Claudeで清掃の薬剤SDSから混ぜてはいけない組み合わせを一覧にする
現場で使う洗剤・漂白剤のSDS PDFをClaudeに渡し、製品の組み合わせごとに混触の注意をSDSの記載ページつきで拾う確認表の作り方です。SDSに書かれていないペアの扱いも示します。
清掃の現場には、トイレ用の酸性洗剤、塩素系の漂白剤、アルカリ性の油汚れ用洗剤が並びます。混ぜてはいけない組み合わせは製品ごとに違い、答えはそれぞれのSDS(安全データシート)に書かれています。ただ、SDSは1製品で数ページから十数ページあり、10製品を総当たりで見比べるのは骨が折れます。
この作業は、ClaudeアプリにSDSのPDFをまとめて渡すと下書きができます。製品ごとに「混触に関する記載」を拾い、製品どうしの組み合わせ表に落とすところまでです。ここで作るのは確認表の下書きで、掲示して使うのは人が原本のSDSと照らした後の版になります。
確認表で解決することと、解決しないこと
作る表は、現場の製品がN本あるとき、製品AとBを一緒に使ってよいかを引ける早見表です。ペアの数はN×(N-1)÷2で増えます。8製品なら28組、12製品なら66組です。
SDSで答えが出る部分と、出ない部分があります。先に分けておくと、表の列が決まります。
| 知りたいこと | SDSで分かるか | 表での扱い |
|---|---|---|
| その製品が避けるべき相手(酸、塩素系など) | SDSで分かるか記載があれば分かる | 表での扱いClaudeが原文つきで抜く |
| 相手の製品名まで指定した注意 | SDSで分かるか多くは書かれない | 表での扱い成分から人が当てはめる |
| 混ぜたとき何が起きるか(ガス発生など) | SDSで分かるか記載があれば分かる | 表での扱いClaudeが原文つきで抜く |
| 前の洗剤が残った床や排水口に次を使ってよいか | SDSで分かるか分からない | 表での扱い人が運用ルールで決める |
SDSには、相手を製品名で指定する書き方よりも、「酸との接触を避ける」のように物質の種類で書く形が多くなります。そのため、製品Aの注意と製品Bの成分を突き合わせる一手間が要ります。この突き合わせをClaudeに任せ、結果を「SDSに直接ある」と「成分から当てはめた」に分けて出させるのが、この手順の肝です。
SDSのどこを読ませるか
事業者が化学物質を他者に渡すときに通知する事項は、労働安全衛生の省令(安衛則)の第24条の15に並んでいます。名称、成分およびその含有量、貯蔵又は取扱い上の注意、安定性及び反応性などです。混触に関する記載は、この「安定性及び反応性」と「貯蔵又は取扱い上の注意」に当たる節に入るのが普通です。SDSの節番号や見出しの表記は製品によって揺れるので、番号でなく見出しの語で探させます。
読ませる節は3つに絞ります。
混触の確認で拾う3つの節
成分および含有量
次亜塩素酸ナトリウム、塩酸、水酸化ナトリウムなど、混触の相手を決める有効成分の名前を拾います。
安定性及び反応性
避けるべき条件や、接触してはいけない物質の記載を拾います。表の中心になる節です。
貯蔵又は取扱い上の注意
「他の薬剤と混合しない」「酸性の製品と一緒に保管しない」といった、保管と取扱いの注意を拾います。
労働安全衛生法に基づくリスクアセスメントの対象は製造業や建設業だけではなく、清掃業も含まれると職場のあんぜんサイトが示しています。清掃会社の現場責任者がSDSを手元に集める理由は、法令上の位置づけからも説明できます。
準備 — PDFの集め方とファイルの作り方
ClaudeアプリへのPDFのアップロードには、チャットごとの上限があります。1回のチャットに添付できるのは20ファイルまでです。PDFは1ファイル1000ページまでで、100ページ以下ならテキストと画像(図や表)の両方を読み、101ページ以上はテキストのみです。SDSは数十ページ程度なので、ページ数で困ることは少ないでしょう。
準備で決めておくのは次の3点です。
- 1製品を1ファイルにする。複数製品を1つのPDFに結合すると、「どの製品の記載か」が取り違えやすくなります
- ファイル名を現場の呼び名にする。「トイレ酸性洗剤_A社.pdf」のように、現場の人が見て分かる名前にします。Claudeはこの名前も手がかりにします
