月次報告を試算表ExcelからClaudeで作る手順 — 顧問先向けWord・PDFまで
会計ソフトから出した試算表のExcelをClaudeにアップロードし、増減の確認事項と顧問先向けコメント付きの月次報告書(Word・PDF)にする手順。プロンプト例と検算の入れ方まで扱います。
会計ソフトから出した月次試算表(Excel)と前年同月の試算表があれば、顧問先への月次報告書の下書きはClaudeで作れます。流れは「ファイルを渡す、増減の大きい科目を洗い出させる、理由の確認事項を人が埋める、顧問先向けコメントを書かせる、Word・PDFで出す」の5段です。この記事では、claude.aiの「コードの実行とファイル作成」を使ってこの5段を回す手順を、プロンプト例つきで示します。
会計ソフトとMCPで直接つなぐ方法はfreee会計との連携とマネーフォワード クラウド会計との連携にあります。ここで扱うのは、書き出したExcelを手でアップロードする経路です。連携の設定が要らない代わりに、数字はすべてファイル経由で渡ります。
先に決めるのは、Claudeに任せる範囲
月次報告は、数字の集計、増減の発見、理由の説明、顧問先への伝え方の4つに分けられます。Claudeが得意なのは前の2つと、最後の文章化です。理由の説明だけは、取引の中身を知る人にしか書けません。
| 工程 | 任せ方 | 人が確かめること |
|---|---|---|
| 前年・前月との比較表づくり | 任せ方そのまま任せられる | 人が確かめること合計と元の試算表の一致 |
| 増減の大きい科目の抽出 | 任せ方基準を指定して任せる | 人が確かめること基準から漏れた科目がないか |
| 増減理由 | 任せ方仮説と確認事項の列挙まで | 人が確かめること実際の理由は事務所側で確認 |
| 顧問先向けコメント | 任せ方下書きを任せる | 人が確かめること事実と言い回しの最終確認 |
増減理由を「それらしく」書かせると、取引を見ていないのに原因を断定した文章が出てきます。理由欄は、確認事項の質問に変えさせるのが安全です。後の手順で、そのプロンプトを示します。
守秘義務の面では、顧問先の数字を外部サービスに渡すこと自体を先に整理しておく必要があります。プランごとのデータの扱いと匿名化は税理士のClaude利用と守秘義務が詳しいので、ファイルを渡す前に目を通してください。
使う前に確認する設定とプラン
ファイルの作成と編集は、claude.aiの「Code execution and file creation」(コードの実行とファイル作成)という機能です。公式ヘルプによると、Free・Pro・Max・Team・Enterpriseの全プランで、Web・デスクトップ・モバイルから使えます。
| プラン | 既定の状態 | 切り替える場所 |
|---|---|---|
| Free・Pro・Max | 既定の状態設定のCapabilitiesでオンにする | 切り替える場所自分の設定 |
| Team | 既定の状態組織単位で有効(オーナーが無効化できる) | 切り替える場所組織オーナーが設定 |
| Enterprise | 既定の状態組織単位で有効(オーナーが無効化できる) | 切り替える場所組織オーナーが設定 |
チームで使う事務所は、組織オーナーがオフにしていないかを先に確かめます。XLSXをアップロードするにもこの機能が必要です。オフのままだと、Excelの試算表は読み込めません。
ファイルの大きさと数にも上限があります。チャットへのアップロードは1ファイル500MBまで、1チャット20ファイルまでです。プロジェクトに置くファイルは1ファイル30MBまで、数は無制限ですが、全体がコンテキストウィンドウに収まる必要があります。ファイル作成の説明ページには、アップロードとダウンロードの上限を1ファイル30MBとする記載もあります。月次試算表の1ファイルなら、どちらの上限にも収まる大きさです。
なお、ファイルを作る処理は通常のチャットより利用枠を多く消費します。月末の報告期間に複数の顧問先を続けて処理するなら、枠の減り方に注意してください。
手順1: 試算表を出力してアップロードする
会計ソフトから、当月の月次試算表を前年同月と並べてExcelで出力します。必要なのは次の3つです。
- 当月の試算表(科目別の借方・貸方・残高)
- 前年同月または前月の試算表
- 顧問先の業種や決算月がわかるメモ(任意)
Excelを開いて、シートが1枚に連続した表になっているかを確かめます。小計行や空行、結合セルが混ざっていると、科目の読み違いが起きやすくなります。取り込みで困るのは、会計ソフトによって列の並びが違う点です。事務所の標準フォーマットを1つ決めておくと、毎月同じプロンプトで回せます。
顧問先名、取引先名、個人名は、渡す前に仮名へ置き換えます。「A社」「取引先1」のような置き換えで足ります。月次報告で必要なのは科目と金額の動きであり、固有名詞は報告書を整える段階で戻せます。
アップロードしたら、最初のプロンプトで読み取りの確認を取ります。
