Claudeでインバウンド接客の案内を多言語で作る — 免税説明は公式リーフレットを軸に
免税店の店頭案内をClaudeで多言語化するときの手順です。説明の核は国税庁のリーフレットに任せ、Projectsに店ごとの情報を置いて言語別の下書きを作り、母語話者確認の入れ方まで決めます。
免税店の店頭案内を多言語で作るとき、Claudeに「免税の仕組みを英語と中国語で説明して」と頼むのは避けたほうが安全です。2026年11月1日から免税制度がリファンド方式に変わり、旧制度の説明がそのまま通用しなくなるからです。
おすすめの分担は、制度の説明を国税庁のリーフレットに任せ、Claudeには店ごとの情報と接客の短文を言語別に下書きさせる形です。この記事では、その分担の決め方、Projectsへの素材の置き方、言語別の下書きの作らせ方、母語話者確認の入れ方を順に説明します。
制度の説明文は自作せず、公式リーフレットを軸にする
リファンド方式では、免税店が購入者へ説明すべき事項が決まっています。免税手続のとき、次の3点をリーフレット等の交付・掲示などで説明する必要があります。
購入者へ説明する3つの事項
90日以内に税関で確認
免税対象物品の購入日から90日以内の出国時に、税関で旅券を提示するなどして確認を受けます。
物品を提示できるようにする
税関の求めに応じて、免税対象物品を提示できる状態にしておきます。
遅滞なく輸出する
税関の確認を受けた物品は遅滞なく輸出します。輸出しなかった場合は、免除された消費税額に相当する消費税が徴収されます。
この3点を載せたリーフレットは、国税庁のページで言語別に配布されています。多言語併記版のほか、English、简体中文、繁體中文、한국어、日本語訳の各PDFがあり、リファンド方式に対応した内容として2026年11月1日以降の販売から使います。多言語併記版、简体中文、한국어は7月30日に一部修正されているので、掲示前に最新のPDFを取り直してください。
つまり、制度の中身を言語別に説明する文章は、すでに公的な版が用意されています。Claudeに自由に書かせると、日数や「消費税相当額の返金」といった言い回しが微妙にずれる余地が生まれます。リーフレットの文言を動かさず、そのまま貼るのが基本です。
リーフレットが対応していない言語の客もいます。タイ語やベトナム語などの案内を足したい場合は、日本語訳版と英語版を原文としてClaudeに渡し、「数字と期限は変えずに訳す」という条件をつけて下書きさせます。この場合は後述の母語話者確認を省かないでください。
Claudeに任せる範囲と任せない範囲
免税対応の案内には、制度そのものを説明する部分と、店ごとに決まる部分があります。Claudeの出番は後者と、接客の短文です。
| 案内の項目 | 誰が決めるか | Claudeの役割 |
|---|---|---|
| 税関確認の期限、提示義務、輸出義務 | 誰が決めるか国税庁リーフレット | Claudeの役割原文をそのまま貼る。訳し分けは頼まない |
| 返金方法、返金時期、手数料の負担 | 誰が決めるか店(または返金手続を委託する事業者) | Claudeの役割店が決めた内容を言語別の文に整える |
| 対象外になる商品、持ち出しの注意 | 誰が決めるか店の判断と各省庁の情報 | Claudeの役割声かけの短文を作る |
| 免税カウンターの場所、受付時間 | 誰が決めるか店 | Claudeの役割案内文に整える |
| 税務上の取扱い、例外のケース | 誰が決めるか税務署・専門家 | Claudeの役割任せない。質問の整理にだけ使う |
返金の方法は、国税庁のページで「消費税法令において何らルールを定めているものではありません」とされています。銀行振込、クレジットカード送金、アプリ送金、出国港内での現金による返金などが例に挙がっていて、店または委託先が決める領域です。
返金に関する手数料を旅行者が負担するか、店が負担するかも法令に定めがありません。観光庁のよくある質問は、委託する代行業者とよく相談するよう案内しています。この種の取り決めは、Claudeに「一般的にはこうです」と答えさせず、店のルールを入力して整形させます。
素材をProjectsに置く
ここからは、Claudeでの具体的な準備です。店ごとの素材をProjectsに置いておくと、言語を変えるたびに同じ前提を貼り直さずに済みます。
プロジェクトは、独自のチャット履歴とナレッジを持つ作業空間です。ナレッジに書類を置き、プロジェクトの指示で口調や役割を決められます。プロジェクトは無料アカウントでも使えますが、作れるのは最大5つです。
免税案内用のプロジェクトを作る流れ
- 1
プロジェクトを作る
「免税・店頭案内」のように用途が分かる名前にします。
