Claudeで不動産所得の収支内訳書の元表を作る — 賃貸の年間台帳をExcelで年計に
月次の入出金台帳を賃貸料・礼金・更新料・修繕費などの科目に寄せ、Claude for Excelで年計と検算を作る手順。計上時期のずれと台帳に出ない経費の拾い方つき。
賃貸物件の入出金台帳は、月ごとに通帳の動きを写したものです。そのままでは、収支内訳書に書く「総収入金額」と「必要経費」の年計にはなりません。この記事では、1年分の台帳を科目に振り分け、Claude for Excelで年計を出し、合計が合っているかを検算するまでの手順を示します。収支内訳書そのものを埋める作業ではなく、その前段の元表づくりが対象です。
不動産所得の年計は何と何で決まるのか
不動産所得とは、土地や建物などの不動産の貸付け、借地権など不動産の上に存する権利の設定や貸付け、船舶や航空機の貸付けによる所得です。国税庁のタックスアンサーNo.1370は、金額を次の式で求めると説明しています。
総収入金額 − 必要経費 = 不動産所得の金額元表が答えるべき問いは2つだけです。1年間の総収入金額はいくらか。必要経費はいくらか。台帳の1行ごとに、どちらに入るか、どちらにも入らないかを決めていきます。
総収入金額には、賃貸料のほかに次のものが含まれます。
- 名義書換料、承諾料、更新料、頭金などの名目で受け取るもの
- 敷金や保証金のうち、返還を要しないもの
- 共益費などの名目で受け取る電気代、水道代、掃除代など
必要経費は、不動産収入を得るために直接必要な費用のうち、家事上の経費と明確に区分できるものです。No.1370が主なものとして挙げるのは、固定資産税、損害保険料、減価償却費、修繕費の4つです。
台帳の摘要に「管理手数料」や「ローン返済」があっても、No.1370の例示には載っていません。これらを経費に入れるかどうかは、提出する収支内訳書の様式の科目名に当てはめて決めます。迷う行は、Claudeに決めさせず「要確認」に残すのが安全です。
台帳の行を科目へ寄せる対応表
元表づくりの核は、台帳の摘要と科目の対応表です。次の表は、この記事で使う科目の一覧です。件数や名称は例で、自分の物件に合わせて増減させます。
| 台帳の摘要の例 | 元表の科目 | 区分 |
|---|---|---|
| 家賃入金 | 元表の科目賃貸料 | 区分総収入金額 |
| 共益費入金 | 元表の科目共益費 | 区分総収入金額 |
| 礼金、更新料の入金 | 元表の科目礼金・更新料 | 区分総収入金額 |
| 敷金の預かり | 元表の科目敷金預り | 区分対象外(預り金) |
| 固定資産税の納付 | 元表の科目固定資産税 | 区分必要経費 |
| 火災保険料の引落し | 元表の科目損害保険料 | 区分必要経費 |
| 管理会社への手数料 | 元表の科目管理手数料 | 区分要確認 |
| 工事代金の支払い | 元表の科目修繕費 | 区分要確認(資本的支出との判定) |
| 借入金の返済 | 元表の科目借入返済 | 区分利子と元本を分ける |
敷金を「対象外」にしているのは、No.1376が、敷金や保証金は本来は預り金であり、受け取っても収入にはならないと説明しているからです。返還を要しないものは、返還を要しないことが確定した日に収入へ計上します。台帳上は入金でも、年計に入れてはいけない行が混ざっている点が、通帳ベースの集計と大きく違います。
修繕費の行は、工事の内容によって修繕費か資本的支出かが分かれます。判定そのものは修繕費と資本的支出の判定をClaudeで進める手順で扱っているため、この元表では「要確認」のまま集計から外しておき、判定後に科目を入れ直す運用にします。
手順1: 台帳を1年分の1枚にそろえる
月ごとにシートが分かれている場合は、1枚に縦に積みます。列は次の7つにそろえます。
| 列 | 項目 | 内容 |
|---|---|---|
| A | 項目日付 | 内容通帳に載った日 |
| B | 項目摘要 | 内容通帳の表記のまま |
| C | 項目入金 | 内容入金額(なければ空欄) |
| D | 項目出金 | 内容出金額(なければ空欄) |
| E | 項目科目 | 内容対応表の科目名(最初は空欄) |
| F | 項目物件・部屋 | 内容物件名と部屋番号 |
| G | 項目計上日 | 内容収入を計上する日(後述) |
G列は全行を埋めます。既定はA列と同じ日付にしておき、契約上の支払日がA列と違う行だけ書き換えます(後述の「計上日をずらす必要があるケース」)。年計はこのG列の日付で対象年を絞るため、空欄の行があると集計から落ちます。
