Claude Media
相見積もりの比較表をClaude for Excelで作る — 工種・数量・単価をそろえて抜けを洗う

相見積もりの比較表をClaude for Excelで作る — 工種・数量・単価をそろえて抜けを洗う

協力会社から届いた書式の違う見積を、Claude for Excelで工種・数量・単価の1つの表にそろえる手順。合計の安さに隠れた抜け項目と数量差を、数値例と数式つきで洗い出します。

協力会社3社から相見積もりが届くと、まず目に入るのは合計金額です。ところが、書式が社ごとに違う見積では、合計の安さが「安い」のか「入っていない項目がある」のかを見分けられません。

見分ける近道は、全社の見積を同じ行に並べ直すことです。工種、数量、単位、単価の4つの列をそろえて、基準にした項目に対して各社が何を入れ何を落としたかを見ます。この並べ替えと突合を、Claude for Excelに手伝わせる手順を書きます。

先に押さえておく点が1つあります。比べる土台になる基準数量は、発注側が自分で拾った数字です。受け取った見積の側を書き換える作業ではなく、見積を基準にそろえて差を出す作業です。

使える環境とプラン

Claude for Excelは、Pro、Max、Team、Enterpriseの各プランで使えます。対応するExcelは次のとおりです。

環境条件
Excel on the web条件条件なし
Windows版条件Microsoft 365契約でビルド16.0.13127.20296以降
Mac版条件バージョン16.46以降、ビルド21011600以降

Excel 2016・2019の永続ライセンスやボリュームライセンス版、iPad、Androidでは動きません。事務所のパソコンに買い切り版のExcelが残っている場合は、先にここを確かめます。

見積書がPDFで届く場合の注意があります。Claude for Excelの公式ページには、PDFをアドインに読み込ませる手順の記載がありません。ここでは、見積の中身がExcelのシートに入っている状態から始めます。PDFをExcelの表にする入口は、後半の「PDFで届いた見積の扱い」に分けて書きます。

比較ブックは4つのシートに分ける

最初にブックの形を決めます。形が決まっていれば、Claudeへの指示は短くて済みます。

構成

比較ブックの4シート

  • 取込_A社・取込_B社・取込_C社

    各社の見積を、原文のまま貼る領域です。ここは加工しません。書式の違いを残しておき、後で原文に戻って確かめられるようにします。

  • 基準

    自社で拾った工種・項目・数量・単位を並べた表です。各行に工種コードを振ります。比較の物差しになります。

  • 比較

    基準の行ごとに、各社の数量と金額を並べる表です。抜けと数量差の判定列もここに置きます。

  • 確認メモ

    「別途」「除く」「含む」など、備考にある条件を拾って書く場所です。金額に出ない差がここに集まります。

取込シートの列は、全社で次の7列にそろえます。

列内容
A内容工種コード(基準に合わせて付ける)
B内容項目名(見積の原文)
C内容数量
D内容単位
E内容単価
F内容金額
G内容備考(原文のまま)

この7列にするときに、項目名の原文は消さず、工種コードを足す形にします。コードは、Claudeが基準の項目名と見比べて付けた仮の対応です。外れていないかは人が見ます。

最初に永続的な指示を設定する

アドインのサイドバーの設定に「Instructions」欄があります。ここに書いた内容は、Excelでのすべての会話に適用されます。PowerPointやWordの指示とは別に保たれます。

相見積もりの比較では、表記と判定のルールを先に置いておくと、依頼のたびに繰り返さずに済みます。次のような形が使えます。

このブックは工事の相見積もり比較用です。
- 単位は㎡・m・個・式に統一する。m2、平米、M2は㎡として扱う。
- 「一式」は数量1、単位は式として取り込む。
- 取込シートの原文は書き換えない。加工は比較シートで行う。
- 金額は税抜の円単位で、桁区切りを付ける。
- 工種コードを付けた行は、付けた根拠を確認メモに1行で残す。

単位の表記ゆれ(㎡、m2、平米)は、数量を足し合わせるときに別の単位として扱われやすい部分です。最初に統一ルールを書いておくのは、そのためです。

基準数量を先に固める

比較の起点は、自社の拾い出しです。図面から数量を拾う作業は、Claudeで積算の数量拾いをする方法に手順があります。基準シートには、そこで出た工種ごとの数量を、コード付きで入れておきます。

基準が無いまま3社の見積を並べると、基準が「いちばん項目が多い社」になってしまいます。その社が過剰に積んでいたときに、他社の抜けに見えてしまいます。

見積を同じ列にそろえる

取込シートに各社の見積を貼ったら、Claudeに列の整理を頼みます。依頼文は、範囲と出力先を具体的に書きます。

「取込_A社のA列からG列に、A社の見積を貼りました。基準シートの工種コードと項目名を見て、各行にコードを付けてください。原文の項目名は変えないでください。対応づけに迷う行は、コードを空欄にして確認メモにその理由を書いてください」

