ClaudeとGainsightを連携して解約リスクの顧客を洗い出す手順
Gainsight CSコネクタでヘルススコアの低い顧客を抽出し、CTAや成功プランを書き込み前の確認つきで作る流れを、できること・できないこと・接続の前提とあわせて解説します。
Claude Gainsight連携とは — 解約リスクの洗い出しに使える範囲
Gainsight (CS)コネクタは、Gainsightが提供する「Anthropic verified」表示のコネクタです。カスタマーサクセスのデータをClaudeの会話から照会し、CTAや成功プランなどの記録を書き戻せます。ディレクトリへの追加は2026年6月で、サインインは必須です。
コネクタページの説明は、顧客のヘルススコア、更新時期、プロダクト利用状況を自然言語で問い合わせられるとしています。リスクのエスカレーション、更新のプレイブック、QBRの準備、拡大施策といった複数ステップの作業にも使える、という位置づけです。
解約リスクの洗い出しは、この説明にそのまま当てはまる使い方です。ヘルススコアの低い顧客の抽出、更新時期やCTAとの突き合わせ、承認つきの書き込みという3段階で進めます。各段階の依頼文は後半に載せています。
Salesforceを入口に既存顧客のアップセル候補を探す方法はClaudeでSalesforceのアップセル・クロスセル候補を探すにあります。こちらはGainsight側のCSデータを入口に、守りの動きを作る手順です。
接続前に確認する条件 — 管理者の作業が先に要る
接続の入口は2つあります。ディレクトリからGainsight (CS)を追加する方法と、Gainsightの管理者ガイドが説明するカスタムコネクタです。管理者ガイドの手順はカスタムコネクタが前提で、次の準備が要ります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| Gainsight側の権限 | 内容OAuthアプリを作る管理者権限 |
| 認証方式 | 内容ユーザー単位のOAuth 2.1。PKCEの有効化が必須 |
| 控えるもの | 内容Client IDとClient Secret、テナントのベースURL |
| Claude側の権限 | 内容カスタムコネクタを追加できる管理者 |
| コールバックURL | 内容https://claude.ai/api/mcp/auth_callback と https://claude.com/api/mcp/auth_callback の2つを同じOAuthアプリに登録 |
PKCEの設定は、Gainsightの「Administration」→「User Management」→「Authentication」タブ→「OAuth Applications」で行います。対象アプリの「View/Edit」を開き、PKCEのトグルをオンにします。「Enforce Allowed IP Ranges」にチェックを入れると、APIアクセスを指定のIPアドレスに限定できます。
Claude側は、「Customize」→「Connectors」→「Add custom connector」を開きます。サーバーURLは、テナントのURLの後ろに /v1/ds-mcp/mcp を付けた形です。
https://your-domain.gainsightcloud.com/v1/ds-mcp/mcp「Advanced settings」にClient IDとClient Secretを貼り、追加します。各ユーザーは「Settings」→「Connectors」で「Connect」を押し、Gainsightの資格情報でログインして認証します。
Team・Enterpriseプランでは、組織のOwnerがコネクタを有効にしても、各人の認証は別に必要です。Claudeはサービス側の権限をそのまま引き継ぎます。Gainsightで見えない会社や記録には、Claudeからも届きません。
何を読めて何を書けるか — 解約リスク用途で効く機能
管理者ガイドの一覧では、読み取りと書き込みの対応が次のように分かれます。
| 区分 | 対応しているもの |
|---|---|
| 読み取り | 対応しているものアカウント概要、会社・リレーションシップの照会、会社のCTA、CTA内のタスク、成功プラン、タイムライン、スコアカード(読み取りのみ)、複数アカウントにまたがる分析、画面で見られるレポート、ポートフォリオデータ、エンドユーザーの連絡先検索 |
| 書き込み | 対応しているものCTAの作成と更新、CTA内のタスク作成、成功プランの作成と更新、タイムラインの作成と更新 |
| 対応なし | 対応しているものレコードの削除、会社フィールドの更新、管理者レベルの設定、スコアカードの書き込み |
解約リスクの用途で押さえておきたいのは3点です。
- 会社のフィールド自体は書き換えられません。ヘルススコアをClaudeから直すことはできず、動きはCTA・成功プラン・タイムラインの記録として残ります
- レコードは削除できません。誤って作ったCTAは、Gainsightの画面で人が閉じる必要があります
- スコアカードは読むだけです。スコアの根拠を見るのには使えても、変更には使えません
タイムラインの作成・更新は、会社、成功プラン、CTA、リレーションシップの各レベルで可能です。スコアカードのレベルでは行えません。
ツールは14個公開されています。ツール名は get_records、run_query、fetch_cta_list、fetch_success_plan_list、fetch_timeline_activity_list、create_timeline_activity、manage_cockpit_actions、manage_success_plan_actions、resolve_company、resolve_relationship、resolve_user、get_object_metadata、get_activity_types_config、get_picklist_values です。どのツールがどの機能に対応するかは、コネクタページに説明がありません。
誰が何を用意するか — 3者の役割分担
管理者ガイドの流れを役割で並べると、準備が止まりやすい場所が見えます。
| 担当 | やること | 前提 |
|---|---|---|
| Gainsight管理者 | やることOAuthアプリの作成、PKCEの有効化、ClaudeのコールバックURL2つの登録 | 前提Gainsight CSの管理者権限 |
