が効くのは、入力ミスに気づく仕組みになるからです。うっかり氏名を貼ったときに、指示側で作業を止めさせます。指示は入力の防波堤であって、Claudeがすでに受け取った情報を取り消せるわけではない点は変わりません。

プロジェクトの知識ベース(project knowledge)には、匿名化した文例集や学校の所見の書式を置けます。ここには実在の児童生徒の過去の所見や、名簿の一部を入れません。知識ベースに置いた内容は、そのプロジェクトの全チャットで文脈として使われます。プロジェクトを共有すると、共有相手は指示と知識の中身を見られるので、Team・Enterpriseで同僚と共有する場合は特に、置くものを絞ります。

メモリーとシークレットモードは所見づくりにどう作用するか

プロジェクトで型を固定すると、メモリーとシークレットモードの扱いも変わります。サポート記事の記述を並べると次のとおりです。

機能記述所見文づくりでの注意
メモリー記述Free・Pro・Maxでは既定でオン。Team・Enterpriseでは既定でオフで、オーナーが有効化できる所見文づくりでの注意観点メモに個人が特定される内容が混ざると、メモリーに残る可能性がある
プロジェクトのメモリー記述プロジェクトごとに独立したメモリー空間と要約を持つ所見文づくりでの注意学級用と個人利用のプロジェクトは分けておく
シークレットモード記述履歴とメモリーに保存されず、学習にも使われない。保存されない代わりに30日間は保持される所見文づくりでの注意プロジェクトの外でしか使えない

最後の行が要点です。シークレットモード(incognito chats)は、プロジェクトの外のチャットでのみ使えます。プロジェクトに型を固定する方法と、履歴に残さない方法は両立しません。型を固定したいなら、観点メモだけを入力する運用の徹底が前提になります。履歴を残したくない用途なら、プロジェクトを使わず、指示文を毎回貼る手間を受け入れる選択になります。

個人向けプラン(Free・Pro・Max)では、チャットやコーディングセッションがモデル改善に使われる条件として、利用者が設定で許可した場合などが公式に示されています。安全性レビューの対象として扱われた会話も対象になり得ます。学校が契約するTeam・Enterpriseなどの商用製品は別のページで説明されていて、入力と出力は既定ではモデルの学習に使われません。例外は、サムズアップ・ダウンなどでフィードバックを送った場合や、利用者側が学習への利用を許可した場合です。フィードバックには会話全体が付くので、所見の下書きの画面ではこのボタンを押さない運用が安全です。ガイドラインが求める「提供者が機械学習に利用するか等の確認」は、個人プランと商用製品で根拠のページが違うため、自分の契約形態に合うほうで確認します。

手元で仕上げて確定する

Claudeが返した型は、教員の手元で次の順に仕上げます。

  1. 観点に合う型を1つ選び、プレースホルダを児童生徒の名前に置き換える
  2. その子の学期中の具体的な場面を、教員の記録から1〜2文足す
  3. 「書かれていない事実」が混ざっていないか読み直す(生成AIは、もっともらしい出来事を付け足すことがあります)
  4. 学年の他の所見と並べて、言い回しが似すぎていないかを確認する
  5. 管理職の確認に回す前に、一度声に出して読む

3の点検は特に重要です。指示で「事実にない出来事を付け足さない」と書いても、型の文面が具体的な場面を含んでいれば、その場面が事実と合うかどうかは教員にしか分かりません。ガイドラインが求める「出力された内容を採用するかどうかは教職員が判断する」は、この読み直しの工程にあたります。

つまずきやすい点

観点メモが具体的すぎて個人が分かる

運動会や委員会など、学級で1人だけの経験を入れると特定できます。型づくりの段階では観点名と一般的な姿にとどめ、個別の出来事は手元で足します。

下書きが似た文面ばかりになる

同じ観点メモから作る型は、文の骨格が似ます。指示で「書き出しと文末を変えた案を複数出す」と伝えるだけでなく、観点メモの側を単元ごとに変えると、型のばらつきが出ます。

学校の運用と食い違う

私用アカウントや許可のない端末を使わないこと、教育委員会の方針に従うことは、ガイドラインがそのまま求めています。学校で生成AIを使える環境が整っていない段階では、まず環境の確認が先です。学校からの配布物の整理は、Claudeで学校のお便りを写真から整理する手順で扱っています。

臨床的な記述に踏み込みそうになる

配慮が必要な児童の所見は、教員の専門的な判断と面談での合意が中心になります。専門職の報告書の匿名化については、臨床心理士の倫理綱領は生成AIでの所見作成に何を求めるかが、別の職種の例として参考になります。

まとめ

所見文の下書きにClaudeを使うときの線は、氏名を隠すかどうかではありません。「その情報で個人が特定できるか」です。渡すのは観点と型の指定まで。児童生徒の名前と具体的な場面は、教員が手元で足します。

文科省ガイドラインは、私用アカウントの不使用、成績情報の非入力、個人情報の学習利用の確認、最終判断は教職員という4点を校務の共通ルールとして示しています。プロジェクト機能で指示を固定すれば型づくりは楽になりますが、シークレットモードはプロジェクトの外でしか使えません。指示で入力ミスに気づく仕組みを作りつつ、入力欄に貼るものそのものを絞る運用が土台になります。

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