社会福祉士・介護福祉士の国家試験対策にClaudeを使う — 事例問題と法改正の確認
試験センターの出題基準を読ませて事例問題を作り、問答で解き方を鍛えます。制度の数値や法改正はClaudeの知識に頼らず公式で照合する手順まで、社会福祉士・介護福祉士の受験者向けにまとめます。
社会福祉士と介護福祉士の試験は、暗記量より「事例を読んで制度と支援の筋道を選ぶ力」が問われます。Claudeは、その練習相手として使えます。一方で、制度の数値や法改正の確認は任せられません。
この記事は、試験センターの出題基準を材料にした事例問題の作り方、問答で理解を固める型、そして法改正を公式資料で照合する手順を扱います。
Claudeに任せる作業と、公式で確認する作業
結論から書くと、分担は次のとおりです。
| 作業 | Claudeに任せてよいか | 確認先 |
|---|---|---|
| 出題基準の項目に沿った事例問題の作成 | Claudeに任せてよいか任せてよい | 確認先出題基準(試験センター) |
| 解いたあとの問答・誤答の分析 | Claudeに任せてよいか任せてよい | 確認先自分の誤答ノート |
| 制度の数値・要件・施行日 | Claudeに任せてよいか任せない | 確認先法令・所管省庁の公表資料 |
| 直近の法改正が反映された解説 | Claudeに任せてよいか任せない | 確認先試験センターの案内と公表資料 |
| 過去問の正答 | Claudeに任せてよいか任せない | 確認先試験センター公表の正答一覧 |
事例問題を作らせる作業は、Claudeの得意分野です。事例の設定、選択肢の作り込み、誤答の理由づけは、テキストを読み込ませれば短時間で量産できます。
弱いのは、日付と数値が絡む部分です。学習データの範囲外にある改正は反映されません。試験直前の期間ほど、この差が効きます。本記事の後半で、確認の手順をコピーして使える形にします。
出題基準を先に読ませる — 試験の枠組みを確認する
Claudeに問題を作らせる前に、試験の枠組みを自分で押さえておきます。枠組みが曖昧なまま問題を作らせると、出題範囲から外れた問題が混ざるためです。
試験センターが公表する社会福祉士の合格基準と、試験の方法は次のとおりです。
- 出題数は129問で、1問1点の129点満点
- 出題形式は五肢択一を基本とする多肢選択形式
- 総試験時間は225分
- 総得点の60%程度を基準に、問題の難易度で補正した点数以上であること
- 6つの科目群すべてで得点があること
科目群は6つに分かれています。
- 医学概論、心理学と心理的支援、社会学と社会システム
- 社会福祉の原理と政策、社会保障、権利擁護を支える法制度
- 地域福祉と包括的支援体制、障害者福祉、刑事司法と福祉
- ソーシャルワークの基盤と専門職、ソーシャルワークの理論と方法、社会福祉調査の基礎
- 高齢者福祉、児童・家庭福祉、貧困に対する支援、保健医療と福祉
- ソーシャルワークの基盤と専門職(専門)、ソーシャルワークの理論と方法(専門)、福祉サービスの組織と経営
ひとつの科目群で得点がゼロだと、総得点が足りていても不合格になります。事例問題の練習は、得意な科目群に偏らせないことが大事です。
共通科目免除の扱いにも注意が必要です。社会福祉士及び介護福祉士法の施行規則(第5条の2)による試験科目の一部免除を受ける場合、判定対象は科目群の5と6の2つになり、配点は45点満点です。試験センターは共通科目免除での受験手数料も別に示しています。免除を受ける人は、練習の重心を5と6に置く形になります。
介護福祉士は構造が異なります。合格基準は総得点の60%程度を基準とし、11の試験科目群すべてで得点があることが条件です。配点は1問1点の125点満点です。科目群は次のとおりです。
- 人間の尊厳と自立、介護の基本
- 社会の理解
- 人間関係とコミュニケーション、コミュニケーション技術
- 生活支援技術
- こころとからだのしくみ
- 発達と老化の理解
- 認知症の理解
- 障害の理解
- 医療的ケア
- 介護過程
- 総合問題
出題基準には、4領域(人間と社会、介護、こころとからだのしくみ、医療的ケア)を横断する総合問題を出すと明記されています。単元ごとの暗記だけでは、この総合問題に対応しにくくなります。
出題基準を貼って事例問題を作らせる型
試験センターは、社会福祉士・介護福祉士とも出題基準と科目別出題基準(PDF)を公開しています。出題基準は「標準的な出題範囲の例示」であり、範囲を厳密に限定するものではないと、基準自身が述べています。それでも、問題作成の出発点としては最も信頼できる資料です。
PDFはProjectの資料として登録します。Projectは、資料を登録して個別のチャットで参照させる機能です。プロジェクト指示には、口調や役割を指定できます。学習用のProjectには、次のような指示を置きます。