- 2
リーフレットをナレッジに入れる
日本語訳版と英語版のPDFを入れます。対応言語のPDFも、多言語展開の照合用に入れておけます。
- 3
店の情報シートを入れる
返金方法、手数料の負担、返金申請の期限、免税カウンターの場所と時間を1枚にまとめて入れます。
- 4
指示を書く
制度の根拠をナレッジのリーフレットに限る、という縛りを指示に入れます。
指示の例を次に示します。文面は一例で、店の運用に合わせて変えてください。
あなたは日本の小売店の店頭案内を下書きする担当です。
- 免税制度の説明は、ナレッジにある国税庁リーフレット(2026年11月以降分)の文言だけを根拠にします。
- ナレッジにない制度の内容は書かず、「要確認」と書いて質問を返します。
- 日数・金額・期限は原文の数字を変えません。
- 返金方法・返金時期・手数料は、店の情報シートの内容だけを使います。
- 出力は言語ごとに、(1)客に見せる文 (2)店員が口頭で言う短文 (3)日本語への訳し戻し の順に並べます。「ナレッジにないことは書かず要確認と返す」という条件が、この運用の要です。Claudeは足りない情報を自然な文章で補おうとするため、縛りがないと、旧制度の説明や他国の制度の知識が混ざる余地が残ります。
店の情報シートは、次のような箇条書きで足ります。
返金方法: 銀行振込 / アプリ送金 / 出国港内での現金(店が選んだものだけ記入)
返金手数料: 旅行者負担 or 店負担(委託先と合意した内容)
返金申請の期限: 販売時に旅行者へ案内する日数(店が事前に決めたもの)
免税カウンター: 3階レジ横、10時〜20時返金申請の期限は、観光庁のよくある質問で「法令で定められているものではありません」と答えられています。同じ回答に、旅行者とのトラブルを避けるため、免税販売手続の際にあらかじめ案内して合意しておく例が挙がっています。店ごとの取り決めなので、シートに書いて初めて案内文に出せます。
プロジェクトの指示やナレッジは、有料プランでは容量が増えます。ナレッジが大きくなるとRAG(検索拡張生成)が自動で有効になり、容量が最大10倍まで広がります。リーフレットと店のシート程度なら、容量を気にする場面はまずありません。プロジェクトの作り方の全体はClaude Projects完全ガイドにあります。
TeamやEnterpriseのプランでは、プロジェクトを組織内で共有できます。「閲覧のみ」と「編集可」の権限を分けられるので、店長だけが情報シートを編集し、スタッフは閲覧と利用だけにする運用が組めます。
言語別の下書きを作らせる
素材が揃ったら、言語ごとに下書きを作らせます。1度に全言語を頼むより、言語を1つずつ指定したほうが、後で母語話者に渡す単位が揃います。
英語(米英どちらでも通じる平易な表現)で、免税カウンターの案内を作ってください。
客に見せる文は、次の順で3項目に分けます。
1. 税関での確認(購入日から90日以内)
2. 返金の受け取り方(店の情報シートの内容)
3. 免税カウンターの場所と時間
制度の説明部分はリーフレットの文言をそのまま使い、
店の情報はシートから補ってください。中国語は、簡体字と繁体字を分けて指定します。「中国語」とだけ書くと、どちらの字体で返るかが曖昧です。簡体字は中国本土、繁体字は台湾や香港の客が主な読者なので、レジ前の掲示を字体ごとに用意します。出力言語の指定の仕方は、Claude翻訳ワークフローで整理しています。
店頭では、掲示文のほかに、店員が口で言う短い声かけも必要です。同じプロジェクトで、場面ごとの短文を作らせます。
- 免税の対象になるかを聞かれたとき
- 購入した商品を使ってよいかを聞かれたとき(消耗品の扱い)
- 持ち帰り方や海外への配送を聞かれたとき
- 出国時の税関手続を急ぐよう伝えるとき
回答の中身は、観光庁や国税庁の公開情報と合っている必要があります。たとえば消耗品は、飲食料品や化粧品の全部または一部を国内で消費すると、税関の確認を受けられません。消費したときは、免税手続用の端末で手続せず、その旨を税関職員の窓口に申し出るよう案内されています。
消耗品以外の物品は、出国までに国内で使っていても、最終的に国外へ持ち出される物品であれば税関の確認を受けられます。この区別を店員の短文にするときは、2つの扱いが混ざらないよう、品目ごとに文を分けて作らせると安全です。
出国時の手続については、手荷物を機内に預けた後には税関の確認を受けられません。リーフレットの注記は、預ける前に出発ロビーの免税手続用の端末(キオスク端末)または電子端末で済ませるよう促しています。レジでの一言として「空港には早めに着いて、荷物を預ける前に手続を」と添えるだけで、客の取りこぼしを減らせます。
