簡易課税と原則課税の有利不利を、Claude for Excelで比べる試算手順
簡易課税と原則課税のどちらが得かは、実額の課税仕入率とみなし仕入率の比較で決まります。Claude for Excelで試算表を組み、届出前に判断材料を揃える手順です。
簡易課税と原則課税のどちらが有利かは、実際の課税仕入れの割合が、事業区分ごとのみなし仕入率を上回るか下回るかでほぼ決まります。仕訳データがExcelにあれば、Claude for Excelに試算表を組ませて、届出の前に両方の納税額を並べられます。
この記事では、国税庁が示す制度の骨格を試算表に落とし、Claude for Excelに何を頼み、人間が何を確かめるかを順に書きます。
簡易課税と原則課税は何が違うのか
簡易課税は、売上に係る消費税額に、事業区分ごとのみなし仕入率を掛けた金額を、仕入れに係る消費税額として控除する制度です。実際にいくら仕入れたかは、控除額の計算に出てきません。
原則課税は逆です。課税期間中の課税売上高が5億円以下で、課税売上割合が95%以上なら、課税仕入れ等に係る消費税額の全額を控除します。5億円超または95%未満なら、課税売上げに対応する部分だけを控除します。
控除額の決め方の違い
原則課税
課税仕入れ等に係る消費税額を積み上げます。課税売上高5億円以下かつ課税売上割合95%以上なら全額が控除対象です。
簡易課税
売上に係る消費税額にみなし仕入率を掛けた額が控除額です。仕入れの実額は計算に使いません。
事業区分とみなし仕入率は次のとおりです。
| 事業区分 | 主な事業 | みなし仕入率 |
|---|---|---|
| 第1種 | 主な事業卸売業 | みなし仕入率90% |
| 第2種 | 主な事業小売業、飲食料品の譲渡に係る農林漁業 | みなし仕入率80% |
| 第3種 | 主な事業製造業、建設業、鉱業など | みなし仕入率70% |
| 第4種 | 主な事業第1〜3種・第5種・第6種以外 | みなし仕入率60% |
| 第5種 | 主な事業運輸通信業、金融・保険業、サービス業(飲食店業を除く) | みなし仕入率50% |
| 第6種 | 主な事業不動産業 | みなし仕入率40% |
実額の課税仕入率がみなし仕入率より低いなら簡易課税が有利、高いなら原則課税が有利になります。ここまでは算数です。難しいのは、判断に使う数字をデータから漏れなく出す作業のほうです。
試算の考え方を数字で確かめる
サービス業(第5種、みなし仕入率50%)で、課税売上高が税抜3,000万円の事業者を仮に置きます。税率10%で単純化すると、売上に係る消費税額は300万円です。以下は説明用の仮の数字で、軽減税率の取引や課税売上割合の調整は含めていません。
| 課税仕入れ(税抜) | 原則課税の納付額 | 簡易課税の納付額 | 有利な方 |
|---|---|---|---|
| 800万円 | 原則課税の納付額220万円 | 簡易課税の納付額150万円 | 有利な方簡易課税 |
| 1,500万円 | 原則課税の納付額150万円 | 簡易課税の納付額150万円 | 有利な方同額 |
| 1,800万円 | 原則課税の納付額120万円 | 簡易課税の納付額150万円 | 有利な方原則課税 |
| 2,400万円 | 原則課税の納付額60万円 | 簡易課税の納付額150万円 | 有利な方原則課税 |
簡易課税の控除額は300万円 × 50% = 150万円で固定です。原則課税は仕入れの額に応じて動くので、課税仕入れが課税売上の50%、つまりみなし仕入率と一致する1,500万円が分かれ目になります。
この分かれ目は、事業区分ごとに違います。小売業(第2種)なら80%、不動産業(第6種)なら40%です。自社の実額の課税仕入率が、自社の事業区分の分かれ目よりどちら側にいるかを見ます。
Claude for Excelで試算表を組む手順
Claude for Excelは、開いているブックについて質問し、数式の関係を保ったまま値を調整し、テンプレートを埋めたり新しいモデルを作ったりできるアドインです。Pro、Max、Team、Enterpriseのプランで一般提供されています。使える環境はExcel on the web、Microsoft 365のWindows版、Mac版です。Excel 2016と2019の買い切り版、iPad、Androidでは動きません。
試算表を組むまでの流れ
- 1
仕訳データを1枚のシートに揃える
日付、勘定科目、税抜金額、消費税額、税区分(課税・非課税・不課税・免税)、事業区分の列を持つ表にします。
- 2
Claudeに集計の骨組みを頼む
