Claudeで警備員の健康診断、深夜業の受診漏れを洗い出す手順
夜勤の勤務実績と健診の台帳から、6か月ごとの特定業務健診の対象者と受診期限を出し、受診漏れを拾うExcelの手順です。Claude for Excelへの頼み方と検算も示します。
夜勤の多い警備員は、健康診断を年1回受ければ足りるとは限りません。深夜業を含む業務に常時従事する人には、配置替えの際と6か月以内ごとに1回の健診が、安衛則45条で定められています。
問題は、誰が「常時従事」に当たり、誰の次回期限がいつ来るかを、シフト表と健診の記録から人の目で拾うと漏れやすいことです。この記事では、勤務実績の台帳と健診の台帳をExcelで突き合わせ、対象者・期限・受診漏れを出す表を、Claude for Excelに手伝わせて作ります。
要件の判断は、人事・労務の担当者、産業医、所轄の労働基準監督署の仕事です。Claudeに任せるのは、表の整形、数式の作成、検算の下準備までに限ります。
深夜業の警備員は、年1回ではなく6か月ごとに健診を受ける
安衛則45条1項は、13条1項3号に掲げる業務に常時従事する労働者に、配置替えの際と6か月以内ごとに1回、定期に医師による健康診断を行うよう事業者に求めています。13条1項3号の業務には「深夜業を含む業務」が入っています。
通常の定期健診は44条が定めていて、対象は「45条1項に規定する労働者を除く」常時使用の労働者です。つまり夜勤で特定業務の対象になった警備員は、年1回の定期健診と別に特定業務健診が加わるのではなく、特定業務健診の側に移ります。台帳は1人につき1本の期限だけを持てばよく、二重管理になりません。
項目は44条1項の各号と同じです。ただし胸部エックス線検査は、1年以内ごとに1回で足りるとされています(45条1項後段)。前回の健診で受けた血液や心電図の項目は、医師が必要でないと認めれば省略できます(同条2項)。省略するかどうかは医師の判断なので、台帳には「省略あり」の列だけを持ちます。
| 時期 | 根拠 | 台帳に持つ日付 |
|---|---|---|
| 深夜業を含む業務への配置替えの際 | 根拠安衛則45条1項 | 台帳に持つ日付配置日 |
| その後6か月以内ごとに1回 | 根拠同上 | 台帳に持つ日付直近の受診日、次回期限 |
| 胸部エックス線検査 | 根拠同条1項後段 | 台帳に持つ日付1年以内ごとの別期限 |
「常時従事」は何回で線を引くか
条文は、深夜業を「何回以上」で常時従事とみなすかを数字で書いていません。実務では運用の目安を置く事業場が多く、たとえば大学の健康管理センターの資料は、当直やオンコールの呼び出しを含めて午後10時から午前5時までの間の業務に、1週間に1回以上、または月あたり4回以上従事する人を、深夜業を含む業務の対象者としています。大阪労働局のリーフレットは、深夜業などの特定業務に常時従事する人に6か月以内ごとの健診が必要と案内するにとどまり、回数の線は示していません。
この記事の表では、回数の線を設定シートのセルに持ちます。自社の基準は、産業医の意見と所轄の労働基準監督署への確認で決め、決めた根拠を備考に残します。警備の現場では、次のような勤務形態で判断が割れやすくなります。
- 夜間専従の施設警備: 毎勤務が深夜帯にかかる。基準を超えるかは明らか
- 日勤と夜勤が入れ替わる交代制: 月の夜勤回数で線をまたぎやすい
- 24時間勤務や隔日勤務: 1回の勤務に深夜帯が含まれるので、1回と数えるか、仮眠時間を除くかを先に決める
- 工事現場の夜間交通誘導: 工事の予定で月ごとに深夜の回数が変わる。月ごとの回数を見る必要がある
どの形態でも、回数の数え方(勤務1回を1と数えるか、日付をまたぐ勤務をどちらの日に寄せるか)を先に1つに決めます。決めずにClaudeへ頼むと、指示のたびに数え方が揺れて、検算が合わなくなります。
深夜業の時間帯は、安衛法66条の2が午後10時から午前5時までと定めています。厚生労働大臣が必要と認めた地域・期間では、午後11時から午前6時までです。設定シートには、開始と終了の時刻を2つのセルで持っておくと、時間帯が変わっても数式を書き換えずに済みます。
台帳は「勤務」「社員」「設定」の3枚で足りる
シートは3枚で組みます。個人名は列に入れず、作業IDだけで持ちます。表を共有したときに渡る情報を絞るためです。
3枚のシートの役割
勤務
1行が1回の勤務です。作業ID、開始日時、終了日時を人が入力し、深夜帯にかかるかの判定列だけを数式にします。
社員
