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ローカルベンチマークの財務分析を決算書3期分からClaudeで作る手順 — 顧問先への所見まで

ローカルベンチマークの財務分析を決算書3期分からClaudeで作る手順 — 顧問先への所見まで

決算書3期分の貸借対照表・損益計算書から、ローカルベンチマークの財務6指標をClaude for Excelで算出し、検算して顧問先向けの所見に仕上げる手順。点数づけを公式シートに任せる理由まで示します。

決算書3期分の貸借対照表と損益計算書があれば、ローカルベンチマークの財務6指標の算出表は、Claude for Excelで組めます。ただし分担ははっきり分かれます。指標の計算式を組んで検算するところまでがClaudeの仕事で、1〜5点の点数づけは経済産業省が配るロカベンシートの仕事です。点数の物差しになる業種基準値は、決算書の中にないからです。

この記事では、決算書の数字を入力シートに揃え、6指標を算出し、手計算とシートの出力で検算し、顧問先への所見にまとめるまでを、プロンプト例つきで示します。月次の試算表を使う流れは月次報告を試算表ExcelからClaudeで作る手順にあります。ここで扱うのは、年に一度の決算書を期間比較にかける作業です。

ローカルベンチマークの財務6指標と算式

ローカルベンチマーク(通称ロカベン)は、経営者と金融機関・支援機関が対話するための「企業の健康診断」ツールです。シートは財務面の「6つの指標」、非財務面の「商流・業務フロー」「4つの視点」の3枚組で、このうち今回扱うのは財務の1枚目です。

金融ワーキンググループで示された資料に、6指標の算式と見るものが載っています。

指標算式見るもの
売上増加率算式(売上高/前年度売上高)−1見るもの売上の持続性
営業利益率算式営業利益/売上高見るもの本業の収益性
労働生産性算式営業利益/従業員数見るもの生産性
EBITDA有利子負債倍率算式(借入金−現預金)/(営業利益+減価償却費)見るもの有利子負債の返済能力
営業運転資本の回転期間算式(売上債権+棚卸資産−買入債務)/月商見るもの効率性
自己資本比率算式純資産/総資産見るもの安全性

労働生産性の算式は、この資料では「営業利益/従業員数」です。ロカベンシートは年度版で更新されているため、実際に使うシートの該当セルの式を一度開いて、表の算式と同じかを確かめてください。Claudeに式を組ませる前に、物差しを人が確定させておく工程です。

入力シートに揃える11項目

6指標を出すのに必要な決算書の数字は、次の11項目です。

項目載っている場所使う指標
売上高載っている場所損益計算書使う指標売上増加率・営業利益率・営業運転資本の回転期間
営業利益載っている場所損益計算書使う指標営業利益率・労働生産性・EBITDA倍率
減価償却費載っている場所製造原価報告書・販管費の内訳など使う指標EBITDA有利子負債倍率
従業員数載っている場所決算書の外(顧問先に確認)使う指標労働生産性
借入金載っている場所貸借対照表(短期・長期)使う指標EBITDA有利子負債倍率
現預金載っている場所貸借対照表使う指標EBITDA有利子負債倍率
売上債権載っている場所貸借対照表(受取手形・売掛金)使う指標営業運転資本の回転期間
棚卸資産載っている場所貸借対照表使う指標営業運転資本の回転期間
買入債務載っている場所貸借対照表(支払手形・買掛金)使う指標営業運転資本の回転期間
純資産載っている場所貸借対照表使う指標自己資本比率
総資産載っている場所貸借対照表使う指標自己資本比率

従業員数と減価償却費は、貸借対照表と損益計算書の本表だけでは足りません。減価償却費は内訳明細や製造原価報告書に分かれていることが多く、従業員数は決算書に載らないため、顧問先に聞く項目として最初に洗い出しておきます。

売上増加率には、もう一つ注意があります。3期それぞれの増加率を出すには、最古期の前年度の売上高も要るため、4期分の売上高が必要です。手元が3期分しかないなら、最古期の増加率は空欄にして、2期分だけを出します。