ここで重要なのは「迷う行は空欄にする」と指示することです。迷った行にもっともらしいコードを付けさせると、後の集計に誤った対応が混ざります。

Claude for Excelは、回答にセル単位の出典を付けます。出典はクリックでそのセルへ移動できます。コードの対応に疑問があるときは、「なぜこの行をコード03にしたか、根拠のセルを示してください」と聞くと、見積の原文のどこを見たかが分かります。

手順

比較表ができるまでの流れ

  1. 1

    基準シートに工種コードと数量を置く

    自社の拾い出しを、コード・項目・数量・単位の4列で並べます。

  2. 2

    取込シートに各社の見積を貼る

    書式はそのままです。7列に合わない社は、列の並びだけ整えます。

  3. 3

    Claudeに工種コードを付けさせる

    迷う行は空欄にさせ、理由を確認メモに残させます。

  4. 4

    比較シートで数量と金額を並べる

    次の節の数式で、基準の行ごとに各社を引きます。

  5. 5

    抜けと数量差を判定し、備考の条件を読む

    判定列で出た行と、備考にある「別途」「含む」を突き合わせます。

比較シートの数式

比較シートは、基準の1行につき各社の数量と金額を引く形にします。取込_A社の列が先の7列で、比較シートのA列がコード、C列が基準数量だとして、A社の数量と金額、判定の式は次のとおりです。

E列 A社の数量:  =SUMIFS(取込_A社!$C:$C, 取込_A社!$A:$A, $A2)
F列 A社の金額:  =SUMIFS(取込_A社!$F:$F, 取込_A社!$A:$A, $A2)
G列 A社の判定:  =IF(E2=0, "抜け", IF(E2<>$C2, "数量差", ""))

C列には基準の数量が入っています。該当の行が取込シートに無ければ数量の合計が0になるので、0を「抜け」とみなせます。B社、C社も参照先のシート名を変えて同じ形で置きます。

行ごとの判定に加えて、検算の行を1つ置きます。比較シートの金額列の合計と、各社の見積書に書かれている合計を並べ、差が0になることを確かめます。差が出るなら、取込で取りこぼした行か、コードの付け違いがあります。

判定列を目立たせたいときは、「抜け」「数量差」の行に色を付けるようClaudeに頼みます。Claude for Excelは、ソートやフィルタ、ピボットテーブルの編集、条件付き書式、データ検証のドロップダウンの作成に対応しています。これらは直接頼めます。

数値例 — 合計が最安の社が最安とは限らない

ここからは、内装改修(事務所80㎡)を想定した架空の数値例です。基準の項目は7行です。3社の見積を同じ行に並べると、次の金額になりました。単位は円、「—」はその項目が見積に無いことを示します。

項目(基準数量)A社B社C社
解体・撤去(80㎡)A社120,000B社144,000C社128,000
軽量間仕切(36㎡)A社324,000B社342,000C社276,000
床タイルカーペット(80㎡)A社336,000B社360,000C社344,000
壁クロス(120㎡)A社132,000B社144,000C社138,000
電気配線(一式)A社250,000B社270,000C社260,000
廃材処分(一式)A社—B社90,000C社—
養生・清掃(一式)A社—B社40,000C社35,000

見積書に書かれた合計は、A社1,162,000円、B社1,390,000円、C社1,181,000円です。合計だけ見るとA社がいちばん安く、C社が19,000円差で続きます。

比較表の判定列を見ると、様子が変わります。

数値例

判定列で出た3つの差

  • A社は2項目が抜け

    廃材処分と養生・清掃の行が無く、判定列に「抜け」が出ます。見積書の合計が安い理由の一部は、この2行です。

  • C社は間仕切の数量が少ない

    基準は36㎡ですが、C社は30㎡で計上しています。6㎡分が見積に入っていません。

  • C社の廃材処分は備考に書かれている

    廃材処分の行は無く、解体・撤去の備考に「処分費含む」とあります。金額の列だけでは見えない条件です。

この3つを金額に直して、比べ直します。ここでの補正は、仮置きの試算として別の列に出します。A社の抜け2項目には、B社の単価を参考値として入れます(130,000円)。C社の間仕切6㎡は、C社自身の単価9,200円で55,200円を足します。C社の廃材処分は、備考のとおり解体に含まれるものとして0円のままにします。

見積書の合計補正後の試算
A社見積書の合計1,162,000円補正後の試算1,292,000円
B社見積書の合計1,390,000円補正後の試算1,390,000円
C社見積書の合計1,181,000円補正後の試算1,236,200円

