Claudeに個人情報を入力する前に確認する一次資料はどれか — PPC・プライバシーセンター・利用規約
Claudeへの個人情報入力は、PPCの注意喚起・プライバシーセンター・利用規約という3種類の一次資料を確認して初めて判断できます。どの資料でどの問いに答えられるかが分かれます。
入力可否は1つの資料では決まらず、問いごとに答える資料が違う
「Claudeに個人情報を入力していいか」は、法律・設定・契約という3つの問いに分かれます。それぞれに答えるのは別の一次資料です。
3つの一次資料と、それぞれが答えられる範囲
PPCの注意喚起PDF
個人情報保護法の読み方を示す文書です。入力前に確認すべき点を挙げますが、Claudeの設定や契約には触れていません。
プライバシーセンター
学習への利用・保持期間・削除の運用を説明するヘルプ記事の集まりです。契約上の保証までは扱いません。
Commercial Terms of Service
契約として拘束力を持つ文言です。日本の個人情報保護法にどう当てはまるかは書かれていません。
3つを順に読む必要は必ずしもありません。今知りたい問いがどの資料の領分かを先に決め、そこから読み始めるほうが早く答えに届きます。計測タグの設定ファイルを渡して点検させる実例は、ClaudeでConsent Modeの実装を棚卸しする手順にあります。
PPCの注意喚起は、入力前に何を確認するよう求めているか
個人情報保護委員会が令和5年(2023年)6月2日付で出した「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」は、質問・作業指示(プロンプト入力)に応えて文章や画像を生成するAIを使ったサービス全般を対象にします。ChatGPTの提供元には、要配慮個人情報の取得や利用目的の通知について、別添2で個別の注意喚起が出されました。この文書の本文はClaudeにもそのまま当てはまります。
本文は3区分・計7項目です。個人情報を扱う事業者向けが2項目、行政機関等向けが2項目、一般の利用者向けが3項目になっています。文面は「十分に確認すること」「違反することとなる可能性がある」という形で、新しい義務を条文として定めるものではありません。
事業者向けの2項目が、入力する側の確認事項です。①は、個人情報を含むプロンプトを入力するとき、特定した利用目的を達成するために必要な範囲内かを確認すること。②は、あらかじめ本人の同意を得ずに個人データを含むプロンプトを入力し、そのデータが応答結果の出力以外の目的で扱われる場合、法違反になる可能性があるという指摘です。
②には続きがあります。そのため入力前に、サービスの提供事業者が当該個人データを機械学習に利用しないこと等を十分に確認するよう求めているのです。この「確認」の中身は、PDF自体には書かれていません。答えはClaude側の資料にあります。①は自社の利用目的との照合なので社内で判断し、②の確認先は次の2点です。
Claude側で確かめる2点
- 1
学習・保持の扱いを見る
「機械学習に利用しないこと等」の確認先は、プライバシーセンターです。契約するプランが商用顧客向けか消費者向けかで、見る記事が変わります。
- 2
契約上の約束になっているかを見る
プライバシーセンターは運用の説明です。同じ内容が契約書の文言として約束されているかは、Commercial Termsで確かめます。
行政機関等向けの2項目は、事業者向けとほぼ同じ構造で、「利用目的のための必要最小限の利用」と「保有個人情報を機械学習に利用しないこと等の確認」を求めています。
一般の利用者向け3項目は、個人がFree・Pro・Maxで自分や身近な人の情報を入力する場面に近い内容です。入力した個人情報が機械学習に使われ、他の情報と統計的に結びついたうえで出力されるリスク、応答結果に不正確な個人情報が含まれ得ること、提供事業者の利用規約とプライバシーポリシーを事前に確認することの3点が並びます。2つ目は、文章が確率的な相関関係に基づいて生成されるという説明を伴います。どれも、入力する人自身に判断を求める留意点です。
7項目をClaudeの契約・設定にどう対応させて読むかは、個人情報保護委員会の生成AI注意喚起をClaudeの契約・設定に対応づけるで1項目ずつ突き合わせています。医療保険証券のように健康情報を含む書類をアップロードする場面の勘所は、Claudeに医療保険証券を読ませて保障内容を見直すで扱っています。
プライバシーセンターは、商用顧客向けと消費者向けで記事が別になる
Anthropicのプライバシーセンター(privacy.claude.com)はヘルプセンター形式で、記事が「商用顧客」(API・Console・Claude for Work・Enterpriseなど、約30記事)と「消費者」(Claude Free・Pro・Maxなど、20数記事)に分かれています。どちらの記事の冒頭にも、もう一方の製品は別記事を見るよう案内が付いています。
取り違えやすいのは、同じ題名の記事が2本あることです。「私のデータはモデルトレーニングに使用されていますか?」は、商用顧客向けが記事7996868、消費者向けが記事10023580です。保持期間も同じ構造で、商用が「組織のデータはどのくらいの期間保存されますか?」(記事7996866)、消費者が「あなたのデータはどのくらいの期間保存されますか?」(記事10023548)になります。
