Claude in Excelでサプライヤー評価を月次スコアカードにする手順
納期遵守率・不良率・単価差の実績シートから、重み付けスコアと評価ランクを数式で組み、評価が落ちた取引先の理由を注記させる手順。数値例と検算の入れ方つきです。
サプライヤー評価は、納期(Delivery)・品質(Quality)・コスト(Cost)の実績を取引先ごとに点数化し、ランクを付ける月次作業です。実績シートは毎月増えるのに、評価表の数式は手で直す箇所が多く、評価が落ちた理由の説明も後回しになりがちです。Claude for Excel(Claude in Excelと呼ばれることもあります)なら、この評価表の数式づくりと理由の注記をExcelの中で任せられます。
この記事では、納期遵守率・不良率・単価差の3指標から重み付けスコアとランクを組む手順と、評価が落ちた取引先に理由を添えさせる流れを、数値例つきで説明します。評価基準そのものは自社の購買方針で決めるものなので、ここで使う重みとしきい値は例です。
Claude for Excelに任せる範囲と任せない範囲
Claude for Excelは、Excelにアドインとして入るClaudeです。ブックについて質問し、数式の関係を保ったまま前提を変え、エラーの原因を探し、新しいモデルの作成や既存テンプレートへの入力ができます。回答にはセル単位の出典が付き、クリックで該当セルへ移動できます。Pro、Max、Team、Enterpriseの各プランで使えます。
スコアカードに当てはめると、任せやすい作業は次の4つです。
- 実績シートから3指標を数式で計算する
- 重みとしきい値を設定シートに切り出し、スコアを参照式で組む
- スコアからランクを判定する
- ランクが下がった取引先に、数字から言える範囲の理由を注記する
並べ替え、フィルター、ピボットテーブルの編集、条件付き書式、入力規則のドロップダウンといったExcel本来の操作も、そのまま依頼できます。ランク別の色分けは条件付き書式で足りるので、数式とは分けて頼むと確認しやすくなります。
任せない範囲もはっきりしています。サポート記事には、顧客に渡す最終成果物を人の確認なしで出すこと、監査で使う計算を検証なしで使うことは推奨しない、という趣旨の記載があります。取引先に評価結果を通知する資料は、数字と文面を人が読んでから出す前提で組みます。
月次スコアカードの進め方
- 1
ブックを3シートに分ける
実績・設定・スコアカードの3枚にします。取引先コードをキーにします。
- 2
指標を数式で組ませる
遵守率・不良率・単価差を、実績シートの集計式で出します。
- 3
重みとしきい値を設定シートへ
数式に数字を埋めず、設定シートのセルを参照させます。
- 4
ランクの変動に注記を付ける
前月より下がった取引先だけ、理由の下書きを書かせます。
- 5
検算してから共有する
手計算した1社と突き合わせます。
実績シートに入れる列を決める
数式を頼む前に、実績シートの列を固定します。列がぶれると、翌月に貼り替えたとき数式が壊れます。次の列があれば3指標は出せます。
| 列 | 内容 | 使う指標 |
|---|---|---|
| 年月 | 内容納入月(2026-09など) | 使う指標絞り込み |
| 取引先コード | 内容取引先の識別子 | 使う指標キー |
| 納入件数 | 内容その月の納入回数 | 使う指標納期 |
| 期限内件数 | 内容納期に間に合った回数 | 使う指標納期 |
| 検査数量 | 内容受入検査した数量 | 使う指標品質 |
| 不良数量 | 内容不良と判定された数量 | 使う指標品質 |
| 基準単価 | 内容契約や見積の単価 | 使う指標コスト |
| 実単価 | 内容請求ベースの加重平均単価 | 使う指標コスト |
実単価は、1か月に複数回納入があるなら数量で加重した平均にします。単純平均にすると、少量の高単価納入が結果を引っ張ります。この点は最初の依頼文に書いておくと、あとから直す手間が減ります。
3指標を数式で組む
最初の依頼は、指標の定義を明示して出します。曖昧に「評価して」と頼むと、定義がClaude任せになり、月ごとに基準が変わる原因になります。
「実績」シートの年月が2026-09の行を取引先コードごとに集計して、
「スコアカード」シートに次の3列を作ってください。
- 納期遵守率 = 期限内件数の合計 ÷ 納入件数の合計
- 不良率 = 不良数量の合計 ÷ 検査数量の合計
- 単価差率 = (実単価 − 基準単価) ÷ 基準単価
値の直書きはせず、SUMIFSなどの参照式にしてください。
年月はスコアカードのB1セルを参照して切り替えられるようにしてください。「年月を1セルで切り替える」指定が要点です。これで翌月はB1を書き換えるだけになります。例えば次のような式になります(行・列の位置は自社のブックに合わせて読み替えます)。
