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医師面接指導の対象者を80時間超で抽出 — Claude for Excelの手順

医師面接指導の対象者を80時間超で抽出 — Claude for Excelの手順

月80時間超の長時間労働者を勤怠CSVから抜き出し、医師面接指導の通知対象と申出後の期限を管理するExcel手順です。安衛則の要件、数式、境界値テスト、Claude for Excelへの頼み方をまとめます。

月80時間を超えて時間外・休日労働をした人には、会社が本人に時間数を通知します。本人から申出があれば、医師による面接指導を遅滞なく行います。勤怠CSVから「誰が80時間を超えたか」を毎月出し、通知と申出の進み具合を一枚で追う作業は、Excelの数式で組めます。この記事では、その表をClaude for Excelに手伝わせて作る手順を書きます。

先に押さえておく点は2つです。80時間超は面接指導の「申出を受け付ける対象」であって、自動的に面接を実施する基準ではありません。もう1つ、条文は通知の期限を日数で定めていません。表には、社内で決めた目安日数を入れるセルを用意します。

要件の判断と実施は、人事・労務の担当者、産業医、社会保険労務士の仕事です。Claudeに任せるのは、表の整形、数式の作成、検算の下準備までです。

80時間超の人は、条文のどの要件で拾われるのか

対象の要件は、安衛法(労働安全衛生法)66条の8が「厚生労働省令で定める要件」に委ね、省令の安衛則(以下「規則」)52条の2が定めています。条文の文言は次の形です。

休憩時間を除き一週間当たり四十時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間が一月当たり八十時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる者

要件は「超過時間が80時間を超える」と「疲労の蓄積が認められる」の2つです。前者は勤怠データから出せます。後者は医師や担当者が見る材料で、Excelの数式では決まりません。

条文の要件

80時間超の人に関わる4つの手続き

  • 算定は月1回以上、期日を決めて

    超えた時間の算定は、毎月1回以上、一定の期日を定めて行います(規則52条の2第2項)。

  • 80時間を超えた人に時間数を通知

    算定したら、速やかに、80時間を超えた労働者へ超えた時間の情報を通知します(同条第3項)。

  • 面接指導は本人の申出で

    面接指導は要件に該当する労働者の申出により行います。申出は算定期日の後、遅滞なく行うものとされています(規則52条の3第1項・第2項)。

  • 申出があれば遅滞なく実施

    事業者は申出があったとき、遅滞なく面接指導を行います。産業医は、申出をするよう勧奨できます(同条第3項・第4項)。

「超えた」は80時間ちょうどを含みません。80時間0分は対象外で、80時間1分から対象です。この境界は、後の検算でテストデータにします。

80時間のほかに、別の枠がある

同じ法律に、別の面接指導の枠があります。表を組む前に、自社の社員がどの枠に入るかを分けておきます。

条文基準となる時間申出対象の限定
安衛法66条の8・規則52条の2基準となる時間週40時間超の時間が月80時間超申出必要対象の限定疲労の蓄積が認められる者
安衛法66条の8の2・規則52条の7の2基準となる時間週40時間超の時間が月100時間申出不要(規則52条の7の2第2項の読み替え)対象の限定労基法36条11項の業務に従事する者
安衛法66条の8の4基準となる時間健康管理時間が省令の定める時間申出66条の8第2〜5項を準用(同条第2項)対象の限定労基法41条の2第1項で労働する者

66条の8は、66条の8の2と66条の8の4に当たる人を除いています。80時間の表に、100時間の枠の人や高度プロフェッショナル制度の人を混ぜないよう、社員マスタに区分の列を持たせます。この記事の表は、66条の8の80時間枠を対象にします。

勤怠CSVから月次の超過時間を出す表の設計

シートは3枚で足ります。名前は自由ですが、数式の例では「勤怠」「月次」「設定」とします。個人名は列に入れず、社員番号だけで持つと、表を共有したときの情報量を絞れます。

シート主な列役割
勤怠主な列社員番号・日付・始業・終業・休憩(分)・実労働(分)役割勤怠システムのCSVを貼る
月次主な列社員番号・対象月・暦日数・総労働(分)・超過(分)・判定役割人ごと月ごとに集計する
設定主な列算定の期日・通知までの社内目安日数・閾値役割数式が参照するパラメータ

勤怠シートの実労働を分単位で出す

時間を「時間」の小数で持つと、80時間ちょうどの判定で端数が合わなくなります。分単位の整数で持つと、境界が安定します。日をまたぐ勤務を考え、終業から始業を引くときはMODを使います。

実労働(分) = MOD(終業 - 始業, 1) * 1440 - 休憩(分)

休憩時間は労働時間から除きます。条文が「休憩時間を除き」と書いているためです。

月次シートで週40時間を暦日数に按分する

条文の基準は「一週間当たり40時間を超えた時間」です。月ごとの表で簡便に出すときは、1か月の総労働時間から、40時間を暦日数に応じて按分した時間を引きます。この式は条文の文言ではなく、週40時間を月に引き直した換算です。週をまたぐ月初・月末の扱いや、所定休日の取り方まで厳密に合わせる場合は、算定方法を産業医や社労士と決めておきます。