あなたは社会福祉士国家試験の学習相手です。
出題は、登録した出題基準の中項目に沿って行ってください。
事例問題には、必ず「出題基準のどの中項目か」を添えてください。
制度の数値・要件・施行日を含む選択肢には、末尾に【要確認】を付けてください。
自信のない箇所は「自信なし」と明記し、断定しないでください。指示のポイントは2点です。
- 中項目を添えさせると、範囲外の出題を自分で見分けられます
- 【要確認】を付けさせると、あとで公式と照合すべき箇所が一覧になります
出題基準の各項目を眺めながら、事例問題を作らせるプロンプトは次のようになります。
登録した出題基準から「権利擁護を支える法制度」の中項目を1つ選び、
五肢択一の事例問題を3問作ってください。
条件:
- 事例は300字程度で、支援の場面(相談・契約・見守りなど)を含める
- 正答と、各選択肢が誤りの理由を分けて書く
- 制度の数値・要件には【要確認】を付ける
- 解答は最後にまとめ、事例の直後には出さない出題基準は、法改正による重大な制度変更のように、基準にない事項も出題できるとしています。さらに、法律・政省令・厚生労働白書などの公刊物に記載された事項からも出題されると明記しています。つまり、基準の一覧をなぞるだけでは範囲が閉じません。範囲の外縁は、法改正の確認で埋める必要があります。
事例問題を問答で解く — 答えを先に出させない
問題を解いたあと、正誤の解説を読むだけでは定着しにくいものです。事例を読んで「どの制度が適用される場面か」を自分の言葉で言えるかが、本番の得点差になります。
ここでLearning modeが使えます。Learning modeは、Anthropicが2025年4月にClaude for Educationとともに発表した機能で、答えを直接出さずに考えさせます。発表では、次の4つが挙げられています。
- 答えの代わりに「この問題にどう取り組みますか」と問いを返す
- 「結論を支える根拠は何ですか」と、ソクラテス式に深掘りする
- 個別の問題の背後にある核心の概念を強調する
- 学習用のひな形を出す
この発表が対象にしているのは、Claude for Educationの利用者です。一般のプランの利用者が同じ範囲で使えるかは、一次ソースでは確認できていません。使えるかどうか分からないときは、プロンプトで同じ振る舞いを指定します。
次の事例問題を、答えを先に教えずに一緒に解いてください。
まず、この事例で確認すべき論点を私に3つ挙げさせてください。
私が答えたら、抜けている論点だけを質問で指摘してください。
選択肢の正誤は、私が根拠を述べ終えてから伝えてください。学習モードの詳しい使い方と、法律系資格での応用はClaudeの学習モードで社労士・行政書士・宅建の勉強法を磨くにあります。福祉系の試験でも、問答の型は変わりません。違いは、事例の当事者が「人」であることです。
社会福祉士の事例問題では、本人の意向、家族の状況、利用できる制度を同時に読み取ります。問答で「本人の意向はどこに書かれていますか」と聞き返させると、制度の知識だけで選択肢を選ぶ癖が直ります。
介護福祉士の総合問題とパート合格に合わせた練習の切り方
介護福祉士は、11の試験科目群がA・B・Cの3パートに分かれています。
| パート | 試験科目群 | 配点 |
|---|---|---|
| A | 試験科目群人間の尊厳と自立、介護の基本 / 社会の理解 / 人間関係とコミュニケーション、コミュニケーション技術 / 生活支援技術 | 配点60点 |
| B | 試験科目群こころとからだのしくみ / 発達と老化の理解 / 認知症の理解 / 障害の理解 / 医療的ケア | 配点45点 |
| C | 試験科目群介護過程 / 総合問題 | 配点20点 |
試験センターの合格基準は、一部のパートだけを受験してもパートごとの判定を受けられる仕組みを示しています。パート合格は、合格した試験の翌々年まで有効です。この取り扱いは、第39回の介護福祉士試験から適用すると注記されています。
練習の切り方は、この構造に合わせて決めます。
- まず自分が受けるパートを決める。全パート受験か、一部のみか
- Claudeにパート単位の練習セットを作らせる
- Cパートの介護過程と総合問題は、事例を長めにして、複数の領域が絡む形にさせる
Cパートの総合問題は、4領域を横断する形式です。人間の尊厳、生活支援技術、認知症の理解、医療的ケアが1つの事例に混ざる問題を、意図的に作らせます。
介護福祉士国家試験の総合問題として、
認知症の利用者の食事場面を題材にした事例を1つ作ってください。
条件:
- 「認知症の理解」「生活支援技術」「こころとからだのしくみ」の
3領域にまたがる論点を含める
- 五肢択一で、正答と誤答の理由を分けて書く