納期遵守率 =SUMIFS(実績!D:D,実績!A:A,$B$1,実績!B:B,$A5)/SUMIFS(実績!C:C,実績!A:A,$B$1,実績!B:B,$A5)
不良率 =SUMIFS(実績!F:F,実績!A:A,$B$1,実績!B:B,$A5)/SUMIFS(実績!E:E,実績!A:A,$B$1,実績!B:B,$A5)分母がゼロになる取引先(その月は納入なし)があると、#DIV/0!が出ます。Claude for Excelはエラーの原因を探す用途にも使えるので、出た場合は「このエラーのセルを特定して、納入なしの取引先は空欄にしてください」と続けて頼めます。
重み付けスコアとランクを設定シートで管理する
指標の単位(%)がそのままでは足し合わせられないため、各指標を100点満点に変換してから重みをかけます。変換の式と重みは、設定シートに置きます。
設定シートの例です。
| 項目 | 値 | 意味 |
|---|---|---|
| 品質の重み | 値40% | 意味Qの比重 |
| コストの重み | 値30% | 意味Cの比重 |
| 納期の重み | 値30% | 意味Dの比重 |
| 不良率の上限 | 値2.0% | 意味この値で品質点が0になる |
| 単価上振れの上限 | 値10% | 意味この値でコスト点が0になる |
| ランクS | 値90点以上 | 意味 |
| ランクA | 値80点以上 | 意味 |
| ランクB | 値70点以上 | 意味70点未満はC |
点数への変換は、次のように置きます。
納期点 = 納期遵守率 × 100
品質点 = MAX(0, 100 − 不良率 ÷ 不良率の上限 × 100)
コスト点 = MAX(0, 100 − MAX(0, 単価差率) ÷ 単価上振れの上限 × 100)
総合点 = 品質点×品質の重み + コスト点×コストの重み + 納期点×納期の重み単価が基準より安い場合(単価差率がマイナス)はコスト点を100点で頭打ちにします。安さに加点しない設計にしておくと、極端な値引き提示で総合点が膨らむことを避けられます。この方針も依頼文に書きます。
設定シートの重みとしきい値のセルを参照して、納期点・品質点・コスト点・
総合点・ランクを追加してください。点数の式は次の通りです。
(上の式を貼る)
単価差率がマイナスのときはコスト点を100点にしてください。
ランクはIFS関数で、設定シートのS/A/Bのしきい値を参照してください。しきい値を数式に埋め込まず設定シートに集めるのは、基準を変えた月に数式を探し回らずに済ませるためです。重みを変えたときも、サポート記事にあるとおりClaudeは数式の関係を保ったまま値を更新するので、「品質の重みを50%、納期の重みを20%に変えて、ランクの変化を一覧にして」と頼む感度分析もできます。
数値例で検算する
次の4社を例に、手計算した結果と突き合わせます。数値は説明用の架空の値です。
| 取引先 | 納入/期限内 | 検査/不良 | 基準→実単価 |
|---|---|---|---|
| A商事 | 納入/期限内40 / 38 | 検査/不良10,000 / 20 | 基準→実単価100 → 101 |
| B工業 | 納入/期限内25 / 20 | 検査/不良4,000 / 40 | 基準→実単価250 → 245 |
| C製作所 | 納入/期限内30 / 30 | 検査/不良6,000 / 6 | 基準→実単価80 → 84 |
| D金属 | 納入/期限内20 / 17 | 検査/不良2,500 / 50 | 基準→実単価500 → 505 |
上の設定で計算すると、結果は次のとおりです。
| 取引先 | 納期点 | 品質点 | コスト点 | 総合点 | ランク |
|---|---|---|---|---|---|
| A商事 | 納期点95.0 | 品質点90.0 | コスト点90.0 | 総合点91.5 | ランクS |
| B工業 | 納期点80.0 | 品質点50.0 | コスト点100.0 | 総合点74.0 | ランクB |
| C製作所 | 納期点100.0 | 品質点95.0 | コスト点50.0 | 総合点83.0 | ランクA |
| D金属 | 納期点85.0 | 品質点0.0 | コスト点90.0 | 総合点52.5 | ランクC |
C製作所は納期も品質も満点に近いのに、単価が基準より5%高いためコスト点が50点に落ちています。総合点では83点でランクAに収まっています。D金属は不良率が2.0%に達し、品質点が0になりました。
検算は、1社だけ手で計算して画面の値と合わせるのが現実的です。A商事なら、38÷40で納期点95、不良率20÷10,000で0.2%、品質点は100−0.2÷2.0×100で90、単価差率は+1%でコスト点90、総合点は90×0.4+90×0.3+95×0.3で91.5です。1社が合えば、同じ数式が下の行へ展開されているかどうかを、残りの行のセルを数個クリックして確かめれば足ります。