1行が1人です。配置日、直近の特定業務健診の受診日、自発的に受けた健診の日付を人が入力し、回数・対象判定・期限・状態を数式で出します。
設定
基準日、深夜帯の開始と終了、回数の線、期限接近の日数を置きます。数式はこのセルだけを参照します。
設定シートの配置は次のとおりです。数値の意味はセル横の備考に書いておくと、後任が読めます。
| セル | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| B1 | 内容基準日(検算では固定、運用では=TODAY()) | 例2026/10/20 |
| B2 | 内容直近6か月の深夜回数の線 | 例24 |
| B3 | 内容直近1か月の深夜回数の線 | 例4 |
| B4 | 内容期限接近とみなす日数 | 例30 |
| B5 | 内容深夜帯の開始時刻 | 例22:00 |
| B6 | 内容深夜帯の終了時刻 | 例5:00 |
B2の24は、月4回を6か月に引き直した数字です。設定のセルを変えれば、別の基準にも使えます。
22時から5時にかかる勤務を、数式で見分ける
勤務シートのB列に開始日時、C列に終了日時を入れ、D列に深夜帯にかかるかを1と0で出します。日付をまたぐ勤務があるので、時刻だけでなく日付も持つのが前提です。
=--OR(
MIN(C2,INT(B2)+設定!$B$6)>B2,
MIN(C2,INT(B2)+1+設定!$B$6)>MAX(B2,INT(B2)+設定!$B$5),
C2>INT(B2)+1+設定!$B$5)3つの条件は、勤務が重なりうる深夜帯の窓に対応しています。1つ目は、開始日の早朝(0時から5時)の窓です。2つ目は、開始日の22時から翌朝5時までの窓です。3つ目は、開始の翌日の22時を超えて続く24時間超の勤務を拾います。
境界の扱いは条文の「午後10時から午前5時まで」に合わせ、22時ちょうどに終わる勤務と5時ちょうどに始まる勤務は深夜帯にかかりません。これは数式の判定で、条文が端の1分をどう扱うかを定めているわけではないため、自社の運用に合わせて>を>=に変えてよい部分です。
社員シートで、対象者・期限・受診漏れを出す
社員シートの列は次のとおりです。A列からF列までを人が入力し、G列以降を数式にします。
| 列 | 内容 | 入力 |
|---|---|---|
| A | 内容作業ID | 入力人 |
| B | 内容深夜業を含む業務への配置日 | 入力人 |
| C | 内容直近の特定業務健診の受診日(未受診は空欄) | 入力人 |
| D | 内容本人が自ら受けた健診の受診日(任意) | 入力人 |
| G | 内容直近6か月の深夜回数 | 入力数式 |
| H | 内容直近1か月の深夜回数 | 入力数式 |
| I | 内容対象判定 | 入力数式 |
| J | 内容次回期限 | 入力数式 |
| K | 内容状態 | 入力数式 |
直近の回数は、勤務シートのD列が1の行を、作業IDと期間で数えます。
G2: =COUNTIFS(勤務!A:A,A2,勤務!D:D,1,
勤務!B:B,">="&EDATE(設定!$B$1,-6),
勤務!B:B,"<"&設定!$B$1+1)
H2: =COUNTIFS(勤務!A:A,A2,勤務!D:D,1,
勤務!B:B,">="&EDATE(設定!$B$1,-1),
勤務!B:B,"<"&設定!$B$1+1)対象判定は、6か月の回数と1か月の回数のどちらかが線に届けば「対象」とします。届かなければ「要確認」にして、対象外と言い切りません。回数の線の運用は事業場ごとに幅があるためです。
I2: =IF(OR(G2>=設定!$B$2,H2>=設定!$B$3),"対象","要確認")次回期限は、受診歴がなければ配置日、あれば直近の受診日の6か月後の前日にします。「6月以内ごと」を保守的に読んだ設定です。
J2: =IF(C2="",B2,EDATE(C2,6)-1)
K2: =IF(I2<>"対象","",
IF(J2<設定!$B$1,"期限超過",
IF(J2<=設定!$B$1+設定!$B$4,"期限接近","")))配置日を期限にしているのは、条文が「配置替えの際」と書いているためです。配置日を過ぎても受診日が空欄の行は、そのまま「期限超過」と出ます。ここに出た人が、受診漏れの候補です。「要確認」の人は、産業医か労務担当者が回数の実態を見て、対象かどうかを決めます。
Claude for Excelへの頼み方