順位が入れ替わります。見積書の合計ではA社が最安でしたが、補正後はC社です。A社の1,292,000円は、B社の単価を借りた参考値なので、A社に実際に聞いた金額ではありません。次の行動は、A社に「廃材処分と養生・清掃は別途か、含みか」を確認することです。Claudeの役割は、確認が必要な行を洗い出すところまでです。

備考の条件を拾う

金額に出ない差は、備考欄に集まります。取込シートの備考(G列)をまとめて読ませて、条件を分類させます。

「取込_A社、取込_B社、取込_C社の備考(G列)を読んで、『別途』『除く』『含む』『支給』『別工事』のいずれかを含む行を、社名・工種コード・備考の原文つきで確認メモに一覧にしてください。判断はせず、原文を転記してください」

「判断はせず、原文を転記する」と頼むのは、条件の解釈を人が行うためです。たとえば「養生は共用部のみ」という備考が、基準の範囲を満たすのかは、現場を知る担当者が決めます。

落とし穴

「一式」は数量1に見えても範囲が分からない

電気配線のように「一式」で出された項目は、数量の比較では1対1になり、差が出ません。ところが、一式の中に含まれる範囲が社ごとに違うことがあります。一式の行は、備考と内訳の有無を別に見ます。内訳が無い社には、内訳の提出を頼む材料にします。

PDFで届いた見積の扱い

見積書がPDFのみで届くことも多くあります。Claude for Excelの公式ページには、PDFの読み込みについての記載がありません。そのため、PDFの内容をExcelの取込シートに入れる入口は、別の手段で用意します。

どの入口でも、貼ったあとに合計の検算を行います。取込の段階で行が抜けていると、比較表の抜けと見分けがつかなくなるためです。

使えない操作と利用上の注意

制限は、依頼する前に知っておく方が手戻りが少なくなります。

協力会社のファイルは、信頼できる自社のブックに値だけ貼る

Claude for Excelの公式ページは、外部から受け取ったファイルに隠された指示が含まれている恐れを挙げています。ダウンロードしたテンプレートやベンダーのファイル、データの取り込みが例です。指示によって、情報の抜き出しやデータの変更、破壊的な操作に誘導される場合があります。

相見積もりの見積は、まさに協力会社から届いたファイルです。協力会社のExcelをそのまま開いてClaudeに読ませるのではなく、自社の比較ブックに値だけを貼ってから読ませる運用が、リスクを下げます。危険な操作をClaudeが提案するときは確認が求められるので、確認の内容も見ます。

最終成果物と監査に関わる計算

公式ページは、人の確認なしの最終成果物や、検証なしの監査に関わる計算には推奨されないとしています。比較表は社内の判断材料です。業者を決める根拠や、発注者への報告に出す数字は、人が確定します。

Excelの操作として使えないもの

データテーブル(What-If分析のもの)と、マクロ・VBAの操作は使えません。比較ブックにマクロを入れている場合、その実行は人が行います。

ファイルを書き換える前の備え

広い範囲を編集させる前に、信頼できるコピーを取っておきます。Claudeは既存のデータを上書きする前に警告を出しますが、原文を貼った取込シートは別に残しておく方が安全です。

データの扱い

入力と出力は、受け取りまたは生成から30日以内にバックエンドから削除されます。チャット履歴はブラウザ内のIndexedDBに保存され、1人あたり直近50件の会話までが残ります。組織で設定している独自のデータ保持設定は引き継がれません。協力会社の単価や取引条件を扱う場合は、社内の情報管理規程に照らして、読ませてよい範囲を決めておきます。

Claude for Excelが長い作業で応答しなくなったときの原因と上限値は、Claude for Excelが応答しない・タイムアウトする原因と上限値にまとめています。

隣り合う作業との使い分け

この記事は、受け取った見積を基準にそろえて比べる作業です。発注前に図面から数量を拾う作業はClaudeで積算の数量拾いをする方法の領分です。契約して工事が動き出した後の、実行予算と原価実績の差は実行予算と原価実績の差異表をClaude for Excelで作る手順が扱っています。

相見積もりで選んだ社の金額は、そのまま実行予算の元になります。比較ブックの「選定社の金額」列を、差異表の予算列に引き継げる形にしておくと、後の工程がつながります。

まとめ

相見積もりの比較は、書式をそろえる前の合計金額では判断できません。基準数量を置き、各社を工種コードで同じ行に並べ、抜けと数量差を判定列で出します。そのうえで備考の条件を読むと、順位が入れ替わる場合があります。

Claude for Excelに任せやすいのは、コードの付与、列の整理、判定列の作成、条件の拾い出しです。基準数量の確定、迷う行の判断、備考の解釈、業者の選定は人の仕事として残します。協力会社のファイルは、自社のブックに値だけ貼ってから読ませます。

この記事を共有:XはてブLinkedIn