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特別支援学級の個別の指導計画をClaudeで下書きする — 診断名を入れない実態メモの型

特別支援学級の個別の指導計画をClaudeで下書きする — 診断名を入れない実態メモの型

特別支援学級の個別の指導計画をClaudeで下書きするとき、診断名や検査値を渡さず、場面と行動の記述だけで長期・短期目標と手立ての案を作る手順です。自立活動の流れに沿った指示文つき。

Claudeに渡すのは診断名ではなく、場面と行動の記述

個別の指導計画の下書きでClaudeに任せられるのは、手元の観察メモを計画書の型に並べ替える作業です。渡す材料は、場面と行動を書いた実態メモに絞ります。氏名、診断名、検査の名前と数値、生育歴は渡しません。

この線引きの根拠は2つあります。ひとつは、学習指導要領の解説が実態把握の情報を「個別の指導計画を作成するために必要な範囲に限定する」と求めていること。もうひとつは、障害名が個人情報の中でも特に配慮を要する種類に入っていることです。

「診断名がなければ手立てが書けない」と感じるかもしれません。実際には、計画の中身を決めるのは診断名ではなく「どの場面で、何に困り、何ならできているか」です。自立活動の解説も、障害名から指導内容を導くのではなく、実態から課題を整理する流れを示しています。

以下では、2種類の計画の違い、Claudeに渡す形、プロジェクトの指示文、下書きを確定させる見どころの順に進めます。

個別の指導計画と個別の教育支援計画は役割が違う

名前が似ているため、Claudeに頼むときも取り違えやすい2つの計画です。文部科学省の事務連絡(令和3年6月30日)は、両者を次のように分けています。

くらべる

2つの計画の役割

長期の支援の目標

個別の教育支援計画

関係機関が連携して支える継続的な支援体制のための計画です。校長が中心となって、児童生徒の在学時に作成します。就学前から進学先まで切れ目なく引き継ぐために使い、多くの関係者が関わるので、保護者の同意を事前に得るなど個人情報の適切な取扱いが求められます。

授業レベルの指導の計画

個別の指導計画

教育課程を具体化し、一人一人の指導目標、指導内容、指導方法を明確にして、きめ細やかに指導するために学校で作成する計画です。作成の手順や様式は、各学校が実態を踏まえて工夫してよいとされています。

Claudeに下書きさせる対象は、後者です。前者は関係機関と共有する前提の文書で、医療・福祉側の情報が入りやすく、保護者の同意の確認も絡みます。入力の線引きはさらに厳しくなるため、この記事の手順をそのまま当てはめられません。

様式についても注意があります。事務連絡は、示した参考様式が現在使っている様式を妨げるものではなく、学校や地域の実情に応じた様式でよいとしています。Claudeに渡す出力の型は、自校の様式の欄名に合わせて作ります。

実態把握の項目は、渡す形を決めてから書く

学習指導要領の解説(自立活動編)は、実態把握で集める情報の例を挙げています。病気等の有無や状態、生育歴、基本的な生活習慣、人やものとのかかわり、心理的な安定の状態、コミュニケーションの状態、対人関係や社会性の発達、身体機能、知的発達、興味・関心、学習上の配慮事項や学力、補助用具の必要性、進路、家庭や地域の環境などです。

これを、Claudeに渡す形と手元に残す情報へ振り分けます。次の表は、解説の列挙に対する筆者の切り分け案です。

実態把握の項目Claudeに渡す形手元に残す情報
障害の状態・病気等Claudeに渡す形渡さない。困りごとを場面と行動で書く手元に残す情報診断名、主治医の所見、服薬
知的発達・学力Claudeに渡す形「具体物なら3つまで数えられる」のような観察手元に残す情報検査名、検査の数値
心理的な安定・対人関係Claudeに渡す形場面、きっかけ、行動、落ち着いた対応手元に残す情報家庭での出来事、きょうだいの状況
コミュニケーションClaudeに渡す形伝え方の手段と、伝わった場面手元に残す情報言語聴覚士等の評価結果
興味・関心・得意なことClaudeに渡す形一段抽象化して渡す(「乗り物」→「動くもの」)手元に残す情報特定の施設名や固有の趣味
生育歴・家庭環境Claudeに渡す形渡さない手元に残す情報保護者から聞いた内容すべて
進路・数年後の姿Claudeに渡す形「数年後に必要になりそうな場面」の一般化手元に残す情報具体的な進学先の名前

解説は、困難なことだけでなく長所や得意なことも把握するよう求めています。実態メモを書くときは、できている場面を必ず1行入れます。Claudeに渡す材料に長所が無いと、下書きが困りごとだけを並べた計画になるためです。

氏名を消しても、特定される入力は残る

「Aさん」に置き換えれば安全とは限りません。ガイドラインの注釈は、個人情報を、氏名や生年月日などで特定の個人を識別できるもののほか、他の情報と容易に照合して識別できるものも含むと説明しています。学級が小規模な特別支援学級では、場面の具体性だけで本人と分かってしまいます。仮名にした入力の考え方は、通知表の所見文をClaudeで下書きする記事で扱っています。