評価が落ちた取引先に理由を注記させる
ランクが出たら、前月と比べて下がった取引先に理由を付けます。ここで気を付けるのは、Claudeが数字から言えることと、数字から言えないことを分けることです。
スコアカードの2026-09と2026-08を比べて、ランクが下がった取引先だけ
「変動理由」列に1〜2文で理由を書いてください。
- 書いてよいのは、3指標のどれが何ポイント動いたかなど、シートの数字から言えることだけ
- 原因の推測(設備トラブル、人員不足など)は書かず、
「要ヒアリング」と書いてください
- 引用したセルがわかるようにしてください例えばD金属なら、「不良率が2.0%で上限に達し、品質点が0点になった。納期点と合わせ総合点は前月より下がった。原因は要ヒアリング」という形になります。不良の原因がロットなのか、検査基準の変更なのかは、実績シートにない情報です。ここを推測で埋めさせると、取引先への通知文に根拠のない断定が混ざります。
注記を取引先へ伝える際は、ヒアリングで裏付けが取れた内容に差し替えます。Claudeが書いた下書きは、社内で「どの指標を見るか」を共有するメモとして使うのが無理のない範囲です。
毎月の更新を短くする設定
月次作業を短くする工夫は3つあります。
- 永続的な指示を使う。アドインのサイドバーで設定を開くと、Instructionsの欄に、すべての会話に適用される指示を書けます。「スコアカードの総合点は小数第1位まで表示する」「金額は千円区切り」といった書式の約束を入れておくと、毎回の依頼文が短くなります。Excelで設定した指示はExcelだけに適用され、PowerPointやWordの指示とは別です。
- Skillsに型を持たせる。Claude側で有効にしたSkillsは、Claude for M365のどのアドインでも使えます。サイドバーで
/を入力すると、Excelで使えるSkillsの一覧が出ます。評価の手順を社内のSkillとして用意しておけば、依頼文を毎月貼り直す必要が減ります。 - 上書き前の警告を活かす。既存のデータを上書きする前には警告が出ます。月次の貼り替えで前月分を消す場面では、警告を読み飛ばさず、前月のシートを複製してから作業すると、比較用の列が残ります。
Excelの基本操作はClaude Excel関数の書き方に、ファイルの読み込みから新規作成まではClaude Excel読み込みと作成にまとめています。
取引先から届いたファイルを使うときの注意
サプライヤー評価では、取引先が作った納品実績表や検査成績書のExcelを実績シートに取り込む場面があります。ここに落とし穴があります。サポート記事は、Claude for Excelを信頼できるスプレッドシートでだけ使うよう求めています。外部から届いたファイルには、アドインを操作して情報を抜き出したり、レコードを書き換えたり、破壊的な操作をさせたりする隠れた指示が含まれている場合があるとされ、取引先のファイルやダウンロードしたテンプレートも例に挙がっています。
運用としては、次のように分けておくと安全です。
- 取引先のファイルは、Claudeを動かさない別のブックで開き、必要な列だけを値で貼り付ける
- 評価表のブックには、外部由来のシートや隠しシートを残さない
- Claudeが確認を求める操作は、外部ファイルが絡むときほど内容を読んでから許可する
また、データテーブルと、マクロ・VBAの操作はサポートされていません。評価表の更新をマクロで自動化している職場は、その部分をClaude経由では置き換えられないので、マクロ側は従来どおり別に残します。マクロの書き方そのものはClaude CodeでExcel VBAマクロで扱っています。
評価表を育てるときの考え方
最初から完璧なスコアカードを目指すと、重みの議論で止まります。まず3指標と暫定の重みで1か月回し、取引先から「この評価は実態と違う」と指摘された点を設定シートの値に反映していくほうが、運用に乗せやすくなります。基準を変えた月は、変更前後の総合点が連続して比べられなくなるため、設定シートに変更日と変更内容を書き留めておくとあとで説明できます。
同じ月次の数値管理でも、予算との差異を扱う場合は月次予実対比レポートの差異分析、資金の動きを見る場合は資金繰り表の週次更新の進め方が使えます。評価表とは見る指標が違うだけで、「数式で組み、理由は数字から言える範囲に限り、人が検算する」という骨組みは共通です。
まとめ
スコアカードの数式づくりとランク判定はClaude for Excelに任せやすく、評価基準と理由の裏付けは人が持つ作業です。重みとしきい値を設定シートに切り出し、1社を手計算で検算し、取引先由来のファイルは別ブックで値だけ取り込む。この3点を守れば、月次の作業は年月セルの切り替えと実績の貼り替えに収まります。