学習に使われる条件
入力データが学習に使われる条件
商用顧客向け(記事7996868)
既定では、入力・出力をモデルの訓練に使いません。例外は、サムズアップ/ダウンのフィードバックなどで明示的に報告した場合と、データの使用を別の方法で許可した場合です。
消費者向け(記事10023580)
チャットとコーディングセッションは、3つの場合に使われます。本人がClaudeの改善への利用を許可した場合、会話が安全性レビューのためにフラグされた場合、Trusted Tester Programなどで明示的にオプトインした場合です。
コネクタ(Google Driveなど)から取り込んだ生のコンテンツについては、消費者向けは学習に使うデータ、商用はフィードバックデータに含まれないと書いています。どちらの記事も、会話に直接コピーされた内容はデータとして含まれる可能性があるとしています。コネクタから取り込んだ内容でも、会話に貼り付けた分は通常の入力と同じ扱いになりえます。
消費者向けでは、シークレットチャットは学習設定がオンでもClaudeの改善に使われません。学習設定の変更は、名前のメニューから設定、プライバシーの順に進み、「AIモデルの改善を支援する」のボタンで切り替えます(記事12109829)。オフにしても、すでに進行中のモデルトレーニング実行や、訓練済みのモデルには過去のデータが含まれ得ます。学習設定をオフにする手順には、安全性分類器にフラグされた会話が内部の信頼・安全モデルの改善などに使われることがある、という注記も付いています。詳しい設定手順はClaudeを学習させない設定にまとめています。
フィードバックの扱いは商用と消費者で共通です。サムズアップ/ダウンで送ると、関連する会話全体が最大5年間保存されます。ユーザーIDからは切り離され、サービスの有効性の分析や研究、モデルの訓練に使われうるとされています。商用のTeamまたはEnterpriseでは、Primary OwnerかOwnerが組織設定の「チャットを評価」でこの送信を無効にできます。
保持期間の数字
保持期間に出てくる4つの数字
標準の削除
30日
APIの入出力はバックエンドから30日以内に自動削除。チャットを削除した場合も30日以内にバックエンドから消えます
学習利用を許可したチャット
最大5年
消費者向けで学習利用を許可したチャットは、識別不可能な形式でトレーニング用に保持
利用ポリシー違反のフラグ
最大2年
自動の信頼・安全システムがフラグした入力と出力
分類スコア
最大7年
同じフラグに伴う信頼・安全の分類スコア
商用側のAPIには例外が4つあります。Files APIのようにユーザー自身の管理下でより長い保持期間を持つサービス、ゼロデータ保持契約のような個別合意、利用ポリシーの執行に長期保持が必要な場合、法令遵守のための場合です。Claude for WorkやEnterpriseでは、会話を製品に保持して続きを再開できるようにしており、ダッシュボードからいつでも削除できます。
消費者向けの標準的な保持期間には、日数が書かれていません。個人データは「合理的に必要な期間」保持すると説明され、会話を削除したときの30日以内という期限だけが数字で示されます。学習への利用を許可した場合の最大5年は、設定が有効になった後の新規または再開されたチャットにだけ適用されます。
ゼロデータ保持の組織には、別の保持枠があります。「カバーされたモデル」はMythosクラスのモデルと、同様の機能を持つ将来のモデルとして指定されたものです。これらに送ったプロンプトと出力は、安全性作業のために30日間保持されます。この方針は2026年6月9日に発効し、ConsoleでZDRワークスペースを設定した組織、Claude EnterpriseでZDRを使ってClaude Codeを使う組織、Bedrock・Google Cloud・Foundry経由でZDRを使う組織に限って適用されます(記事15425996)。消費者向けのFree・Pro・Maxは、すでに入出力が保持されているため影響を受けません。
商用利用規約で、契約上の約束になっているのはどの条項か
Team・Enterprise・APIなど法人契約には、Commercial Terms of Serviceが適用されます。規約冒頭に「消費者向けの利用ではない」と書かれ、Claude.aiなどの消費者向けサービスは別のConsumer Terms of Serviceで定められています。どちらが自社に当てはまるかはClaude Consumer TermsとCommercial Terms、どちらが適用されるかで切り分けられます。
個人データの扱いに関わる条項は、A章からM章までのうち次の5か所に散らばっています。
| 条項 | 内容 | 個人データでの意味 |
|---|---|---|
| 冒頭 | 内容Anthropic Ireland, Limited(EEA・スイス・英国の顧客)とAnthropic, PBC(それ以外)が契約主体 | 個人データでの意味日本の利用者の契約相手は原則としてAnthropic, PBC |
