Claudeで作付計画の輪作表を検査する手順 — 連作障害の組み合わせをExcelで洗う
圃場×年×作物の作付表に科と連作年限を結び付け、同じ科が早く戻る組み合わせをClaude for Excelで洗い出します。数式の入れ方と頼み方を例で示します。
作付計画の輪作表は、圃場が増えるほど「同じ科が早く戻っていないか」を目で追えなくなります。Claude for Excelを使うと、圃場×年×作物の一覧に科と連作年限を結び付け、警告の列まで一度に作れます。この記事では、その表の組み方と、Claudeへの頼み方を順に示します。
なお、連作年限は作物・土壌・地域で変わる目安です。表は「見落とし防止の検査」であり、栽培の可否を決めるものではありません。最終判断は地域の指導指針や普及センターの助言に合わせてください。
検査に使う3枚のシートを先に決める
検査は、次の3枚で成り立ちます。
輪作検査に要る3枚のシート
作付実績
圃場・年・作物を1行ずつ並べた縦長の表です。計画を入れる行も同じ形で足します。
科表
作物名と科の対応表です。作物名の表記ゆれは、ここで一本化します。
年限表
科ごとの連作年限を入れる表です。値は「同じ科が同じ圃場に戻るまでに必要な年数(年の差)」で、4なら4年後に戻る計画は通り、3年後は要確認になります。値は自分の地域の指針から取ります。
圃場ごとに列を並べる「年次マトリクス」は人が見やすい形ですが、検査には向きません。同じ圃場の過去の行を探す式が書きにくいためです。縦長の表で検査し、見せる用の年次マトリクスは別シートにXLOOKUPの数式で組み直す、という分担が扱いやすくなります。ピボットテーブルは値エリアに作物名のような文字列を出せず個数などの集計になるため、この用途には向きません。
作付実績の列と科表のサンプル
サンプルは架空のデータです。列は次のとおりにします。
| 列 | 見出し | 内容 |
|---|---|---|
| A | 見出し圃場 | 内容圃場名(例: 北1) |
| B | 見出し年 | 内容作付年(例: 2027) |
| C | 見出し作物 | 内容科表と同じ表記 |
| D | 見出し科 | 内容科表から引く |
| E | 見出し連作年限 | 内容年限表から引く |
| F | 見出し前回の同科年 | 内容同じ圃場で直前に同じ科を作った年 |
| G | 見出し判定 | 内容前回との年の差が年限に届かなければ「要確認」 |
科表には、たとえばトマト・ナス・ピーマンをナス科、キュウリをウリ科、キャベツ・コマツナをアブラナ科として入れます。ナス科は連作障害が出やすい実もの野菜として知られており、ナス科の目安は3〜4年あけるとされます。年限表のナス科には、保守的に4(4年後に戻るなら可)を入れておく使い方があります。4区画で順に回すローテーションなら、ナス科は4年後に戻り、この定義では通ります。
ほかの科の年限は、作物ごとに指針の値が異なります。仮の数字を入れる場合は、仮置きだと分かる印を付けておきます。
科と年限を引く数式を入れる
D列とE列は、検索関数で引きます。2行目の例です。
D2: =XLOOKUP(C2, 科表!A:A, 科表!B:B, "科未登録")
E2: =XLOOKUP(D2, 年限表!A:A, 年限表!B:B, "年限未登録")「科未登録」「年限未登録」と出た行は、検査から漏れる行です。作物名の表記ゆれ(「トマト」と「ミニトマト」など)が主な原因になります。
同じ科が戻る間隔を数式で測る
肝になるのは、同じ圃場で、より前の年に作った同じ科の最新の年を拾う式です。
F2: =MAXIFS($B:$B, $A:$A, A2, $D:$D, D2, $B:$B, "<"&B2)
G2: =IF(F2=0, "", IF(B2-F2<E2, "要確認", "OK"))F列が0なら、その圃場に同じ科の過去がありません。B2-F2は同じ科が戻るまでの年数で、1なら前年と同じ科、2なら1年空けた計算になります。年限が4なら、B2-F2が3以下の行が警告対象です。4年後に戻る計画は年限どおりなので通ります。
