Claude Media
抜取検査のAQL合否をClaude for Excelで組んで検算する手順

抜取検査のAQL合否をClaude for Excelで組んで検算する手順

ロットサイズからサンプルサイズ文字、Ac/Reを引き当てて合否を出す表をClaude for Excelに組ませ、境界値と表の引き違いを人が検算する手順です。練習用の架空表つき。

合否判定の式はClaudeが組み、AQL表の中身は人が突き合わせる

抜取検査の合否は、ロットサイズからサンプルサイズ文字を決め、その文字の行から合格判定個数(Ac)と不合格判定個数(Re)を引き、見つかった不適合品の数と比べて決まります。JIS Z 9015-1の規格名は 計数値検査に対する抜取検査手順-第1部:ロットごとの検査に対するAQL指標型の… と続く題名で、ロットごとの検査にAQLを指標として使う方式を扱います。この流れをExcelの引き当て式にして、ロットを並べるだけで合否が出る表にできます。

Claude for Excelに向く作業は、この引き当て式を組み、境界値のテストを回すところです。向かないのは、表の数値そのものをClaudeの記憶や推測に任せることです。公式のドキュメントは、検証なしの監査上重要な計算と、人のレビューなしの最終成果物を、推奨しない用途に挙げています。

だから分担は次のとおりです。

  • 規格票の表を見て、数値を入力するのは人
  • 表を引く式と、合否の判定式を組むのはClaude
  • 境界値のテストと、表の引き違いの検算をするのは人とClaude

この記事では、規格の表の数値は載せません。練習用に作った架空の小さな表で、式の組み方と検算の型を示します。実運用では、手元の規格票の値に差し替えてください。

規格票の入手と、表を入れる前の準備

JIS規格は、JISCのウェブサイトで閲覧できます。トップページの「データベース検索」から「JIS検索」に進み、規格番号にZ9015-1と半角で入力して一覧表示すると、JISリストに該当の規格が出ます。規格の内容は、規格詳細画面でPDFとして見られます。

表をExcelに写す前に、次の3点を決めておきます。

  1. 検査水準: ロットサイズからサンプルサイズ文字を引くときの列です。手元の表のどれを使うかを入力セルにします
  2. AQLの値: Ac/Reは、AQLの値ごとに別の列にあります。AQLを入力セルにして、列を選べるようにします
  3. 検査の厳しさ: なみ検査・きつい検査・ゆるい検査で、別の表になります。この記事は1つの表だけを扱います

3つとも、式の中に数値として埋め込まず、入力セルに置きます。切り替えたときに、どのセルが動くかが見えるからです。

シートの配置を先に決める

配置を先に伝えると、Claudeが式を入れる範囲がぶれません。シートは3枚にします。

シート範囲内容
区分範囲A列・B列内容ロットサイズの下限、サンプルサイズ文字
計画範囲A列〜D列内容文字、サンプルサイズn、Ac、Re
判定範囲A列〜H列内容ロット番号、ロットサイズ、不適合品数、引き当て結果

練習用の架空の表は次の値です。区分シートの下限は、ロットサイズがこの値以上のときに、右の文字になるという意味です。

区分A列(下限)区分B列(文字)
2区分B列(文字)A
16区分B列(文字)B
51区分B列(文字)C
151区分B列(文字)D
501区分B列(文字)E
計画A列(文字)計画B列(n)計画C列(Ac)計画D列(Re)
A計画B列(n)2計画C列(Ac)0計画D列(Re)1
B計画B列(n)8計画C列(Ac)0計画D列(Re)1
C計画B列(n)13計画C列(Ac)1計画D列(Re)2
D計画B列(n)32計画C列(Ac)2計画D列(Re)3
E計画B列(n)50計画C列(Ac)3計画D列(Re)4

