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ClaudeでFMEAの故障モード洗い出しを設計変更前に行う手順

ClaudeでFMEAの故障モード洗い出しを設計変更前に行う手順

設計変更の前にExcelのFMEA表をClaude for Excelに読ませ、抜けている故障モードとRPNの候補を出させる手順。評価点を決めるのは担当者のままにする線引きと、使えない場面もまとめます。

FMEA(故障モード影響解析)は、機能ごとに「どう壊れるか」「壊れると何が起きるか」「なぜ壊れるか」を表に書き出し、設計変更の前にリスクを見積もる作業です。表が育つほど、書き手の頭にある故障しか載らなくなります。Claude for Excelに表を読ませると、抜けている故障モードの候補と、RPN(リスク優先度数)の叩き台を出させられます。

ただし、点数を決めるのは担当者です。この記事では、Claudeに任せる範囲と人が握る範囲を分けたうえで、Excelブックの上で進める手順を示します。

Claudeに任せる範囲と、担当者が決める範囲

Claude for Excelの公式ページには、FMEAという言葉は出てきません。書かれているのは、ブックの内容について質問できること、数式の関係を保ったまま値を変えられること、エラーの原因をたどれることです。その機能を故障モードの洗い出しに当てはめるのが、この記事の使い方です。

作業Claudeに任せる担当者が決める
既存行の読み込みと整合の点検Claudeに任せる任せる担当者が決める指摘の採否
抜けている故障モード・原因の候補出しClaudeに任せる任せる担当者が決める候補を表に載せるか
影響・原因の文面の下書きClaudeに任せる任せる担当者が決める表現と技術的な正しさ
RPNの計算式の入力Claudeに任せる任せる担当者が決める式の定義
厳しさ・発生度・検出度の評価点Claudeに任せる候補まで担当者が決める最終の点数
対策の要否と実施Claudeに任せる扱わない担当者が決めるすべて

評価点を担当者に残す理由は単純です。点数は、自社の評価基準と過去の不具合実績に照らして付けるものだからです。表の外にある実績をClaudeは持っていません。

前提 — 使えるExcelとプラン

Claude for Excelは、Pro・Max・Team・Enterpriseのプランで一般提供されています。対応するExcelは次のとおりです。

  • Excel on the web
  • Windows版のMicrosoft 365で、ビルド16.0.13127.20296以降
  • Mac版でバージョン16.46以降、かつビルド21011600以降

Excel 2016・2019の永続ライセンス版とボリュームライセンス版、iPad、Androidでは動きません。導入は、MicrosoftのAppSourceで「Claude for Microsoft 365」を入れ、Excelでアドインを有効にしてClaudeアカウントでサインインします。管理者がMicrosoft 365管理センターから組織に配布する方法もあります。設計図面や不具合情報を扱う部署では、配布前に管理者へ確認してください。

手順0: FMEA表の形を先に決める

Claudeに読ませる表は、列の意味が曖昧だと読み違えます。最初に列を固定します。次は一例です。

列内容
A: ID内容行の通し番号
B: 機能内容部品・工程が果たす機能
C: 故障モード内容機能が果たせない状態
D: 影響内容故障が起きたときの結果
E: 原因内容故障を引き起こす要因
F: S(厳しさ)内容影響の重大さ。担当者が付ける
G: O(発生度)内容原因の起きやすさ。担当者が付ける
H: D(検出度)内容現行の検出手段で見つかりにくいほど高い
I: RPN内容F×G×Hの数式

評価尺度の段数や、対策の優先度を何で決めるかは、組織の規程に従います。FMEAの書式には複数の流儀があり、RPNを使わない運用もあります。自社の規程がRPNを使わないなら、手順2は読み替えてください。

手順1: 抜けている故障モードを指摘させる

設計変更の前に、既存の表をClaudeに点検させます。表は変更前のコピーをブックに置き、元のブックには触れさせない運用が安全です。公式のベストプラクティスにも、広く編集させる前に信頼できるコピーから始めることが挙がっています。