「年限が3〜4年」のように幅がある場合は、厳しい側の値を入れておきます。警告が出すぎる場合のみ、緩い側へ寄せます。
Claude for Excelに頼む
Claude for Excelは、開いているブックの内容について質問でき、数式の関係を保ったまま値を更新でき、エラーの原因も追えます。条件付き書式の設定やデータ入力規則のドロップダウン作成も、直接頼めます。個人のProやMax、TeamやEnterpriseのプランで使えます。
作業は次の順で進めます。
輪作検査の進め方
- 1
作付実績を縦長に整える
過去の記録を縦長の表に貼ります。作物名の表記を揃える作業は、手元で済ませておくと後の検査が安定します。
- 2
科表と年限表を作る
科表と年限表を作り、出典や指針の名前を備考欄に残します。値の根拠を残しておくと、次の年に見直しやすくなります。
- 3
数式を入れてもらう
D〜G列の数式を頼みます。式を入れる前に、Claudeに計画を述べてもらうと食い違いに気づけます。
- 4
要確認の行を絞り込む
G列で絞り込み、要確認の行を圃場ごとに並べ替えます。
- 5
組み替え案を作る
要確認の行について、年限を満たす作物の入れ替え案を出してもらいます。案は別のシートに書かせます。
頼み方の例です。
作付実績シートのA〜C列は圃場・年・作物です。
科表と年限表を使って、D列に科、E列に連作年限、
F列に同じ圃場で直前に同じ科を作った年、G列に判定を入れてください。
判定は、年とF列の差が年限より小さければ「要確認」、そうでなければ「OK」です。
科表に無い作物は「科未登録」と表示してください。次の頼み方は、組み替え案向けです。
G列が「要確認」の行だけを新しいシート「見直し案」に抜き出してください。
各行について、同じ圃場の過去4年に使っていない科の作物を、
科表から候補として2つずつ挙げてください。元のシートは変更しないでください。「元のシートは変更しない」と書いておくと、検査結果の列だけが加わり、記録そのものは触られません。Claudeは既存データを上書きする前に警告を出しますが、大きな範囲を頼むときは事前にコピーを取っておきます。
数式の動きを手計算で確かめる
数式を入れたら、Claudeの結果をそのまま信じず、少数の行で手計算と突き合わせます。年限表のナス科を4としたときの、架空の6行です。
| 圃場 | 年 | 作物(科) | 前回の同科年 | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| 北1 | 年2024 | 作物(科)トマト(ナス科) | 前回の同科年0 | 判定(空欄) |
| 北1 | 年2025 | 作物(科)キャベツ(アブラナ科) | 前回の同科年0 | 判定(空欄) |
| 北1 | 年2026 | 作物(科)キュウリ(ウリ科) | 前回の同科年0 | 判定(空欄) |
| 北1 | 年2027 | 作物(科)ナス(ナス科) | 前回の同科年2024 | 判定要確認 |
| 北2 | 年2022 | 作物(科)ナス(ナス科) | 前回の同科年0 | 判定(空欄) |
| 北2 | 年2026 | 作物(科)トマト(ナス科) | 前回の同科年2022 | 判定OK |
北1の2027年は2024年との差が3で、年限の4に届かないため警告が立ちます。北2の2026年は差が4で、年限どおりなので通ります。ここで「要確認」が付くべき行に付かないなら、F列の式の範囲か、科表の表記ゆれを疑います。
手計算が合わないときは、Claudeにその行の式を読ませ、どのセルを参照して判定したかを説明してもらいます。Claude for Excelの回答には、セル単位の出典が付き、クリックでそのセルへ移動できます。
年限を置く根拠をどこに求めるか
年限表の値は、検査結果の重みを決める入力です。根拠の取り方は次の2つです。
- 地域の指導指針や普及センターの資料: 栽培暦に載る連作年限や、土壌病害の発生履歴に基づく目安
- 家庭菜園向けの解説: ナス科は3〜4年あけるといった、一般的な目安
