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ユニットエコノミクスのLTV・CACをClaude for Excelで組む手順

ユニットエコノミクスのLTV・CACをClaude for Excelで組む手順

LTV・CAC・ペイバック期間を、解約率の仮定ごとに並べる試算シートをClaude for Excelに組ませる手順。解約率が上がるとLTV/CACが3を超えていてもペイバックが先へ延びる点まで、数値例で確かめます。

サブスクリプション事業の採算は、1顧客を獲得するのにいくらかかり、その顧客が離れるまでにいくら粗利を残すかで決まります。この関係を見る指標がユニットエコノミクス(顧客1人あたりの採算)で、中心になるのがLTV(顧客生涯価値)、CAC(顧客獲得費)、ペイバック期間(獲得費を粗利で回収し終えるまでの月数)です。Claude for Excelは、これらを前提シートの数字から数式で計算し、解約率の仮定を変えた場合の比較表まで組めます。ただし解約率の値は人が決めます。この記事では、シートの設計、Claudeへの頼み方、検算、そして解約率が動くと何が起きるかを数値例で扱います。

自社が価格を上げる側の離脱シミュレーションは値上げシミュレーションを離脱率つきでClaude for Excelに組ませる手順にあります。そちらは粗利の増減が主題で、獲得費を含む指標体系は持ちません。ここでは獲得費を足して、投資を回収できるかを見ます。

LTV・CAC・ペイバックを数式で定義する

最初に、3つの指標を同じ前提から出す式を決めます。前提は4つです。月額単価(ARPA)、粗利率、1顧客あたりの獲得費、月次解約率です。

  • 月間粗利 = 月額単価 × 粗利率
  • LTV = 月間粗利 ÷ 月次解約率
  • LTV/CAC = LTV ÷ 獲得費
  • 単純ペイバック(月) = 獲得費 ÷ 月間粗利

LTVの式は、解約率が毎月一定なら平均の継続月数が「1 ÷ 解約率」になることから来ています。解約率3%なら約33.3か月です。この式は割引率を考えず、単価も変わらない前提の簡易形です。

もう1つ、解約を織り込んだペイバックが必要です。単純ペイバックは「顧客が回収完了まで全員残る」前提で、解約率が高いほど実態より早く出ます。nか月目までの累積粗利の期待値は、月間粗利 ×(1 − (1 − 解約率)^n)÷ 解約率です。これが獲得費に等しくなるnを解くと、次の形になります。

  • 解約考慮ペイバック(月) = LN(1 − 獲得費 × 解約率 ÷ 月間粗利) ÷ LN(1 − 解約率)

LNの中身が0以下になる条件、つまり「獲得費 × 解約率 ≧ 月間粗利」のとき、獲得費は回収されません。解約率が月間粗利 ÷ 獲得費以上になると、何か月待っても回収できない計算になります。

前提シートに置く数字と、人が決める数字

Claudeに頼む前に、事実と仮定を分けて前提シートに置きます。

区分項目本記事の例置く人
事実項目月額単価本記事の例8,000円置く人請求データから転記
事実項目粗利率本記事の例70%置く人経理と原価の範囲を確認
事実項目獲得費本記事の例60,000円置く人広告費・営業費を新規件数で割る
仮定項目月次解約率本記事の例3%置く人事業責任者が根拠つきで決める
仮定項目比較する解約率本記事の例1% / 2% / 3% / 5% / 8%置く人事業責任者

獲得費の求め方は、定義を1行シートに残しておきます。広告費だけで割るのか、営業の人件費まで入れるのかで数字が大きく変わり、同じシートでも比べるたびに前提がぶれるためです。粗利率も同じで、決済手数料やサポート費を原価に含めるかを決めておきます。

解約率は、過去の顧客データから実績を出す方法があります。月ごとの期首顧客数と解約数を並べ、「期間中の解約数の合計 ÷ 期首顧客数の合計」を出すと、顧客月あたりの平均解約率になります。この集計までは、顧客一覧のシートをClaudeに読ませて数式化できます。ただし将来の解約率として採用する値は、実績に季節性や契約更新の偏りがないかを見たうえで人が置きます。

Claudeへの頼み方 — 前提と計算を別シートにする

ブックに前提シートを作ったら、Claude for Excelのサイドバーから依頼します。Claudeは数式の関係を保ったまま値を書き換える動きが想定されているので、計算は前提を参照させます。

「前提」シートのB2:B5(月額単価・粗利率・獲得費・月次解約率)を使い、
新しいシート「指標」にユニットエコノミクスを作ってください。
- 月間粗利、LTV、LTV/CAC、単純ペイバック、解約考慮ペイバックを出す
- すべて数式で、前提シートのセルを参照する(数値の直書きは禁止)
- 獲得費 × 解約率が月間粗利以上のときは、解約考慮ペイバックに「回収不可」と表示する
- 12か月目の累積粗利の期待値と、獲得費との差も出す
- 「前提」シートは変更しない