障害名が特に慎重に扱われるのは、法律が別枠で定義しているからです。個人情報保護法は、病歴などを含む個人情報を「要配慮個人情報」と定めています。政令は、その記述等の1つに、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能の障害があることを挙げます。診断名や手帳の有無を実態メモに書くことは、この種類の情報をClaudeに送ることになります。

手順1: 実態メモを手元で書き換える

実態メモは、Claudeに渡す前に自分で書きます。ここで診断名や氏名を取り除く作業を挟みます。次の例は、架空の記述です。

【場面と行動】
・朝の会で次の活動へ移るとき、席を立つまでに5分以上かかる。
・予定を絵カードで示した日は、カードを見て自分から移動できる。
・手伝いが必要なときに、言葉でなく相手の袖を引いて知らせる。
・給食の配膳は、手順表があると最後まで1人でできる。
 
【得意なこと】
・順番に並べる、数をそろえる作業は集中が続く。
・音楽の時間に、決まった合図で楽器を鳴らす役を好む。
 
【学期前半の様子】
・見通しが持てる日は落ち着いて過ごす。急な変更の日に教室を出ようとする。

書いたあとは、手元の簡単なスクリプトで取りこぼしを拾います。氏名の一覧は端末内のファイルに置き、Claudeには渡しません。姓と名は別の行に書きます。

import re
import sys
 
names = [l.strip() for l in open("names.txt", encoding="utf-8") if l.strip()]
terms = [
    "自閉", "ASD", "ADHD", "学習障害", "知的障害", "発達障害",
    "WISC", "田中ビネー", "IQ", "DQ", "療育手帳", "診断", "服薬", "投薬",
]
text = open(sys.argv[1], encoding="utf-8").read()
hits = [w for w in names + terms if re.search(re.escape(w), text)]
print("要確認:", "、".join(hits) if hits else "なし")
sys.exit(1 if hits else 0)
python3 precheck.py memo.txt

「要確認: なし」が出たら貼ります。語の一覧は網羅ではありません。検査名や機関名など、自校で使う語を足して育てます。スクリプトが通ることは安全の保証にはならず、最後は目視で読み返します。

手順2: プロジェクトに自立活動の流れを指示として入れる

Claudeのプロジェクトは、独自の知識ベースとチャット履歴を持つ作業場です。知識ベースに資料を置き、プロジェクトの指示(project instructions)でトーンや役割を決められます。プロジェクトは無料アカウントでも使え、無料の場合は最大5つまでです。

指示文には、自立活動の解説が示す流れを下書きの順序として書きます。解説の流れは、実態把握、課題の抽出、課題同士の関連の整理と中心的な課題の導出、指導目標(ねらい)の設定、必要な項目の選定、項目の関連付け、具体的な指導内容の設定、です。指示文は、このうち「項目の選定」を教員の仕事として残す形にします。

あなたは特別支援学級の担任を補助する、個別の指導計画の下書き役です。
 
入力は「場面と行動の記述」だけです。氏名、診断名、検査名や数値、
生育歴が含まれていたら、下書きを作らず、その旨を知らせてください。
 
出力は次の順に出します。
1. 長所・得意なこと(入力の記述から)
2. 学習上・生活上の困難(場面と行動で)
3. 課題の候補(最大4つ)と、課題同士の関連の整理案を2通り
4. 長期目標の案(1年後の姿)と短期目標の案(学期内)
5. 手立ての案(場面・支援者・方法)
6. 担任に確認する項目(入力から分からないこと)
 
守ること:
- 診断や原因を推測しない。
- 入力に無い出来事を足さない。
- 目標は、観察して確かめられる行動で書く。
- 自立活動の区分や項目の選定は、担任が決める。
  区分に当てはめる案を出す場合も「案」と明記する。

最後の守ることは、解説の趣旨に沿った設計です。解説は、指導内容を設定するときに、六つの区分27項目の中から必要な項目を選び、相互に関連付けるよう求めています。選定は、その子を知る担任の判断で決まります。Claudeに任せると、一般的な組み合わせに引き寄せられます。

下書きの出力は、例えば次のような構成になります。実態メモを渡したときに出てくる型を示した例で、内容は架空です。

2. 学習上・生活上の困難
- 活動の切り替え時に、移動を始めるまでに時間がかかる
- 手伝いが必要なときに、言葉で伝える手段がまだ少ない
 
3. 課題の候補
- 見通しが持てない場面で安心して過ごすこと
- 要求を相手に分かる形で伝えること
関連の整理案A: 見通しの持ちにくさが、切り替えの遅れと教室を出る行動の
共通の背景になっている
関連の整理案B: 伝える手段の少なさが、袖を引く行動に集中している
 
