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Claude for Excelで介護施設の月次稼働率と収支を分析する手順

Claude for Excelで介護施設の月次稼働率と収支を分析する手順

入所系の介護施設で、日別の利用者数から稼働率と空床の損失を出し、加算の取りこぼしと給与費割合を月次で並べるまでを、Claude for Excelで進める手順です。

特養や老健のような入所系の施設は、稼働率、加算の算定状況、給与費の3つを月次で並べると、収支が動いた理由が見えやすくなります。Claude for Excelなら、集計の式を書かせ、数字の動きを文章にするところまで同じブックの中で進められます。ただし、稼働率の定義や加算の対象人数を取り違えると、数字はきれいに揃ったまま誤ります。この記事は、日次の利用者数から月次シートを組み、Claudeに任せる範囲と人が確かめる範囲を分けます。

利用者の氏名や個別の介護記録はブックに入れません。日付ごとの人数と、月ごとの金額だけで足りる設計です。

稼働率と空床の損失は、式の定義を先に決める

稼働率は、施設ごとに数え方が違う指標です。この記事では次の式を使います。

指標式
稼働率(利用率)式月間の延べ利用者数 ÷ 月間の定員延べ数
空床日数式月間の定員延べ数 − 月間の延べ利用者数
空床の損失額式空床日数 × 1日あたりの収入単価

定員延べ数は、日ごとの定員を1か月分足した数です。定員が月の途中で変わっても、日次の定員を足せば自然に反映されます。月間日数に月末の定員を掛ける方法だと、増床や休床のある月がずれます。

数え方で迷う点は2つあります。

  • 数える時刻: 朝の点呼か、24時時点かを決めて、1年を通じて変えません。
  • 入院・外泊中の扱い: 利用者に含める場合と除く場合で稼働率が変わります。含めるなら、入院・外泊の人数は別列で持っておくと、収入側の突合ができます。

空床の損失額に掛ける「1日あたりの収入単価」は、仮の数字を置いて試算します。厚生労働省の概況調査(令和7年度の介護事業経営の調査)の特養の表には、利用者1人当たり収入として13,012〜13,142円/日の値が並んでいます。この表の収入は保険外の利用料も含む平均です。空床1日が実際に失う収入とは一致しないので、自施設の介護報酬の1日分(単位数と地域の単価)で置き直します。

渡すデータは入力4枚と月次1枚に分ける

ブックは5枚のシートで組みます。入力用が日次・加算・収支・設定、出力用が月次です。加算と収支には、入力列のほかに算定率や差引などの計算列を右側に足します。

シート1行の単位列(A列から順に)
日次(入力)1行の単位日付列(A列から順に)A: 日付 / B: 定員 / C: 利用者数
加算(入力と計算)1行の単位月 × 加算名列(A列から順に)A: 月 / B: 加算名 / C: 算定見込み人日 / D: 算定人日 / E: 算定率 / F: 1日の単位数 / G: 取りこぼし額
収支(入力と計算)1行の単位月列(A列から順に)A: 月 / B: 介護事業収益 / C: 給与費 / D: その他の費用 / E: 差引 / F: 差引率 / G: 給与費割合
設定(入力)1行の単位1行列(A列から順に)A1: 1日の収入単価(円)の見出し / A2: その値 / B1: 1単位の単価(円)の見出し / B2: その値
月次(出力)1行の単位月列(A列から順に)A: 月初日 / B〜G: 次の節の式

加算シートの「算定見込み人日」は、その月に算定要件を満たしていた利用者の延べ日数です。要件の判定は記録と突き合わせて人が行います。判定の手伝いは、看取り介護加算の算定要件をClaudeで記録と突き合わせる手順や、介護の加算届・体制届をClaudeで下書きする書き方で扱っています。ここでは、判定を終えた人日だけをシートに入れます。

月次シートの式

「月次」シートは1行を1か月とします。A列に月初日を入れ、2行目の式は次のとおりです。

B2 月間日数:       =DAY(EOMONTH(A2,0))
C2 定員延べ数:     =SUMIFS(日次!$B:$B, 日次!$A:$A, ">="&A2,
                           日次!$A:$A, "<="&EOMONTH(A2,0))
D2 延べ利用者数:   =SUMIFS(日次!$C:$C, 日次!$A:$A, ">="&A2,
                           日次!$A:$A, "<="&EOMONTH(A2,0))
E2 稼働率:         =IF(C2=0, "", D2/C2)
F2 空床日数:       =C2-D2
G2 空床の損失額:   =F2*設定!$A$2

E列は「0.0%」、G列は「#,##0」の表示形式にします。

加算シートの式です。C列が算定見込み人日、D列が算定人日、F列が1日の単位数で、2行目から入力します。

E2 算定率:       =IF(C2=0, "", D2/C2)
G2 取りこぼし額: =(C2-D2)*F2*設定!$B$2

収支シートは、B列が介護事業収益、C列が給与費、D列がその他の費用です。

E2 差引:        =B2-C2-D2
F2 差引率:      =IF(B2=0, "", E2/B2)
G2 給与費割合:  =IF(B2=0, "", C2/B2)