返ってきたシートの数式は、次のような形になっていれば意図どおりです(前提のB2が単価、B3が粗利率、B4が獲得費、B5が解約率という配置の例です)。

月間粗利     : =前提!B2*前提!B3
LTV          : =月間粗利/前提!B5
LTV/CAC      : =LTV/前提!B4
単純ペイバック: =前提!B4/月間粗利
解約考慮     : =IF(前提!B4*前提!B5>=月間粗利,"回収不可",
                LN(1-前提!B4*前提!B5/月間粗利)/LN(1-前提!B5))
12か月累積   : =月間粗利*(1-(1-前提!B5)^12)/前提!B5

実際の依頼では、月間粗利などの途中計算を別のセルに置き、その参照を使わせます。上の式の「月間粗利」「LTV」は、そのセルの位置に読み替えてください。

解約率を動かすと何が起きるか

ここから本題です。前提を月額8,000円・粗利率70%・獲得費60,000円に固定し、月次解約率だけを変えて全セルを計算すると、次の表になります。月間粗利は5,600円です。

月次解約率平均継続月数LTVLTV/CAC単純ペイバック解約考慮ペイバック12か月累積−獲得費
1%平均継続月数100か月LTV560,000円LTV/CAC9.33単純ペイバック10.7か月解約考慮ペイバック11.3か月12か月累積−獲得費+3,624円
2%平均継続月数50か月LTV280,000円LTV/CAC4.67単純ペイバック10.7か月解約考慮ペイバック11.9か月12か月累積−獲得費+279円
3%平均継続月数33.3か月LTV186,667円LTV/CAC3.11単純ペイバック10.7か月解約考慮ペイバック12.7か月12か月累積−獲得費−2,851円
5%平均継続月数20か月LTV112,000円LTV/CAC1.87単純ペイバック10.7か月解約考慮ペイバック15.0か月12か月累積−獲得費−8,520円
8%平均継続月数12.5か月LTV70,000円LTV/CAC1.17単純ペイバック10.7か月解約考慮ペイバック23.3か月12か月累積−獲得費−15,737円

表から読み取れる点が3つあります。

  1. 単純ペイバックは、解約率を動かしても10.7か月で変わりません。式に解約率が入っていないからです。解約を織り込むと、1%なら11.3か月、8%なら23.3か月と開きます。
  2. 解約率8%でも、LTV/CACは1.17で1を超えています。LTVだけを見ると黒字に見えますが、獲得費の回収に約2年かかります。資金繰りが限られる事業では、この差が効きます。
  3. 解約率が月間粗利 ÷ 獲得費 = 5,600 ÷ 60,000の約9.3%に達すると、獲得費は回収されません。この例では、月次解約率が9.3%を超える領域が「回収不可」になります。

LTV/CACは3以上が目安とよく言われますが、これは業界の経験則で、一次ソースのある基準ではありません。目安の数字を採用するときは、自社の資金余力と照らして置いてください。

獲得費を動かす比較も同じシートで

解約率を3%に固定して獲得費を動かすと、獲得チャネルごとの優劣が見えます。

獲得費LTV/CAC単純ペイバック解約考慮ペイバック
40,000円LTV/CAC4.67単純ペイバック7.1か月解約考慮ペイバック7.9か月
60,000円LTV/CAC3.11単純ペイバック10.7か月解約考慮ペイバック12.7か月
80,000円LTV/CAC2.33単純ペイバック14.3か月解約考慮ペイバック18.4か月
100,000円LTV/CAC1.87単純ペイバック17.9か月解約考慮ペイバック25.2か月

獲得費が100,000円になると、LTV/CACは1.87でもペイバックは25か月を超えます。チャネル別の獲得費と解約率がそれぞれ違う場合は、行にチャネルを置き、列に指標を並べる形で、Claudeに同じ式を行ごとに展開させます。

検算で見る4点

Claudeが返したシートは、そのまま意思決定に使わず、次の4点で確かめます。

  1. 解約率を1%に下げたとき、LTVが月間粗利 ÷ 0.01、つまり月間粗利の100倍になっているか
  2. 解約考慮ペイバックが、どの解約率でも単純ペイバック以上になっているか。下回っていれば式の組み間違いです
  3. 解約考慮ペイバックの月数をnとして、月間粗利 ×(1 − (1 − 解約率)^n)÷ 解約率 を手で計算し、獲得費に一致するか
  4. 獲得費 × 解約率が月間粗利以上になる前提を入れたとき、「回収不可」と表示されるか。表示されず #NUM! などのエラーが出るなら、IFの条件を直させます

Claude for Excelは、答えにセル単位の引用を付け、クリックで参照セルに移動できます。「LTV/CACのこのセルはどのセルを使っているか」と聞けば、参照先をたどれます。エラーの原因をたどる用途にも向いているので、#NUM! や #DIV/0! が出たら、そのセルを指して原因を聞く進め方が使えます。