PDFの決算書は、先に表へ起こす

決算書がPDFで手元にあるときは、Claude for Excelに直接読ませる前に、claude.aiで表へ起こします。Claude for Excelの説明ページは、開いているブックへの質問、数値の更新、モデルの作成、エラーの調査を機能として挙げていますが、PDFの読み取りには触れていません。

APIのPDF対応では、上限は1リクエスト32MB、1リクエスト100ページ(コンテキストウィンドウが1M未満の場合)です。パスワード付きや暗号化されたPDFは対象外です。密な表のページは、ページ上限より前にコンテキストを使い切ることがあります。3期分の決算書なら上限に届くことは少なく、むしろ表の読み違いのほうを警戒します。

添付は、ある小売業の第38期〜第40期の決算書(貸借対照表・損益計算書)
です。次の11項目を、期ごとにExcelに貼れる表にしてください。
売上高 / 営業利益 / 減価償却費 / 従業員数 / 借入金 / 現預金 /
売上債権 / 棚卸資産 / 買入債務 / 純資産 / 総資産
- 単位は千円にそろえてください
- 書類に載っていない項目は、空欄にして「記載なし」と注記してください
- 数字を推定で埋めないでください
- 貸借対照表は、資産合計と負債・純資産合計が一致するか確認し、
  結果を表の下に書いてください

PDFの表は、桁の取り違えや行ずれが起きる箇所です。出てきた表は、貸借の一致確認だけに頼らず、売上高と総資産の2か所を決算書の原本と目で突き合わせます。PDFの読み込み全般はClaudeのPDF読み込み・画像解析にまとめています。

Claude for Excelで6指標の算出表を組む

入力シートが固まったら、Excelのブックを開いて、アドインで指標シートを作らせます。

Claude for Excelは、数式の関係を保ったまま値を更新でき、答えにはクリックでセルへ飛べるセル単位の引用が付きます。「この試算表から3表モデルを作る」といった指示も、説明ページの例に載っています。指標シートを数式で組ませる使い方は、この性質に合っています。

「入力」シートに、第38期〜第40期の11項目があります(単位は千円)。
新しく「ロカベン6指標」シートを作り、次の指標を期ごとに算出して
ください。
1. 売上増加率 / 2. 営業利益率 / 3. 労働生産性(営業利益/従業員数)
4. EBITDA有利子負債倍率((借入金−現預金)/(営業利益+減価償却費))
5. 営業運転資本の回転期間((売上債権+棚卸資産−買入債務)/月商)
6. 自己資本比率(純資産/総資産)
条件:
- 値の直打ちはせず、すべて「入力」シートのセルを参照する数式にする
- 月商は売上高を12で割った値とする
- 最古期の売上増加率は、前年度の売上高がないので空欄にする
- 各指標の下に、使った算式を1行で書く
- 既存のセルは上書きしない

「値の直打ちをしない」と「既存のセルを上書きしない」の2行が肝です。数式で組ませておけば、入力シートの数字を直したときに指標が連動して変わります。説明ページによれば、アドインは既存データを上書きする前に警告を出しますが、条件に明記しておけば、確認の回数も減ります。

仕上がったら、引用のリンクで各指標のセルから入力シートの参照先を一つずつたどります。月商を12で割る処理や、借入金から現預金を引く処理が、算式どおりかを目で確かめる作業です。

手計算で検算する

Claudeが出した数字は、そのまま報告書に載せません。次の架空の数字(単位は千円)で、手計算の型を示します。

項目3期前2期前前期当期
売上高3期前100,0002期前105,000前期102,900当期113,190
営業利益3期前—2期前2,100前期1,029当期3,396
従業員数(人)3期前—2期前20前期20当期21
  • 売上増加率は、2期前が+5.0%、前期が−2.0%(102,900÷105,000−1)、当期が+10.0%(113,190÷102,900−1)です。
  • 営業利益率は、2期前が2.0%、前期が1.0%、当期が3.0%です。
  • 労働生産性は、2期前が105千円、前期が51千円、当期が162千円(3,396÷21)です。