| B章 | 内容顧客は入力の権利を保持し、出力を所有する。Anthropicは顧客コンテンツでモデルを訓練してはならない | 個人データでの意味PPC注意喚起②の「機械学習に利用しない」に対応する契約文言 |
| C章 | 内容データはData Processing Addendum(DPA)に従って処理される。DPAは規約に参照で組み込まれる | 個人データでの意味データ取扱いの具体ルールはDPA側にある |
| E章 | 内容顧客コンテンツは顧客の機密情報。受領側は必要な範囲の従業員・代理人・助言者にだけ共有でき、破棄要求にも応じる | 個人データでの意味機密保持の義務の範囲 |
| M.7条 | 内容EEA・スイス・英国の顧客にはアイルランド法、それ以外にはカリフォルニア州法が準拠法。J章の仲裁が必要でない訴訟は、アイルランドの裁判所または同州の連邦・州裁判所 | 個人データでの意味日本の企業は準拠法がカリフォルニア州法になり、紛争は原則J章の仲裁(EEA等以外はサンフランシスコ)で解決される |
C章は1段落しかありません。データ取扱いの具体的な内容は、規約本体ではなくDPAにあります。DPAの確認と署名の手順は、プライバシーセンターに「データ処理補遺書(DPA)を確認して署名するにはどうすればよいですか」という記事があります。条項番号だけを眺めても、データ処理の中身には辿り着けません。
B章の訓練禁止は、1文の短い約束です。「Anthropicは、サービスから得た顧客コンテンツでモデルを訓練してはならない」という趣旨で、PPC注意喚起②が事業者に求めた確認の契約上の対応物にあたります。E章の破棄要求にも例外があり、法令遵守のために保持する場合と、自動バックアップ上のコピーは対象外です。バックアップ上のコピーは、保存されている間は機密保持義務の下に残ります。
この契約主体・準拠法の構造は、個人情報保護法の「外国にある第三者への提供」という論点にそのままつながります。越境移転にあたるかどうかの条文構造はClaudeへの個人データ入力は外国にある第三者への提供にあたるかで扱っています。契約書のチェックポイントを日本企業向けに並べた記事としてはClaude Commercial Termsのチェックポイントもあります。
3つの資料のつなぎ目で、食い違いに見える箇所はどこか
資料同士を突き合わせると、同じことを別の言葉で書いているために食い違って見える箇所が3つあります。
1つ目は、B章の訓練禁止とフィードバックの扱いです。規約B章は顧客コンテンツでの訓練を禁じ、A.3は顧客が任意に提供したフィードバックをAnthropicが使えると定めます。プライバシーセンターは、サムズアップ/ダウンで送った会話全体を最大5年保存し、訓練に使うことがあると書いています。B章だけを読んで「入力は一切学習されない」と結論すると、フィードバック送信という例外の入口を見落とします。
2つ目は、同じ「学習に使われますか」という問いが、プランによって答えの主語を変える点です。商用顧客向けは「既定では使わない」、消費者向けは「許可した場合に使う」と、起点が逆になっています。しかも消費者向けの学習設定は、各利用者の名前メニューの設定にあります。商用のフィードバック無効化が組織設定で管理者(Primary OwnerかOwner)の役目になっているのとは、設定の場所と担い手が違います。
3つ目は、保持期間の「30日」が指すものが記事ごとに違う点です。APIの入出力の自動削除、会話を削除した後のバックエンドからの削除、カバーされたモデルの安全性保持が、いずれも30日という同じ数字で語られます。数字だけを拾って「30日で消える」と読むと、フラグされた会話の最大2年や、学習利用許可後の最大5年を取りこぼします。
質問別、どの資料のどこを見るか
| 知りたいこと | 見る場所 | 続きの記事 |
|---|---|---|
| 個人データを含むプロンプトの入力は法律上許されるか | 見る場所PPC注意喚起の事業者向け①②(PDF) | 続きの記事注意喚起の対応表 |
| 入力データは学習に使われるか(商用) | 見る場所プライバシーセンター記事7996868と規約B章 | 続きの記事契約チェックポイント |
| 入力データは学習に使われるか(消費者向け) | 見る場所プライバシーセンター記事10023580 | 続きの記事学習させない設定 |
| データはどれくらい保持されるか | 見る場所商用は記事7996866、消費者向けは記事10023548 | 続きの記事同上 |
| 自社にはConsumerとCommercialどちらが適用されるか | 見る場所規約冒頭の適用範囲の説明 | 続きの記事ConsumerとCommercialの違い |
| 米国法人への提供は越境移転にあたるか | 見る場所規約冒頭の契約主体とM.7条 | 続きの記事外国にある第三者への提供 |
| 個人情報を含むプロンプトは第三者提供にあたるか | 見る場所PPC注意喚起②と規約B章・E章 | 続きの記事第三者提供にあたるか |
まとめ
次に動くなら、自社が商用契約か消費者向けプランかを先に確定してください。そのうえで、PPC注意喚起②の「機械学習に利用しないこと等の確認」を、該当するプライバシーセンター記事と規約B章の文言で満たせるかを見ると、入力の可否を社内で説明できる形になります。