Claudeで賃貸管理のオーナー報告を作る手順 — 入出金・空室・修繕の月次報告
管理システムから出した入出金・空室・修繕の3表をClaudeに渡し、オーナー向けの月次報告書(Word)にする手順。送金額の検算、空室理由の書き方、見積PDFの要点化まで扱います。
賃貸管理会社が貸主(オーナー)に出す月次報告は、入出金、空室、修繕の3つの表を読み解いて文章にする作業です。管理システムから出したCSVをClaudeに渡せば、数字の検算と、オーナーに伝える文章の下書きまでは任せられます。この記事では、claude.aiの「コードの実行とファイル作成」を使い、3表をExcelにまとめてWordの報告書に落とすまでを、プロンプト例つきで示します。
投資家が自分の物件の収支を試算する話ではありません。管理を受託している側が、オーナー1人ひとりに毎月出す報告が対象です。投資家自身の収支シミュレーションは不動産投資の収支をClaude for Excelでシミュレーションする手順にあります。
月次報告のどこをClaudeに任せ、どこを人が書くか
オーナー報告は、数字の集計、差異の発見、理由の説明、今後の提案の4つに分けられます。Claudeが力を発揮するのは前の2つと、文章の整形です。理由と提案は、現場を知る担当者の情報がなければ書けません。
| 工程 | 任せ方 | 人が確かめること |
|---|---|---|
| 入出金の集計と送金額の検算 | 任せ方計算式を渡して任せる | 人が確かめること管理システムの送金額との一致 |
| 空室の一覧と空室期間の算出 | 任せ方そのまま任せられる | 人が確かめること退去日・募集開始日の誤り |
| 空室の理由 | 任せ方担当者メモの要約まで | 人が確かめることメモにない原因を足していないか |
| 修繕見積の要点 | 任せ方金額・内容・承認要否の整理 | 人が確かめること見積書の原本との照合 |
| オーナーへの提案 | 任せ方選択肢の列挙まで | 人が確かめること採否を促す表現になっていないか |
理由欄を「それらしく」書かせると、現場で確認していない原因が文章に入り込みます。この記事の手順は、理由欄に担当者メモの内容だけを書かせる作りにしてあります。
報告書ができるまでの5段
- 1
3表を整える
入出金・空室・修繕のCSVを、入居者名なしの形に直します。
- 2
読み取りを確認する
行数と合計が元データと合うかを、分析の前に確かめます。
- 3
入出金から送金額を検算する
控除項目の定義を渡し、オーナーへの送金額を再計算させます。
- 4
空室と修繕を要約する
担当者メモと見積PDFから、事実だけを抜き出させます。
- 5
Word報告書にする
オーナー1人分の構成を指定し、ダウンロードして体裁を整えます。
使う前に確認する設定とプラン
ファイルの作成は、claude.aiの「Code execution and file creation」(コードの実行とファイル作成)という機能で動きます。作れるのはExcel(.xlsx)、PowerPoint(.pptx)、Word(.docx)、PDFで、CSVやTSVをアップロードしての分析にも使えます。ファイルの上限はアップロードもダウンロードも1ファイル30MBです。月次のCSV3本なら、この上限に収まります。
設定の確認で気をつけたいのは、ヘルプの説明が節によって食い違う点です。「Availability」の節はFree・Pro・Maxで既定でオンとし、Teamのネットワークアクセスは既定でオフと書きます。一方、「How to get started」の節はFree・Pro・Maxに「Settings > Capabilitiesでオンにする」手順を示し、Teamはネットワークアクセスが既定でオン(パッケージ管理ツールのみ)と書きます。
どちらが現行の挙動かは、自分のアカウントの設定画面で見るのが確実です。
| プラン | 設定の場所 | 確認すること |
|---|---|---|
| Free・Pro・Max | 設定の場所設定のCapabilities | 確認することコードの実行とファイル作成がオンか |
| Team | 設定の場所組織設定のCapabilities(オーナーのみ) | 確認すること組織としてオフにされていないか |
| Enterprise | 設定の場所組織設定のCapabilities(オーナーのみ) | 確認すること組織としてオフにされていないか |
管理会社が社内でTeamやEnterpriseを使う場合、設定を変えられるのは組織のオーナーだけです。担当者の画面にトグルが出ないときは、オーナーに確認します。
ファイルを作る処理は、通常のチャットより利用枠を多く使います。月初の報告期間に、オーナー数十人分を続けて処理すると、枠の減りが早くなります。
手順1: 3表をそろえ、入居者の個人情報を外す
管理システムから、対象月のデータを3本のCSVで出します。列の名前は、システムによって違います。次は、プロンプトに添えるサンプルの形です(数字はすべて架空です)。