当期の残りの3指標は、貸借対照表の数字から次のように出ます。借入金24,000、現預金9,000、減価償却費2,604、売上債権14,000、棚卸資産8,000、買入債務10,000、純資産30,000、総資産100,000と仮定します。

指標計算結果
EBITDA有利子負債倍率計算(24,000−9,000)÷(3,396+2,604)結果2.5倍
営業運転資本の回転期間計算(14,000+8,000−10,000)÷(113,190÷12)結果約1.3か月
自己資本比率計算30,000÷100,000結果30.0%

この程度の計算なら、Claudeの出力と一致するかは数分で確かめられます。一致しない場合は、多くの場合、参照するセルの取り違えか、月商の定義の違いが原因です。手計算の結果は、シートの出力と並べて保存しておくと、顧問先から質問されたときの根拠になります。

落とし穴

借入金の範囲と減価償却費の拾い漏れで、倍率がずれる

EBITDA有利子負債倍率は、算式の「借入金」にどこまで含めるかを算式そのものが決めません。役員借入金や割引手形を含めるかで、結果が変わります。減価償却費も、製造原価報告書の分を拾い忘れると、分母が小さくなって倍率が膨らみます。含める範囲は事務所内で先に決め、3期とも同じ基準で入力します。

点数づけは公式シートに任せる

6指標の算出値は、Claudeの表でも出せます。しかし1〜5点の点数と総合評価は、Claudeに出させません。同じ資料の例では、シートの各指標に「業種基準値」が並び、点数はその基準値からの乖離で決まります。業種基準値は、決算書にもClaudeにも入っていない数字です。

そこで役割を次のように分けます。

くらべる

指標の算出と点数づけの分担

算出と検算

Claude for Excelに任せる

入力シートの整備、6指標を数式で組む作業、参照先のたどり直し、手計算との照合表づくり。

点数と総合評価

ロカベンシートに任せる

業種・規模を選んだうえでの点数づけ、業種基準値との比較、レーダーチャートによる3期の推移表示。

経済産業省のロカベンシートのページには、業種分類を2024年4月1日に見直したと記されています。業種を選ぶ入力欄は、産業分類の改定に合わせて更新されているため、古い年度のシートを使い回さないようにします。

最終的な手順は、次の流れになります。

手順

算出から点数づけまでの流れ

  1. 1

    入力シートを作る

    11項目を3期分(売上高は4期分)そろえ、貸借の一致を確かめます。

  2. 2

    Claude for Excelで6指標を数式で出す

    入力シートのセルを参照する形で、指標シートを組みます。

  3. 3

    手計算と突き合わせる

    当期だけでも手で計算し、Claudeの出力と一致するかを見ます。

  4. 4

    同じ数字をロカベンシートに入力する

    業種・規模を選び、点数と総合評価をシート側に出させます。

  5. 5

    Claudeの算出値とシートの指標値を照合する

    シートが出した指標値(点数の前の値)と、Claudeの算出値が一致するかを見ます。

5つ目の照合が、この手順の二重チェックです。算式の取り違えがあれば、ここでずれが表に出ます。

顧問先向けの所見を書かせる

数字が確定したら、所見を書かせます。ここでの指示は、数字から言えることだけを書かせ、原因や将来を断定させない形にします。

添付の「ロカベン6指標」シートは、第38期〜第40期の算出結果です。
点数と業種基準値は、以下の値をそのまま使ってください。
(ロカベンシートの出力をここに貼る)
社長宛ての所見を作成してください。
- 600字以内。最初に「3期の推移から言えること」を1文で書く
- 6指標を、売上・収益・生産性・返済能力・効率性・安全性の順に
  1〜2文ずつ触れる
- 数字は、シートにある値だけを使い、新しい数字を作らない
- 原因は断定せず、「確認したい点」として質問の形で書く
- 融資の可否や格付けの予測は書かない