添付は、ある小売業の2026年9月の月次試算表(今期)と、2025年9月の
月次試算表(前年同月)です。
まず次の3点だけ答えてください。分析はまだ始めないでください。
1. 各ファイルのシート名と、科目の行数
2. 貸借の合計(借方合計と貸方合計)が一致しているか
3. 読み取れなかった行・セルがあれば、その位置貸借の合計が一致しているかを最初に聞くのがコツです。ここで一致しなければ、読み取りの段階で欠落があるか、元データに問題があります。分析に進む前に止められます。
手順2: 増減の大きい科目を、基準を決めて洗い出す
次に、前年との増減を計算させ、確認が必要な科目を抽出します。基準は人が決めて渡します。
前年同月との増減額と増減率を科目ごとに計算し、表にしてください。
そのうえで、次のどれかに当てはまる科目を「要確認」として抜き出して
ください。
- 増減額の絶対値が50万円以上
- 増減率の絶対値が30%以上で、かつ前年の金額が10万円以上
抜き出した表には、計算式がわかる形で前年・今期・増減額・増減率を
並べてください。基準に当てはまらなかった科目の数も最後に書いて
ください。基準の数字は例です。顧問先の規模に合わせて変えます。金額と率の両方で絞るのは、小さな科目が率だけで大きく見えるのを避けるためです。前年が10万円未満の科目まで拾うと、増減率が数百%になる科目が並び、読む人の注意が散ります。
この基準の考え方は、予算と実績の対比でも同じ型です。しきい値の決め方を数値例つきで知りたい場合は、月次予実対比レポートの差異分析を参照してください。
出てきた表は、必ず元のExcelと突き合わせます。確かめる箇所は次の3点です。
- 抽出された科目の金額が、元の試算表の数字と一致しているか
- 増減率の計算が、(今期−前年)÷前年になっているか
- 基準を満たしているのに、表から漏れた科目がないか
3つ目は、人が拾いにくいところです。最初のプロンプトで「基準に当てはまらなかった科目の数」を書かせたのは、抽出の母数を確認するためです。科目数と照合すれば、漏れの有無が見えます。
手順3: 増減理由は「確認事項」として出させる
要確認の科目ごとに、増減の理由をClaudeに推測させたくなります。ただ、Claudeは取引の中身を見ていません。理由は断定させず、担当者が顧問先へ確認する質問と、考えられる仮説の候補を出させます。
「要確認」の各科目について、次の形で整理してください。
- 科目名と増減の内容(金額と率)
- 試算表の数字だけから言えること
- 考えられる原因の仮説(2〜3個。断定しない)
- 顧問先に確認する質問(具体的に。例:「9月に大口の仕入はありましたか」)
理由が試算表だけでは判断できない場合は、「判断できない」と
書いてください。出力は次のような形になります。以下は、この指示に対して返ってくる内容の一例であり、実際の出力は元データによって変わります。
仕入高: 前年比+120万円(+35%)。売上高は+8%にとどまり、仕入が売上より大きく増えている。仮説は「仕入単価の上昇」「期末前の在庫積み増し」「前月分の計上ずれ」。顧問先への質問は「9月に仕入先の価格改定はありましたか」「在庫は前年より増えていますか」。
このように、売上の増減率と並べて「ずれ」を見せる使い方が、試算表の分析ではよく効きます。仕入高が35%増えても、売上が同じだけ増えていれば自然です。差が開いているときだけ、理由の確認が要ります。
確認事項は、そのまま事務所内のチェックリストに回せます。顧問先への電話やチャットで聞く質問の下書きとしても使えます。回答が戻ったら、理由欄をその回答で更新し、次の手順で報告書に反映します。
手順4: 顧問先向けのコメントを書かせる
顧問先に渡す文章は、会計の用語を使いすぎないことが条件になります。社長が読んで次の判断ができる言葉に直させます。
以下は、顧問先から回答があった増減理由です。
- 仕入高: 主力商品の仕入先が9月に価格改定。単価が約1割上昇
- 広告宣伝費: 秋の販促キャンペーンを前倒しで実施
これらを踏まえて、社長宛ての月次報告コメントを作成してください。
条件は次のとおりです。
- 400字以内
- 最初に「今月の結論」を1文で書く
- 専門用語には短い言い換えを添える
- 数字は試算表にあるものだけを使い、新しい数字を作らない
- 税務の判断や将来予測は書かない最後の2つの条件が重要です。数字は試算表にあるものだけに限ると、勝手な計算結果が混ざるのを防げます。税務判断を書かせないのは、報告書の位置づけを「数字の動きの共有」にとどめるためです。税務書類や決算資料をどこまで任せられるかは、Claudeに決算資料・税務書類の作成をどこまで任せてよいかで整理しています。
コメントを書かせた後は、1回で終わらせず、2回目に事実だけを検証させます。
いま作ったコメントの数字を1つずつ抜き出し、試算表のどのセルの値か
を対応させてください。対応するセルが見つからない数字があれば、