- 医療的ケアに関わる記述は、実施できる範囲について【要確認】を付ける医療的ケアは、実施の条件を含む選択肢が作られやすい科目群です。Claudeが自然な文章で書いても、実施の条件は法令で確認します。
法改正と数値はClaudeの知識だけで覚えない
社会福祉士・介護福祉士の試験は、施行済みの制度を前提に出題されます。前節までで、法改正の確認が必要な理由は出そろいました。ここでは、Claudeの知識の限界と、その確認手順を示します。
Anthropicのドキュメントには、モデルごとの「reliable knowledge cutoff(知識が最も豊富で信頼できる時点)」が載っています。
| モデル | reliable knowledge cutoff |
|---|---|
| Claude Fable 5.1 | reliable knowledge cutoff2026年6月 |
| Claude Opus 5.5 | reliable knowledge cutoff2026年6月 |
| Claude Sonnet 5.5 | reliable knowledge cutoff2026年6月 |
| Claude Haiku 4.5 | reliable knowledge cutoff2025年2月 |
最新のモデルでも、基準日は2026年6月です。それ以降の施行や改定は、学習に含まれていない可能性があります。基準日より前に成立した改正でも、施行が先のものを施行済みとして説明する危険は残ります。
社会保障や介護に関わる制度は、金額や割合といった数値が選択肢に入りやすい分野です。数値が絡む選択肢はClaudeの説明を鵜呑みにしない、という方針をProject指示に組み込んでおきます。
確認の手順は4段階です。
- Claudeの解説から、数値・要件・施行日を含む箇所を【要確認】の付いた一覧にする
- 一覧の各項目について、根拠となる法令と所管省庁の公表資料を自分で探す
- 試験センターの出題基準と、受験する回の試験案内を照合する
- 公式と食い違った箇所は、Claudeに「この記述は誤りだった」と伝え、以降の問題に反映させる
先ほどの3問の解説から、数値・要件・施行日を含む記述だけを抜き出し、
「記述」「該当する制度名」「確認すべき資料の種類」の3列の表にしてください。
条文番号は、確信がなければ書かず「要確認」としてください。「条文番号は確信がなければ書かない」と指定するのが肝心です。番号や数値は、もっともらしく誤る典型的な箇所だからです。
過去問と個人情報の扱い
過去問は、試験センターが公開しています。社会福祉士は第38回の科目別PDFと、正答の一覧が公表されています。Claudeに読ませたいときは、PDFをProjectに登録します。
ただし、センターのサイトには「過去問題利用にあたっての留意事項等」の案内があります。過去問をAIに取り込む前に、利用条件を確認してください。転載や再配布に当たる使い方は避けます。自分の学習の範囲で使うのが前提です。
事例問題の題材にする、自分の実務経験にも注意が必要です。福祉の現場で出会った利用者の情報は、実名や住所を伏せても、組み合わせで特定されることがあります。事例は、実在の利用者とは無関係の架空の設定で作らせます。書類を扱う場面の注意はClaudeで介護の書類整理と制度確認を進める手順にまとめています。実務でのAI利用の考え方はケアプランを生成AIで下書きするケアマネの注意点が扱っています。
学習の進め方をProjectにまとめる
最後に、学習の運用をまとめます。試験まで数か月ある場合の1週間の回し方は、次のようになります。
| 曜日 | 内容 | Claudeの役割 |
|---|---|---|
| 平日 | 内容科目群を1つ選び、事例問題を3問解く | Claudeの役割問題の作成と問答 |
| 平日 | 内容誤答を「論点の見落とし」「制度の知識不足」に分類する | Claudeの役割誤答の分類 |
| 週末 | 内容【要確認】の一覧を公式資料で照合する | Claudeの役割一覧の作成のみ |
| 週末 | 内容出題基準の中項目に対する抜けを確認する | Claudeの役割抜けの指摘 |
過去問の演習そのものは、汎用の手順としてClaudeで資格試験の過去問から問題を作らせて自己採点する使い方にあります。他の資格との違いを見たいときはClaudeで資格検定の勉強法が参考になります。
まとめ
Claudeが役に立つのは、出題基準に沿った事例問題の量産と、答えを先に出さない問答です。逆に、数値・要件・施行日は任せられません。学習データの基準日より新しい改正は、Claudeの知識に入っていないからです。
学習用のProjectには、出題基準のPDFと、【要確認】を付けさせる指示を入れておきます。解説の確からしさは、法令と所管省庁の公表資料で照合して初めて確定します。この照合を週末の作業として固定すると、試験直前に慌てずに済みます。