- 最新版かを確かめる。SDSには改訂日があるので、古い版を混ぜていないかを先に見ます
20製品を超えるときは、チャットを分けず、場所ごとに分けます。トイレ用、厨房用、床用といった単位です。製品が20本を超える現場でも、同じ場所で同時に使う製品は限られるので、分けた表のほうが現場では引きやすくなります。
スキャンして画像になったSDSを渡す場合は、PDFの文字が薄い、傾いている、といった状態が精度を落とします。PDFをテキスト指示より前に置き、ページの向きを揃え、文字がはっきり読める版を使います。メーカーのサイトから入手できる元のPDFがあれば、そちらを優先します。
手順1 — 製品ごとの「混触メモ」を作らせる
最初に、全製品のSDSを添付して、製品ごとに混触に関する記載だけを抜かせます。ペアの判定はまだ頼みません。いきなりペア表を作らせると、どの記載を根拠にしたのかが追えなくなるからです。
添付した各PDFは、清掃で使う薬剤のSDSです。製品ごとに、次の表を作ってください。
ルール:
- SDSに書いてあることだけを使い、推測や補完をしない
- 根拠のページは、PDFビューアーが示すページ番号で書く
- 原文は要約せず、そのまま引用する
- SDSに記載がない項目は「記載なし」と書く
列: 製品名 / 改訂日 / 主な成分 / 接触を避けるべき物質・条件(原文)/
混合時に起きるとされる事象(原文)/ 取扱い・保管上の混合に関する注意(原文)/ 根拠ページ返ってきた表は、次のような形になります(以下は、説明用に作った架空の製品の例です)。
| 製品名 | 主な成分 | 接触を避けるべき物質(原文) | 根拠ページ |
|---|---|---|---|
| 製品A(塩素系漂白剤) | 主な成分次亜塩素酸ナトリウム | 接触を避けるべき物質(原文)「酸との接触を避けること」 | 根拠ページp.4 |
| 製品B(トイレ用酸性洗剤) | 主な成分塩酸 | 接触を避けるべき物質(原文)「塩素系製品と混合しないこと」 | 根拠ページp.3 |
| 製品C(アルカリ性の油汚れ用) | 主な成分水酸化ナトリウム | 接触を避けるべき物質(原文)記載なし | 根拠ページp.4 |
製品Cのように「記載なし」が出る製品が、確認表の要注意行になります。次の節で扱います。
落とし穴
印刷されたページ番号で根拠を書かせると、後で探せない
SDSには、紙面に印刷されたページ番号とPDFビューア上の通し番号がずれるものがあります。Claudeアプリの案内でも、ページを指すときはビューアーが示す番号を使うよう勧めています。プロンプトで「PDFビューアーのページ番号」と明示しておくと、表の根拠ページをクリックして開いたときに迷いません。
手順2 — 組み合わせ表にする
混触メモができたら、同じチャットで続けて組み合わせ表を作らせます。ここで判定を3つに分けるのが肝です。
上の混触メモをもとに、全製品の組み合わせ表を作ってください。
各ペアの判定は次の3種類だけにします。
- 「SDSに直接記載」: 一方のSDSが相手の製品名または成分を挙げて混合を避けるよう書いている。
どちらのSDSのどのページか、原文を添える
- 「成分から要確認」: SDSに直接の記載はないが、一方の「接触を避けるべき物質」に
もう一方の成分が当てはまりそう。当てはめた理由を1行で書く
- 「記載なし」: どちらのSDSにも、混合に関する記載が見当たらない
「記載なし」を「混ぜても安全」と書き換えないこと。「SDSに直接記載」と「成分から要確認」を分けるのは、根拠の強さが違うからです。前者は原文を人が読んで裏が取れます。後者はClaudeの当てはめなので、人が成分表で確かめます。両者を同じ「危険」でまとめると、確認が必要な行がどれか分からなくなります。
出力は、そのまま現場の掲示物にはせず、次の列を足したスプレッドシートに貼ります。
| 製品X | 製品Y | 判定 | 根拠(SDSとページ) | 人の確認 | 現場での扱い |
|---|---|---|---|---|---|
| 製品A | 製品Y製品B | 判定SDSに直接記載 | 根拠(SDSとページ)Aのp.4、Bのp.3 | 人の確認済 | 現場での扱い同じ場所で併用しない |