税区分と事業区分で売上と仕入れを集計するシートを、数式つきで作らせます。
- 3
両方式の納付額を並べる
原則課税と簡易課税の控除額・納付額を横に並べ、差額の列を足します。
- 4
数字を人間が突き合わせる
総勘定元帳や試算表の合計と一致するかを確かめます。
仕訳データの下ごしらえ
集計の精度は、元データの税区分と事業区分の列で決まります。会計ソフトからエクスポートしたCSVに税区分が入っていれば、そのまま使えます。事業区分は会計ソフトに無いことが多いので、売上の科目や取引先から振り分ける対応表を別シートで持つと、Claudeに「この表で事業区分の列を埋めて」と頼めます。
兼業の場合、課税売上げを事業ごとに区分していないと、区分していない部分には、区分していない事業のうち一番低いみなし仕入率が適用されます。区分の列は、試算のためだけでなく、実際に簡易課税を選んだあとの申告でも要る情報です。
集計シートの作成を頼む
最初の依頼は、数式で集計させる指示にします。値だけを貼り付けさせると、データが変わったときに追随しません。
「仕訳」シートの税区分・事業区分・税抜金額・消費税額の列を使って、
新しいシート「試算」を作ってください。
- 課税売上の税抜合計と消費税額を、事業区分(第1種〜第6種)ごとに集計
- 課税仕入れの税抜合計と消費税額を集計
- 集計はSUMIFSで、仕訳シートを参照する数式にすること
- 値の直貼りはしないことClaudeが組む数式は、たとえば次のような形になります(列の位置は一例です)。
=SUMIFS(仕訳!$E:$E, 仕訳!$C:$C, "課税売上", 仕訳!$F:$F, "第5種")数式の中身が意図どおりかは、Claudeに「C42はどう計算されているか」と聞けば説明が返り、答えにはセルへのリンク付きの引用が付きます。自分で数式を追う負担が減る一方、説明を鵜呑みにせず、元の勘定科目の合計と突き合わせる作業は残ります。
みなし仕入率を持つ設定シートを作る
事業区分ごとのみなし仕入率は、設定用のシートに1か所だけ置きます。
「設定」シートに、第1種〜第6種のみなし仕入率の表を作ってください。
90%, 80%, 70%, 60%, 50%, 40%の順です。
簡易課税の控除額は、「試算」シートの事業区分別の売上に係る消費税額に、
この表のみなし仕入率をVLOOKUPかXLOOKUPで掛けて合計してください。税制改正で率が変わったときは設定シートの1か所を直せば済みます。Claude for Excelは、値を更新しても数式の関係を保つと説明されています。
兼業で特例を使える場合は、別に計算を足します。2種類以上の事業を営み、1種類の事業の課税売上高が全体の75%以上を占めるなら、その事業のみなし仕入率を全体の課税売上げに適用できます。3種類以上で特定の2種類の合計が75%以上を占める場合の特例もあります。特例の適用可否は、事業区分別の売上構成比を出す列を足すと一目で分かります。
原則課税側の控除額を出す
原則課税の側は、課税売上割合が95%以上かどうかで場合が分かれます。課税売上割合は、課税売上高(輸出免税を含む)を、課税売上高・免税売上高・非課税売上高の合計で割って求めます。
「試算」シートに課税売上割合を求める行を追加してください。
分子は課税売上と輸出免税の税抜合計、
分母は課税売上・輸出免税・非課税売上の税抜合計です。
95%以上なら、課税仕入れの消費税額の全額を控除額とし、
95%未満なら「要個別検討」と表示してください。95%未満の場合は、課税売上げにのみ要する仕入れ、非課税売上げにのみ要する仕入れ、共通して要する仕入れに分けて計算する個別対応方式か、課税仕入れ等に係る消費税額に課税売上割合を掛ける方式(一括比例配分)になります。個別対応方式は仕入れの用途区分が必要で、仕訳データの列だけでは足りません。この条件に当たる事業者は、試算表に任せきりにせず、用途区分を決める段階から税理士と進めるほうが安全です。後者の方式を選ぶと、2年間以上継続して適用した後でなければ個別対応方式に戻れない点も、判断材料になります。
差額と分かれ目を出す
両方式の納付額が揃ったら、比較欄を足します。
「試算」シートの最後に、原則課税と簡易課税の納付額を並べた比較欄を作り、
差額(原則課税 − 簡易課税)と、有利な方式の名前を表示してください。
さらに、課税仕入れが何円ならちょうど同額になるかも、数式で出してください。感度分析は、仕入れが10%増減したときの納付額の変化を見たいことがあります。Claude for Excelはデータテーブル(What-If分析)に対応していないため、「仕入れの増減率を行に取った表を、通常の数式で作って」と頼みます。
