Claude Researchで技術調査レポートを作る — 競合技術の比較表まで
製品や材料の技術動向をClaude Researchで調べ、競合する方式を出典付きの比較表にまとめる手順です。比較軸の決め方、数値の条件そろえ、空欄の扱いまで扱います。
技術調査は「地図」と「比較表」の2回に分けて依頼する
技術調査レポートは、Claude Researchに1回で丸ごと頼むより、2回に分けたほうが直しやすくなります。1回目で競合しそうな方式の一覧(地図)を作らせ、2回目で比較軸を指定して表に絞る流れです。
Researchは、Claudeが検索を重ねながら次に調べる対象を自分で決め、出典付きで答えをまとめる機能です。使えるのは有料プラン(Pro、Max、Team、Enterprise)で、Web版、Claude Desktop、モバイルが対象になります。動かすにはWeb検索をオンにしておく必要があります。
研究開発の現場で使う場面は、新しい材料の候補を横並びにしたい、他社がどの方式で同じ課題を解いているかを知りたい、といったものです。公開情報をもとにした下調べまでが守備範囲で、結論を出すのは人です。
特許公報を引く先行技術調査は、調べる対象も限界も違います。そちらはClaudeで特許の先行技術調査を下調べする範囲と限界にまとめています。本記事の対象は、論文・技術資料・メーカーの公開情報から方式の違いをつかむ作業です。
依頼の前に決める3つのこと
Researchは、問いが曖昧だと広く浅い読み物を返しがちです。依頼文を書く前に、次の3つを決めておきます。
依頼前に固めること
調べる問い
「どの方式があるか」と「その中でどれが自社の条件に合うか」は別の問いです。1回目は前者だけを聞きます。
比較軸
原理、性能、コスト、量産性、制約といった軸を先に決めます。後から足すと、表の列ごとに調べ直しになります。
出典の格付け
論文、規格、メーカーの技術資料、ニュース記事のどれを根拠として認めるかを決めます。
比較軸は、公開情報で埋まりやすいかどうかで分けておくと、後で空欄を見たときに慌てません。
| 比較軸の例 | 公開情報での埋まりやすさ | 注意点 |
|---|---|---|
| 動作原理・方式の分類 | 公開情報での埋まりやすさ高い | 注意点呼び名が資料ごとに違うことがある |
| 代表的な性能値 | 公開情報での埋まりやすさ中 | 注意点測定条件がそろっていない |
| 成熟度(研究段階か量産か) | 公開情報での埋まりやすさ中 | 注意点発表時点で古びる |
| コスト・歩留まり | 公開情報での埋まりやすさ低い | 注意点非公開が普通 |
| 自社設備での適合 | 公開情報での埋まりやすさ低い | 注意点社内情報が要る |
下の2行は、Researchに埋めさせようとしても空欄が増えるはずの軸です。最初から「人が埋める列」と決めておけば、表の完成度で調査の出来を測らずに済みます。
1回目: 競合しそうな方式の地図を作らせる
1回目は表を作らせず、方式の洗い出しだけを頼みます。例として、パワー半導体モジュール向けの放熱基板材料を調べる場合の依頼文を示します。
パワー半導体モジュールの放熱基板に使われる材料と構造を調べてください。
目的は、現在使われている方式と、研究段階の方式の全体像をつかむことです。
- 方式ごとに、動作原理を2文で説明する
- 各方式について、それを主に扱っている企業・研究機関を挙げる
- 根拠にした資料ごとに、種類(論文・規格・メーカー資料・記事)を書く
- 資料が1点しか見つからない方式は、その旨を明記する
- 性能値の比較はまだ不要ここで見るのは、方式の漏れと呼び名の揺れです。同じ方式が別の名前で2行に分かれていたり、記事の側が混同していたりするなら、その場で統合方針を伝えて再調査させます。
方式名がこの時点で固まっていないと、2回目の比較表で行が重複します。1回目の出力は、読んで気になった方式を足したり削ったりして、人が確定版の方式リストにします。
確定版にする前に、出力を次の3点で読み返します。
- 同じ方式が別名で出ていないか。略称と正式名称、業界ごとの俗称が別の行になっていることがあります。動作原理の2文を並べて読むと、同じものかどうかが分かります。
- 資料が1点しかない方式を、他と同じ重さで扱っていないか。依頼文で「その旨を明記」と頼んであるので、該当行を見つけたら、2回目の表では「出典1点」と分かる形で残すか、確定版から外すかを人が決めます。
- 研究段階の方式と量産段階の方式が混ざっていないか。論文だけが根拠の方式と、メーカー資料がある方式は、成熟度の列で別物として扱います。混ざったまま性能値を並べると、実験室の値と製品の値を同じ土俵で比べることになります。
点検でおかしな行を見つけたら、その行の根拠資料を開き、種類の記載(論文・規格・メーカー資料・記事)が合っているかを先に確かめます。
2回目: 比較軸を指定して表に絞る
方式リストが決まったら、軸を列として渡します。比較表づくりの肝は、空欄と条件を許す書き方にすることです。
先ほどの方式リストのうち、次の4方式を比較表にしてください。
(方式A / 方式B / 方式C / 方式D)
列: 動作原理 / 代表的な性能値 / 測定条件 / 成熟度 / 主な制約 / 出典
- 公開資料に数値が無い項目は、推測せず「記載なし」と書く
- 性能値は、資料に書かれた測定条件を同じセルに併記する
- メーカー資料の値と論文の値が食い違うときは、両方を並べる
- 各セルの出典は、資料名と該当箇所が分かる形にするAnthropicの開発者向けドキュメントは、幻覚を減らす基本策として「分からない」と言う許可を明示することを挙げています。また、主張ごとに根拠となる引用を探させ、見つからなければ撤回させる方法も紹介しています。これはAPI向けのプロンプトの考え方ですが、上の依頼文の「記載なし」「測定条件の併記」「出典の明示」は、同じ発想をチャットの依頼に移したものです。