| Claude管理者 | やることカスタムコネクタの追加(サーバーURL、Client ID、Client Secretの入力) | 前提カスタムコネクタを追加できる権限 |
| 利用者 | やること「Connect」で認証し、CSの業務に使う | 前提Gainsightのアカウント |
Gainsight管理者とClaude管理者が別の人だと、Client Secretの受け渡しが発生します。管理者ガイドは、Client IDとClient Secretを控えておくよう案内しています。受け渡しの経路は、社内のシークレット管理の規則に沿って決めます。
同じMCPサーバーには、ChatGPTやMicrosoft Copilot Studioからも接続できると、管理者ガイドは説明しています。接続先のURLは3つとも同じ /v1/ds-mcp/mcp で、認証は3つともユーザー単位のOAuth 2.1とPKCEが前提です。Copilot Studioでは、認可URLを /v1/authorize、トークンURLを /v1/users/oauth/access/token として手動で入力します。ClaudeはこれらのURLを入力しない点が、設定の手間の違いです。
前提にも差があります。ChatGPTは、管理者がアプリを作成できることと、設定でDeveloper Modeをオンにして「Create App」を表示させることが要ります。Copilot Studioは、エージェントの作成・編集権限と、MCPツールを足す先の既存エージェントが要ります。Claudeの管理者ガイドの前提は、PKCEつきのOAuth設定と、2つのコールバックURLの登録です。社内で複数のAIツールを使い分けているなら、Gainsight管理者の作業はOAuthアプリ側で共通する部分が多く、ツールごとに増えるのはコールバックURLの登録です。
解約リスク顧客を洗い出す3ステップ
管理者ガイドは、MCPサーバーを汎用のAPIコネクタだと説明し、プロンプトの質が回答の正確さと有用さを左右するとしています。何をどの順で頼むかを具体的に書くと、安定します。
ステップ1 — 読み取りだけで候補を出す
次のような依頼文が出発点になります。公式の例ではなく、ここで使う想定の文面です。
担当しているポートフォリオから、ヘルススコアが赤の顧客を抽出してください。
更新日が90日以内のものを優先し、次の項目を表にしてください。
- 会社名と担当CSM
- 現在のヘルススコアと、直近で下がった時期
- 更新日
- 開いているCTAの有無
この段階ではレコードを作成・更新しないでください。「ヘルススコア」の指標名や「赤」の定義は、各社のGainsight設定によって違います。指標名が合わないときは、スコアのスキーマを調べさせるのが近道です。コネクタには get_object_metadata や get_picklist_values といったツールがあり、設定の取得に使えます。
ステップ2 — 候補を突き合わせる
上位の数社に絞って、記録を重ねて見ます。
上位5社について、開いているCTA、成功プラン、直近3か月のタイムライン活動を
それぞれ引いてください。リスクの理由として記録から読めるものを、
会社ごとに2〜3行でまとめてください。記録に無いことは推測で書かず、
「記録なし」と書いてください。キーパーソンへの連絡を検討するなら、読み取り機能にあるエンドユーザーの連絡先検索で、先方の担当者も引けます。最後の一文が重要です。タイムラインに残っていないリスクの理由をClaudeが補ってしまうと、CSMが事実と推測を取り違えます。
ステップ3 — 書き込みは案を見てから
書き込みを伴う依頼は、案の提示と承認を2段に分けます。
先ほどの5社について、作成するCTAとタスクの案を一覧にしてください。
会社名、CTAの種類、期限、タスクの内容を並べ、まだ作成はしないでください。
私が「この3社だけ作成」と指示したものだけ作成してください。作成後は、作成した件数とCTAの内容を一覧で返させます。Gainsightの画面でも同じCTAが見えることを確かめれば、書き込みが意図どおりだったか判断できます。
書き込みを安全に回す設定
プロンプトでの確認に加えて、Claude側にも書き込みを止める仕組みがあります。
- コネクタを開くと、権限がツールの種類別(読み取り専用、書き込み・削除など)に分類されて表示されます。分類ごと、またはツールごとに「Always allow」「Needs approval」「Blocked」を選べます
- Team・Enterpriseプランでは、Ownerが組織全体で「読み取りは許可、書き戻しは禁止」のように、コネクタの動作を限定できます。この制限は個人では上書きできません
解約リスクの洗い出しを試す初期は、書き込み系のツールを「Needs approval」にしておくと、作成の直前に毎回確認が入ります。慣れてから範囲を広げる運用もできます。ただし、どの権限分類にどのツールが入るかは、コネクタの画面で確かめる必要があります。
つまずきやすい点
- 接続できない — カスタムコネクタはAnthropicのクラウドからサーバーに接続します。テナントがファイアウォールの内側にあり公開インターネットから届かない場合は失敗します
- コールバックURLの片方が抜ける — ClaudeのコールバックURLは2つあり、同じOAuthアプリに両方登録します
- ユーザーごとに見える範囲が違う — 認証はユーザー単位で、Gainsightでの権限がそのまま反映されます。担当外の顧客が一覧に出ないのは仕様どおりです
- コネクタの提供元を信頼できるか — コネクタページは、信頼できる開発者のコネクタだけを使うよう注意しています。Anthropicは、開発者が公開するツールを管理しておらず、動作の保証もできないと明記しています
解約リスクの運用に取り込むときの考え方
Claudeに任せられるのは、候補の絞り込みと記録の突き合わせ、書き込み案の下書きまでです。ヘルススコアそのものはGainsight側のモデルが決め、Claudeからは変えられません。解約リスクの判断は、スコアの背景にある顧客とのやり取りを知るCSMが担います。
週次の会議前に読み取りだけのプロンプトを回し、会議で承認した顧客だけCTAを作る、という切り分けが、この仕組みの権限設計と相性のよい使い方です。月次の更新レビュー用には、更新日の絞り込み条件だけを差し替えて同じ型を使い回せます。
Gainsightのような顧客管理データは、課金側のデータと突き合わせると見えるものが増えます。サブスクの請求・解約の側はClaudeとChargebeeを連携する方法に整理しています。ダッシュボード側の指標をClaudeで読む場合はClaudeとTableauを連携する方法が参考になります。