Claude in Excelで管理図と工程能力Cpkを作る手順 — 検算付き
Claude for Excelに測定値から平均・R・管理限界・Cpkを式で出させ、人が別経路で検算する手順です。20組×5個の例題で、合わせるべき数値も示します。
管理図とCpkは「Claudeが式を書き、人が検算する」分担で作る
測定値の表から管理図の限界線と工程能力指数(Cpk)を出す作業は、Claude for Excelに任せられます。ただし、数値をそのまま製造記録に残してよいわけではありません。公式のヘルプは、監査が絡む計算を検証なしで使うことと、人のレビューなしで最終成果物にすることを推奨しない用途に挙げています。
この記事の分担は単純です。Claudeには、セルに入る式を組ませます。人は、その式とは別の経路で同じ数値を再計算して突き合わせます。式がセルに残るので、値だけを貼り付けるやり方より検算しやすくなります。
呼称についてひとこと。検索では「Claude in Excel」と書かれることが多いものの、ヘルプ上の名称はClaude for Excelです。以降はこの名前で書きます。
- 管理図: 工程が安定しているかを、時間順に並べた点と限界線で見る図
- 工程能力指数(Cpk): 規格の幅に対して、平均の偏りも含めて工程がどれだけ余裕を持って収まるかを表す数
先に決める3つの前提
Claudeに頼む前に、次の3点を人が決めておきます。ここが曖昧だと、式は正しくても意味のない数値が出ます。
- サブグループ: 何個を1組として測るか。例題は5個を1組にして20組とります
- 規格: 上限規格(USL)と下限規格(LSL)。例題は10.00 ± 0.30、つまり9.70〜10.30です
- 管理図の種類: 例題はX̄-R管理図(組ごとの平均と範囲を並べる図)です
シートの配置は次のとおりです。配置を先に伝えておくと、Claudeが式を入れる範囲がぶれません。
| 列 | 内容 | 2行目の式 |
|---|---|---|
| A | 内容組番号 | 2行目の式1, 2, 3 … |
| B〜F | 内容測定値x1〜x5 | 2行目の式入力値 |
| G | 内容組の平均X̄ | 2行目の式=AVERAGE(B2:F2) |
| H | 内容組の範囲R | 2行目の式=MAX(B2:F2)-MIN(B2:F2) |
データは2〜21行目に入ります。要約値は、J列以降に置く想定にします。
例題の測定値(20組×5個)
組 x1 x2 x3 x4 x5
1 10.00 10.06 10.00 10.00 9.95
2 10.01 10.10 10.05 10.09 10.04
3 10.05 10.03 9.90 10.08 10.06
4 10.05 9.90 9.90 9.96 9.99
5 10.04 10.02 10.06 9.98 10.04
6 10.05 9.97 10.14 10.06 10.10
7 9.98 9.97 10.00 10.01 10.06
8 10.04 9.99 9.95 9.98 10.11
9 9.96 10.04 10.05 9.92 10.02
10 10.11 9.88 10.00 10.01 9.96
11 10.05 10.02 9.92 10.08 10.07
12 10.09 10.12 10.05 10.03 9.93
13 10.06 9.98 9.99 9.93 9.95
14 10.14 10.27 10.04 10.08 10.20
15 10.12 10.06 9.89 9.84 10.05
16 9.97 9.94 10.09 10.10 10.03
17 10.04 10.05 10.13 10.06 10.06
18 10.06 9.91 10.11 10.09 10.06
19 9.88 9.98 10.08 9.89 10.01
20 10.09 9.93 10.13 10.06 10.01この数値は説明用に作った架空のデータです。14組目だけ、意図的に全体を押し上げてあります。
X̄-R管理図の限界線を式で出す
Claudeへの依頼文
アドインのサイドバーで、範囲と目的を具体的に伝えます。
A1:H21 は、5個1組・20組の測定値と、組ごとの平均(G列)・範囲(H列)です。
X̄-R管理図の中心線と管理限界を J1:K8 に式で出してください。
サブグループサイズ n=5 の係数 A2=0.577、D3=0、D4=2.115 を使い、
係数は別セルに置いて参照してください。値の貼り付けはせず、式で入れてください。係数を別セルに置かせるのは、検算のためです。後で係数の値だけを見直せば、限界線がどう動くかが追えます。
入るはずの式
n=5の係数はNISTの表にあり、A2は0.577、D3は0、D4は2.115です。限界線は次の式で決まります。
| 項目 | 式 |
|---|---|