比較表は通常の数式で組む

解約率を振った比較表は、Excelのデータテーブル(What-If分析)でも作れますが、Claude for Excelはデータテーブルに対応していません。マクロやVBAの操作もできません。そのため、解約率ごとの列にそれぞれ通常の数式を置き、列見出しの解約率を参照させる形にします。

「指標」シートの右側に、解約率の列を5本作ってください。
1行目に解約率(1%・2%・3%・5%・8%)を置き、
2行目以降にLTV、LTV/CAC、単純ペイバック、解約考慮ペイバックを、
それぞれ1行目の解約率を参照する数式で出してください。
データテーブルは使わないでください。

既存のブックにデータテーブルで作った表がある場合は、Claudeに触らせず、同じ結果を数式で出す別シートを作らせて照合します。

顧客データや外部コネクタとの組み合わせ

実績の解約率を出したいときは、顧客一覧のシートを同じブックに置き、Claudeに期首顧客数と解約数の月次集計を数式で作らせます。課金システムから出力したCSVを貼る場合は、貼った列の見出しと型を最初に確認させてください。

外部のデータを直接引く手段も、一部は用意されています。Claude for Excelには、+ ボタンの下に「Connectors」の選択肢があります。公式ドキュメントで例に挙がっているのは、S&P Global、LSEG、Daloopaといった財務データのコネクタと、組織が有効にしたカスタムコネクタです。SaaSの課金指標では、Baremetricsのコネクタ(読み取り専用)がコホートの取得や指標サマリーのツールを持っています。Excelのアドインに表示されるかは、組織の設定と接続方式に左右されるため、+ ボタンの一覧で確かめます。サードパーティのプラットフォーム経由で接続している場合、コネクタやSkillsが使えないことがあります。

課金システムと会話で突き合わせる手順はClaudeとChargebeeを連携する方法に、解約リスクの高い顧客を洗い出す手順はClaudeとGainsightを連携して解約リスクの顧客を洗い出す手順にあります。

人が決める線引き

作業Claudeに任せる人が決める
前提シートの項目設計Claudeに任せる○人が決める項目の採否と定義
指標の数式の組み立てClaudeに任せる○人が決める式の前提(割引なし・単価一定)の確認
解約率ごとの比較表Claudeに任せる○人が決める検算
実績の解約率の集計Claudeに任せる○人が決める季節性や更新月の偏りの判断
将来の解約率・獲得費Claudeに任せる候補の書式のみ人が決める数字の根拠と採用
投資判断・予算配分Claudeに任せる一覧化まで人が決める判断と責任

Claude for Excelの公式ドキュメントは、人のレビューなしの最終成果物や、検証なしの監査に直結する計算での利用を推奨しないとしています。投資家向け資料や予算の根拠に使う場合は、人が式と前提を確かめた版を使います。

つまずきやすい点

  • 解約率の単位が月と年で混ざる: 年次の解約率12%を月次3%に置き換えると、前提が変わります。前提シートのラベルに「月次」と明記し、年次の値を使う場合は別セルで換算します
  • LTVの式が割引なしだと気づかない: 解約率が低い前提では、LTVが長期にわたる粗利の合計になります(1%なら平均100か月分)。上限を置く、あるいは累積粗利を何か月までで見るかを別に決めます
  • 粗利でなく売上で計算してしまう: 月額単価をそのままLTVに使うと、原価を無視した数字になります。粗利率の掛け算が入っているかを確かめます
  • 外部のブックをそのまま開く: 取引先や他部署から受け取ったファイルには、隠れた指示が含まれうると公式ドキュメントが注意しています。信頼できるコピーを作ってから使います
  • 広範囲の上書き: 既存データを上書きする前に警告は出ますが、最初はコピーで試し、変更内容を確かめてから本番のブックに適用します

利用できるのはPro、Max、Team、Enterpriseの各プランで、Excel on the web、Windowsの対応ビルド、Macの対応バージョンで動きます。ExcelのiPad版とAndroid版には対応していません。

まとめ

ユニットエコノミクスの骨格は、4つの前提と数本の式で組めます。解約率を動かして見ると、LTV/CACが1を超えていてもペイバックが2年近くかかる領域があり、単純ペイバックだけでは見えない差が出ます。Claude for Excelに任せると効率が上がるのは、前提を参照する数式の組み立てと、解約率ごとの比較表の展開です。解約率と獲得費の値は人が根拠を持って置き、LTVと解約考慮ペイバックの手計算で検算してから使います。事業計画全体に広げる場合はClaudeで財務モデルを作成する手順や、実績との差を見る月次予実対比レポートの差異分析が続きになります。Copilotとの違いはClaude for ExcelとCopilotの比較で確かめられます。

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