Sheet「FMEA」のA〜E列を読んでください。F〜I列の評価点は触らないでください。
次の3点を、表の行番号つきで指摘してください。
1. 機能はあるのに故障モードが1つしかない行
2. 影響が空欄、または故障モードと対応しない行
3. 原因が「不良」「ミス」のように具体性のない行
修正案は、元の表を書き換えず、別シートに候補として並べてください。

この依頼は、表の整合を点検させるものです。次の依頼では、表に載っていない故障モードの候補を出させます。

「機能」列にある各機能について、表にない故障モードの候補を挙げてください。
変更予定の部品は「ブラケットB」です。
候補は新しいシート「候補」に、機能・故障モード・影響・原因の4列で書き、
どの機能の行から出した候補かをA列に書いてください。

出てくるのは候補です。設計の事情は表に書かれていない範囲までは分からないので、実際に起こり得ない故障も混ざります。逆に、現場で起きた不具合が表の外にあれば拾えません。候補を表に載せるかどうかは、担当者が1行ずつ判断します。

手順2: RPNの計算式と評価点の候補を出させる

RPNの列は、数式として入れさせます。Claudeは数式の関係を保ったまま値を更新でき、下流のセルは再計算されます。式を先に入れておけば、評価点を直したときに順位が追従します。

I列に、F×G×Hの数式でRPNを入れてください。
その上で、J列「RPN候補メモ」に、各行のF・G・Hをどう見積もったかを1行で書いてください。
F〜H列の既存の値は書き換えず、候補の点数はJ列の文中にだけ示してください。

評価点は表の数値セルに直接書かせず、メモ列に分離しています。数値セルに候補が混ざると、担当者が付けた点数と区別がつかなくなるためです。上書きの前に警告を出す機能はありますが、警告を待つより、最初から書かせない方が安全です。

候補の点数に根拠が見えるように、次の質問も使えます。

行12のRPNが高く出ている理由を、F・G・Hの値とともに説明してください。

回答にはセルへの引用がつき、クリックで該当のセルに移動できます。見積もりの根拠として挙げられたセルが、実際に読むべきセルかどうかを確かめられます。

手順3: 設計変更の前後で差を取る

設計変更の案が固まったら、変更後の機能・部品の行を追加し、変更前の表と並べて点検します。

シート「FMEA_変更前」と「FMEA_変更後」を比べてください。
変更後で新しく加わった機能と故障モード、消えた故障モードを一覧にしてください。
消えた故障モードは、設計変更で本当に起こり得なくなったのか、
単に表から落ちただけなのかを、機能の記述から判断できる範囲で示してください。

後半の問いが肝心です。設計変更で故障が消えたのではなく、転記の漏れで行が落ちていた、という事態は、改訂の際に起こり得ます。Claudeに差を機械的に取らせ、消えた行の扱いは担当者が決める分担にすると、確認の手間が減ります。

例: ブラケットBの1機能を点検する

次の表は、手順1の依頼を説明するための架空の例です。実在の製品や規格値ではありません。

ID機能故障モード影響原因
3機能センサーを固定する故障モード取付穴が緩む影響検出位置がずれる原因締付トルク不足
4機能センサーを固定する故障モード影響検出位置がずれる原因振動

この2行に手順1の1〜3を当てると、指摘の対象はすぐ見つかります。行4は故障モードが空欄です。行3の原因「締付トルク不足」は、トルクの規定値が表のどこにも書かれていないので、点検や作業の手順に結びつけにくい書き方です。

抜けの候補としては、「ブラケット自体が割れる」「ねじが外れる」「熱で位置がずれる」のような一般的な故障が返ってくるでしょう。担当者はここで、自社の部品に当てはまる候補だけを拾います。材質が金属なら「割れる」の候補は優先度が下がるかもしれませんし、樹脂なら高温環境での変形を追加で考えたくなります。表に書かれていない材質や使用環境は、依頼文に一言添えると候補の精度が上がります。