入居者名が摘要に入っている場合は、Claudeに渡す前にイニシャルや部屋番号へ置き換えます。科目の判断に必要なのは「何の入金か」であり、氏名は要りません。
もう1枚、科目の一覧だけを縦に並べたシートを「科目表」として作ります。A列に科目名、B列に区分(総収入金額、必要経費、対象外、要確認)を置きます。後の集計はこの表を起点にします。
同じシートの右側に、年計を入れる列と対象年の範囲を置きます。C列に入金年計、D列に出金年計、F1に対象年の1月1日、F2に12月31日の日付を入れます。
手順2: Claude for Excelに科目を振らせる
ブックを開いた状態で、サイドバーからClaudeに依頼します。既存テンプレートの穴埋めや、ソート、フィルタ、データ入力規則のドロップダウン作成も、そのまま頼めます。科目列にドロップダウンを付ければ、手入力のゆれも防げます。
プロンプトの例を示します。
「台帳」シートのE列(科目)が空欄の行を対象にします。
B列の摘要を読み、「科目表」シートのA列にある科目から1つ選んでE列に入れてください。
- 摘要から決められない行は、科目を入れずにH列へ理由を書いてください。
- 金額、日付、摘要は書き換えないでください。
- 終わったら、科目別の行数を一覧にして知らせてください。例のように、決められない行をH列の理由つきで残させる点が要です。Claudeは摘要の文字から科目を推測できますが、「工事代金」が修繕費か資本的支出か、「管理会社へ送金」が手数料か家賃の送金かは、摘要だけでは分かりません。推測で埋めさせるより、空欄で返させたほうが、人が見る行を絞れます。
ブックを大きく書き換える前は、信頼できるコピーで試すのが無難です。台帳のコピーを1つ作ってから依頼します。
手順3: 科目別の年計を数式で出す
年計は、Claudeに数字を言わせるのではなく、数式をシートに残させます。台帳が変わっても再計算できるからです。
科目表の2行目に、次の数式を入れて下の行へコピーします。C列が入金年計、D列が出金年計です。対象年の外にある行は、台帳のG列(計上日)で除きます。
C2: =SUMIFS(台帳!$C:$C,台帳!$E:$E,$A2,台帳!$G:$G,">="&$F$1,台帳!$G:$G,"<="&$F$2)
D2: =SUMIFS(台帳!$D:$D,台帳!$E:$E,$A2,台帳!$G:$G,">="&$F$1,台帳!$G:$G,"<="&$F$2)そのうえで、収入科目の合計、経費科目の合計、差額を別のセルに出します。
総収入金額: =SUMIFS(科目表!$C:$C,科目表!$B:$B,"総収入金額")
必要経費: =SUMIFS(科目表!$D:$D,科目表!$B:$B,"必要経費")
所得金額: =総収入金額のセル-必要経費のセルClaudeには「この3つの数式をこのシートに入れて、セルの参照先を説明して」と頼めます。回答にはセル単位の引用がつき、クリックで参照先のセルへ移動できます。数式が意図どおりの範囲を見ているかは、この機能で自分の目で確かめます。
台帳に出ない経費を足す
減価償却費は、通帳に動きがありません。台帳から集計しただけでは、必要経費に欠けが出ます。固定資産台帳の年間償却額は、台帳に振替行として足します。計上日は12月31日、摘要は「減価償却費(固定資産台帳より)」、金額は出金欄、科目は「減価償却費」(科目表に区分「必要経費」で行を足しておく)です。こうすれば、他の科目と同じ数式で必要経費に入ります。通帳には動きがない行なので、手順4の口座残高の検算ではこの行の金額を除いて計算します。台帳側の整合を見る方法は固定資産台帳と減価償却費の整合チェックにあります。
手順4: 年計が合っているかを検算する
Claudeが作った表は、検算を通してから使います。次の4点を、それぞれ別のセルに数式で置きます。
| 検算 | 数式の例 | 期待する結果 |
|---|---|---|
| 未分類の残り | 数式の例=COUNTIFS(台帳!$B:$B,"<>",台帳!$E:$E,"") | 期待する結果0 |
| 入金の突き合わせ | 数式の例対象年の台帳の入金合計 - 科目表C列の合計 | 期待する結果0 |
| 出金の突き合わせ | 数式の例対象年の台帳の出金合計 - 科目表D列の合計 | 期待する結果0 |
| 口座残高 | 数式の例期首残高 + 入金合計 - 出金合計 - 期末残高 | 期待する結果0 |
1つ目は、科目が入っていない行が残っていないかの確認です。2つ目と3つ目は、科目表にない科目名が台帳に混ざり、集計から漏れていないかの確認になります。4つ目は台帳の行が通帳と合っているかの確認で、年の初めと終わりの通帳残高を使います。