Claude for Excelは、開いているブックについての質問、数式の作成、並べ替えやフィルタ、ピボットテーブルの編集、条件付き書式、データの入力規則によるドロップダウンの作成まで、Excelの中で直接頼めるアドインです。Claude for Excelは有料プラン(サポート記事ではPro、Max、Team、Enterprise)で使えます。
最初に、ブックの構造を伝えます。数式を書かせる前に、列の意味と数え方の約束を文章で渡しておくと、指示のたびの揺れが減ります。
このブックには「勤務」「社員」「設定」の3シートがあります。
勤務は1行が1回の勤務で、B列が開始日時、C列が終了日時です。
社員は1行が1人で、A列が作業IDです。
設定のB1が基準日、B5とB6が深夜帯の開始と終了です。
数え方は「深夜帯に1分でもかかる勤務を1回」とします。
勤務のD列に、深夜帯にかかるかを1か0で出す数式を入れてください。
既存の入力列は変更しないでください。数式を入れさせたら、変更前に範囲を確かめます。次の頼み方は、上書きの事故を避けるための確認です。
今入れた数式の対象セル範囲と、参照している設定のセルを一覧で教えてください。
入力列を書き換えたセルがあれば、その場所も教えてください。状態の列は、条件付き書式で色分けします。「期限超過」を赤、「期限接近」を黄にするよう頼めば、1画面で受診漏れが見えます。名簿の並べ替えやフィルタも直接頼めるので、「期限超過だけを期限の古い順に並べて」と指示できます。
数式の説明も頼めます。追加した担当者が数式の意味を読めない場合は、「J2とK2の数式が何をしているか、配置日と受診日のどちらを使うかも含めて説明して」と聞きます。回答にはセル単位の参照が付くため、手元で突き合わせられます。
恒常的な約束は、アドインのサイドバーの設定にある指示欄に書けます。たとえば「作業IDは氏名に戻さない」「数式は設定シートのセルだけを参照する」と入れておくと、会話ごとの前置きを省けます。
自発的に受けた健診の提出資格を、6か月の回数で見る
深夜業に従事する人は、自分で受けた健康診断の結果を、会社に提出できる制度があります。安衛法66条の2が定め、安衛則50条の2がその要件を「常時使用され、自ら受けた健診を受けた日前6か月間を平均して1月あたり4回以上深夜業に従事したこと」としています。
ここでは、特定業務健診の判定と違って、回数の線が条文に書かれています。社員シートのD列に本人が受けた日を入れると、6か月の回数が24回以上かを出せます。
L2: =IF(D2="","",
COUNTIFS(勤務!A:A,A2,勤務!D:D,1,
勤務!B:B,">="&EDATE(D2,-6),
勤務!B:B,"<"&D2)/6)
M2: =IF(L2="","",IF(L2>=4,"提出可","要件未達"))
N2: =IF(D2="","",EDATE(D2,3)-1)L列は6か月間の月平均です。M列が「提出可」でも、それは回数の要件を満たすという意味にとどまります。「常時使用され」の要件は人が確かめます。
N列は提出の期限です。安衛則50条の3は、受けた日から3月を経過したときは提出できないと定めています。EDATE(D2,3)-1は、これを保守的に読んだ日付です。
提出を受けた後の手続きも列にします。異常の所見があるときは、事業者が医師の意見を聴く義務があり、自発的な健診の場合は、結果の書面の提出を受けた日から2月以内に行います(安衛則51条の2第2項)。台帳には、提出日の列と、そこから2月後の意見聴取の期限を足しておくと、受診日起点の3月と取り違えません。
受診後に残る作業も、同じ台帳で追う
特定業務健診は、受けて終わりではありません。条文上の宿題を、列にして置きます。
- 結果の通知: 事業者は遅滞なく、受けた労働者に結果を通知します(安衛則51条の4)
- 健康診断個人票: 結果に基づいて作成し、5年間保存します(同51条)
- 医師の意見聴取: 異常の所見がある人について、健診日から3月以内に行い、意見を個人票に記載します(同51条の2第1項)
- 結果報告: 常時50人以上の労働者を使用する事業者は、定期の特定業務健診を行ったとき、遅滞なく所轄の労働基準監督署へ報告します(同52条)
これらは、受診日を起点に期限が決まるものと、「遅滞なく」で期限が日数にならないものに分かれます。前者は期限の列を数式で出し、後者は完了日を人が入れる列だけを置きます。空欄が残っているかどうかが、そのまま進み具合です。