つまずきやすい点

  • 機能が粗い: 機能の欄が「全体」「本体」のように大きいと、候補も一般論になります。機能を部品や工程の単位に分けてから読ませます
  • 見出しが複数行: 列見出しが複数行に分かれていたり、セルが結合されていたりすると、どの列の値かを読み違えることがあります。読ませる範囲は、見出しが1行の単純な表にそろえます
  • 会話が長くなる: 長い会話は自動で圧縮され、新しい会話に引き継がれます。点検で決めた内容は、会話に残さずシートのメモ列に書き残します
  • モデルの選択肢: アドインに出るモデルは、Claude.aiより少ないことがあります。組織のモデルアクセス設定も影響します

毎回の指示を固定する

同じ依頼を繰り返すなら、アドインのサイドバーで「設定」を開き、Instructionsの欄に書いておきます。ここに書いた内容は、Excelでの全会話に効きます。PowerPointやWordの設定とは別です。

FMEA表では、F〜H列(S・O・D)の評価点を書き換えない。
候補はJ列または「候補」シートにだけ書く。
行の追加・削除をするときは、先に一覧を示して確認を取る。

繰り返す手順をひとまとめにしたいときは、Skillsが使えます。有効にしたSkillsはExcelを含むすべてのClaude for M365アドインで使え、サイドバーで/を入力すると選べます。なお、BedrockやVertex AIなどのサードパーティ経由で接続している場合、ConnectorsとSkillsは使えないことがあります。

使えないことと、注意しておく点

公式ページは、Claude for Excelを次の用途には勧めないとしています。

  • 人の確認を経ない最終の納品物
  • 検証なしの、監査に関わる計算
  • 適切な管理のない、機微な情報や規制対象のデータを含むモデル

FMEAに当てはめると、取引先に提出するFMEAは、Claudeの出力をそのまま載せないということです。評価点を人が付ける運用は、この制約にも合っています。

そのほか、次の点に注意してください。

  • 外部ファイル: サプライヤーから受け取った部品表や、ダウンロードしたテンプレートには、隠れた指示が入り得ます。公式ページは、信頼できるスプレッドシートだけで使うよう求めています。外部のFMEA表は、値だけを新規ブックに貼ってから読ませる運用が無難です
  • 未対応の機能: データテーブルと、マクロ・VBAの操作には対応していません。RPNの再計算にマクロを使っている表は、数式に置き換えてから使います
  • 履歴の残り方: チャット履歴はブラウザ内に保存され、Anthropicのサーバーには保存されません。一方で、Claude for Excelは組織のカスタムなデータ保持設定を引き継がず、Enterpriseの監査ログにも含まれません。ただしEnterpriseでCompliance APIを有効にしている場合、Excelでのセッションはそちらに含まれます。Compliance APIを使っていない組織で操作記録が必要なときは、別の方法を用意してください

プロンプトインジェクションの扱いは、Coworkのプロンプトインジェクション対策の信頼境界の考え方が参考になります。

設計変更の前に使う意味

FMEAは、設計が固まってから埋める書類になりがちです。変更前の表をClaudeに点検させる利点は、点検が安く済み、設計変更の判断より前に回せることです。

点検の質は、表の書き方で決まります。故障モードの列に「破損」とだけ書いてあれば、Claudeが返す候補も一般論になります。機能の記述が具体的であるほど、候補は設計の実態に近づきます。Claudeの返す候補が一般論に寄るときは、表の記述が曖昧なサインです。

財務側の使い方は、月次予実対比の差異分析や保険の準備金の検証で扱っています。表を読ませて異常を洗い出す流れは共通していて、人が最終判断を持つ分担も同じです。ブックの読み込みの基本はClaude Excel読み込みと作成にまとめています。

まとめ

Claudeに渡す仕事は、表の読み込み、抜けの指摘、候補の下書き、数式の入力です。評価点と対策の要否は担当者が握ります。候補は別のシートかメモ列に隔離し、数値セルを直接書き換えさせない運用にすると、人が付けた点数との混同を防げます。

提出用のFMEAに載せる前に、人が1行ずつ読み、外部から受け取ったファイルは新規ブックに値だけ移してから読ませると安全です。

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