収益は、サービスを提供した月に揃えます。入金は提供月より後になるため、入金ベースで並べると稼働率の動きと収益の動きが1〜2か月ずれて見えます。

数字を動かす前に、手計算を1つ置く

式が合っているか確かめるため、1か月分を電卓で出します。以下は動作確認用の架空の数字で、定員は80人、1日の収入単価は13,000円と仮置きしています。

項目4月5月
月間日数4月305月31
定員延べ数4月2,4005月2,480
延べ利用者数4月2,2805月2,306
稼働率4月95.0%5月93.0%
空床日数4月1205月174
空床の損失額4月1,560,000円5月2,262,000円

4月は2,280 ÷ 2,400 = 0.950、5月は2,306 ÷ 2,480 ≒ 0.930です。延べ利用者数は5月のほうが26人日多いのに、稼働率は2ポイント下がっています。31日ある月は定員延べ数も増えるため、人数が横ばいなら稼働率は下がります。月の日数が違う月どうしを並べるときは、延べ利用者数を月間日数で割った「1日あたりの平均利用者数」も見ます。この例では、4月が76.0人、5月が74.4人です。

シートの値が合わないときに疑う箇所を、頻度の高い順に挙げます。

  • 日付が文字列で、SUMIFSの「>=」の比較が効いていない
  • 日次シートに欠けている日がある(定員延べ数が日数×定員より少なくなる)
  • 入院・外泊中の人を、ある月は含めて別の月は除いている
  • 定員の列が、増床や休床の月に更新されていない

Claude for Excelに任せる手順

式の下書きと、数字の動きの言語化を任せ、検算は人が持ちます。

手順

月次シートを作らせて検算するまで

  1. 1

    日次シートの列の意味を伝える

    どの時刻の利用者数か、入院・外泊中の人を含むかを、文章で先に渡します。

  2. 2

    新しいシートに式を作らせる

    既存のシートは書き換えず、出力用の月次シートを新しく作るよう指示します。加算と収支の計算列は、入力列の右隣に式を足させます。

  3. 3

    式の根拠をセルで追わせる

    稼働率と空床の損失額が、どのセルを参照しているかを説明させます。回答にはセル単位の引用が付き、クリックすると該当セルへ移動できます。

  4. 4

    手計算と照合する

    上の表のように1か月分を電卓で出し、シートの値と合うかを見ます。

指示の例です。

添付ブックの「日次」シートは、日付ごとの定員と利用者数です。
利用者数は毎日24時時点の人数で、入院・外泊中の人は含みません。
既存のシートは変更せず、新しいシート「月次」を作ってください。
月ごとに、月間日数、定員延べ数、延べ利用者数、稼働率、
空床日数、空床の損失額(設定シートのA2を単価として使う)を
計算してください。最後に、式を入れたセルの範囲と参照先を
一覧で教えてください。

アドインの設定画面には、すべての会話に適用される指示欄(Instructions)があります。「割合は小数第1位まで」「金額は3桁区切り」といった表示の決まりは、そこに書いておくと毎回の指示が短くなります。

Claude for Excelの限界を踏まえた分担

Claude for Excelには、使い方の限界がいくつか明記されています。この記事の作業に当てはめると、次の分担になります。

限界この作業での扱い
人の確認を経ない最終成果物には向かないこの作業での扱い法人の会議資料や監査向けの数字は、人が検算してから出す
検証を伴わない監査上重要な計算には向かないこの作業での扱い加算の算定率は、元の記録と人が突き合わせる
マクロとVBAは未対応この作業での扱い月次の取り込みは式と貼り付けで組む
データテーブルは未対応この作業での扱い感度分析は列を並べて作る
外部から取り込んだファイルには、隠れた指示が混じる危険があるこの作業での扱い業者や他部署から届いた集計ファイルは、信頼できる自分のブックに値だけ貼って使う

上書きの前には警告が出ます。それでも、広い範囲を編集させる前に、信頼できるコピーのブックで試すのが安全です。

加算の取りこぼしを、算定率から金額にする

加算は、算定要件を満たしているのに請求していない分が、収益の取りこぼしになります。加算シートでは、加算名ごとに次の3つを月次で並べます。

  • 算定見込み人日: 要件を満たしていた利用者の延べ日数
  • 算定人日: 実際に請求した延べ日数
  • 1日の単位数: 告示で定まっている単位数

算定率は算定人日 ÷ 算定見込み人日で出します。取りこぼし額は、(見込み − 算定)の人日に単位数と1単位の単価を掛けた金額です。

架空の例を置きます。1日12単位の加算で、見込みが60人 × 30日 = 1,800人日、算定が1,440人日だったとします。算定率は80.0%、取りこぼしは360人日です。1単位10円と仮定すると、360 × 12 × 10 = 43,200円になります。