報告の対象は、特定業務従事者の人数も含みます。52条1項6号は、健康診断を受けた労働者の数と、13条1項3号の業務に常時従事する労働者の数を報告事項に挙げています。社員シートの「対象」の行数が、この数字の下書きになります。確定は担当者が行います。
検算で、数式が条文の境界と合うかを確かめる
Claudeが入れた数式が正しいかは、結果の見た目では分かりません。境界のテスト行を作り、期待値と照らします。
| テスト | 入力 | 期待 |
|---|---|---|
| 22時ちょうどに終わる勤務 | 入力17:00から22:00 | 期待0(深夜帯にかからない) |
| 22時に始まる勤務 | 入力22:00から翌6:00 | 期待1 |
| 5時ちょうどに始まる勤務 | 入力5:00から13:00 | 期待0 |
| 日またぎの夜勤 | 入力21:00から翌6:00 | 期待1 |
| 24回目の夜勤 | 入力6か月で24回 | 期待「対象」(24以上) |
| 23回の夜勤 | 入力6か月で23回、直近1か月は4回未満 | 期待「要確認」 |
次に、手作業との件数照合をします。社員シートの「期限超過」の人数は、Claudeの回答ではなく、COUNTIFで数え直します。
=COUNTIFS(社員!K:K,"期限超過")Claudeが「5人です」と答えたとき、この数式の結果と違えば、数式かデータのどちらかに問題があります。件数の食い違いは、勤務表の日付が文字列になっている、終了日時が開始日時より前になっている、といったデータ側の不備で起きることが多いため、先にそこを疑います。
終了日時が開始日時より前の行を洗い出す頼み方は、次のとおりです。
勤務シートで、終了日時が開始日時以前の行、日付が空欄の行、
日付が文字列になっている行を一覧にしてください。直さず、一覧だけ出してください。作業用ブックに入れてよいもの、Claudeに任せない判断
健診の受診日は、健康情報に近いものです。Claude for Excelの使用上の制限には、機微な情報や規制対象の情報を含むモデルを、適切な統制なしに扱うことは勧められていない旨が書かれています。渡すブックから、氏名・生年月日・住所を外し、作業IDに置き換えます。作業ID表は別のブックに保存し、アドインを使うブックと同時に開きません。
健診の結果そのもの(所見、検査値)は、このブックに入れません。必要なのは日付と、省略の有無だけです。対象判定と期限の管理には、結果が要りません。
入力の考え方は、病歴や信条を含む情報をどう扱うかを整理した要配慮個人情報をClaudeに入力してよいかにまとめています。
もう1点、外部から受け取ったファイルを開くときの注意があります。サポート記事は、外部由来のファイルには、アドインを誘導して情報を抜き出させたり、データを書き換えさせたりする隠れた指示が入りうると警告しています。警備会社では、取引先から届いたシフト表のファイルを受け取る機会があります。受け取ったファイルをそのまま作業ブックに貼り込まず、必要な列だけをコピーして貼る運用が安全です。
動作環境にも条件があります。アドインはExcel 2016と2019の永続ライセンス版、iPad、Androidのアプリでは動きません。マクロとVBA、データテーブルも未対応です。台帳の自動化にマクロを使いたいという場合は、数式とピボットテーブルで組む前提で設計します。
Claudeに任せない判断は、次の4つです。
- 誰が「常時従事」に当たるか(回数の線と数え方の最終決定)
- 仮眠や待機の時間を深夜業の回数に含めるか
- 前回の健診項目を省略してよいか(医師の判断)
- 健診結果に異常があった人への就業上の措置
最後の措置は、医師の意見を聴いたうえで、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少などを講じる領域です。台帳の列は、その手前の「意見聴取を期限内に行ったか」までを持ちます。
続けて使える、隣の台帳
同じ組み方は、ほかの法定の期限管理にも使えます。月80時間超の長時間労働者の抽出と面接指導の期限を追う表は、医師面接指導の対象者を80時間超で抽出する手順にあります。時間外労働の上限を決める36協定届とモデル就業規則のたたき台も、夜勤の多い職場では同じ勤怠データから確認できます。
学校の養護教諭が児童生徒の未受診者を集計する流れは、養護教諭の健康診断の集計に書いてあります。匿名化の手順は、職場の台帳でもそのまま使えます。受けた本人が健診結果を読み解く側の話は、健康診断の結果の読み方を質問リストにする手順が扱っています。