暦日数      = DAY(EOMONTH(対象月, 0))
総労働(分)  = SUMIFS(勤怠!F:F, 勤怠!A:A, 社員番号,
                     勤怠!B:B, ">=" & 対象月,
                     勤怠!B:B, "<=" & EOMONTH(対象月, 0))
按分基準(分) = 40 * 60 * 暦日数 / 7
超過(分)    = MAX(0, 総労働(分) - 按分基準(分))
80時間超    = IF(超過(分) > 設定!閾値(分), "通知対象", "")

閾値のセルには、80時間を分にした4800を入れます。> を使うので、4800分ちょうどは通知対象になりません。

30日の月は按分基準が約171.43時間で、総労働が約251.43時間を超えると80時間超です。28日の2月なら按分基準はちょうど160時間なので、総労働が240時間を超えた人が対象になります。

直近の面接指導を受けた人の除外を列にする

規則52条の2第1項のただし書きには、除外があります。算定の期日前1か月以内に面接指導を受けた労働者などで、面接指導を受ける必要がないと医師が認めた人です。これは「受けたから自動的に除外」ではなく、医師が不要と認めた場合に限ります。

表では、直近の面接指導日と、医師が不要と認めたかの2列を別々に持ちます。

除外 = IF(AND(直近面接日 >= EDATE(算定期日, -1),
              医師不要 = "Y"), "除外", "")

通知対象の最終判定は、80時間超の判定と除外の列の組み合わせで決めます。

切り分け

通知対象にするかの判定順

  1. Q週40時間超の時間が、月80時間を超えているか?
    答えがいいえ

    80時間以下なら、この枠では通知の対象外です。

    答えがはい
  2. Q66条の8の2や66条の8の4の枠の社員ではないか?
    答えがいいえ(別枠の社員)

    別枠の社員は、この表の対象から外し、該当する条文の表で管理します。

    答えがはい
  3. Q算定期日前1か月以内の面接指導で、医師が不要と認めていないか?
    答えがいいえ(医師が不要と認めた)

    除外の列に記録し、通知対象には入れません。

    答えがはい

通知対象

超えた時間の情報を、本人へ速やかに通知します。

通知から面接指導までの期限を、表で追う

規則を読むと、通知から面接指導までの流れには「速やかに」「遅滞なく」が並びます。日数は書かれていません。

手続き条文の表現根拠
超えた時間の算定条文の表現毎月1回以上、一定の期日根拠規則52条の2第2項
本人への通知条文の表現速やかに根拠規則52条の2第3項
本人の申出条文の表現算定期日の後、遅滞なく根拠規則52条の3第2項
面接指導の実施条文の表現申出があったとき、遅滞なく根拠規則52条の3第3項
医師からの意見聴取条文の表現面接指導の後、遅滞なく根拠規則52条の7

条文に日数がないので、表の「通知期限」は社内の目安として持ちます。設定シートに「通知までの社内目安日数」のセルを置き、数式から参照します。目安の日数の決め方は、厚生労働省の通達や社内の衛生委員会の議事で確かめ、決めた根拠を設定シートの備考に書いておきます。

通知期限 = 算定期日 + 設定!通知までの社内目安日数
期限超過 = IF(AND(判定="通知対象", 通知日="", TODAY() > 通知期限),
              "期限超過", "")

通知日・申出日・面接実施日・意見聴取日は、空欄から人が手で埋める列にします。数式は期限を計算するだけで、日付を代わりに入れません。進み具合は、空欄の列を見れば分かります。

保存期間も、列にしておくと忘れません。面接指導の結果の記録は5年間の保存が定められています(規則52条の6)。労働時間の状況の記録は3年間の保存です(規則52条の7の3第2項)。保存期間の考え方は、賃金台帳・労働者名簿・出勤簿の点検でも整理しています。

Claude for Excelに頼む手順

Claude for Excelは、開いているブックについての質問、数式の作成、エラーの原因探しができるExcelのアドインです。Pro、Max、Team、Enterpriseのプランで使えます。

手順

表を作るまでの流れ

  1. 1

    コピーを作って開く

    実データのブックをそのまま渡さず、コピーを作ります。公式の推奨でも、広い編集を頼む前に、信頼できるコピーで試すことが挙げられています。

  2. 2

    列の意味を説明する

    3つのシートと各列の意味、実労働を分で持つこと、閾値を4800分にすることを書いて伝えます。

  3. 3

    数式を入れさせる

    月次シートの按分基準・超過・判定の列に、上の式を入れるよう頼みます。

  4. 4

    境界値で検算させる

    次の節のテスト行を追加し、判定が期待どおりか確かめます。

  5. 5

    空欄の列を増やす

    通知日・申出日・面接実施日・意見聴取日の列を空欄で作らせ、期限超過の条件付き書式を足します。

例えば次のような頼み方になります。

このブックには「勤怠」「月次」「設定」の3シートがあります。
勤怠のF列は実労働(分)で、休憩を引いた値です。
月次シートに、次の列を追加してください。
1. 暦日数(対象月の月末日の日付から求める)
2. 総労働(分)(勤怠から社員番号と月でSUMIFS)
3. 按分基準(分) = 40*60*暦日数/7
4. 超過(分) = MAX(0, 総労働 - 按分基準)
5. 判定:超過が設定シートの閾値(4800分)を超えたら「通知対象」
既存のデータを上書きする操作は、先に私に確認してください。