実際の規格の表は、行も列もずっと多くなります。ただ、構造は同じです。ロットサイズの範囲から文字、文字から数値という2段の引き当てになります。

Claudeへの依頼文

アドインのサイドバーで、範囲と目的を具体的に伝えます。

「区分」シートの A2:B6 は、ロットサイズの下限とサンプルサイズ文字です。
「計画」シートの A2:D6 は、文字ごとの n、Ac、Re です。
「判定」シートの A2:C8 に、ロット番号・ロットサイズ・見つかった不適合品数があります。
D列に文字、E列に n、F列に Ac、G列に Re、H列に合否を、2行目から式で入れてください。
D列はロットサイズ以下で最大の下限を探す引き当てにしてください。
H列は C ≦ Ac なら「合格」、C ≧ Re なら「不合格」、それ以外は「要確認」にしてください。
値の貼り付けはせず、すべて式で入れてください。

「それ以外は要確認」を入れさせるのが要点です。AcとReの間に隙間がある表の行や、表を写し間違えた行は、合格にも不合格にも倒れず、目に見える形で残ります。

入るはずの式

Claudeが組む式の一例は、次のとおりです。XLOOKUPは、Excel on the webとMicrosoft 365の現行ビルドで使えます。

D2: =XLOOKUP(B2, 区分!$A$2:$A$6, 区分!$B$2:$B$6, "範囲外", -1)
E2: =XLOOKUP(D2, 計画!$A$2:$A$6, 計画!$B$2:$B$6, "未登録")
F2: =XLOOKUP(D2, 計画!$A$2:$A$6, 計画!$C$2:$C$6, "未登録")
G2: =XLOOKUP(D2, 計画!$A$2:$A$6, 計画!$D$2:$D$6, "未登録")
H2: =IF(ISNUMBER(F2), IF(C2<=F2, "合格", IF(C2>=G2, "不合格", "要確認")), "引き当て不可")

XLOOKUPの第5引数の -1は、完全一致がなければ次に小さい値を返す指定です。ロットサイズの範囲の引き当てに、この指定を使っています。区分シートの下限が昇順に並んでいる必要は、この指定にはありません。ただ、人が表を読むときのために昇順で置きます。

Claudeが別の関数(INDEXとMATCHの組み合わせなど)で組んできても、問題ありません。同じ入力で同じ結果が出るかで確かめるからです。

境界値で検算する

式が合っているかは、区分の境界の前後で確かめます。練習用の表なら、次の入力と結果になるはずです。

ロットサイズ不適合品数文字nAcRe合否
15不適合品数0文字An2Ac0Re1合否合格
16不適合品数1文字Bn8Ac0Re1合否不合格
50不適合品数0文字Bn8Ac0Re1合否合格
51不適合品数1文字Cn13Ac1Re2合否合格
150不適合品数2文字Cn13Ac1Re2合否不合格
151不適合品数2文字Dn32Ac2Re3合否合格
500不適合品数3文字Dn32Ac2Re3合否不合格
501不適合品数3文字En50Ac3Re4合否合格

境界の前後を必ず1組ずつ入れるのが検算の型です。15と16、50と51、150と151、500と501で文字が切り替わらなければ、引き当ての向きが逆になっています。

もう2つ、区分の外側も試します。

  • ロットサイズが1のとき、下限の2より小さいので「範囲外」になり、合否は「引き当て不可」になるはずです
  • 文字を計画シートから消したとき、E〜G列が「未登録」になり、合否が「引き当て不可」になるはずです

エラー値(#N/A)をそのまま表に出さず、文字で出させているのは、後から見て何が起きたか分かるようにするためです。

表の引き違いを検算する

式が合っていても、表の数値を写し間違えると、すべての合否が静かにずれます。引き違いは、次の3つの方法で探します。

行ごとの整合を式で調べる

計画シートのE列に、行ごとの整合を調べる式を置きます。手元の表で成り立つ規則だけを、式にしてください。練習用の表では、次のように置けます。

Claudeには、次のように頼みます。

「計画」シートの E 列に、行ごとの整合を式で入れてください。
条件は、Re が Ac+1 であること、n が前の行以上であること、Ac が前の行以上であることです。
2行目は前の行がないので、Re = Ac+1 だけを調べてください。
満たす行は「OK」、満たさない行は「要確認」にしてください。

前の行と比べる条件は、サンプルサイズが大きい文字ほど判定個数が増えるという表の並びを前提にしています。手元の表がその並びでなければ、条件を外します。規則を決めるのは人です。Claudeに規則まで考えさせると、表の写し間違いを規則に合わせて直してしまうことがあります。