母語話者確認の入れ方を決める
下書きができたら、母語話者の確認を挟みます。一度にすべての言語で確認できる体制は少ないため、確認の深さを決めておくと運用が続きます。
確認の手順は2段に分ける
第1段: 訳し戻し
別のチャットで、下書きを日本語に訳し戻させます。元の日本語と数字・期限・主語が一致するかを見ます。制度の説明部分は、リーフレットの原文と一字単位で照合します。
第2段: 母語話者の確認
客に見せる文だけを、母語話者に確認してもらいます。誤訳より、不自然さや失礼に聞こえる言い回しを拾う役割です。
第1段の訳し戻しは、元のチャットではなく新しいチャットで行います。同じ会話の中で訳させると、直前の訳を踏まえた都合のよい戻しになりやすいためです。出来の差が言語で変わる点は、Claudeの多言語性能ベンチマークに言語別の傾向があります。
第2段で母語話者に見てもらう観点は、次の4つに絞ると頼みやすくなります。
- 数字、日数、期限が日本語の原文と同じか
- 命令口調になっていないか、客に失礼な響きがないか
- 「免税」「返金」など、その言語の旅行者が通常使う語になっているか
- 表記(字体、文字の向き、敬称)が掲示物として違和感がないか
母語話者が身近にいない言語は、リーフレットが用意された5言語に絞る手もあります。それ以外の言語は、リーフレット原文の数字と見出しを頼りに、客に見せる文を最小限にとどめ、不安があれば英語版のリーフレットを併せて示します。
地域慣習を含む案内や法規制に関わる表示は、母語話者や専門家の確認を残す必要があります。民泊の案内文でも同じ考え方で運用する手順がClaudeで民泊の案内文を多言語化する方法にあります。
11月1日の前後で素材を切り替える
リーフレットの注意書きは、リファンド方式に対応したものとして、2026年11月1日以降に行う販売から使うとしています。10月中に作った案内を、そのまま11月以降に掲示し続けないよう、日付で版を管理します。
- 旧制度の案内は10月31日までの販売分に限る
- 11月1日以降は、リファンド方式のリーフレットと店の情報シートを使う
- プロジェクトのナレッジから旧版のPDFを外す
最後の1点が大切です。旧制度の資料が残ったまま下書きを依頼すると、Claudeが旧制度の記述を拾う可能性があるため、切り替えの日にナレッジを入れ替えます。指示にも「2026年11月以降分のリーフレットだけを根拠にする」と日付を書いておくと、混在を避けやすくなります。
免税店としての許可や手続は、案内文とは別の話です。11月1日にリファンド方式に対応した免税店の許可を受けたい場合は、事前に所轄の税務署へ相談し、10月1日以降速やかに書類を提出するよう国税庁のページが案内しています。Claudeに任せるのは接客の文面までにとどめ、手続の判断は税務署や専門家に聞いてください。
よくあるつまずき
落とし穴
リーフレットの文言をClaudeが言い換えてしまう
「分かりやすく訳して」と頼むと、制度の説明部分まで意訳されることがあります。指示で「制度の説明は原文のまま、言い換えない」と縛り、照合を訳し戻しの段階に入れます。
落とし穴
店の方針をClaudeが一般論で埋める
返金手数料や返金期限の欄が空だと、Claudeがもっともらしい運用例で補うことがあります。空欄は「要確認」と返す条件を指示に入れておき、シートの記入が先です。
- 商品の全部を持っていないと確認が受けられない: 税関の確認はレシート単位で行われ、1つでも所持していないと同じレシートの他の物品も確認を受けられません。客に見せる文では、複数買いのときの注意として添える価値があります
- 直送の案内が混ざる: 海外への直送制度は、輸出免税の別の手続で進みます。免税店での一連の免税販売手続や購入記録情報の提供は不要になる点が異なるため、通常の免税案内と分けて作らせます
- ID確認の案内が古い: 日本国籍の客の確認書類として、マイナンバーカードは原本での確認に限られ、スマートフォンのマイナンバーカードは確認用アプリを通じた提示が必要です。この種の運用は、観光庁のよくある質問で最新の扱いを見てから文にします
まとめ
免税対応の多言語案内は、制度の説明を国税庁のリーフレットに任せ、Claudeには店の情報と接客の短文を言語別に整える役を渡すと、ずれが出にくくなります。Projectsに日本語訳版・英語版のリーフレットと店の情報シートを置き、「ナレッジにないことは要確認と返す」と指示すれば、言語を増やしても前提が揃います。
母語話者の確認は、訳し戻し、人の目での確認という2段に分け、見てもらう観点を4つに絞ると続けやすくなります。11月1日の前後でナレッジを入れ替える段取りまで決めておけば、切り替え当日に慌てずに済みます。