1つの加算の金額は小さくても、複数の加算を月ごとに並べると、「毎月同じ加算で算定率が下がる」といった偏りが見えます。偏りの原因は、記録の漏れ、体制届の期日、要件の判定のずれなどです。Claudeには数字の偏りを指摘させ、原因の切り分けは担当者が記録に当たって行います。

収支は、給与費割合と差引率で読む

収支シートの「給与費割合」は、給与費 ÷ 介護事業収益です。厚生労働省の概況調査(令和7年度)は、特養の令和6年度決算で、給与費が収入の63.5%、差引が1.4%と示しています。同じ表の1施設当たりの月額は、収入が29,051千円、給与費が18,445千円です。この表の「収入」は介護事業収益に事業外収益を加えたもので、費用や差引の比率はこの収入に対する割合です。

自施設の数字をこれらと並べるときは、定義の違いに注意します。

比べる点注意
収支差率の式注意調査では(介護サービスの収入額 − 支出額)÷ 収入額で出す。自施設の差引率も同じ分母にそろえる
補助金注意調査は物価高騰対策の補助金を含む場合と含まない場合を分けている。自施設の差引率にどちらを使ったかを列見出しに書く
併設事業注意調査は施設ごとの介護サービスの収支。法人全体や併設の通所・居宅の数字と混ぜない
平均との比較注意全国の平均は規模や地域を問わない値。定員の近い施設の数字がなければ、自施設の過去の月と比べるほうが意味がある

Claudeに頼めるのは、月ごとの差引率と給与費割合の推移から、動きの大きい月を拾い、稼働率と加算の月次シートに照らして候補を挙げさせるところまでです。たとえば、稼働率が下がった月に給与費割合が上がっていれば、収入が減って給与費が固定的だった可能性があります。この見立ては、勤務表や採用・退職の動きと照合して確かめます。人員配置の基準側の確認は、介護の勤務形態一覧表を人員配置基準と突き合わせる手順にあります。給与費を店舗や事業所単位で分けて見る型は、人時生産性と人件費率を店舗別に分解する手順が参考になります。

3つの指標を月次で重ねて読む

3つのシートがそろったら、次のように1か月を読みます。

切り分け

差引率が下がった月の切り分け

  1. Q稼働率は前月より下がっていますか?
    答えが下がっていない

    空床日数と空床の損失額を見ます。入退所の人数と、入院・外泊の増減を日次シートで確かめます。

    答えがはい
  2. Q加算の算定率は前月より下がっていますか?
    答えが下がっていない

    取りこぼし額が大きい加算を特定し、その月の記録と体制の届出を確認します。

    答えがはい

収益側に原因が見当たらないとき

給与費割合の変化を見ます。時間外や派遣の増減、退職・採用の時期を勤務表と照合します。

Claudeには、この順番で月次シートを読ませ、動いた箇所を文章にさせます。指示の例です。

月次、加算、収支の3つのシートを使い、直近3か月の差引率の変化を、
稼働率、加算の算定率、給与費割合の順に説明してください。
数字の根拠は参照したセルで示し、原因の推測と数字から言えることを
分けて書いてください。

「原因の推測と数字から言えること」を分けさせるのは、読み手が事実と見立てを混同しないためです。見立ては、担当者が記録に当たって裏を取ります。

つまずきやすい点

  • 入退所日の数え方: 入所日と退所日を利用者数に含めるかを決めないと、延べ利用者数が月ごとに数人日ずれます。算定する日数の考え方と同じ基準にそろえます。
  • 短期入所の混在: 併設の短期入所は、定員と利用者数を別の行や列に持ちます。稼働率が高く見えたり低く見えたりします。
  • 月の途中の定員変更: 日次シートの定員を毎日入れておけば、定員延べ数は自動で追従します。
  • 報酬改定をまたぐ単価: 設定シートの単価は、改定の月から値を変えます。改定前後の月を同じ単価で比べると、空床の損失額も取りこぼし額も誤ります。

使える環境と費用

Claude for Excelは、Pro、Max、Team、Enterpriseの有料プランで使えます。対応するExcelは、Excel on the web、Microsoft 365のWindows版、Mac版です。Excel 2016と2019の買い切り版、iPad、Androidでは動きません。会話の履歴はブラウザ内に保存され、サーバーには保存されません。法人でAmazon Bedrock、Google Cloud Vertex AI、Microsoft Foundry経由の利用を選ぶこともできます。

施設の運営数字は、法人内の情報管理規程が先にあります。利用者を特定できる情報を入れない設計にしたうえで、所属法人の規程に沿って使います。

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