連作の影響は、作物によって差があります。岩手県の農業試験場の資料には、野菜も普通作物も連作すると2年目から減収の傾向があり、レタスと短根ニンジンは特に障害が出やすいという報告があります。対策として挙がっているのは、普通作物との輪作です。これは一地域の試験結果なので、年限表にそのまま数字を転記する用途には向きません。ただし「野菜どうしの輪作より、畑作物を挟む方が効く」という傾向は、組み替え案を考えるときの手がかりになります。
つまずきやすい点
落とし穴
科を作物名から推測させると、科表と食い違う
科表に無い作物をClaudeに推測させると、地域の呼び名や品種の別名で食い違うことがあります。科表は人が確定させ、Claudeには「科表を引く」役だけを任せます。
落とし穴
1年に2作する圃場は年だけでは測れない
春夏作と秋冬作を同じ圃場で回すなら、「期」の列を足します。たとえばジャガイモとネギを交互に植える連作グループのような組み合わせでは、年が同じでも作期が違います。期を通し番号にすると、年限の判定を半年刻みで行えます。
落とし穴
休ませた年を空白にすると、期間の数え方がずれる
休閑や緑肥の年も、作付実績に1行入れておきます。解説の一つには、4年に1回は野菜を作らず畑を休ませる区画を設ける考え方や、ソルゴー・クローバーなどの緑肥作物で地力の回復をはかる考え方があります。年限は「年の差」で測るので、行が無くても数式は動きますが、休閑の年を明示しておくと、あとで表を見返したとき、記録漏れと休ませた年を区別できます。科表には「休閑」「緑肥」の行を足し、年限は空欄にしておきます。
連作しても障害が出にくい作物は、検査の対象から外す選択肢があります。家庭菜園向けの輪作の解説には、ネギ・トウモロコシ・サツマイモ・カボチャを連作グループとして、ローテーションから外す例があります。ジャガイモはナス科ですが、ネギと交互に植えて連作する例が紹介されています。この除外は一般の目安なので、自分の圃場の病害虫の履歴と合わせて決めます。
見せる用の表を作り、運用を続ける
検査が済んだら、別シートに、圃場を行、年を列にした年次マトリクスを作ります。セルは次のようなXLOOKUPで作物名を引きます(範囲は実データの行数に合わせます)。
B2: =XLOOKUP(1, (作付実績!$A$2:$A$500=$A2)*(作付実績!$B$2:$B$500=B$1), 作付実績!$C$2:$C$500, "")背景色に科を割り当てる条件付き書式を頼めば、色の偏りが一目で見えます。
運用で効くのは、次の3点です。
- 計画段階で行を足し、収穫後に実績で書き換える。同じ表を1年中使う
- 年限表の値を変えたら、変えた日と理由を備考に残す
- 農薬の使用記録など、別の帳簿との突合は農薬の使用基準と防除記録をClaudeで点検する手順の考え方が使える
Excel上の突合の流れ自体は、他業種の例も参考になります。キャッシュレスの入金と売上を突合する手順は、縦長の表に検算の列を足していく点が共通します。
使う前に知っておきたい制限
Claude for Excelは、データテーブルとマクロ・VBA操作に未対応です。Excel 2016と2019の買い切り版、iPad版、Android版でも動きません。Microsoft 365のExcelか、Web版、対応ビルドのMac版・Windows版が前提になります。
もう1つ注意したいのが、外部から受け取ったファイルです。他所から配られた作付表のテンプレートや、取引先の台帳には、Claudeを意図しない操作へ誘導する指示が隠れている可能性があります。信頼できるブックだけを開いて使い、確認を求められたときは中身を読んでから承認します。
また、監査に使う計算は人の検証を挟む前提とされています。補助金の申請書や認証の提出資料に載せる輪作の記録は、Claudeの判定を鵜呑みにせず、年限表の根拠と合わせて見直します。
まとめ
輪作表の検査は、科と年限を引き、同じ圃場で同じ科が戻った年を測るだけで形になります。肝は数式そのものより、科表と年限表を人が確定させることです。Claudeには式の作成、絞り込み、組み替え案の下書きを任せ、年限の値と最終判断は自分の圃場の事情で決めます。