点数を貼り付けて渡すのは、Claudeに点数を推測させないためです。同じ資料には、各項目の評点と総合評価点は業種基準値からの乖離を示すもので、点数の高低が必ずしも企業の評価を示すものではない、という注記があります。所見の文面も、この注記を踏まえて、点数の高低を良し悪しの断定にしない書き方に揃えます。

返ってくる文面は、例えば次のような形になります(例示であり、実際の出力は元データで変わります)。

3期の推移から言えるのは、売上は一度落ち込んだ後に戻り、利益率の改善がその後に続いている点です。営業運転資本の回転期間が約1.3か月となっており、前期からの変化の要因として、回収や支払の条件に変更がなかったかを確認したいところです。

「確認したい点」として質問に変えさせるのは、月次報告の場合と同じ理由です。試算表や決算書の数字からは動きまでしか読み取れず、背景は顧問先に聞かないと分かりません。ロカベンの本来の使い方も、シートを材料にした経営者との対話です。非財務の2枚を、このあとヒアリングで埋めていく進め方になります。

融資や補助金の判断に踏み込む文面は、Claudeに書かせず、人が書きます。決算書や税務書類をどこまで任せてよいかは、Claudeに決算資料・税務書類の作成をどこまで任せてよいかで整理しています。

使う前に確認する条件

Claude for Excelは、Pro、Max、Team、Enterpriseの各プランで使えます。Freeプランは、この一覧に含まれません。対応するExcelは、Excel on the web、Microsoft 365版のWindows(ビルド16.0.13127.20296以降)、Mac(バージョン16.46以降)です。Excel 2016・2019の買い切り版、iPad、Androidのほか、SharedRuntimeの基準に満たない古いMicrosoft 365のビルドでは動きません。

使用上の注意として、説明ページは次の点を挙げています。

  • 人の確認がない最終的な顧客向け成果物には勧めない
  • 検証のない監査上重要な計算にも勧めない
  • 機微な情報や規制対象のデータを含むモデルは、適切な管理がないまま使わない
  • データテーブル、マクロ、VBAの操作には対応しない
  • 外部由来のファイルには、Claudeを操作する隠し指示が仕込まれていることがある

最後の項目は、顧問先から受け取ったExcelをそのまま開くときに効きます。信頼できるブックでだけ使い、リスクの高い操作の確認が出たら内容を読んでから許可します。公式ページはExcel形式とだけ記しており、ロカベンシートにマクロが含まれるかは書かれていません。Claude for Excelはマクロを操作できないので、シートの数式やマクロを直すのではなく、入力する数字の側を整える使い方に限ります。

データの扱いも先に確かめておきます。チャット履歴はブラウザのIndexedDBにローカル保存され、Anthropicのサーバーには保存されません。入出力はバックエンドで30日以内に削除されます。組織で設定した保持期間は引き継がれず、Enterpriseの監査ログにも含まれません。顧問先の決算書を渡す前の確認点は、税理士のClaude利用と守秘義務にあります。

決算書の分析を、次の仕事につなげる

3期分の算出表は、一度作れば翌期の決算で入力列を1つ足すだけで更新できます。数式で組んであれば、足した列の指標は自動で連動します。

資金面の動きを週次で追う仕事は、財務分析とは別の表になります。手順は資金繰り表を週次で更新し、資金ショートの兆候を見つける手順にあります。Excelを手でアップロードして使う経路との違いは、Claude Excel読み込みと作成に整理されています。

最後に、顧問先に出す前の点検項目を挙げます。

  • 入力シートの数字が、決算書の原本と一致している
  • 貸借対照表の資産合計と、負債・純資産合計が一致している
  • 当期の指標を、手計算で出して照合した
  • ロカベンシートの指標値と、Claudeの算出値が一致している
  • 所見に、シートにない数字や、原因の断定が混ざっていない
  • 融資の可否や格付けに触れる文面が入っていない
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