物件名,部屋番号,入金日,項目,金額
Aハイツ,101,2026-09-27,賃料,68000
Aハイツ,102,2026-09-27,賃料,72000
Aハイツ,102,2026-09-27,共益費,3000
Aハイツ,-,2026-09-30,修繕費立替,-48400物件名,部屋番号,退去日,募集開始日,募集賃料,担当者メモ
Aハイツ,103,2026-07-31,2026-08-10,70000,内見3件。2件が水回りの古さに言及修繕表には、日付、物件、内容、見積金額、業者名、オーナー承認の要否を持たせます。
渡す前に、入居者の氏名、連絡先、勤務先を外します。報告書に必要なのは「どの部屋でいくら動いたか」であり、部屋番号で足ります。滞納があった場合も、氏名ではなく部屋番号と滞納月数で渡します。
オーナー報告は、物件ごとにファイルを分けるのが安全です。複数のオーナーの物件を1つのファイルに混ぜると、報告書の作成時に他のオーナーの数字が紛れ込む恐れがあります。
アップロードしたら、まず読み取りだけを確認します。
添付は、あるオーナーの物件Aハイツの2026年9月分の入出金表、空室表、
修繕表です。分析はまだ始めず、次の3点だけ答えてください。
1. 各ファイルの行数と列名
2. 入出金表の項目ごとの合計金額
3. 読み取れなかった行・セルがあればその位置項目ごとの合計は、管理システムの画面に出る集計と見比べます。ここで合わなければ、読み取りの欠落か元データの問題です。分析に進む前に止められます。
手順2: 入出金から送金額を検算する
オーナーへの送金額は、受託契約によって控除の項目と順序が違います。Claudeに「一般的な計算」をさせず、定義を文章で渡します。
送金額は次の式で計算します。
送金額 = 賃料入金 + 共益費入金 − 管理手数料 − 立替費用
管理手数料は(賃料入金 + 共益費入金)×5%、小数点以下切り捨てです。
立替費用は修繕費立替と清掃費立替の合計です。
この式で再計算し、管理システムの送金額 214,300円 との差を
示してください。差があれば、項目ごとに原因を切り分けてください。管理手数料の料率、端数処理、控除対象は例です。自社の契約に合わせて書き換えます。
差が出たときに、Claudeが「原因はこれです」と言い切った場合は、その説明を鵜呑みにしません。入金日のずれ、前月分の立替の繰り越し、手数料の端数処理など、システム側の仕様で差が出ることがあります。Claudeには候補の列挙と、どの行を見れば確かめられるかまでを出させます。
落とし穴
送金額が合っていても、項目のずれは残る
合計が管理システムと一致しても、項目の割り振りが違っていることがあります。たとえば更新料が賃料に入っていると、手数料の料率が違う契約では結果が変わります。合計の一致だけで終わらせず、項目別の内訳も元データと見比べてください。
手順3: 空室の理由は担当者メモの内容だけで書かせる
空室表からは、空室期間と募集条件の一覧を作らせます。日数の計算は、Claudeにコードで処理させる形で任せられます。
空室表から、各部屋について次を表にしてください。
- 退去日から2026-09-30までの空室日数
- 募集開始までの日数
- 募集賃料
- 担当者メモの要約(メモに書かれたことだけ。推測を足さない)
メモが空の部屋は「メモなし」と書いてください。最後の指示が要です。理由欄に起きやすい失敗を、書き方で比べます。
空室の理由欄の書き方
理由を推測で補った例
空室が長引いているのは、周辺の競合物件が多く、需要が弱いためです。
メモの内容だけで書いた例
退去後に内見が3件ありました。うち2件のお客様が水回りの古さに触れていました。申込は入っていません。
左の文は、周辺の競合も需要も、渡した表からは言えません。右の文は、メモにある事実だけで組み立てています。オーナーが次の判断(賃料を下げる、水回りを改修する)をするには、右の書き方のほうが材料になります。
担当者メモが乏しい月は、「メモなし」のまま出させ、報告前に担当者へ確認を回します。Claudeに作らせた確認依頼の下書きを使えば、その手間も短くなります。
手順4: 修繕見積は金額・内容・承認の要否に絞る
修繕の見積書がPDFで届いている場合は、アップロードして要点を表にさせます。ヘルプは、表やフォームを含むPDFからデータを取り出してExcelにまとめる使い方を、一般的な使い方として挙げています。
添付の見積書3通から、次の項目を表にしてください。
- 工事内容(原文に近い言葉で)
- 見積金額(税込・税抜の別が書かれていれば併記)
- 工期
- 見積の有効期限
読み取れない項目は「記載なし」と書いてください。
そのうえで、受託契約に定めた「オーナー承認が必要な金額 5万円超」に
当たる工事を別に挙げてください。承認が要る金額の線は、契約ごとに違います。プロンプトに明記して判定させ、その結果は必ず担当者が契約書と見比べます。