有利不利の数字だけでは決まらない制度上の条件
試算で簡易課税が有利と出ても、選べない場合があります。届出前に次の条件を確かめます。
簡易課税を選ぶ前に確かめる条件
- 基準期間(個人は前々年、法人は原則として前々事業年度)の課税売上高が5,000万円以下であること。超えた課税期間は、届出済みでも適用できません。
- 届出は、適用を受けたい課税期間の初日の前日までに、所轄の税務署長へ簡易課税の選択届出書を出す必要があります。期末に結果を見てから選ぶことはできません。
- 一度選ぶと、事業を廃止した場合を除き、効力が生じた課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、不適用の届出書を出せません。
- 令和6年10月1日以後に開始する課税期間は、課税期間の初日に恒久的施設を持たない国外事業者は適用を受けられません。
試算は、翌期以降の見込みの数字で組みます。売上と仕入れの見込みが外れる可能性があるなら、複数のシナリオで分かれ目からの距離を見ておくと、2年の縛りを負ってよいかを判断しやすくなります。
免税事業者が適格請求書発行事業者の登録を受けて課税事業者になった場合や、2割特例・3割特例を使った翌課税期間については、届出期限の特例が国税庁のページに書かれています。該当する場合は、特例の条件を満たすか、税理士に確認してください。
Claude for Excelに任せるときの注意点
Claude for Excelの公式ドキュメントは、最終的な顧客向け成果物を人の確認なしに出すこと、監査に関わる計算を検証なしに使うことを推奨していません。消費税の申告に使う数字は、この範囲に入ります。試算は届出の判断材料にとどめ、申告書の数字は会計ソフトや税理士の確認を経たものを使います。
運用面では、次の点を押さえておきます。
- マクロとVBAの操作、データテーブルは未対応です。集計をマクロで自動化したい場合は別の手段が要ります。
- 仕訳データには取引先名や金額が含まれます。公式ドキュメントは、機微な情報や規制対象のデータを含むモデルは、適切な統制がないまま扱うことを推奨しないとしています。
- 外部から受け取ったファイルには、Claudeを操作する隠れた指示が仕込まれている可能性があります。会計ソフトから自分でエクスポートしたデータを使い、取引先から届いたExcelをそのまま読み込ませないでください。
- 既存のデータを上書きする前に警告が出ます。ブックを広く編集させる前に、信頼できるコピーを取っておきます。
設定のInstructions欄には、「金額は税抜で扱う」「みなし仕入率は設定シートを参照する」「値の直貼りをせず数式で組む」といった恒常的な指示を書けます。Excelだけに効く設定で、PowerPointやWordの指示とは別です。試算のたびに同じ前提を書く手間が省けます。
よくある質問
設備投資が大きい年も簡易課税で試算してよいのか
簡易課税の控除額は売上に係る消費税額にみなし仕入率を掛けた額なので、算式の上では、控除額が売上に係る消費税額を超えることはありません。大きな設備投資をして課税仕入れが膨らむ年は、原則課税の側の控除額が大きくなり、試算上は原則課税が有利に出やすくなります。ただし、届出は課税期間の初日の前日までなので、投資の計画が決まっている期は、その前に試算を済ませておく必要があります。
事業区分の振り分けが怪しいときはどうするか
試算表では、区分の列をClaudeに埋めさせず、対応表を人間が作って参照させるほうが、後から追跡できます。判断に迷う取引(例えば、製造と小売を兼ねる事業の売上)は、振り分けの根拠をメモ列に残し、税理士に確認します。
Claude for Excel自体の位置づけや、Copilotとの違いはClaude for ExcelとCopilotの比較に、Claudeに請求される利用料の消費税はClaudeの消費税(JCT)10%はいつから、何が対象かにまとめています。
まとめ
簡易課税が向くのは、実額の課税仕入率がみなし仕入率を下回る事業です。判断の入力は、仕訳データから出す課税売上と課税仕入れの2つの合計と、事業区分ごとの売上の内訳に尽きます。
Claude for Excelには、その集計を数式で組ませ、両方式を並べた比較欄まで作らせるのが向いています。分かれ目の数字が出たあと、届出の期限や2年の縛りを考えて選ぶのは人間の仕事です。同じ流れで月次の数字を追う方法は、月次予実対比レポートの差異分析と、資金繰り表の週次更新でも使えます。Excelの数式の頼み方はClaude Excel関数の書き方にあります。