| 製品A | 製品Y製品C | 判定記載なし | 根拠(SDSとページ)(なし) | 人の確認未 | 現場での扱い保留 |
最後の2列は人が埋めます。Claudeに埋めさせないのは、掲示する運用ルールが事業所の責任だからです。
「記載なし」を安全と読まないための切り分け
確認表で最も事故につながりやすいのは、「記載なし」の行です。
「SDSに書いていないから混ぜていい」は成り立つか
- 後輩
製品Cは混合の注意が「記載なし」でした。じゃあ製品Aと一緒に使っても大丈夫ですよね。
- 先輩
そこは決めつけないでください。「記載なし」は、そのSDSに書かれていないという意味に留まります。安全が確かめられたことを示す結果ではありません。
- 後輩
じゃあどうするんですか。
- 先輩
製品Cの成分を表で見て、製品Aの「避けるべき物質」に当てはまらないか人が見ます。当てはまらなくても、メーカーに問い合わせる余地を残して「要確認」にしておきます。
「記載なし」のペアは、次の順で扱います。
「記載なし」の行を片づける順番
- 1
成分をつき合わせる
一方の「避けるべき物質」にもう一方の成分名が入っていないかを人が見ます。
- 2
メーカーに問い合わせる
SDSの連絡先欄にある窓口に、併用の可否を尋ねます。回答は表の「根拠」列に記録します。
- 3
運用ルールで併用を避ける
判断が付かないペアは、同じ場所・同じ時間帯で使わないルールにします。
Claudeの出力を信用してよい範囲を確かめる方法
引用が実在するかどうかは、人が数ペアを抜き取って開けば確かめられます。確認の手順は短くて済みます。
- 「SDSに直接記載」の行から、無作為に3〜5行を選ぶ
- 表の根拠ページをPDFビューアーで開き、原文の引用が本当にそのページにあるかを見る
- 引用が見つからない行が1つでもあれば、その製品のメモ全体を作り直す(別チャットで、その製品のPDFだけを渡す)
PDFを渡すとき、Claudeは各ページを画像として読み、ページから取り出したテキストも並べて受け取ります。文字がきれいに取り出せる元PDFのほうが、画像だけのスキャンより引用が正確になりやすいのは、この仕組みからの説明です。それでも、引用を原本と照らす確認は省かないでください。
もう1つ、見落としやすいのは改訂のタイミングです。製品の成分が変わるとSDSも改訂されます。確認表には各製品のSDS改訂日の列を持たせ、新しい版が届いたらその製品だけ手順1からやり直します。表全体を作り直す必要はなく、その製品が絡む行だけを入れ替えます。
現場に出す前の仕上げ
確認表を現場に出すときは、次の3点を守ります。
- 最終版は人が作る。Claudeの下書きに、人の確認欄と承認日を足したものだけを掲示する
- 製品名は現場の呼び名とSDS上の名称を併記する。「ブルーの洗剤」と呼んでいるものが、SDSではどの製品かを引けるようにする
- 新しい製品を入れるときは、既存製品とのペアを全部確かめる。製品が1本増えると、組み合わせはN本の分だけ増える
SDSの項目抽出を、スクリプトで自動化して根拠ページの照合まで機械にさせたい場合は、API版の手順が使えます。GHS区分やばく露限界値を抜くリスクアセスメントの下書きは、SDSのPDFからリスクアセスメントの下書きをClaudeで作る手順にまとめています。
清掃の現場で写真から仕上がりを点検する場合は、客室清掃の仕上がり写真を点検表に照らす手順と同じ考え方で、Claudeが決められる項目と人が決める項目を先に分けておくと運用が安定します。
掲示の前に確認すること
確認表を掲示してよいかの最終チェック
- Q「SDSに直接記載」の行で、原文をPDFの該当ページで確かめたか?答えが確かめてから進む答えがはい
原文が見つからない行は掲示しません。
- Q「記載なし」「成分から要確認」の行に、人の判断が入っているか?答えが空欄のまま掲示しない答えがはい
判断が付かないペアは「併用しない」に倒します。
掲示してよい
人の確認欄と承認日が入った版だけを、現場に出します。
SDSで拾えるのは、メーカーが書いた範囲の注意です。混ぜてはいけない組み合わせの一覧は、その範囲を整理した早見表にとどまります。前に使った薬剤の残り、排水口、換気の悪い狭い場所といった現場の条件は、人が足す列で補います。