4. 目標の案
- 長期: 予定を自分で確かめながら、次の活動へ移動できる
- 短期: 絵カードを見て、声かけなしで次の席へ移動できる
 
6. 担任に確認する項目
- 急な変更の日に、教室を出た時間と場所の記録

この型の価値は、課題の関連を2通り並べさせる点にあります。担任がどちらが実情に近いかを選ぶ過程が、中心的な課題を決める作業そのものだからです。

手順3: 下書きを手元で確定させる

下書きは、案の集まりとして受け取ります。確定までの作業を次の4段階に分けます。

手順

下書きから確定版まで

  1. 1

    事実を実態メモと照らす

    入力に無い出来事が混ざっていないか読みます。「毎日」「いつも」のような一般化が入っていたら、記録に合わせて直します。

  2. 2

    目標を観察できる形にする

    「安心して過ごす」のような状態語は、「予定表を見て自分から動く」のように、見て確かめられる行動へ書き直します。

  3. 3

    手立てを実際の人員に合わせる

    支援者の人数、教室の配置、使える教材は、Claudeには見えません。手立ての案は、自校の人員と時間割に当てはめて調整します。

  4. 4

    氏名と診断情報を手元で戻す

    氏名、必要な診断情報、保護者の願いは、校内で定められた様式と保管場所に直接書きます。Claudeの画面から計画書へ移す作業は、最後に手元で行います。

特別支援学級の計画では、自立活動と交流学級の目標を抜かさない

特別支援学級の個別の指導計画には、学級の事情ゆえの落とし穴があります。文部科学省の通知(令和4年4月27日)が挙げる運用上の課題が、そのまま下書きの確認点になります。

  • 特別の教育課程を編成しているのに、自立活動の時間が設けられていない例がある。通知は、学習指導要領が自立活動を取り入れるよう定めていることを根拠に、時数の確保を求めている
  • 交流及び共同学習で「交流」の側面だけに重点が置かれ、特別支援学級に在籍する児童生徒の個別の指導計画に基づく指導目標の達成が十分でない例がある
  • 交流学級の担任のみに指導が委ねられ、必要な体制が整っていない例がある

下書きにこれらの観点が入っているかを、確定前に見ます。Claudeの出力は、実態メモに書かれた場面から目標を作るので、書いていない場面の目標は出てきません。交流学級での場面を実態メモに入れておくと、短期目標が交流の時間にも延びます。指示文の「担任に確認する項目」欄に、「交流学級での目標の共通理解」を固定の確認項目として加えるのも有効です。

通知は、特別支援学級の担任、交流学級の担任、支援員などが個別の指導計画における目標の共通理解を図り、その評価を行う運用例も挙げています。下書きは、その共通理解の叩き台として人数分に配れる形に整えます。

履歴と学習利用の設定は、入力の線引きの外側で決める

匿名化した入力でも、履歴の扱いは決めておきます。個人向けプラン(Free・Pro・Max)では、利用者が許可した場合や、会話が安全性レビューの対象になった場合に、会話がモデル改善に使われます。シークレットチャット(incognito chats)は、モデル改善の設定をオンにしていても学習に使われません。ただし履歴には残らない一方で、30日間は保持されます。

フィードバックのボタンを押すと、関連する会話全体が最長5年保存されます。実態メモを扱うチャットでは、押さない運用が安全です。

学校が組織で導入するか、教員が個人契約で使うかで、確認する根拠のページが変わります。契約形態ごとの違いと、ガイドラインのチェック項目の読み方は、文科省の生成AIガイドラインver2.0を学校のClaude導入にどう活かすかに整理しています。入力してよい情報の種類を一般論として知りたいときは、Claudeに機微な個人情報を入力するときの判断が参考になります。学級の成績データを個票のまま渡さない型は、三者面談の準備をClaudeで進める記事にあります。

つまずきやすい点

実態メモが薄くて、下書きが一般論になる

実態把握が十分でないと計画が作れない、ということはありません。解説は、その時点で把握できた実態に基づいて計画を作成し、指導を通じて実態把握を深めながら計画を修正していく柔軟な対応も大切だとしています。メモが薄いなら、下書きの「担任に確認する項目」を次の観察の宿題にします。

目標が「〜を理解する」で終わる

短期目標の案が、内面の状態を指す語で終わっていることがあります。指示文に「観察して確かめられる行動で書く」と入れていても、揺れることがあります。手順3の「目標を観察できる形にする」段で、行動語に置き換えます。

前の学年の計画を取り込みたくなる

引き継ぎ資料には診断情報や検査値が含まれがちです。解説は、前の学年までの個別の指導計画を参考に、これまで何を目標に学び、何が身に付いたかを課題の整理に生かす視点を示しています。Claudeに渡すときは、診断情報の欄を除き、「身に付いたこと」「身に付きつつあること」「まだ学んでいないこと」の3項目に書き直した要約だけにします。

まとめ

下書きをClaudeに任せるかどうかより前に、実態メモをどの粒度で書くかが決まります。場面と行動で書いたメモなら、診断名を送らずに、課題の整理案と目標・手立ての案を並べ替えてもらえます。課題の関連を2通り出させ、担任がどちらかを選ぶ形にすれば、計画の核心である「中心的な課題」の判断は手元に残ります。

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