その数字を挙げてください。これで、コメントの数字が元ファイルのどこから来たかが確認できます。対応表も事務所内の記録として残せます。
手順5: Word・PDFの報告書にして出力する
コメントが固まったら、報告書の形にします。Claudeは、Word(.docx)、PDF、Excel(.xlsx)、PowerPoint(.pptx)を作れます。公式ヘルプには「Explain this Excel spreadsheet in a Word report with commentary」(このExcelを、解説付きのWordレポートで説明して)という使い方の例があります。試算表を渡して、解説付きのWordを出す流れは、公式が想定している使い方です。
これまでの内容をもとに、顧問先向けの月次報告書をWord形式で作成
してください。構成は次のとおりです。
1. 今月の結論(社長宛てコメント)
2. 前年同月との比較表(主要科目のみ。増減額と増減率つき)
3. 確認した増減の理由(科目ごとに2〜3行)
4. 来月に向けた確認事項(あれば)
表は罫線付きで、金額は3桁区切り、単位は円にしてください。生成されたファイルは、会話からダウンロードするか、Googleドライブに保存できます。事務所のロゴやレイアウトは、ここでは付きません。Wordを開いて、事務所の様式に合わせて整えます。PDFにしたいときは、Wordで体裁を整えてから出力するのが確実です。
一度作った報告書は、会話の中で直せます。「比較表の科目を売上高、仕入高、人件費の3つに絞って」のように指示すれば、同じ会話内でファイルを作り直せます。1つの会話に複数のファイルを置けるので、同じ顧問先の報告書と確認事項リストを同時に作ることもできます。
毎月の運用に載せるときの注意点
毎月同じプロンプトで回す
手順1〜5のプロンプトは、そのまま事務所の標準テキストとして保存できます。固定するのは「基準」「出力の構成」「禁止事項」の3つです。顧問先ごとに変えるのは、業種のメモと基準の金額だけで足ります。
顧問先ごとにProjectsを分けると、その顧問先に関する前提(業種、決算月、過去の指摘)を会話ごとに入れ直さずに済みます。Projectsの扱いは、守秘義務の記事の「顧問先ごとにProjectsを分ける」の節に詳しく書かれています。
Claude for Excelとの使い分け
Excelの中で作業を進めたい場合は、アドインのClaude for Excelという選択肢があります。ファイルを手でアップロードする方法と違い、Excelを開いたまま、ブックの中でClaudeと作業を進められます。ただし、公式ヘルプはClaude for Excelを「人の確認なしの最終的な顧客向け成果物」「検証なしの監査上重要な計算」には勧めないと書いています。顧問先に出す報告書は、どちらの方法でも人が確認する前提です。
Claude for Excelの場合、会話履歴はブラウザのIndexedDBにローカル保存され、Anthropicのサーバーには保存されません。組織で設定した保持期間は引き継がれず、Enterpriseの監査ログにも含まれないと説明されています。この点は、事務所のログ管理方針と合うかを確認してください。Excel上の使い方はClaude Excelの読み込みと作成にもあります。
公開前に確認する項目
- 貸借の合計が、元の試算表と一致している
- 比較表の金額が、元ファイルと突き合わせ済み
- コメントの数字が、すべて試算表のセルに対応している
- 理由は顧問先の回答に基づき、推測のままの記述がない
- 仮名で渡した固有名詞を、元に戻している
- 税務の判断や将来予測が混ざっていない
作業が詰まったときの切り分け
| 症状 | 考えられる原因 | 対処 |
|---|---|---|
| Excelをアップロードできない | 考えられる原因ファイル作成の機能がオフ | 対処設定のCapabilitiesか、組織オーナーに確認 |
| 貸借が合わない | 考えられる原因小計行や結合セルの混在 | 対処表を1枚の連続した形に整えて再アップロード |
| 数字が元と違う | 考えられる原因読み取りの欠落、列の取り違え | 対処手順1の確認プロンプトに戻る |
| 会話が長くなり精度が落ちる | 考えられる原因コンテキストが大きくなりすぎた | 対処顧問先ごと、月ごとに会話を分ける |
PDF以外の文書は、Claudeが文字だけを抽出し、埋め込まれた画像は読めないと公式ヘルプに書かれています。試算表の中に画像として貼り付けた表や図があるなら、数字を文字で書き出したうえで渡します。色で強調した箇所も、プロンプトで言葉にして伝えると確実です。
まとめ
試算表のExcelから月次報告書を作る手順の核は、Claudeに「集計と文章化」を、人に「理由の確認と最終判断」を割り振ることです。理由欄を確認事項の質問に変えれば、推測の混入を避けつつ、顧問先との会話のきっかけも作れます。まず1社の前月分で試し、貸借の一致と数字の対応表が毎回取れるかを見てから、他の顧問先へ広げるのが手堅い進め方です。