二人で別々に入力して差分を取る

入力した人が見直しても、同じ思い込みで同じ場所を見落とします。別の人にもう一枚の計画シートを入力してもらい、2枚の差分を式で取るほうが確実です。

「計画」と「計画2」の A2:D6 を比べて、F2:I6 に差があるセルだけ「差異」、同じなら空欄にしてください。

差異が出たセルだけを、規格票の紙面で見直します。

規格票の行を指で追って読み合わせる

最後は、人の目です。画面の表と規格票のPDFを並べ、文字ごとにn、Ac、Reを声に出して読み合わせます。表の中に、別の行の値を使うよう指示する記号があれば、その行は手元の規格票で確かめます。ここは式で検算できません。

つまずきやすい4か所

サンプルサイズがロットサイズを超える

小さいロットでは、表のnがロットサイズ以上になる行が出ることがあります。練習用の表では、文字Aの下限2に対してnも2で、ちょうど等しい作りです。判定シートに「n≦ロットサイズ」を調べる列を足して、外れた行を「要確認」にしておくと、その行だけ別の扱い(全数の検査など)を手元の規格で確かめるきっかけになります。

見つけた数を数える対象

C列に入れるのは、不適合品の個数なのか、不適合の個数なのかで、判定の意味が変わります。どちらで数える表を使うかは、検査規格と手元の表の見出しで決まります。Claudeに「不適合の数」とだけ伝えると、列の見出しが曖昧なまま式が進みます。入力列の見出しには、数える対象を日本語でそのまま書いておきます。

AQLの列を切り替えたときの取りこぼし

AQLの値を変える運用では、計画シートのC列とD列を別の列に差し替えることになります。差し替え後に、さきほどの境界値の表をもう一度回します。AQLを変えても文字の引き当て(D列)は動かないので、動くのはE〜H列だけのはずです。D列が変わっていたら、式の参照が崩れています。

同じ入力を二度回して結果を比べる

Claudeに式を直させたあとは、直す前と同じ境界値の入力を回して、合否が1行も変わらないことを確かめます。変わった行があれば、直した理由と一致しているかを見ます。直したのに変わらない行や、直していないのに変わった行が、見落としの在りかです。

運用で気をつけること

アドインのサイドバーにある設定のInstructions欄には、Excelの全会話に効く指示を書けます。「表の数値は私が入力した値だけを使い、規格の値を補わない」「引き当てに失敗したら推測せず、その行を要確認にする」と書いておくと、依頼文を毎回繰り返さずに済みます。この指示はExcel専用で、PowerPointやWordの指示とは別に保たれます。

Claude for Excelは、数値を変えるときに数式の関係を保ち、既存のデータを上書きする前に警告します。引き当て式は、他のセルを参照して成り立つので、この性質が効きます。一方で、公式のドキュメントには次の制約があります。

  • データテーブルとマクロ、VBAの操作は未対応です
  • 外部から入手したファイルには、隠された指示が含まれうるため、信頼できるスプレッドシートだけで使うよう求めています
  • Excel 2016と2019の永続版、iPad、Androidでは動きません

取引先から受け取った検査記録のファイルをそのまま開いてClaudeに読ませるのは避け、必要な列だけを自分のシートに写して使います。

また、結果を検査記録として残す場合は、式を残したまま、境界値の検算の結果を別のシートに添えておくと、後から見た人が式の信頼性を確かめられます。引き当て式の正しさを示すのは、境界値の前後で期待どおりに切り替わったという事実です。

まとめ

抜取検査の合否の表では、式の正しさと表の数値の正しさを、別々の方法で確かめます。式は境界値の前後で、数値は二重入力の差分と読み合わせで確かめます。Claudeに任せるのは前者の式の組み立てまでで、表の中身は人が責任を持ちます。

同じ型は、他の検算にも使えます。式を組ませて人が別経路で再計算する流れは、管理図とCpkの検算や安全在庫と発注点の計算でも同じです。検査の前段にあたる外観検査の一次仕分けは、Claudeで外観検査の不良品を写真から分類するにまとめています。

この記事を共有:XはてブLinkedIn