見積書は、取引先の業者から届く外部のファイルです。ヘルプは、外部のファイルやサイトに紛れた指示によって、Claudeが意図しない動作に誘導される可能性があると警告しています。Claudeが想定外のデータにアクセスしていないか、作業を見守るよう勧めています。PDFを要約させるだけの使い方でも、出力に見積と関係のない指示めいた文が混じっていたら、そこで止めて原本を確認します。
見積金額の転記は、数字の読み違いが起きやすい工程です。PDFから取り出した金額は、見積書の原本と1件ずつ照合してから報告書に入れます。
手順5: オーナー1人分のWord報告書にする
3表の整理ができたら、報告書の形にします。ヘルプには、Excelの内容をコメントつきのWordレポートで説明させる使い方が例として載っています。1つの会話に複数のファイルを置けるので、報告書と確認事項の一覧を同時に作ることもできます。
ここまでの内容で、オーナー向けの月次報告書をWord形式で作ってください。
構成は次のとおりです。
1. 今月のまとめ(3行以内。送金額と、判断が必要なことを先に)
2. 入出金の内訳(表。項目と金額)
3. 空室の状況(表。部屋・空室日数・募集賃料と、メモの要約)
4. 修繕の状況(表。内容・金額・承認の要否)
5. 来月に向けた確認事項(オーナーに判断をお願いすることだけ)
数字は添付の表にあるものだけを使い、新しい数字を作らないでください。
入居者の個人が特定できる情報は書かないでください。できたファイルは、会話からダウンロードするか、Googleドライブに保存できます。スマートフォンのアプリでは、ダウンロードを押すとシステムのプレビューか別のアプリ(.docxならWordアプリ)で開きます。
会社のロゴや定型の書式は付きません。Wordを開いて、自社の様式に合わせて整えます。PDFで送る場合は、体裁を整えてから変換します。
数字の裏付けも取らせます。
報告書に書いた数字を1つずつ挙げ、元の3表のどの行・どの項目の
値から来たかを対応させてください。対応する行が見つからない数字が
あれば、その数字を挙げてください。対応表は、後でオーナーから問い合わせがあったときの根拠にもなります。
オーナー報告に入れてはいけないもの
オーナー報告は、事実と選択肢を伝える文書です。次の2点は、Claudeの出力にあっても報告書には入れません。
- 入居者の可否や順位付けに関する判断
- 退去や契約解除、立ち退きを進める判断
AnthropicのUsage Policyは、賃貸の申込を承認・否認・順位付けすることや、賃貸借の終了・立ち退きを始めることを、高リスクな推奨の分野に挙げています。滞納が続く部屋について、報告書に書けるのは「滞納月数」「督促の経過」「選べる対応の種類」までです。「退去手続きを進めるべき」のような判断を、Claudeに書かせて載せることはしません。条文の詳しい読み方はClaudeで入居審査をしてよいかにあります。
反響メールへの返信や内見日程の調整のように、同じ賃貸の業務でも判断を伴わないものは別の整理になります。手順は賃貸の反響メールに返信し内見日程まで調整する手順で扱っています。
Claude for Excelでやる場合の違い
Excelを開いたまま作業したい場合は、アドインのClaude for Excelという選択肢があります。ブックの中の数式を保ったまま値を変えたり、セル単位の根拠つきで質問に答えたりできます。ただし、ヘルプは次のような使い方を勧めていません。
- 人のレビューを経ない、最終的な顧客向け成果物
- 検証なしの、監査上重要な計算
- 非常に機微な、または規制対象のデータを、適切な管理なしで扱うこと
管理会社の月次報告は、オーナーに出す成果物です。どちらの方法でも、人が確認する前提で使います。
使える環境にも条件があります。マクロとVBA、データテーブルには未対応で、iPad版とAndroid版のExcelでも動きません。会話の履歴はブラウザのIndexedDBに端末内保存され、Anthropicのサーバーには保存されません。組織で設定した保存期間の設定は引き継がれず、Enterpriseの監査ログにも含まれません。社内のログ管理の方針と合うかを確認してから使います。
Excelファイルのアップロードと作成の基本はClaude Excelの読み込みと作成にまとめています。
送る前の確認項目
- 入出金の項目別合計が、管理システムの集計と一致している
- 送金額の再計算が、管理システムの金額と一致している(差があれば原因を説明できる)
- 空室の理由欄に、担当者メモにない原因が入っていない
- 修繕の金額と承認要否を、見積書と受託契約で確認した
- 報告書の数字が、すべて元の表の行に対応している
- 入居者の氏名や連絡先が、ファイルにも本文にも残っていない
- 入居者の可否判断や退去の判断が、文面に混ざっていない
- 他のオーナーの物件の数字が混ざっていない