最後の一行は、公式が示す「上書きの前に警告する」挙動とは別に、頼み方の側でも保険を掛けるためのものです。Claude for Excelは既存のデータを上書きする前に警告を出します。

数式を信じる前に、境界値のテスト行で確かめる

月次の判定は、数式を一度入れて終わりにしません。80時間の境界を挟んだテスト行を、2月(28日)で作ります。2月は按分基準がちょうど160時間なので、合計が分かりやすくなります。

テスト総労働(分)按分基準(分)超過(分)期待する判定
境界の1分下総労働(分)14399按分基準(分)9600超過(分)4799期待する判定なし
ちょうど80時間総労働(分)14400按分基準(分)9600超過(分)4800期待する判定なし
境界の1分上総労働(分)14401按分基準(分)9600超過(分)4801期待する判定通知対象
超過が負になる人総労働(分)9000按分基準(分)9600超過(分)0期待する判定なし

ちょうど80時間が「なし」になるかが、> と >= の取り違えを見つける行です。超過が負になる行は、MAXで0に切られているかを見ます。

この検算を、Claude for Excelに「テスト行を追加して、期待値と一致するか表で示して」と頼むこともできます。ただし、公式が監査上重要な計算は検証なしに任せないよう示しているので、一致を最後に目で確かめるのは人の作業です。テスト行は、本番の月次シートでなくコピーに入れて、本番には残しません。

月をまたぐ勤務は、どちらの月に数えるかを決めておく

始業が月末で終業が翌月にかかる勤務は、集計の月がずれる原因になります。「日付」列には始業日を入れる、と決めて設定シートの備考に書いておくと、月次の合計が毎月同じ基準で出ます。勤怠システムのCSVがどの日付を出力するかは、システム側の担当者に確かめます。

通知の後に人が決めること

抽出された人は、面接指導を受ける可能性のある人の候補です。その後の手続きは、Excelの外にあります。

  • 疲労の蓄積が認められるか:要件のもう一方で、数式では決まらない
  • 面接指導を受けるか:本人の申出による
  • 面接の結果の記録と、医師の意見の聴取:5年保存の記録に残る
  • 医師の意見を踏まえた措置:就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少などを講じる(安衛法66条の8第5項)

産業医が申出をするよう勧奨できる点も、規則に書かれています。通知の文面と連絡の窓口は、衛生委員会で決めておくと、通知を受けた本人が申出の先に迷いません。

打刻漏れや残業超過を週次で拾う運用は、Coworkで勤怠異常検知を週次自動化する方法が扱っています。そちらは異常の検知が主題で、80時間超の要件判定と通知の進行管理は別の作業です。拘束時間の基準を勤怠データから確かめるには、改善基準告示に拘束時間を照合する手順が参考になります。

使えない環境とデータを渡すときの注意

Claude for Excelには、使える環境に条件があります。

  • 動くのは、Excel on the web、Microsoft 365のWindows版(build 16.0.13127.20296以降)、Mac版(16.46以降、build 21011600以降)
  • Excel 2016・2019の永続ライセンス版、iPad、Androidでは動かない
  • マクロとVBA、データテーブルは扱えない

勤怠データは個人の労働時間の記録で、面接指導の対象者リストは健康に関わる管理情報です。公式の「現在の制限」には、機微な情報や規制対象のデータを含むモデルは、適切な管理なしに使わないよう書かれています。入力は社員番号に絞り、氏名や所属は別ファイルに分けておくなど、渡す列を減らす選択肢があります。入力と出力は、バックエンドで受領または生成から30日以内に削除される仕組みです(例外あり)。

外部から受け取ったファイルには、隠れた指示が含まれ得ると公式は注意しています。勤怠システムのCSVを貼り込むときも、自社の管理下で出力したものに限り、受け取ったテンプレートをそのまま開かないようにします。

まとめ

80時間超の抽出は、「週40時間超の時間が月80時間を超えた人」を数式で出し、その結果を通知対象の候補として残す作業です。疲労の蓄積の判断、申出の受付、面接指導の実施は、表の外で人が進めます。

表の価値は、通知期限の目安と、通知・申出・面接・意見聴取の進み具合が空欄で見えることにあります。80時間ちょうどが対象外になるかを2月のテスト行で確かめてから、本番の月に数式を広げる順で進めます。

同じ作業を年次有給休暇の管理簿で行うなら、5日取得義務をClaude for Excelで点検する手順が同じ型で使えます。

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