ただし基準が違う点に注意します。年計はG列(計上日)の年、口座残高はA列(通帳の日付)の年で見るため、年末をまたぐ行があると2つの結果は一致しません。口座残高の合計はA列の日付で絞って出し、年計の突き合わせとは別に見ます。
4つ目が0にならないときは、台帳の転記に漏れか重複があります。科目の振り分けとは別の問題なので、先にここを直します。
月別の数字も1度並べておくと、異常な月が見つかります。たとえば1月の行だけ入金を抜き出す数式は次のとおりです。
=SUMPRODUCT((MONTH(台帳!$G$2:$G$500)=1)*台帳!$C$2:$C$500)12か月分の賃貸料を並べ、入居中の部屋数と家賃から見込まれる額と見比べます。空室でもないのに月だけ少ない場合は、入金の遅れか、科目の誤りを疑います。
計上日をずらす必要があるケース
通帳に載った日が、収入に計上する日とは限りません。No.1376は、地代・家賃・共益費の計上時期を次のように整理しています。
- 契約や慣習で支払日が定められているなら、その支払日
- 支払日が定められていなければ、実際に支払を受けた日
- 請求があったときに支払うべきものは、その請求の日
たとえば契約上は「当月分を前月末払い」と定めているのに、実際は翌月初めに入金されることがあります。この場合、1の支払日が基準なので、台帳の日付ではなく契約上の支払日をG列(計上日)に入れ、年計はG列の年で集計します。年末をまたぐ12月と1月の入金は、とくに影響が出ます。
礼金や権利金は、貸し付ける資産の引渡しを必要とするものは引渡しのあった日、必要としないものは契約の効力発生の日の収入に計上するとされています。名義書換料、承諾料、頭金の名目で受け取るものも同様です。契約書の日付が要るため、Claudeには契約書の一覧表を並べて渡し、「この礼金と更新料の計上日を、契約日と引渡日のどちらで置く想定かを、根拠つきで行ごとに書いて」と頼みます。根拠の列を読んだうえで、最終の日付は自分で入れます。
申告区分と事業的規模の確認
元表の見方は、申告の区分で変わる場面があります。No.2080は白色申告者の記帳制度を扱うページで、確定申告書を提出する場合は、総収入金額や必要経費の内容を記載した書類(収支内訳書など)の添付が必要になると説明しています。青色申告の添付書類はこのページに載っていません。自分がどちらで申告するかを先に確かめてから、元表の列を決めます。
不動産貸付けが事業として行われているかどうかでも、計算が変わります。No.1373によると、貸間やアパートは独立した室数がおおむね10室以上、独立家屋はおおむね5棟以上が、事業として行われている目安です。資産損失の扱いや、賃貸料の貸倒損失の扱い、専従者の取扱いなどに違いが出ます。台帳に取壊しや回収不能の行がある場合は、「要確認」に残して税理士か税務署の窓口に尋ねます。
Claude for Excelに任せる範囲と注意点
ヘルプは、Claude for Excelを次の用途には勧めていません。
- 人の確認を経ない最終成果物
- 検証なしの、監査に耐える必要がある計算
- 適切な管理がない機密性の高いデータや規制対象のデータ
収支内訳書の元表は、まさに申告に使う数字です。Claudeが作った数式と科目は、4つの検算を通し、人が読んでから採用します。
使える環境にも条件があります。データテーブルとマクロ・VBAは未対応です。Excel 2016と2019の買い切り版、iPad版、Android版のExcelでは動きません。対象のプランはPro、Max、Team、Enterpriseで、会話履歴はブラウザのIndexedDBにローカル保存されます。
管理会社や税理士から届いた台帳を開くときは、もう1つ注意があります。外部から来たファイルには、Claudeへの隠れた指示が仕込まれている可能性があるとヘルプは警告しています。信頼できる相手のファイルだけを開き、Claudeが確認を求めてきたときは内容を読んでから承認します。
Excelファイルの読み込みと作成そのものはClaudeでExcelを読み込み・新規作成する方法に、月次の入出金を管理会社の視点で報告に落とす手順は賃貸管理のオーナー報告を作る手順にあります。物件購入前の収支を試算する場合は不動産投資の収支シミュレーションが別の話題です。
まとめ
年計の精度を決めるのは、科目への振り分けより、何を年計に入れないか(敷金預り、元本返済)と、何を足すか(減価償却費)の判断です。Claudeには振り分けの下書きと数式の作成を任せ、検算の4点が0になることを自分の目で確かめます。計上日は契約上の支払日で置き、迷った行は「要確認」に残したまま税理士へ持ち込めば、元表がそのまま相談資料になります。