| X̄管理図の中心線(X̄̄) | 式=AVERAGE(G2:G21) |
| R管理図の中心線(R̄) | 式=AVERAGE(H2:H21) |
| X̄の上方管理限界 | 式X̄̄ + A2 × R̄ |
| X̄の下方管理限界 | 式X̄̄ − A2 × R̄ |
| Rの上方管理限界 | 式D4 × R̄ |
| Rの下方管理限界 | 式D3 × R̄ |
NISTは、サンプルサイズが小さいうちは範囲を使う方法で十分としつつ、10前後より大きくなるなら組ごとの標準偏差を使うほうがよいとしています。1組の個数が10を超える測定計画では、R管理図ではなくs管理図を選びます。
工程能力Cpkを式で出す
Cpkの定義は、上側と下側の余裕を比べて小さいほうを取る形です。標本からの推定では、平均を全測定値の平均、σを全測定値の標準偏差sで置き換えます。
Cpk = MIN( (USL − 平均) / (3s), (平均 − LSL) / (3s) )Claudeへの依頼文
USL=10.30、LSL=9.70 を K10 と K11 に入力値として置いてください。
B2:F21 の全100個から、平均・標準偏差(STDEV.S)・Cp・Cpk を K13:K16 に式で出してください。
Cpk は上側と下側の値も別セルに出して、小さいほうを採用してください。上側・下側を別セルに出させると、どちらの規格が工程を制約しているかも読み取れます。例題は上側が制約です。
使う前提を人が確認する
NISTは、Cpkなどの指数は管理状態にある工程の出力を規格と比べるものだと説明しています。つまり、管理図で異常点が出た組を放置したまま出したCpkには、意味がありません。
加えて、次の2点が前提です。
- データが正規分布に従うと仮定していること
- サンプルは、おおむね50個以上の独立した測定値があって初めて推定が安定するとされること
例題の100個は後者を満たします。現場のデータが50個に届かないなら、Cpkの数値には幅があると見て扱います。
Claudeの計算を検算する4つの方法
検算は「同じ式をもう一度Claudeに書かせる」では成立しません。次のように、経路を変えます。
| 方法 | やること | 見つかるミス |
|---|---|---|
| 式を読む | やることセルを選び、式の参照範囲がB2:F21など意図どおりかを見る | 見つかるミス範囲のずれ、行の取りこぼし |
| 別の式で再計算 | やることCpkを Cp×(1−k) でも出して一致を見る | 見つかるミス上側・下側の取り違え |
| 電卓・別ツール | やること1組分のX̄とRを手計算し、G・H列と照合 | 見つかるミス関数の選び間違い |
| 点の判定 | やることX̄とRが限界の外にある組を COUNTIF で数え、図と見比べる | 見つかるミス限界線の符号ミス |
表の「別の式」にあるkは、規格の中央と平均のずれを規格幅の半分で割った値です。NISTはこの形でも表せるとしています。
k = ABS((USL+LSL)/2 − 平均) / ((USL−LSL)/2)
Cp×(1−k) が Cpk と一致するか一致しないときは、どちらかの式が間違っています。Claudeに「差が出る原因をセルをたどって説明して」と頼むと、参照先をクリックで追える形で答えが返ります。公式のヘルプによると、回答にはクリックしてそのセルに飛べるセル単位の引用が付きます。
例題で合わせる数値
手元のシートがうまく組めたかは、次の値で確かめられます(小数は丸めています)。
| 項目 | 20組すべて | 14組目を除く19組 |
|---|---|---|
| X̄̄(中心線) | 20組すべて10.0244 | 14組目を除く19組10.0180 |
| R̄ | 20組すべて0.1615 | 14組目を除く19組0.1579 |
| X̄の管理限界 | 20組すべて9.9312 〜 10.1176 | 14組目を除く19組9.9269 〜 10.1091 |
| Rの上方管理限界 | 20組すべて0.3416 | 14組目を除く19組0.3339 |
| 標準偏差s | 20組すべて0.0738 | 14組目を除く19組0.0674 |
| Cp | 20組すべて1.355 | 14組目を除く19組1.484 |
| Cpk | 20組すべて1.245 | 14組目を除く19組1.394 |
CpとCpkの差も読みどころです。例題の20組すべてではCpが1.355、Cpkが1.245で、差は平均が規格の中央(10.00)から上側へ0.0244寄っている分です。ばらつきを小さくする前に、平均を中央へ戻す調整で改善できる余地があると分かります。
20組すべてで見ると、14組目のX̄が10.146で、上方管理限界の10.1176を超えます。この1組が工程の外れた状態を示しています。
次の手順になります。
- 14組目を測った時刻の記録を調べ、原因(材料ロット、治具、段取りなど)を特定する