数値は「条件ごと」そろえてから比べる
技術比較で最もずれやすいのが性能値です。同じ名前の指標でも、試験片の寸法、温度、測定方法が違えば、並べて大小を言えません。
出力された表は、次の3点を行ごとに点検します。
性能値を点検する順番
- 1
単位をそろえる
資料ごとに単位や桁が違うことがあります。変換した数値には、元の数値と元の単位が残っているか確かめます。
- 2
測定条件を並べる
条件が違う値は、同じ列でも比較不能として印を付けます。条件が書かれていない値は「条件不明」にします。
- 3
出典の種類を見る
メーカーの資料は強みを強調して書かれがちです。論文や規格の値と食い違うときは、どちらが何の条件で測ったかを書き添えます。
Claudeが表にした値を、そのまま報告書へ写してはいけません。出典に戻って原文を開き、数値と条件が一致しているかを人が確かめる工程を、作業の最後ではなく途中に置きます。
自社の資料を足すときの前提
社内の試験データや仕様書を比較に加えたい場合は、Researchの外で資料を渡す方法があります。ファイルのアップロードは、1つのチャットに最大20ファイル、1ファイル500MBまでです。PDFは1,000ページまでで、100ページ以下のPDFなら本文に加えて図表などの視覚要素も読めます。101〜1,000ページのPDFは、テキストのみの処理になります。
グラフや図で示された性能値を拾ってほしい資料は、100ページ以下に分けて渡すほうが確実です。Word形式など非PDFの文書は、埋め込み画像を読めません。
Gmail、Googleカレンダー、Googleドキュメントを接続している場合、Researchは社内の情報も対象にします。ただ、接続していても引いてこないことがあります。その対処は、後の「調査が動かないとき」の切り分けに入れています。
表をExcelに移して、人が確かめる
比較表が固まったら、Excelに移して確認列を足すと運用しやすくなります。Claude for Excelは、ブックについての質問に、セル単位の根拠を付けて答える機能を持っています。Pro、Max、Team、Enterpriseの各プランで使えます。
足しておく列は、次の3つです。
- 確認者と確認日(原文に当たった人の記録)
- 原文の該当箇所(ページ番号や図表番号)
- 判定(一致 / 条件違い / 原文で確認できず)
使う前に、Claude for Excelの制約も確かめておきます。ドキュメントは、人の確認なしの最終的な顧客向け成果物、検証なしの監査上重要な計算、機密性や規制の高いデータを統制なしで扱うモデルには勧めていません。データテーブルとマクロ・VBAの操作は未対応です。比較表の確認用途では、確認列を人が埋めて初めて成果物になる、という使い方がこの注意に沿います。
動作環境にも条件があります。Excel 2016と2019の永続版・ボリュームライセンス版、iPad版、Android版では動きません。会社のPCがどの版か分からないときは、導入の前に情報システム部門へ確かめます。
もう一点、外部から受け取ったファイルには注意が要ります。ダウンロードしたテンプレートやベンダーのファイルには、アドインを操作させる隠れた指示が入っていることがあり、データの抜き出しや書き換えに使われる恐れがあります。危険な操作を提案されたときは実行前に確認を求められるので、他社から届いた仕様表のような外部ファイルを扱う場面ほど、その確認を読んでから進めます。
比較表をExcelで磨く手順は、相見積もりの比較表をClaude for Excelで作るが参考になります。見積もりの題材ですが、列をそろえて抜けを洗う流れは技術比較でも同じです。
調査が動かないとき、使用量が気になるとき
Researchが調べに行かないときは、上から順に切り分けます。
調べに行かないときの切り分け
- Qチャット欄左下の「+」ボタンから「Research」を選び、青い表示が出ているか?答えが未選択答えがはい
「+」ボタンから「Research」を選びます。青い表示が出ていれば、オンになっています。
- QWeb検索がオンになっているか?答えがオフ答えがはい
ResearchはWeb検索がオフだと動きません。Web検索をオンにしてから、もう一度依頼します。
- Q依頼文でResearchを使うよう促したか?答えが促していない答えがはい
「Claude、リサーチツールを使って〜」のように、使うよう明示して依頼し直します。
- Q接続した情報源を、依頼文で名指ししたか?答えが名指ししていない答えがはい
Gmailなどを接続していても引いてこないことがあります。「[該当の情報源]から関連する文脈を引いてください」と添えます。
それでも動かないとき
プランが対象(Pro、Max、Team、Enterprise)かを確かめます。
使用量は、通常の会話と同じ上限に数えられます。ただし複数の情報源を取得して詳細な回答を作るため、通常の会話より上限の減りが早くなります。方式の地図と比較表を別々に頼むと、2回分の消費が発生します。長い依頼文を直して何度も回す前に、問いと軸を固めておくと無駄が減ります。
Researchの基本操作や出典検証の流れはClaudeリサーチの使い方で扱っています。サプライヤー探索のように「公開情報で埋まる列」を設計する考え方は、Claude Researchでサプライヤー探索を進めるにもあります。
まとめ
技術調査では、Researchに任せる範囲を「方式の洗い出し」と「公開情報で埋まる列の下書き」に絞ると、結果を使いやすくなります。コストや自社設備への適合のように公開されない列は、最初から人が埋める前提にします。
表に載った数値は、測定条件ごと原文で確かめるまで仮の値です。出典の種類を分け、空欄を空欄のまま残せる依頼文にしておけば、比較表の弱い箇所が見えるので、次に何を調べるかを決めやすくなります。