- 原因が特定でき、再発を防げた場合に限り、その組を除いて限界線を計算し直す
- 除外後のデータで、残りのすべての組が新しい限界の内側にあることを確かめる
例題では、除外後も全組が限界内に収まります。原因を調べずに点を捨てるのは、Cpkを良く見せる操作になってしまうので避けます。
σの取り方を変えるとCpkはどう動くか
例題のCpkは、全100個をひとまとめにした標準偏差sで出しました。この数え方は「長期のばらつき」を含みます。組内のばらつきだけを見る流儀もあり、NISTはR̄をd2で割る推定量を示しています。d2はサンプルサイズnで決まる係数です。
組内のσは、組ごとの範囲Rから出すため、組と組の間の平均のずれを含みません。同じデータでも、全体のsを使うとCpkは小さく、組内σ(R̄/d2)を使うとCpkは大きく出る傾向があります。例題ではn=5のd2が2.326なので、R̄/d2≈0.0694で、s=0.0738より小さくなります。どちらを使うかは、取引先や社内標準の定義で決まります。
依頼文に「σは全測定値のSTDEV.Sを使う」と一行で書いておけば、Claudeが別の定義に寄せる余地を消せます。報告書にも、どちらの定義かを注記します。
式が崩れるつまずきと確認の勘所
実データで多いのは、次の4つです。
- 範囲の端がずれる: 21行目までのはずが22行目まで、または20行目までになっていないかを、式の参照範囲で確かめる。1行ずれるだけで、平均もsも変わる
- 組ごとに個数が違う: B〜Fの途中が空欄の組があると、Rの式はその組で別の個数を前提にする。X̄-R管理図は、1組の個数をそろえる前提で係数を選ぶ
- 片側規格: 上限だけ、または下限だけの規格では、Cpkはその側の値だけになる。依頼文で「規格は上限のみ」と明記する
- 母集団の標準偏差との取り違え:
STDEV.PではなくSTDEV.Sを使う。NISTの標本推定式は後者に対応する
#DIV/0! などのエラーが出たときは、「J14のエラーの原因をたどって」と頼めます。ヘルプは、エラーの根本原因の特定をClaudeの機能に挙げています。
繰り返し使うなら固定の指示に書いておく
毎月同じ形で管理図を更新するなら、サイドバーの設定にあるInstructionsに前提を書いておくと、会話のたびに説明し直さずに済みます。この指示はExcelだけに効き、PowerPointやWordの指示とは別です。
管理図の係数は別セルに置き、式で参照する。
標準偏差は STDEV.S を使う。
Cpk は小数第3位まで表示し、上側・下側の値も併記する。
既存セルの上書きは、先に対象範囲を示して確認を取る。アドインは、既存データを上書きする前に警告を出します。それでも、指示にも書いておけば確認の粒度を自分で決められます。
図を描く段階と、Claudeに任せない範囲
ヘルプが挙げるネイティブ操作は、並べ替え、フィルター、ピボットテーブルの編集、条件付き書式、データ検証のドロップダウンです。折れ線グラフの作成は、この一覧には載っていません。管理図は、Excelの折れ線グラフで次の4系列を重ねて描くのが一般的です。
- 各組のX̄(または各組のR)
- 中心線
- 上方管理限界
- 下方管理限界
系列の範囲をどう取るか迷うときは、Claudeに相談できます。実際の挿入は、Excelの挿入メニューで人が行うほうが確実です。
次の制約も、作業の前に押さえておきます。
- マクロ・VBA操作とデータテーブルは、アドインの対応外です。毎回の更新を自動化したい場合は、式を並べたシートで完結させるか、別の手段を検討します
- 外部から受け取ったファイルには、Claudeを誤操作に誘導する隠れた指示が入っている可能性があります。取引先の測定ファイルは、信頼できるコピーを作ってから渡します
- データの保存: 入出力はバックエンドで30日以内に削除され、会話履歴はブラウザ内にローカル保存されます。測定データに取引先の機密が含まれる場合は、社内の取り扱い規則と照らして可否を決めます
- Excel 2016・2019のパッケージ版、iPad、Androidのアプリでは動きません。Windowsは対応ビルドのMicrosoft 365が必要です
数式の書かせ方はClaude Excel関数の書き方に、アップロードからの作成はClaude Excel読み込みと作成にまとめています。数式の保持や監査要件でツールを選ぶ観点は、Claude for ExcelとCopilotの比較にあります。
まとめ
管理図とCpkは、式がセルに残るClaude for Excelと相性が良い作業です。一方で、数値の責任は人に残ります。係数を別セルに出させ、Cpkを別の式で再計算し、外れ点は原因を調べてから除外する。この3点を守れば、Claudeの出力を製造記録に使える状態へ近づけられます。
最初の1回は、この記事の例題で自分のシートの数値が表と一致するかを確かめてから、実データに切り替えます。